独自性のある教育プログラムを提供し注目を集める学校を特集するこの企画。今回は、2022年4月に大阪国際滝井高等学校と大阪国際大和田中学校高等学校の発展的な統合により新たに生まれた「大阪国際中学校高等学校」を紹介します。
大阪国際中学校高等学校は大阪府守口市にある中高一貫の共学校。新校に伴い開設された「国際バカロレアコース」をはじめ、独自の教育プログラムを多く推進しています。またパナソニック工場の跡地を用いた新たな校舎は“学校全体が図書館”となっているなど、生徒の知的好奇心を刺激する工夫が詰まっています。
今回のインタビューでは、開校に伴い新たに設置された総合企画室の岸さん、石堂さんのお二人に大阪国際中学校高等学校の教育理念や教育プログラム、そして新しい校舎の魅力についてお話を伺っていきます。
新たに誕生した大阪国際中学校高等学校の教育方針とは?
大阪国際滝井高等学校と大阪国際大和田中学校高等学校の統合により誕生した大阪国際中学校高等学校。大阪国際滝井高等学校の前身となる帝国高等女学校は1929年(昭和4年)に創設された、90年を超える歴史を持つ伝統校です。
そんな長い歴史を受け継ぎつつ、社会への接続、民間企業的な視点も取り入れた従来の学校の枠組みにとらわれないユニークな取り組みが多数実施されています。
国際バカロレアの精神に則った「10の目指す生徒像」を標榜
▲インタビューにご対応いただいた大阪国際中学校高等学校総合企画室の岸さん
大阪国際中学校高等学校ではどのような教育理念を掲げていらっしゃるのでしょうか。
本校の教育のベースにあるのは、運営法人である大阪国際学園グループ共通の建学の精神「全人教育」です。「全人教育」とは人間を人間らしく育む教育のこと。その建学の精神を新校に引き継ぎつつ、さらに明確化したものが「人間をみがく」という校訓です。また校名に「国際」を冠しているとおり「世界へ、私たちの輝きを。」をプロミスとして生徒一人ひとりの個性と志で世界を輝かせる未来を目指しています。そのための具体的な人物像として掲げているのが「10の目指す生徒像」です。
※「10の目指す生徒像」はこちらから
これは国際バカロレア教育が掲げる学習者像(Learner Profile)を機構の了承を得て、学校全体の目指す生徒像として掲げるものです。本校の教育理念と国際バカロレアの教育理念が共に、目指す方向は同じであるところから、開校当初より明示して、生徒がこの生徒像を達成できるよう「人間をみがく」教育を行っています。
▲エントランスには「人間をみがく」の校訓を掲示
私は3年前まで前職パナソニックで人事採用、人材開発の経験もありますが、社会で活躍する人、企業やビジネスで採用したい人は「まさにこれだ!」と感じ、本校での教育が社会で活躍し、貢献し、そして幸せになっていくことにもつながると思っています。
▲校訓の下には「10の目指す生徒像」のモニュメントがあり、生徒が毎日目にできる
学力と人間力の両方を育む。志を表明する「立志式」も実施
▲インタビューにご対応いただいた大阪国際中学校高等学校総合企画室の石堂さん
石堂さんのお子様は大阪国際中学校高等学校に通われているとのことですが、保護者のお立場から見て感じる御校の特徴はありますか?
うちの息子は新設された本校の1期生として入学し、現在はサッカー部で活動しています。本校は高校から受験で入学する生徒も多いのですが、内部進学生・外部受験生問わず高校に入学してすぐに将来や進路を考える空気感があるな、というのは感じますね。単純に「受験をどうするか」ということだけでなく、将来を見据えて進路先を考えている生徒が多く、友達とそういう話をする機会も多いというのは息子からも聞きます。
目的意識を持って勉強に臨むことができる環境があるんですね。
それももちろんありますが、本校の特徴は学力だけでなく人間性を育むことも大切にしているところにあります。統合前の両校の学びへの取り組みを引き継ぎ、統合して開校された本校でより社会で活躍できる人材を育んでいくために、夢や志の実現にも重点を置いて教育を進めています。
それを象徴するのが、本校の教育活動の中心的な取り組みの1つ「立志式」です。生徒自身が「志」を立てて宣誓するというイベントで、中学2年生、高校2年生を対象に実施しています。
「立志式」では生徒が自らの志「何のために、どうやって自らを磨いて、生きていくか」を論文にまとめて、皆の前で発表して決意表明します。そして高校卒業時に最も志に向けて頑張った学年代表を選び表彰を行います。先ほどお話した校訓や目指すべき生徒像、そして本校で実施しているさまざまな教育プログラムすべてが最終的にそこに行きつくような位置づけの取り組みとなっています。
民間活力を取り入れ、ユニークな取り組みを展開!
