独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、福島県郡山市にある「郡山ザベリオ学園小学校」を紹介します。
郡山ザベリオ学園は、カナダに本部を置く無原罪聖母宣教女会によって設置されました。カトリックの教えに基づく教育活動を行っている同校は、2023年には創立90周年を迎えた伝統あるミッション学校です。同一敷地内に幼稚園・小学校・中学校が併設されており、異学年交流を通じて多様な学びを深めています。
今回は、そんな郡山ザベリオ学園小学校の教育理念や特徴的な取り組みについて、髙橋正人校長、高橋裕之教頭、広報・ICT担当の青山典義先生にお話を伺いました。
この記事の目次
一人ひとりを大切に思う、郡山ザベリオ学園小学校の教育活動
まずは、郡山ザベリオ学園小学校の建学の精神や教育目標等についてお聞かせください。
本学園は、カナダのモントリオール市に本部を置く無原罪聖母宣教女会のシスターが来日して設立された学校です。はじめに幼稚園ができ、教育活動がスタートしました。
建学の精神は、無原罪聖母宣教女会の創立者であるデリア・テトロの想い「一人ひとりの子どもたちがかけがえのない存在として、神様に愛されていることを、教育を通して世界中の子どもたちに知らせたい」です。
教育理念は、自分の才能を十分に生かす教育によって、この世界への関心を広げ、自然・文化・歴史のうちに潜む業に感動し、一人ひとりが生かされている現実に感謝できる人材を育成することです。また、創立以来「清く、明るく、強く」を校訓に掲げております。
▲校内のマリア像
そうした理念や目標を、どのように児童のみなさんに伝えていますか?
本校では、月ごとに月の「めあて」という形で目標を設定しているので、そこで伝えています。また、聖書の中から選ばれた言葉を引用して生活の柱とする、月の「聖句」というものがあり、その中でも校訓を交えながら、1ヶ月の取り組みを振り返ります。
郡山ザベリオ学園小学校の独自の探究学習
▲探究的な取り組みの一環として、食事の大切さについて学ぶ児童たち
ここからは、郡山ザベリオ学園小学校の探究学習への取り組みについて伺いました。
農家と学校で人参の味を比較!自主的な学びの姿勢を大切に!
御校の探究学習への取り組みについてお聞かせください。
本校の探究学習は、学年ごとではなく、他の学年と一緒に取り組むことによって、相乗効果を生み出しているというのが、ここ2年ぐらいの特徴になります。大人になったときに、どういった力が身につくのかを意識しながら指導しています。
私は現在5年生の担当で、2024年度は2年生と5年生が一緒に取り組んでいます。農家さんと本校で同じ種類の人参を育て、どちらが美味しくできるかを研究しているんです。
プロの方に教わることもあるのですが、どうすれば美味しくなるのかを自分たちでも考えます。そもそも美味しいとは何か、土はどうするか、虫による被害を防ぐにはどうするかなど、さまざまな課題に対し、子どもたち自身でアイデアを出していますね。
2023年度は、SDGsに関わる探究活動として、17のテーマに基づき、それに関わる郡山市の企業と連携をしました。約17社と協力し、それぞれのテーマに沿った学びを共に作り上げていきました。その結果、郡山市が主催するSDGsアワードで受賞することができました。
探究学習のための探究ではなく、子どもたちがやりたい探究を模索しているのが本校の探究であり、自走する授業を目指す中学校に繋ぐ役割もあります。このように小中連携で学びを深めていけることは、本校の強みの一つだと考えています。
人参の比較というのはすごく面白いですが、子どもたちの取り組みの様子はいかがでしょうか?
初めは受け身だった子どもたちもいましたが、自分たちで1から野菜を作り、自分たちで準備しなければいけない状況を説明することによって、当事者意識が生まれてきました。
人参にはどの土がいいのか、どのような水やりのタイミングがいいのかなど、自分たちでテーマを決めて調べたことは大きな学びになったと思います。
相乗効果を生み出す異学年での取り組み。幼小中での連携も
2年生と5年生が一緒に取り組んだということですが、異学年交流の良さはどういったところにありますか?
