この記事では、子どもが生涯を通じて楽しめるライフワーク作りや、人を思いやる心、礼儀作法の習得など「心の成長」につながる習い事を探している方に向けて、東京都武蔵野市にある「将棋の森」をご紹介します。
将棋の森には、子ども向け・大人向け・女性向け・オンラインの4種類の将棋教室があります。特にはじめて将棋に触れる子どもたちが楽しく将棋を習得し、上達するための指導を大切にしています。
子ども向け教室では、25段階の級制度や負けるとスタンプがたまる「100敗チャレンジカード」など、子どもたちのモチベーションを保つための工夫や、スタッフ・将棋部在籍の大学生によるサポートなど、安心して通うことができる環境づくりにも力を入れています。
今回は、女流棋士であり代表の高橋和(たかはし・やまと)女流三段に取材。教室の理念、得られる力、教室や子どもたちの様子などについて伺いました。
この記事の目次
ゼロから将棋を習得できる「将棋の森」の子ども向け教室
▲いつも笑顔の高橋先生や子どもたちも、指導対局の際は真剣な面持ちとなる
「子どもたちに楽しく将棋を続けてほしい」という代表の高橋先生の思いを形にしたのが「将棋の森」です。
年中児から中学生までが通う子ども向け教室には、レベル別に4つのクラスがあります。初心者の子どもたちが楽しく将棋に触れられるよう考案されたオリジナル・メソッドを使った講座やプロ棋士による指導で、楽しく上達していくことが目標です。
さっそく代表の高橋先生に、「将棋の森」の子ども向け教室について伺いました。
オリジナル・メソッド「まなび将棋」を使って楽しく無理なく将棋をマスター
最初に、子ども向け教室の4つのクラスについてお聞かせください。
子ども向け教室にはプロ棋士が指導する4つのクラスがあり、入門時のレベルに合わせたクラスからスタートして、上達するごとに上のクラスへと進んでいきます。
まず初心者向けの「まなび将棋教室」では、まったく将棋を指した経験のない子どもたちが、駒の動かし方やルールなどから学びます。
教室名にもなっている「まなび将棋」は、私が考案したオリジナル・メソッドです。「まなび将棋」ではワークブックも使用し、駒の動きや「成る」「取る」「使う」といった将棋の基本をマスターします。講義、盤駒を使った実践、ワークブックでの机上演習の3本柱で、最終的には自分で一局指すことができるようになるまでの「はじめの一歩」をていねいに指導しています。
ルールを学ぶと同時に、対局前の「宜しくお願いします」や、負けた際に相手に「負けました」ときちんと伝えるという作法や、相手が駒を指す番のときは静かに待つといったことも教えていきます。
全6回の「まなび将棋教室」を修了したら「しょうぎテラコヤ」に進みます。ここでは一局指せるレベルの子どもたちが、さらに将棋を楽しむための指導をします。次に「テラコヤplus」や「テラコヤアルファ」で、さらに勝つための技術を磨き、初段を目指します。
各クラスは年齢で分けられているのですか?
いえ、将棋は年齢を問わない競技なので、クラスの子どもたちの年齢層も実にさまざまです。上級クラスに小学校低学年の子どもたちがたくさんいますし、中学生が初級のクラスで指導を受けていることもあります。
4クラス全体の子どもたちのボリュームゾーンは小学校1・2年生ですが、「まなび将棋教室」には年長児がもっとも多く通っています。
年中のお子さんに関しては、言葉の理解力によって、半年後から入門といった期限を設ける場合があります。通いはじめる時期に関しては、体験教室に参加していただいてから決定しています。
教室では、どのように指導されているのでしょうか。
「将棋の森」の指導内容には3つのカテゴリーがあります。教室にある大きな将棋盤を使って行う講座、実際に対局しながら教える「指導対局」、最後に生徒同士での対局です。
また、それぞれに細かく25段階の級を設定しているのが特徴です。例えば、対局であと3回勝ったら上の級に進むというように昇級の条件を定め、上の級に進むほど、その条件が厳しくなっていきます。スモールステップで課題を達成していく仕組みで、子どもたち自身が上達を実感しやすいようにしています。
負けてもご褒美!子どもが楽しく続けられる工夫が満載
▲昇級するともらえる認定証とキーホルダーは子どもたちに大好評
将棋の森では、子どもたちの将棋上達への意欲を引き出す工夫をされていると伺いました。
はい。昇級のご褒美として、認定証とキーホルダーをプレゼントしています。子どもたちのモチベーション維持にも大いに役立っています。
認定証を鼻高々にお父さん、お母さんに見せる子どもたちの姿が目に浮かびます!