岸さんと石堂さんの所属されている「総合企画室」というのはどのような組織なのかを教えてください。
総合企画室は校長直轄の組織で、新校の開校をきっかけに生まれました。学校のブランディングや働き方改革に関する取り組み、募集広報、教員研修、そして国際バカロレアコースなどの本校独自のカリキュラムのサポートを行っています。先生方がその力量を発揮して生徒に相対し、生徒のために素晴らしい学びの環境が提供できるよう、スタッフとして学校運営全体の企画及び実践を行います。民間企業ではこのような企画機能は一般的ですが、学校組織ではユニークな取り組みではと思います。
新しい学校を開設するにあたり、伝統を引き継ぎつつも、世の中の変化、その中で中等教育に求められることを汲んで、これからの新しい取り組みを行う一翼を担うものとして、民間企業にあるような企画機能を学校にも持たせよう、というところから始まったのがこの総合企画室です。
学校のブランディングの取り組みの一例として、京阪電車の車両ドア横のスペースを利用して、本校への来校者から評価をいただいた特長をシリーズでポスター化しています。オープンスクールの告知などを行なっていた従来のポスターのやり方を変え、なかなか外からはうかがえないシーンをビジュアル化して、本校のブランド力向上につなげようという狙いです。「ポスター見ましたよ。いいですね。」という声もいただいています。
※ポスターはこちらからご覧になれます。
「学びの4つの特色」に基づく独自の教育プログラム
大阪国際中学校高等学校では「人間をみがく」「国際感覚をみがく」「創造力・表現力をみがく」「個を支える」という4つの学びの特色を軸に、中高の6年間もしくは3年間を通して独自性のある教育プログラムを実践しています。実際にどのような教育を受けることができるのか、その特徴を伺いました。
「国際バカロレア」を中心に、先進的なグローバル教育を展開
▲アメリカUCLA研修で異文化、多様性など多くを体験
大阪国際中学校高等学校で掲げる学びの4つの特色のうち、「国際感覚をみがく」ための取り組みとして実施されている教育プログラムを教えてください。
最も特徴的なのが、高校に新設された国際バカロレアコースです。国際バカロレア機構が提供する国際的な教育プログラムを実践するコースで、授業はネイティブ教員を中心にオールイングリッシュ(Japanese以外)で実施しています。所定のカリキュラムを2年間履修し、最終試験に合格することで国際バカロレアディプロマ資格を取得できる「ディプロマプログラム」(IBDP)を取り入れており、大阪府では唯一の英語によるIBDP実施一条校(日本の高校卒業資格の取得が可能)となっています。
本校では国際バカロレアコースに限らず海外を経験するさまざまな機会があります。中学校から約10日間のホームステイ体験ができるオーストラリア海外研修や、長期休暇を利用した留学を経験できるニュージーランド短期留学が可能です。
また、語学研修にとどまらず海外だからこその学びを得られるのも特徴です。高校生が対象となりますが、UCLA研修ではカリフォルニア大学でLGBTQなどのマイノリティ、アメリカの文化や歴史の中で発展した多様性を学ぶことができます。ベトナム医療ボランティアに参加し、生徒による白内障手術の補助なども行っています。医療チームの一員として医療行為への立ち合いをすることで、回復した患者様の姿を目の当たりにして、共に手を取り合って喜ぶ体験など、特に医療を志す生徒にとって良い経験となっていますよ。
さらにオーストラリアやニュージーランドの姉妹校との交換留学も行っています。またアジアの学校とも交流があるため、現地校生徒の受け入れやオンラインイベントを通じた国際交流も積極的に行っているのも特徴です。
英語での学びに力を入れたいというお子様は国際バカロレアコースを目指すことになると思いますが、それ以前の中学校での英語教育ではどのようなことを行っているのでしょうか。
中学校3年間は英語の授業数をしっかりと取っており、授業の内容も習熟度に応じて、またオンライン英会話(1対1)や、イマージョン授業(英語で他教科を学ぶ)など、一人ひとりの理解に寄り添った英語教育を行っています。