まず、下級生にとっては、上級生のお兄さん、お姉さんと一緒に活動することで、先生たちから離れて子ども同士で学習が進められるメリットがあります。
上級生は、下級生と接することで、伝わるだろうと思っていたことが伝わらない場合があることを知り、人に伝えるためにはどうすればいいのかを考えている様子が見られました。
2023年度は1年生と6年生の異学年で実施しましたが、成果物や振り返りから、いずれも相乗効果が大きいと実感しています。
どのくらいの頻度で一緒に授業をするのでしょうか?
やはり異学年となると授業の調整が難しく、そこは課題ではあります。ただ1か月に1回は実施したいですし、できなかった次の月は2時間連続で行うなど、調整しながら取り組んでいます。対面で授業ができなかったとしても、資料の共有などで交流できるよう工夫しています。
探究学習に限らず、異学年交流は、幼稚園・小学校・中学校が同じ敷地内にあるという特性を活かした本校の特徴の1つです。
幼稚園の小さい子どもたちに、どう説明すればわかってもらえるか、喜んでもらえるかを、相手の視点に立って考えながら、膝をついて話をする姿はとても微笑ましいものです。そのほか中学校との交流もあり、同じ敷地内にあるメリットを生かしながら大切にしている活動です。
保護者に学習の結果を発表。食育の結果、苦手なものを克服できたという声も
最終的に、この探究学習の成果を発表する機会はありますか?
自分たちがインプットしてきたものを、アウトプットする機会を設けています。2023年度は、バザーで1つのブースを使い、1年生と6年生が保護者の方向けに食育について発表しました。2022年度は5年生の探究学習について、校内および企業向けにオンラインとオフラインのハイブリッドで発表会をしました。
2024年度の探究学習は、最終的には作った人参を、シェフの方に料理してもらう予定です。発表としては、レジュメのような形で美味しい人参作りをまとめ、並行して保護者向けに動画での発表を考えています。今後は映像を活用しながら、発表の場を作っていく予定です。
2023年度も2024年度も、食育的な要素があるかと思いますが、子どもたちの反応はいかがでしょうか?
今までトマト嫌いだった子が、みんなと一緒に笑顔で食べると美味しく感じると言って食べるようになりました。2023年度は複数の親御さんから「授業のおかげで、いつの間にかトマトを食べられるようになった」「自分で1から野菜を育てています。」という連絡をいただき、価値ある探究学習だったと思っています。
やはり子どもたちは、一緒にいる人たちの感性を共有したいという思いが強いので、食わず嫌いだった子も、友だちが美味しいと言っているから食べてみようなどと、チャレンジできたようです。食べ物の力はすごいと思いましたし、学校ならではの学びの力を感じました。
思いやりの心を育てる郡山ザベリオ学園小学校の活動
▲愛のプレゼント運動を実施する児童たち
郡山ザベリオ学園小学校の豊かな人間性を育てる取り組みについてお聞かせください。
カトリック精神を基本としている本校ですが、その中でも核となっているのは「愛の精神」です。自分ではなく相手を中心にして物事を考える、相手を思いやる心を育てることを目標に教育活動を行っています。
例えば、毎月15日・16日の2日間に「愛のプレゼント運動」を行っています。これは本校児童会の宗教委員会が中心になっている活動です。
郡山市内で食べ物に困っている方がいるとカトリック教会からお話がありましたので、協力しましょうということで、各家庭で不要になったものを集め、それをフードバンクに寄付しています。
このほか、資源回収も定期的に行っています。これにより郡山市からいただけるリサイクル活動への報奨金を積み立てて、地震で被害があった地域への義援金やウクライナなど国内外の困っている方に寄付しています。
本校は、毎日祈りで始まり祈りで終わる学校です。神様に対して、あるいは世界で困っている人たちのことを考えながら祈ります。そうした学校生活での習慣を通じて、自然と子どもたちの心の中に愛の精神の種まきができていると思っています。
修学旅行で訪れた大聖堂で、普段の学びが世界に繋がっていることを知る
▲6年生の修学旅行
その他に、特徴的なプログラムはあるでしょうか?