そうですね(笑)。ゲームのカードを集めるような感覚のようです。キーホルダーをバッグにつけるのが教室内の通例になっていて、たくさんつけていると上の級にいることが一目でわかるので、一種のステータスになっています。クラスや級によって色を変えて、子どもたちの収集欲を刺激しています(笑)。
▲負けることをネガティブな経験にしたくないという思いが込められた「100敗チャレンジカード」
対局で負けてしまった子どもへのフォローはどうされていますか。
将棋が楽しく、強くなるには、やはり経験値を積むことが重要です。そのため、対局をとおしての指導が多くなり、どうしても負けると子どもたちのモチベーションが下がります。
そこで考えたのが、「100敗チャレンジカード」です。負けるとスタンプがもらえるポイントカードで、100個たまると鉛筆などの文房具と交換できます。
負けた悔しさから「もう将棋は指さない!」と泣いていた子も、「ゴールまでのスタンプが2個減ったね、すごいね!」と声かけすると、「もう一回やってみようかな」と前向きな姿勢を見せてくれます。
「100敗チャレンジカード」はモチベーション維持に大いに役立っていますね。
そうですね。将棋の世界には「1000回負けたら強くなる」という言葉があります。「1000回勝ったら」という表現だと途方もなく高い目標に感じますが、「1000回負けたら」という言葉なら実現できそうですよね。
負けることは悪いことでも恥ずかしいことでもなく、そこから何かを学ぶための大切な機会なので、子どもたちにも大いに経験してほしいという思いも込めています。
実際、負けを悔しがる子ほど、能力を開花させる傾向にありますね。涙と嗚咽で「負けました」が言えない子や30分も泣き続けるような子ほど、その後は目を見張るほど上達することもあるんです。
保護者が将棋未経験でもOK!宿題を出すのでお家でも取り組める
子どもが将棋をはじめるにあたって、保護者も知識があった方がいいのでしょうか。
今は保護者の方がまったく将棋に触れたことがないというご家庭のお子さんがとても多いです。「将棋の森」に通う子どもたちの9割は、ご両親ともに将棋未経験というご家庭の子どもたちです。
ご自身が将棋についての知識がない点を心配される保護者の方がとても多いですが、まったく問題ありません。ピアノや水泳と同じように、子どもの習い事の選択肢のひとつとして考えていただければと思います。
「将棋の森」では、教室で将棋を指して終わりではなく宿題も出します。週に1度の教室では十分な上達が難しいことが主な理由ですが、家庭でフォローすることができないことを気に病む保護者の方もいらっしゃるので、宿題という形で明確な指導指針をお伝えしています。丸つけなどのご協力をお願いしていますが、解答があるので将棋の知識は必要ありません。
例えば一手詰め(※1)ができない子には、HOW TO本を渡して練習してきてもらったり、上達の度合いに合わせてテクニックを習得するための本を提案したり。宿題の内容は、一人ひとりにあった内容をこちらで考えてお伝えしています。
(※1)将棋のルールのひとつ。将棋において、1手指すことで玉が詰みの状態になること
子どもが安心して通える環境や雰囲気づくりに力を入れる
教室の雰囲気作りも大切にされていますよね。
はい。習い事の種類はもちろんなのですが、保護者の方にとって「子どもを安心して通わせることができるかどうか」はとても重要です。私自身が子育て中、同じように感じて習い事を選択していたように思います。
子どもたちが楽しく通うことができることと同じくらい、保護者の方にも「ここなら安心して通わせることができる」と思ってもらえる環境づくりは大切だと感じています。
そのため、教室の内装などの見た目にもこだわりました。私がデザインを好きなこともあり、森を連想させる、緑色を基調にした内装はプロのデザイナーに依頼し、テーブルも将棋が指しやすい高さにオーダーしました。対局のときに一番目に入るのがテーブルなので、デザインや椅子の色などにも配慮しています。
さらに、将棋の指導とは関係なく、子育て経験のある女性スタッフ1名に各クラスに子どもたちのサポート役「手合い係」として常駐してもらっています。
「手合い係」は、子ども同士で対局する際の相手選びを主に行います。そのほかにも、トイレの付き添いや声かけなど、子どもたちの「安心」をサポートしてくれる存在です。
▲「手合い係」の女性スタッフが子どもたちのフォローに当たります
子どもたちにとっては、教室内のお母さん的な存在ですね。
そうですね。夏の暑い時期、熱中して水分補給を忘れてしまう子も多いので、こまめに声がけしてもらい、ときには少し甘えられる存在として、きめ細かに子どもたちのケアをしてくれるので、教室のムードメーカー的な役割も担ってくれていると思います。
「将棋の森」に通うことで身につける思いやりと礼儀作法
将棋を通して、どのような能力が育まれると感じますか。
将棋には、自らの負けを認め、相手に向けて「負けました」と伝える独特の文化があります。私は、子どもたちに指導する際、この作法についてあまり厳しく指導しません。しかし、対局を重ねるうちに、自然とそういった態度が身についていきます。
対局での実践練習をはじめた当初、勝った子どもは「やった!」と大喜びします。しかし、対局を繰り返していくうちに、向かいに座っている負けた相手の目の前で喜ぶことができなくなっていきます。自分自身も負ける経験を繰り返すなかで、その辛さが痛いくらいに分かるようになるからです。
テレビで観るプロ棋士の対局では、勝者敗者ともに真剣な表情で対局が終了するので、よく「どちらが勝ったのか判別できない」と言われます。しかし、それは相手の気持ちを慮っての対応です。
将棋には勝つか負けるかのどちらかしかないので、対局を通して、人の気持ちを思いやる心、相手の感情を想像する力が自然と身についていきます。悔しくても、きちんと「負けました」といわねばならないところは、将棋の魅力のひとつだと感じています。
子どもを通わせている保護者は、どのような能力の向上を期待されていますか。
礼儀作法を身につけさせたいといった声をよく伺います。
実際に、将棋の対局を経験することで礼儀作法を学ぶことができます。対局前後のあいさつや、対戦相手に敬意をはらう姿勢など、子どもたちの精神的成長にも大いに役立ちます。
指導の際に礼儀作法だけを切り取って指導するということはあまりしませんが、対局の際に姿勢を正していれば「背筋が伸びていてかっこいい!」と伝えますし、負けてもきちんと「負けました」と言えた子には「声がしっかり出ていて素晴らしい」とほめます。
すると周りの子どもたちもそれを真似してスッと背筋を伸ばし、大きな声で挨拶ができるようになっていきます。結果的に、礼儀正しさが自然と身についていくのだと感じています。
そうやって成長した子どもたちは、教室以外で活躍することもあるのでしょうか。
はい。外部の大会に出場することも推奨しています。1人では勇気が出なくても、同じ教室に通っている子どもたち同士でチームを組んで団体戦に出場するなど、出場に向けてさまざまな提案をしています。
将棋には女性の団体戦の大会があり、「将棋の森」からも女の子たちが出場しました。保護者の方にもご協力いただき、おそろいのリボンをつけてワイワイ出場できたことが楽しかったそうで、「もっと強くなりたい」「次も出場したい」とさらなる意欲につながったようでした。
将棋を身近な存在にするアドバイザー「森のお兄さん先生」
指導にあたっているのはどのような方々なのでしょうか。
各クラス、プロ棋士1名にくわえ、「しょうぎテラコヤ」からは大学の将棋部の学生が1~2名「森のお兄さん先生」としてともに指導に当たっています。
「森のお兄さん先生」は、子どもたちにとっても身近な存在で、子どもたちが考えた愛称「森ネーム」で呼ばれています。「シロクマ先生」や「シマウマ先生」など、「将棋の森」という教室名にちなんで森に関連した愛称がそれぞれの「森のお兄さん先生」にあります。
大学の4年間で卒業していくので、新しい「お兄さん先生」がやってくると、子どもたちが好きな色や食べ物などをインタビューして、全員で愛称を決めます。最近は「エビ先生」「クジラ先生」なんて愛称まで登場していて、森から離れつつありますが(笑)。
「森のお兄さん先生」を慕う子どもたちがたくさんいそうです。
そうなんです。自分たちで名付けた愛称で呼ぶことで、より親しみがわきますよね。愛称で呼び合える「森のお兄さん先生」の存在は、将棋をより親しみやすくしてくれていると思います。
楽しく将棋を続けてほしいという「将棋の森」の想い
「将棋の森」を立ち上げた際の思いや理念をお聞かせください。
通ってくれる子どもたちには、人生のなかで長く将棋を楽しんでもらいたいというのが「将棋の森」のモットーです。将棋にまったく触れたことのない子どもたちに、その楽しさを知ってもらい、さまざまな経験をとおして心豊かに成長してほしい、そういった私自身の思いを形にしたのが「将棋の森」なのです。
子どもの習い事は、まず子どもたちが楽しんで取り組めるものでなくてはいけません。楽しいからこそ、身につくものがあると思うからです。ただ将棋に強くなるだけの指導ができる人はたくさんいると思いますが、私は、もっと子どもたちがわくわくしながら将棋を楽しめるように指導していきたいと考えています。
将棋に対して多くの人がもつ「難しいもの」「特別な人でないとできない」といったイメージを払拭したいという思いもあります。将棋の歴史は古く、江戸時代よりもずっと以前から人々に親しまれているものです。
昔は今のように玩具が充実していませんでしたから、将棋の駒を使って山崩しや回り将棋に慣れ親しんだ後、周囲の大人から将棋を習うという自然な流れがありました。本来将棋はとても身近なものなのです。
また、競技人口を見たときに女性が圧倒的に少ないのが将棋界の現状です。「将棋の森」にはたくさんの女の子が通ってくれていますが、約180名いるなかの1割程度です。この状況を少しでも変えるべく、女の子たちにもぜひ将棋を楽しんでほしいと考えています。
高橋先生から保護者の皆さんへのメッセージ
最後に、子どもの習い事をお探しの保護者に向けてメッセージをお願いします。
将棋は、技術さえ身につければ一生楽しめるものです。何十年と腕を磨き続けることができる楽しさがあります。
また、子どもの心の成長には、泣くほどに悔しい思いをすることもときには大切です。自分の限界を感じたときこそ、あと一歩努力したからその分前に進むことができたという達成感が、「自分も頑張ればできるんだ」という気持ちにつながると思います。
負けると泣いてしまうことで迷惑をかけるのではないかと気にする保護者の方がいらっしゃいますが、それこそが将棋の才能です。先ほどもお伝えしましたが、泣く子ほど強くなりますよ。
余談ですが、将棋を指すだけでなく、私の趣味でもあるボードゲームを介して大人と子どもが混じり合って対戦したり、チェスを楽しむ機会を設けたり、部活動のようなイベントも定期的に開催しています。
年齢を超えた交流ができるのも「将棋の森」の大きな魅力です。ぜひ一度無料体験にお越しください。
本日はありがとうございました!
「将棋の森」の教室・開催日・料金
「将棋の森」には、子ども向け、女性向け、大人向け、オンライン教室のほか、プライベートレッスンなどがあります。各教室にはレベルや目標に合わせたクラスが複数あり、クラスによって開催日や料金が異なるため、必ず公式ホームページで確認を。
無料体験レッスン(事前予約制)には、道場で行われる、まったくの初心者向けの「はじめて将棋レッスン(※現在休止中)」、教室の見学と体験ができる「教室体験レッスン」があり、用途に合わせて体験を受けることができます(取材は2024年8月に実施)。
また、経験者なら誰でも参加できる「子どもの森の道場」(有料)は、毎週末の土・日どちらかで開催。詳しい日程は公式ホームページで確認することができます。将棋を楽しむことはもちろん、教室の雰囲気を知る絶好の機会です。
▼時間・料金例①:子ども向け教室「まなび将棋教室」
対象 | 幼稚園年長〜小学校3年生 *年中・小学校4年生以上は要相談 |
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日程 | 全6回(3ヵ月1クール/日程は公式HPにて要確認) |
時間 | 10:30〜12:00 |
料金 | <月謝>8,500円/月2回 <教材費>2,000円(ワークブック) <初回手数料>4,000円 |
▼時間・料金例②:子ども向け教室「しょうぎテラコヤ」
対象 | 駒の動かし方がわかる幼稚園年長〜 |
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日程 | 月3回(レッスンの日程は公式HPにて要確認) |
クラス | ・月曜クラス ・火曜クラス ・水曜クラス ・木曜クラス ・土曜クラス(土曜のみ3クラス開講) |
時間 | ・(月・水曜日)16:15〜17:30 ・(火曜日)17:00~18:15 ・(木曜日)16:30〜17:45 ・(土曜日)①9:00〜10:15/②10:45〜12:00/③12:30~13:45 |
料金 | <月謝>8,500円/月3回(兄弟割引有) <教材費>テキストとしての書籍・アプリ購入費が必要(入会後に案内) <初回手数料>4,000円 <設備維持費>2,800円(年1回) |
▼各教室の開催日や料金はこちらから!(将棋の森公式サイト)
https://www.shoginomori.com/lesson/
▼森の道場の開催日はこちらから!(将棋の森公式サイト)
https://www.shoginomori.com/dojo/
「将棋の森」に寄せられる声
ここでは、「将棋の森」に子どもを通わせている保護者などの声を集めました。
「将棋の森」の基本情報
教室名 | 将棋の森 |
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住所 | 東京都武蔵野市吉祥寺本町1-31-11KSビル703号室 |
問い合わせ先 | https://www.shoginomori.com/mail/ |
公式URL | https://www.shoginomori.com/ |
※最新の情報はホームページ等でご確認をお願いいたします。