この記事ではお子様の心身の成長につながる習い事をお探しの方に向けて、全日本空手道連盟のインタビューを通じて「空手」の魅力を紹介します。
空手は沖縄発祥の武道で、剣道、柔道などと並び古くから日本で親しまれてきました。世界中に愛好家がおり、国内でも子どもから高齢の方まで年代を問わず多くの競技者がいます。2021年に開催された東京オリンピックで初めて競技種目になったことで、改めてその魅力に注目が集まっています。
今回は全日本空手道連盟の副会長の笹川さん、企画業務課の小日向さんにお話を伺いました。全日本空手道連盟が進める子どもに対しての空手の普及や、空手で身につく力などを詳しく紹介します。
この記事の目次
空手の発展のための活動を行う全日本空手道連盟
全日本空手道連盟は「日本の空手道に統一的な秩序をもたらす」ことを目的に1964年(昭和39年)に設立された公益財団法人です。トップ選手の強化・育成はもちろん、子どもを対象とした行事や大会の運営など、国内において空手の普及活動をしている団体です。
まずは全日本空手道連盟としてどのような取り組みを推進しているのかを伺いました。
トップ選手の育成から大会運営まで…全日本空手道連盟の活動内容
▲東京オリンピックの空手女子形で銀メダルを獲得した清水希容選手
全日本空手道連盟さんの組織概要について簡単に教えてください。
我々は中央競技団体の一つとして、空手の発展と普及のためのさまざまな活動を行っています。皆さんに身近な活動の例でいうと、オリンピックなどの国際大会に向けたナショナルチームの編成と選手強化が挙げられます。
その他にも各種国内大会の主催や運営・後援といったことはもちろん、公認段位などの技術資格の認定、競技ルールの改良、国際大会の招致など、空手に関するあらゆる取り組みをしています。
競技人口の裾野を広げるため、子どもに向けた普及活動も実施
▲小学生の試合の様子。試合会場では空手独特の空気感を体感できる
空手は子どもの頃から習い事として取り組む方も多いと思いますが、お子様に向けた空手の普及活動としてはどのような取り組みを実施しているのでしょうか。
現在は中学校に向けた普及活動を実施しており、体育の授業内で空手のカリキュラムを推進しています。また、全国の空手道場に通うお子様が出場できる大会の主催も行っています。
こうした大会は、日頃の練習の成果を発揮できる場であると同時に、大会を通じて多くの方に空手の魅力を伝えられる場でもあります。特に団体形を見ていただくと、ピリッとした空手独特の空気感が伝わりやすいのではないでしょうか。2024年2月には東京都港区の会員制国際社交クラブ「東京アメリカンクラブ」で団体形の決勝戦を開催しました。このような機会を通じて空手に馴染みがない人に魅力を伝えることも普及活動の一環として行っています。
確かにテレビで東京オリンピックの形を見ていても、独特の空気感に圧倒されました。それを生で見られるとなると、一層空手のすごさが伝わりそうです。
形に取り組む子どもをサポートする新たな取り組み「カタモギ」
▲演武動画を送ることで審判員から採点してもらえる「カタモギ」
空手の発展や普及に向けて、全日本空手道連盟さんで実施されている特徴的な取り組みがあれば教えてください。
2024年1月から「カタモギ」という取り組みをスタートしました。これは自身の形を動画に撮って全日本空手道連盟に送っていただき、それを全国トップクラスの審判員が採点するというシステムです。
形というのは空手の攻撃技・防御技を一連の流れで見せる演武で、審判員が点数を付ける採点式の競技です。しかしこれまでは本番までに道場の先生以外に見てもらえる機会はなかなかありませんでした。本番前の「模擬試験」として審判員に見てもらうことで、自身の課題を見つけてよりモチベーションを高めていけるのではないか、と考えたのがこのシステム開発のきっかけです。
なるほど。形の模擬試験を行う「形・模擬(カタモギ)」ということですね。動画は実際の審判員が見て採点してくれるのですか?
はい。5人の審判員が判定し、採点とコメントをお返しします。自分のレベルが数値化されるので、より多くの子どもたちが形に熱中して「上手くなりたい」と思ってもらえるきっかけになれば良いなと思っています。
■「カタモギ」の詳細はこちら
世界中で子どもから大人まで親しまれている空手の魅力を紹介
空手は競技としての知名度はありますが、子どもに習わせることで実際にどのようなメリットがあるのか分からない、という方も多いのではないでしょうか。そこでここからは全日本空手道連盟さんにお話を伺いながら、空手の魅力や、空手を習うことで子どもに身につく力などを具体的に紹介していきます。
受験対策にも!空手の中で自然と身につく「礼節」
▲礼の心が身につく空手の練習
子どもに空手を習わせている保護者は、どのような理由で空手を選ばれる方が多いのでしょうか。
保護者が子どもに空手を習わせる理由として最も多いのは「礼儀作法を学んでほしい」というものです。「礼に始まり礼に終わる」という空手の精神や、相手を敬う姿勢が身につくことを期待して空手を習わせる方が多くなっています。受験対策で空手を習わせるという方もとても多いですよ。
もちろんどんなスポーツでも挨拶や返事の大切さは伝えていると思います。しかし空手は形式の中で正座や気をつけ、礼の姿勢などを教えていきます。より自然に子どもが礼節を身につけられるというのは、空手の持つ大きな特徴ですね。
運動が苦手な子にもおすすめ。体力だけでなく精神力も身につけられる
空手を習うことによる体力面のメリットはいかがでしょうか。
空手はボールや道具を持たずに動く競技で、全身、左右、上下、手足をバランス良く使って行います。運動量もあるので体力の向上も期待できますし、全身運動なのでバランスの良い体の成長にもつながります。
実は空手は、運動が苦手なお子様にも取り組みやすい競技なんですよ。形は決まった動きをするものなので、体の動きだけでなく頭を使って「覚える」という要素も必要になります。体力がない、運動が苦手な子でも動きを覚えれば取り組むことができるのでおすすめです。
空手は体の軸に関わるような足腰を使う動作が非常に多いのも特徴です。空手を行うことで他のスポーツの土台となる部分を向上させる効果も期待できます。
また形はサッカーや野球などと違い、決まった動作を何百回も何千回も繰り返し行う競技です。同じ動作に見えても感覚的に微妙に違うところもあり、繰り返しながら完璧な形態を追い求める必要があります。その中で「忍耐力」や「正解を追い求める力」といった精神力が身につけられるのも、空手ならではの魅力です。
試合以外でも成長を実感。帯の色が変わる「審査」が努力のモチベーションに
▲昇級・昇段審査があることがモチベーションに
先ほど空手の大会のお話をされていましたが、子どもたちが日頃の練習の成果を発揮できる機会は試合以外にもありますか?
勝ち負けを決める試合の他に、空手には級位・段位を決める「審査」の機会が定期的にあります。いわゆる“帯の資格”の審査ですね。
最初は皆、白帯からスタートします。そこからいろいろなことを覚え、級・段の審査会で発表して合格点に達することで帯の色が変わっていきます。段をもらえると黒帯になるんですよ。色のついたカラフルな帯から黒帯になった瞬間は、どの子も大きな達成感を感じるようです。
空手を習っている子どもの中には、勝負に対してあまり積極的ではない子もいます。しかしその場合でも「審査」という目標に向かって一生懸命努力することができるので、勝ち負け以外の部分でも成功体験を得ることができます。
「次は何色の帯を目指す」という明確な目標があることで、お子様もモチベーション高く努力を続けられるんですね。
▲努力して黒帯を獲得することで大きな達成感を得られるそう
「大家族」のような道場の環境が、子どもの人間的な成長にもつながる
空手は幅広い年代に親しまれているのも特徴ですが、何歳くらいから始められるのでしょうか。
小学校入学と同時に習い事を探す中でお子様を道場に連れてきてくださる保護者の方が多いですね。早いと3歳、4歳から始められるお子様もいますよ。大体「右・左」の概念が分かってオムツが取れたら始められると思います。
道場ではいろいろな年齢の子どもが一緒になってお稽古をすることになるんですよね。
そうですね。子どもだけでなく大人も一緒にお稽古をする道場も多いですよ。
学校では基本的に同学年との関わりが多くなりますよね。でも道場には先生がいて、お兄ちゃん・お姉ちゃんがいて、おじさん・おばさん、時にはおじいさんやおばあさんもいます。そんなたくさんの年代の人たちと一緒にお稽古ができるというのは、なかなかない環境だと思います。
お子様は自分が小さいときは周りにお世話をしてもらっていますが、年齢が上がるにつれて「今度は自分が下の子をお世話しよう」ということを覚えていきます。そういった大家族やご近所のネットワークのようなものを追体験できるのも、空手の魅力です。保護者の方も、試合の勝ち負けだけでなく、子どもが下の子のお世話をするようになったという部分でも成長を実感されているようです。
「世界共通言語」として、国際的なコミュニケーション手段に
年齢を問わず同じ環境の中で取り組めるというのは、競技人口が幅広い空手ならではの魅力ですね。
競技人口の幅広さでいうと、年齢はもちろん海外にも愛好家が多いことも特徴ですね。実は私は小学校から大学院までをアメリカで過ごしたのですが、アメリカにもいろいろなところに空手道場がありました。
空手はいわゆる「世界共通言語」なんです。海外に行くと「日本人は皆空手ができる」というイメージを持たれていることも多いです(笑)。空手を通じて世界中に友達ができるというのも、空手の魅力の一つだと思います。
個人競技でありながら、「チーム競技」の良さも兼ね備える!
空手を通じて、実際にお子様の成長を感じたエピソードがあれば教えてください。
子どもであっても、道着を着用して帯を締めた瞬間に「ビシッ」と雰囲気が変わるのはすごいなと思います。オン・オフの切り替えができるのは、大人への成長過程の中でとても大切なことなのではないでしょうか。
また道場には兄・姉についてきた赤ちゃんに近いような年齢の子どもが来ることもあるのですが、最初の内は走り回っていても、皆の様子を見ている内にある日突然「ここでちゃんと礼をするんだ」というように空手の雰囲気をつかむことがあるんですよ。それは道場という、ある種集団行動の中だからこそ得られる成長なんだと思います。
空手は個人競技ではありますが、道場の中の集団の空気で学べることも多くあるんですね。
道場はもちろん己の鍛錬を重ねる場ではありますが、チームのような雰囲気もあるんです。皆の前で演武を披露する機会もあり、一人で取り組むだけでは得られないモチベーションにもつながっています。
チーム競技ではないけれど、チームのような雰囲気もある。「個人として競技を突き詰めていく成長」と「集団の中だからこそ得られる成長」のどちらもある、良い競技だと思います。
全日本空手道連盟からお子様・保護者へのメッセージ
最後に、全日本空手道連盟さんから空手を習うことを検討しているお子様や保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
空手は小さな子どもから大人まで一つの道場に集まって行います。そういう環境は現代ではなかなかありません。お子様にとって非常に良い人生経験になりますし、人格形成の部分でも良い基盤をつくっていけると思います。
空手は世界中で幅広い年代に愛されている競技です。ぜひ皆さんも空手を始めて、空手を愛してください!
子どもに礼節や体力が身につくだけでなく、世界中の世代を超えたいろいろな方とのコミュニケーションのきっかけにもなるという空手の魅力を、全日本空手道連盟さんのお話から実感することができました。お近くの道場や大会などでまずはその空気感を体感してみてはいかがでしょうか。
笹川さん、小日向さん、本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!
空手に興味がある場合は、まずはお近くの道場で体験を
子どもに空手を習わせたい場合、まずはお近くの道場を検索してみて、ホームページやSNSから情報収集をしてみましょう。試合で勝つことを目的としているか、楽しみながら習得していくことを目的としているかで道場の雰囲気は大きく異なります。また道場によって、目的に応じたクラスを設けている場合もあります。
多くの場合は、道場で無料体験を実施しています。練習頻度や練習内容、どのようなコースがあるのかを確認した上で、まずは無料体験をしてみて、お子様の性格や保護者の方の方針に合うところを探すことをおすすめします。
「全日本空手道連盟」の基本情報
住所 | 東京都江東区辰巳1-1-20 日本空手道会館 |
---|---|
お問い合わせ | https://www.jkf.ne.jp/inquiry_info |
電話番号 | 03-5534-1951 |
公式URL | https://www.jkf.ne.jp/ |