本校独自のプログラムとして、6年生の修学旅行で東京カテドラル聖マリア大聖堂へ行くことがあります。その壮大さや本校の聖堂との違いに驚いていますね。
子どもたちは、どんな点に驚きを感じたのでしょうか?
学校ではふだん教室でお祈りをし、宗教の授業は聖堂で行っていますが、やはり規模感が違います。東京カテドラル聖マリア大聖堂は800人も収容できる大聖堂であり、著名な建築家・丹下健三さん設計の建物として世界的なステータスがあります。
カトリックの教えは、本校の中だけのものではなく、世界中の人たちが大切にしているということを感じる機会になっていると思っています。
また、本校では1学期に1回、中学校との交流で小中合同清掃を行っています。このとき、中学生の優しい教え方に触れ、終わったときに「あんな中学生になりたい」という発言が多く聞こえてきます。こうした小中の連携は、本校ならではの強みかと思います。
郡山ザベリオ学園小学校からのメッセージ
▲取材に対応いただいた髙橋正人校長(左)、高橋裕之教頭(中)、青山先生(右)
最後に、郡山ザベリオ学園小学校から読者の方や保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
本校は、卒業生が安心して戻れる場所です。私立学校なので教員の異動があまりなく、私はもう30年以上、本校に勤めています。今では保護者の中にも卒業生が増え、「ザベリオファミリー」と呼ばれているのですが、ますます絆が広がっています。
本校は探究学習やICT教育など積極的に教育に取り入れている学校ですが、それらはあくまでもツールであって、「子どもたち自身が学んでいくこと」が本質だと考えています。
今が充実していることはもちろん大切ですが、本校では、子どもたちの10年後、20年後のビジョンを持ちながら指導しています。それこそが本校の強みだと思っています。
本学園は、2023年に90周年を迎え、今は100周年に向けて、より深い学びの実現に努めています。常に時代に沿った教育活動を実践しており、例えばICTを積極的に活用し、授業支援システム「ロイロノート・スクール」を効果的に運用している学校として、東北の小学校では初めてロイロ認定校に認定されています。
また、教員自身も自己研鑽に励み、それぞれの強みをさらに伸ばしています。そして、地域があっての学校だということを忘れずに、地域に根ざした活動を行っております。
少しでも本校に興味をもっていただけたのであれば、ぜひ一度足を運び、学校の雰囲気を感じてみてください。学校全体で皆さんをお待ちしています。
本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
郡山ザベリオ学園小学校の進学実績
▲学習センター(図書室)
郡山ザベリオ学園小学校を卒業した児童のほとんどは、同じ敷地内に併設する系列校の郡山ザベリオ中学校へ進学します。
外部受験も可能で、ここ数年は首都圏の中学校へ進学する児童もいます。女子学院、洗足学園、公文国際学園、函館ラサール、フェリス女学院、開智中学校などに進学実績があります。
■進学実績(郡山ザベリオ学園小学校公式サイト)
https://www.xaverio.ed.jp/elm/faq/
郡山ザベリオ学園小学校の保護者の口コミ
郡山ザベリオ学園小学校の保護者の声を紹介します。
幼小中と一貫して、学年の垣根を超えた活動もあり、人と人との結びつきや接し方などを自然に学べているとともに、他者への思いやりの心が育まれていると感じております。(Kさん)
郡山ザベリオ学園小学校へのお問い合わせ
運営 | 郡山ザベリオ学園小学校 |
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住所 | 福島県郡山市大槻町字古屋敷102番地 |
電話番号 | 024-952-7756 |
問い合わせ先 | https://www.xaverio.ed.jp/elm/contact/ |
公式ページ | https://www.xaverio.ed.jp/elm/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください