本記事では、お子様向けの習い事として「日本舞踊 寿柳流(としやぎりゅう)」の教室を紹介します。
東京都中央区にお稽古場を構える寿柳流は平成30年5月に創流した流派です。日本舞踊や伝統文化の継承・発展を目的として、子どもへの指導にも当たっています。
子どもたちには、日本舞踊の動きや流れる音楽の背景にある意味をわかりやすく教え、体を動かすだけでなく、心を込めて踊ることの大切さを伝えています。
今回は「日本舞踊 寿柳流」の家元である寿柳貴彦(としやぎたかひこ)さんに、教室の特徴や魅力について詳しくお話を伺いました。
この記事の目次
踊りを通して日本文化や礼儀作法を学ぶ「日本舞踊 寿柳流」
まずは寿柳流の日本舞踊教室について、どのようなコンセプトで指導をされているのかをお聞かせください。
踊りを覚えるという短期的な面よりも、日本舞踊を通じて日本の文化や伝統、日本独自のお作法や所作、礼儀といった一生役立つような長期的な面を大切にしています。
流儀の理念としても、日本舞踊を通じて生活や心を豊かにすることを目標に掲げているんです。また、「4つの心得」というものもあり、この目標と心得を意識したお稽古を実践するようにしています。
■寿柳流「4つの心得」
- 日本舞踊を通じて、体と精神を鍛えて心豊かにする
- 自分を深く内観して他者を心から敬い、和を持って貴しとする
- 結果ではなく経緯を大事に、高い志を持って精進しましょう
- 日本舞踊をもって社会に貢献していきましょう
子どもの豊かな心を育む「日本舞踊 寿柳流」のお稽古
▲「日本舞踊 寿柳流」では生徒だけでなく先生も感謝の気持ちを込めたご挨拶をする
ここからは寿柳流のお稽古について詳しく教えてください。
お稽古は、基本的にはマンツーマンで行います。生徒さんは、下は4歳から上は70代の方までいらっしゃいますので、それぞれに合ったお稽古をさせていただいております。
小さい子に本格的な舞踊はまだ難しいので、正座をしてお辞儀をする方法や襖の開閉方法など、まずは礼儀作法について教えています。
踊りだけでなくお行儀も学べるのは保護者にとってありがたいですね。
小さいお子さんは、お稽古を重ねるごとに落ち着きが出てきます。自分がちゃんとしなければいけないときと、そうでないときのメリハリがしっかりつくようになりますよ。
心と体の同調性を大切に:日本舞踊は情操教育の要素あり
▲「日本舞踊 寿柳流」では一つひとつの動作の意味をじっくり丁寧に教わることができる
寿柳流のお稽古で大切にしているのはどんなことでしょうか?
生徒さんには所作や踊り、歌の意味について、できるだけ説明するようにしています。
私自身、周りから「日本舞踊って、何を表現しているのかわからない」とよく言われていたんです。「踊りで何を表現しているのか」「流れている歌も何を歌っているのかがわからない」と。だからこそ、「この振りはこういう心情を表しているんだよ」「この歌詞はこういう意味なんだよ」と伝えているんです。
振りや歌の背景を知ることで、踊りの質も変わってくるのでしょうか?
自分が何を表現をしているのかわからずに踊っていると、単なる運動になってしまいます。しかし、自分が何を伝えたいのか、観客にどう感じてもらいたいのかを考えて踊れば、表現そのものも変わってきます。
たとえば指を指す振りでも、花を指しているのか虫を指しているのか、あるいはお月さまを指しているのか、それをちゃんと意識すると、自然とそういう体の動きになるので、観客にも伝わりやすくなります。ただ体を動かすのではなく、心が動くから体が動くし、体が動くから心が動くという、心と体の同調性を大切にすることを教えています。
小さなお子さんでも、踊りの背景を知ることで日本舞踊への興味や関心、向き合い方は変わってくるものですか?
