特色ある教育方針を持つ保育園・学校を特集するこの企画。今回は、東京都江戸川区にある「区内初のモンテッソーリ教育(※)を行う認可保育園」である、ゆずりは保育園にインタビューを実施しました。
(※)子どもは自らを成長・発達させる力を持っており、大人はその自主性を手助けするという教育法。望ましい環境や教具などの先行事例も多い。
2018年4月に開園した同園は、モンテッソーリ教育をベースとしたさまざまな体験ができることが特徴です。さまざまな教具を使った学びやリトミック、英語、バレエ、さらには畑で野菜を収穫して食べるという食育の取り組みも実施しています。
▲インタビューに対応いただいた園長の山下先生
ゆずりは保育園が大事にしている理念や園内の施設、保護者の方々の声などについて、園長の山下美緒先生にインタビューさせていただきました。
この記事の目次
モンテッソーリ教育をベースとしたゆずりは保育園の保育方針
▲ゆずりは保育園が大事にしている「心」。自分で選ぶ、考えるという部分はモンテッソーリ教育とも重なる
ゆずりは保育園は、子どもたちの自主性を尊重することをベースとした保育方針を掲げています。同園が大事にしている考え方や運営体制などについて、まずお話を伺いました。
できることはどんどん自分でやる環境。年齢が違っても仲良く交流!
ゆずりは保育園の保育のベースにあるものは何でしょうか?
当園の保育の土台となっているのは「モンテッソーリ教育」です。リトミックなどの一部のプログラムだけでなく、日常生活のあらゆる場面にその考え方が取り入れられていて、子どもが自身の力を発揮するための環境を整えることを第一に心がけています。
モンテッソーリは素晴らしい教育法ですし、メソッドが確立しているので、近年は多くの園で導入されています。その中で私たちは、地域の子どもたちが通いやすい「認可保育園」として実践できているのが、誇れるところだと感じていますね。
▲異なる年齢の子が同じクラスで活動する。年齢は帽子の色でわかるようになっている
モンテッソーリのスタイルだと、お子さん個人のペースにあわせて活動内容が決まっていくと思うのですが、クラス内での交流などはあるのでしょうか。
もちろんです。ゆずりは保育園では「たて割り」、つまり異年齢の子が一緒になることを推奨しています。
からだの成長によって活動や教具なども異なるので、0歳児、1・2歳児、3〜5歳児というクラス分けはありますが、2歳児でも成長とともに年度途中に3〜5歳児に移行するようなことも普通にあります。生まれた月に左右されない、その子に最適な環境で過ごしてもらうことを目指しているんです。
2歳半と5歳が一緒にいると、やっぱり年上の子は小さい子が可愛くて仕方ないみたいですね(笑)。兄弟や姉妹みたいにいろいろとお世話もしてくれるし、小さいほうの子もお兄さん・お姉さんが大好きです。そんな良い関係性ができています。
園内では自分でできることは自分でやるという方針なので、「お茶をこぼした」「次の予定がわからない」なんてトラブルが発生することもあります。そんなとき、大きい子が「この雑巾で拭くんだよ」「予定表を見てごらん」なんて教えてあげる光景もよく見ますね。
モンテッソーリ教師国際資格の取得も。前向きかつ勉強熱心な保育士が揃う
モンテッソーリ教育では、先生が子どもに寄り添ってサポートするため、保育士の皆様も大変なのではないでしょうか。
確かにそういった側面はあります。ただ、ゆずりは保育園では全体の定員が77名(※)なのに対して、職員は約30名在籍しているので、しっかりと一人ひとりに向き合うことができていますね。
(※)その年の状況や要請により変動する可能性あり
さらに、人数だけではなく個人の人間性の部分もぜひお伝えしたいです。「モンテッソーリ教育をしっかり学んで子どもたちに接していきたい」という向上心のある保育者が開園時から複数在籍していて、信頼できる資格(AMIモンテッソーリ教師国際資格)を取得している先生もいるので、みんなポジティブな影響を受けています。
そんな先生たちの頑張りもあって、当園はモンテッソーリ教育の実習園となっているため、多くの施設からモンテッソーリ資格を取るための実習生が学びに来ています。教えることもあれば新しい情報を教えてもらえることもあって、切磋琢磨しながら子どもたちにとって良い環境を日々つくっているんです。
子どもたちから見て、先生方はどんな存在なのでしょうか。
頼れる存在であるとともに、すごく親しみを持ってくれていると感じています。当園では、お子さんが先生のことを「えんちょうさん」「あゆみさん」などと、さん付けで呼んでいるんです。法人全体の方針でもあるのですが、「先生」という呼び方じゃないのが関係性を良く表していると思います。
あとは、「楽しい取り組みをどんどんしてくれる」と感じてくれていると思いますね。たとえばイタリアにモンテッソーリの研修旅行に行った先生がプロジェクターを使ってイタリアについてを紹介したり、編み物が得意な栄養士が子どもたちに「かぎ針」を教えたりと、自分の体験や強みを活かしていろいろとやってくれています。
子どもはすごく感受性が豊かなので、そういった出来事ひとつひとつに反応して「僕も同じことをやってみたい!」というふうに成長するきっかけをつかんでいきます。それで先生たちもますます熱が入るという循環ができているんです。
ゆずりは保育園の施設とエピソード
ここからは、実際に園内を紹介してもらいながら、ゆずりは保育園の特徴を深堀りしていきます!
豊富な教具に触れて、見て、話すことでどんどん成長する
取り組みたい活動(おしごと)を自分で選ぶのがモンテッソーリ教育の特徴ですが、この子どもたちは数字について学んでいますね。
そうですね。こういったブロック型だったり、ビーズを使ったものだったり、いろんな教具がある中から興味を持ったものに取り組んでいます。
計算式などの細かいルールは小学校で学ぶことも多いですが、この段階でも「ホールケーキを分けるにはどうする?」「1,000円出したときのお釣りはいくら?」など、数字が絡んだことはすごく知りたいものなんです。それを体感できるようにしています。
いまこういった概念を学んでおくことで、将来的に四則演算や平方根、さらには因数分解を教わったときにも理解しやすくなると思いますね。
取り揃えている教具に関しては、こだわりなどはあるのでしょうか。
子どもたちは自分でどんどんと手に触れて、目で見て、声に出して吸収していくので、成長段階に応じたものを置くようにはしていますね。
たとえば、1〜2歳の子たちはまだファンタジーと現実を混同してしまうので、このクラスではアニメキャラクターなどではなく現実世界に即したイラストが載っている本を揃えています。壁に貼っている世界地図にしても、デフォルメしたものではなくリアルなものです。
食べるだけでなく調理や野菜の収穫も体験できる「食育」の取り組み
▲昼食中の子どもたち
ゆずりは保育園では、食の大切さを学ぶ機会も豊富だと伺っています。具体的にはどのような取り組みをされていますか?
当園には自前の調理室があるので、栄養バランスはもちろんのこと、地元の食材を仕入れて素材本来の味や食感を体感してもらうよう心がけていたり、彩りにも気をつかったりと、毎日のお昼ごはんやおやつが五感を育む場となるようにしています。
また、食べるだけではなく自分たちでつくるという体験も重要です。今日は下ごしらえとして人参の型抜きをするほか、沖縄の伝統菓子「ちんすこう」をつくるみたいですね。
▲季節や行事に応じたメニューが並ぶ。食べるだけではなく、自分でつくる体験も重視しているのも特徴
成長段階にもよると思いますが、料理のお手伝いもできるんですね!
はい。2歳児クラスはパンをこねて好きな形にするなど楽しみながら取り組み、お兄さん・お姉さんたちだと数字も理解しているので、はかりを使って「100グラムだけこっちに入れてね」ということもできます。
あとは、ランチョンマットを敷く、食器を運ぶという準備も自分たちでおこなうんです。見ていてすごく可愛らしいですし、「自分で食器を運ぶようになりました!」という喜びの声が親御さんから届くこともありますね。
▲ゆずりは保育園では、種まきや苗の植え付けも子どもたちが行う
こちらのスペースは何でしょうか?
これは畑ですね。たとえばさつまいもなら、子どもたちが自分で苗を植えて、お水も毎日あげてお世話をして、秋になったら掘り出して収穫して食べるという一連の流れを体験できます。単純に楽しいだけでなく、食育としても重要なことだと考えています。
植木鉢などでなく、畑が敷地内にある保育園というのは魅力的ですね。食べ物が口に入るまでの流れをすべて実体験で学べるのはすごく貴重だと感じました。
▲さつまいものツルが茂った畑で収穫体験をする子どもたち
園庭だけでなく、公園や川の土手も子どもたちのフィールド
▲ゆずりは保育園の園庭
実際に取材に伺って感じたのですが、ゆずりは保育園の周辺環境はすばらしいですね!子どもたちも安心して元気いっぱいに走り回れそうです。
ありがとうございます。外での活動では園庭を使うのはもちろん、正面に公園があるのでそちらも利用しています。あと、近くには新中川という大きな川もあって、その土手を散歩して途中の木々や花を観察しながら、また別の公園に行ったりもできるんです。
当園は最寄りの駅からは少し離れているのですが、その分スペースが確保できていますね。都内に位置しながら、これだけ広々とした環境があるのは、保護者の方にも好評です。
▲園の目の前にある大杉三丁目公園。子どもたちが楽しそうに走り回っている
お子さんにとって、からだを動かすのは非常に大事ですよね。
本当にそうですね。子どもの発達過程においては、先ほど園内でビーズを動かしていたような、手指を使った細かい動き「微細運動」と、からだ全体を使って走ったりバランスを取ったりする「粗大運動」の両方が欠かせません。
当園には、粗大運動をするのに十分なスペースがあります。あとは、園の前の公園で「親子スポーツデー」を開催するなど、イベントも定期的に実施しています。
ゆずりは保育園に通う保護者からの声
保護者の方々からは、ゆずりは保育園に対してどのような声が届いていますか?
お子さんの入園前は、モンテッソーリ教育についてあまり把握していない保護者の方もいらっしゃいますが、普段の会話や行事の後のアンケートなどの反応を見ると、ありがたいことに保育方針について好意的な感想を多くいただいています。
先日、発表会で子どもたちが劇をやったんです。そのとき、少しシャイな年長さんの子が立派に演じていて、お母さんも「製作から自主的に行ってきたからこそ、練習も本番も楽しく自信を持って本番も出来たのかなと思います。家でも楽しそうにたくさん練習したり、自分の役ではなくてもセリフや歌を歌っていました。自主性が尊重された、モンテッソーリ教育の集大成なのだと感じました。」とおっしゃってくれました。
あと、世界情勢というと大げさですが、平和な世の中にしていきたいという話の流れで戦争やその背景について話したことがありました。そのときも、事実を基にわかりやすく伝えれば、子どもたちは自分なりに理解していくんですよね。親御さんからも「保育園でいろんな話が聞けてありがたいです」と嬉しいお言葉をいただきました。
ゆずりは保育園から保護者へのメッセージ
最後に、ゆずりは保育園からぽてん読者の皆様に向けて、メッセージをお願いいたします!
当園のベースとなっているモンテッソーリ教育は、いわゆる知育だけではなく「子どもの生きる力」を育むものです。
日本では自己肯定感が低いお子さんが増えていると言われていますが、子どもが自分で選ぶのを見守るという姿勢で寄り添ってあげることで、自主性が育ち、自信を持って前に進めるようになるのではないかと思います。
お父さんお母さんたちがご家庭で意識していただくのはもちろんのこと、ゆずりは保育園でも同じ方針で保育をしていますので、気になった方はいつでも見学に来ていただければ嬉しいです。
実際に来てもらえると、先生や子どもたちの表情、また環境の良さも伝わりますものね。
そうですね。モンテッソーリというと、子どもが机の前で好きな勉強をしているという印象を持っている方もいらっしゃると思いますが、実際に見てもらうと屋外の活動も含めて積極的にいろんなことに取り組んでいるのがわかると思います。
0〜2歳のお子さんは、ゆずりは保育園だけでなく瑞江にある「分園みずえ」への入園も可能ですので、あわせてご検討いただきたいです。
本日はいろんなお話をお聞かせいただき、モンテッソーリ教育を体現する園内の取り組みや、食育に関する多様な体験ができることなど、ゆずりは保育園の魅力がよくわかりました。本当にありがとうございました!
ゆずりは保育園の基本情報
お問い合わせ | 社会福祉法人さがみ愛育会 ゆずりは保育園 |
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区分 | 認可保育園 |
開所時間 | 7:00〜20:00(延長保育 18:01〜20:00) |
住所 | 東京都江戸川区大杉3-23-17 |
電話番号 | 03-6231-5400 |
公式サイト |
http://www.aiikukai.or.jp/yuzuriha/index.html ▼2024年3月現在、新しいHPに移行中 |
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