それに加えて放課後プログラムとして、高校での国際バカロレアコースへの進学を視野にした英語強化クラスLEAPの開催や、生徒それぞれの英語の課題や英会話練習にネイティブの先生たちが交代で親切丁寧に寄り添ってもらえるEnglish Commonsがオープンしています。
▲教員と生徒のコミュニケーションの場「ティーチャーズコーナー」
第一線で活躍する人の熱いメッセージを聞く「ココロの学校」
▲ココロの学校にナジャ・グランディーバさん登場、会場を笑いと感動の渦に
御校が掲げる学びの特色の1つである「人間をみがく」は校訓にもなっている言葉ですが、こちらは具体的にどのようなことを行っているのでしょうか。
特徴的なのが、中高共通で実施している「ココロの学校」です。各界の著名人をお招きして直接メッセージをいただくという取り組みで、これまでに第一線でご活躍のさまざまな方にお越しいただいています。オンラインではなく目の前で話していただくからこそ、生徒たちにとっても熱い思いが伝わる貴重な機会になっています。
私の息子も「ココロの学校」を体験しているのですが、本当にさまざまなジャンルの著名人の方に来ていただいていることでいろいろな世界を学ぶきっかけになっているようです。誰もが知っているようなとても有名な方がいらっしゃるとテンションが上がっていますよ(笑)。
自分の興味を深められる探究型学習
▲他校とコラボした北海道オホーツクでの地域探究学習
「創造力・表現力をみがく」に資するものとして探究型学習も積極的に行われているとのことですが、どのようなことを実施しているのでしょうか。
探究型学習のカリキュラムは年々進化中ですが、中学校ではプログラミングやカメラ、囲碁、ダンス、園芸、マジックなどの中から自分の興味のある分野で学びを深めることができる総合講座を行っています。園芸の場合は校内の畑で丹精を込めて花、野菜、果物などを育てるのですが、公園管理の専門家や地域ボランティアの支援を受けて、最後は収穫物での食育までをリアル体験します。また、高校では、新たに探究のプログラムを見直し、知識をつけるだけでなく、表現活動や地域フィールドワークなどを通じ、実際に社会に対して働きかけること(社会実装)に挑戦します。
マジックなどの少し変わった講座もあるんですね!
マジックはプロのマジシャンに来ていただき教えてもらっています。マジックはある種人前でやる自己表現のようなものですし、自分の特技にもなるものなので実利的な学びになっていますね。
学びと人間性の土台を育む「スタートプログラム」
▲学ぶ意義の説明、その中で国語をなぜ学ぶかを考える
「学びの4つの特色」の1つ「個を支える」という点に関して、日頃の生徒と教職員の関わり以外の部分で特別に実施していることがあれば教えてください。
中学校と高校への入学直後に「スタートプログラム」を実施しています。通常入学したら自己紹介のあとすぐ授業に入ると思いますが、本校では4月は授業を始める前の約半月間、じっくりとこのプログラムに取り組みます。これは学びと人間形成の土台づくりを行うためのもので、本校の大切にしている「志」についての考え、勉強をする意味や、チームビルディングや学校内のルールを伝えていきます。
このプログラムの中で「地元が生んだ偉人を学ぶ」というテーマで、近くにあるパナソニックの歴史館にも行っています。そこで「9歳で1人大阪に出てきたところから、努力をしてこんなにも大きく、社会に貢献する会社を作った」という松下幸之助氏のヒストリーを聞くと、特に中学生にはとても響くみたいなんです。自分たちがいかに恵まれているのかを改めて認識し、今日から頑張ろうと思うという感想が出てくるんですよ。それはまさに学びと人間形成の土台をつくることにつながっているのではないかなと思います。
「キャンパスすべて学びの場」のスクールライフに迫る
パナソニックの工場跡地を利用して建てられたキャンパスには、“Touch! Feel! Think!”の設計コンセプトのもと、キャンパスすべてが学びの場となるようさまざまな創意工夫が込められています。「学校全体が図書館」という校舎デザインが施された特徴的なキャンパスを巡りながら、大阪国際中学校高等学校のスクールライフを紹介していきます!
手を伸ばせば本に触れる、読書習慣を育む「学校全体が図書館」のデザイン
▲キャンパスのどこにいても本に手が触れる校舎デザイン
キャンパスに一歩足を踏み入れると、とても明るく開放的な空間が広がっているのが印象的です!
新校舎を更地からデザインして新しくスタートするにあたり、生徒たちの未来に向けて理想の学びの場を実現するために国内外のいろいろな学校を回って構想7年でつくりあげたキャンパスなんです!キャンパス全体に、本物に触れ、考えを深めてほしいという思いを込めています。
「学校全体が図書館」と謳っている通り、本当に学校中に本がありますね。
手を伸ばせば本に触れるようなデザインにしています。開校と同時に新たに手配したものを中心に洋書3,000冊も含み、学校全体で1万7,000冊程度の蔵書があるんですよ!紀伊国屋書店の司書さんに常駐してもらい、読書活動から文献検索、授業支援などアドバイスをいただいています。
学校の図書館は基本読みたい本があるときにしか行かないものだと思いますが、大阪国際中学校高等学校のキャンパス内にはいたるところに本があるので、歩いているだけで自然と読書習慣が身につきそうですね。
▲紀伊國屋書店の司書が常駐し、ディスプレイや蔵書をアップデートしている
教室はブルー基調で、木のあたたかみも。道中で“偉人の名言”に触れる
▲ヘレンケラーや中国の偉人など幅広い名言が生徒の目に自然に触れる
キャンパス内を歩いていると、いたるところで名言が目に触れるのですが…。
これは、生徒がふと目にしたときに名言が刺さるような仕掛け「言葉のサイン」なんですよ。
ふとした時に新たな気付きになるような、また何か迷いがある時にその解決の糸口にあるような言葉が、校内の95ヵ所に散りばめられています。
天井や階段など、目線の上にも下にも名言があるのが面白いです。日常的に偉人の名言に触れられて学びが得られますね!
▲階段をのぼる足元にも名言が
教室の壁は、ブルーの色味がとてもきれいですね。
教室の壁には日本の伝統的な色合いを用いたブルー系統の色を使用しています。青は心を落ち着かせ、学びの集中ができると言われる色で、48の教室にすべて違う青色を使用しているんですよ。扉にも桐や楓など16種類の日本産の木の合板を使用しています。
▲日本の伝統的な色合いのブルーを基調にした教室
▲温かみのある木の扉
男女問わず小笠原流礼法を学ぶことができる和室・中庭
和室と中庭にもお邪魔します。こちらのお部屋はどういった用途で使用されているのですか?
和室や中庭は高校で学ぶ小笠原流礼法の講義・実習や茶道・華道部などの部活に使用されます。小笠原流礼法はもともと統合前の女子校の礼儀・躾教育の一環として行ってきたものなのですが、統合校になったあとも男子生徒にも必要だということで継続して、男女ともに師範から日本の伝統文化の学びを受けています。
美しい姿勢と挨拶や食事のマナー、訪問先の作法なども教えているため、社会に出ても役立つ教えになっていると思います。実は生徒だけでなくクラス担任も一緒に勉強しているんですよ。「他者を想う心を形にする」礼儀作法をこの段階から学ぶことはとても有意義だと思います。
▲和室の前にある中庭
人工芝のグラウンドにハードコートのテニス。勉強だけでなく部活にも熱中
こちらのキャンパスは人工芝の広いグラウンドが特徴的ですが、テニスコートや体育館はまた別の場所にあるんですよね。
はい。テニスコートは全米オープンなどで使用される世界標準のハードコートで、男子硬式テニス部は外部のクラブと提携してプロのコーチに教えてもらっていますよ。4面のハードコートでプロのコーチングを受けられる環境を備え、全日本の大会に出場するところまできています。
また、体育館はパナソニックの社会人仕様のバレーコートが2面取れるものを引き継ぎ、女子バレーボール部が全国大会を目指して練習に励んでいます。
勉強だけでなく、部活動も活発なんですね。
本校では中学、高校とも「人間をみがく」教育の一環として部活動も奨励しています。生徒の7、8割は何らかの部活に所属しています。他に女子ラクロス部や吹奏楽部など、全国大会に出場する部活もあります。
息子が所属しているサッカー部は平日4日に加えて土日どちらかあるため、週5日実施しています。長期休暇中も含めてずっと学校に来ていますね(笑)。
軽音楽部が本校一番の大所帯で100人規模なのですが、昼休みにもアコースティックコンサートやミニコンサートなどを開いているんですよ。そういう風景を見ていると「青春やな」と思います(笑)。
まさに文武両道で、学園生活を謳歌しながら学力・人間性を磨いていっているのですね。岸さん、石堂さん、本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!
大阪国際中学校高等学校の口コミ
ここでは、大阪国際中学校高等学校の卒業生や保護者の方からの口コミを抜粋してご紹介します。
先生は生徒一人ひとりに寄り添って指導してくれる。放課後サポートで英語が学べるのも魅力。
新しいきれいな校舎で学べる。周辺環境も良い。
生徒の自主性が尊重され、のびのびと過ごせる。
新しい校舎の中でのびのびと過ごせる環境があることが口コミから伝わってきました。学習サポート体制もあるため、勉強面での満足度が高いことも伺えます。
大阪国際中学校高等学校の基本情報
問い合わせ | https://www.kokusai-h.oiu.ed.jp/contact/ |
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住所 | 大阪府守口市松下町1番28号 |
電話番号 | 06-6992-5931(代表) 06-6992-5941(募集広報部直通) |
公式URL | https://www.kokusai-h.oiu.ed.jp/ |