あくまでも私見なのですが、大人よりも子どもの方が敏感に何かを感じ取っているように思います。
お稽古では先生と生徒が一緒に踊るのですが、お子さんは先生の踊りを見て、自分なりに何かを感じ取って体を動かしているように思います。寿柳流で学べる日本舞踊は、全身を使って表現をする情操教育のような要素を持っていると感じます。
中学生の女の子が「自分の感情や情景を自分の体で表現できることが楽しい」と言ってくれたこともありました。
寿柳流の特長:体に負担がかからない“日本人の体格にあった動き”が身に付く
寿柳流は創流して10年未満の新しい流派だと思いますが、寿柳流ならではという点があれば教えてください。
寿柳流ではお稽古で体を壊さないように、正しい体の動かし方を教えています。これにより、体を効率よく使う方法が身につけられます。
日本舞踊はスクワット運動のように、かがんだり伸びたりの行動がものすごく多い踊りです。そのため、私自身も一度膝を壊してしまったんです。それ以降、体の使い方を見直し、正しい体の動かし方を意識するようになりました。
子どものケガが心配な親御さんも安心ですね!ちなみに、体を効率よく使う方法とは、具体的にどんなことなのでしょうか?
「体を動かす=筋肉を使う」というイメージの方がほとんどだと思います。しかし、日本人の体格を考えたり、古武道の歴史を紐解いていったりすると、基本的に日本人は、筋肉で体を動かすのではなく、重心操作や骨格操作で体を動かす民族であることがよくわかります。たとえば手足を動かすときには、腰や背骨を動かすことで手足も自然に動く、というような感じです。
つまり、体の中心部から末端を動かしていく感覚を覚えることによって、効率よく体が動かせるんです。そうすると、着物も乱れなくなるし、袂(たもと)も暴れなくなるんですよ。また、日常生活でも体に負担がかからなくなりますし、運動能力も高まるのではないかと思います。
子どもも楽しくお稽古できる工夫:ゲーム要素を取り入れるケースも
▲「日本舞踊 寿柳流」では体に負担の少ない踊り方が学べる
未就学児などの小さな子どもでも日本舞踊のお稽古は可能でしょうか?
小さいお子さんの場合は、長い時間のお稽古は難しいので1回30分にしています。それでも、気分が乗らない、集中力が途切れてしまう場合があるので、そのような場合は子どもが楽しめる要素をお稽古に取り入れています。
子どもが楽しめるお稽古とは、具体的にどのようなものでしょうか。
私の弟子に幼稚園の教員免許を持っている女性がいるのですが、彼女が上手にお子さんの気を引きつけてくれます。たとえば踊りの振りをやりたがらないときは、「フクロウさんみたいに首を動かしてみよう」「肩だけ動かしてみよう」と、日本舞踊に必要な動きをゲーム感覚で教えています。
また、古典的な三味線音楽で踊るのが難しいと感じるときは、幼稚園や保育園で習う童謡に振りをつけて練習することもありますよ。私の教室ではカリキュラムは作っておらず、お子さん一人ひとりの状況に合わせたお稽古をしているので、そのような対応もできるんです。
遊びの中で楽しくお稽古ができるのですね。そのほか、子どもたちのモチベーションアップのために工夫されていることはありますか?
保護者の方も交えて、そのお子さんに合ったご褒美を一緒に考えたりします。 例えば一人の子には手作りのシール帳を作って、お稽古に来るたびにそこにシールを貼れるようにしています。車など好きなシールが貼れることが、お子さんがお稽古に通うモチベーションに繋がっているのではないでしょうか。
子どもの成長を促す工夫:大人のお稽古の見学は自由
▲「日本舞踊 寿柳流」・家元の寿柳貴彦さんの無駄のない流麗な動きから学べることも多い
編集部
そのほか、寿柳流ならではの取り組みがあれば教えてください。
子どもたちは、時間通りに来てお稽古をして時間通りに帰ってもらうのではなく、「時間があるのなら、お稽古場にいつまでいても構わない」と伝えています。そうしてほかの人がお稽古しているのを見学したり、着物を着て過ごす時間を積み重ねたりすることで、日本人らしい体の動きや所作、心や精神を鍛えてほしい、と思っているんです。
お子さんが大人の生徒さんのお稽古を見学することもあるということですか?
そうです。大人の方のお稽古を見て、「将来あんな風に踊るんだな」と思ったり、日本古来の音楽に耳を慣らしてもらったりしていただきます。また、ふすまを開けるときや閉めるときには座るといった礼儀作法、目上の人と接するときの心づかいの方法なども、大人を見て学んでいただければいいなと思っています。
2年に1回の発表会:浅草公会堂等で本格的な舞台を実施
寿柳流では、発表会のような練習の成果を発表する場は設けられているのでしょうか?
2年に1回ほど、「寿(ことぶき)会」という発表会を開催しています。寿会ではきちんとした着物の衣装を着てかつらをかぶり、顔師さんと呼ばれるお化粧を担当するプロの方にお顔を作っていただきます。演奏家の方も雇い、舞台装置もきちんとしたものを使用しています。
以前は東京都千代田区にある国立劇場でやっておりましたが、建て替えで使えなくなってしまいました。今後は、台東区の浅草にある浅草公会堂か、中央区の日本橋公会堂での開催を検討しています。
どちらも名の知れた大きな劇場ですね。ところで、寿会では生徒さんにチケットノルマはありますか?
チケットノルマはありませんので、ご安心ください。
ちなみに、私がリサイタルをしたり、何か発表会をするときには、一応「もしお時間あれば来てくださいね」とお伝えしますが、そちらもチケットノルマは課していません。来たいなと思っていただいた方に、お友達等を誘って来ていただければ嬉しいですね。
▲発表会で花笠を持って踊る生徒
「日本舞踊 寿柳流」の入門方法と料金
寿柳流に入門したい人、または興味がある人はどうすればよいのでしょうか?
まずは見学してお稽古の雰囲気を見ていただいてから、入会するかどうかを決めていただけたらと思います。また、体験教室も随時実施しております。
入門する際には、着物一式をそろえた方がよいのですか?
季節によって着物をそろえていただくのは金銭的に負担になりますので、特にご準備いただく必要はありません。ただ、和室の空間で和装をしていただくことで、お稽古へのモチベーションが上がると思うので、浴衣だけ揃えていただければと思います。
浴衣も特に指定はありません。あとは足袋ですね。お扇子は最初はこちらで準備いたします。続けていくうちに、着物やお扇子が欲しい、と思われたなら徐々に揃えていただければ大丈夫です。
稽古の仕組み:料金は月額11,000円。振替には柔軟に対応
料金については、どのような仕組みになっているのでしょうか?
お月謝は、お稽古代が月3回で9,000円と、施設費として2,000円をいただいております。お仕事をされている方も多いので、予定時間の変更やお休みにも出来る限り対応させていただいており、無理なく続けていただけるよう心がけております。
フレキシブルに対応していただけるのは、親御さんにとってもありがたいですね。ちなみに、お中元やお歳暮といった季節のご挨拶などは必要なのでしょうか?
基本的にこちらから強制するものではないと思っております。季節のご挨拶にかかわらず、感謝の気持ちの表し方に決まりはなく、それぞれのご判断に任せておりますので、あまり心配されなくて大丈夫です。
▼料金とお稽古日
入門料 | 10,000円 |
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月謝 | レッスン料 9,000円/月3回 施設維持費 2,000円 |
お稽古日時 | 木・土・日 12:00〜20:00 |
※料金は税込み
「日本舞踊 寿柳流」から読者へのメッセージ
最後に、この記事を読んで寿柳流に興味を持たれた読者の方に、メッセージをいただけますか?
寿柳流は、日本舞踊を通じて、日本人として知っておいていただきたい文化を学んでいただいたり、日本人としてのアイデンティティを見出したりしていただける場でありたいと思っています。ぜひお子さんにも日本の伝統文化に親しみを持っていただきたいと思っていますし、お父様やお母様も、お子さんのお稽古を通じて、日本の伝統芸能の素晴らしさを伝えていけたらいいなと思います。
日本舞踊と聞くと敷居が高く堅苦しいと思われがちですが、私自身は、日本舞踊に敷居の高い低いはないと思っています。ぜひ、気軽に「どんなことをやっているのかな?」と見学に来ていただけたら嬉しいです。
「日本舞踊 寿柳流」は、踊りだけでなく、日本舞踊を通して日本ならではの美しい文化や伝統を学べる場なんだなということがわかりました。お稽古を通して子どもたちは、日本の素晴らしさを身をもって体感し、豊かな感性が育めるのではないでしょうか。
寿柳さん、今日は貴重なお話をありがとうございました!
「日本舞踊 寿柳流」の基本情報
住所 | 東京都中央区日本橋小舟町9-12 wakabaビル4階 |
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電話番号 | 03‐6264‐9729 |
問い合わせ先 | ■電話 03‐6264‐9729 ■お問い合わせフォーム https://toshiyagiryu.jp/inquiry |
公式ページ | https://toshiyagiryu.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください