この記事では、特色ある教育に取り組む“注目の学校”として、大阪府茨木市にある私立の共学校「早稲田摂陵高等学校」をご紹介します。
1962年に設立され、2009年より早稲田大学の系属校となった同校は、2025年4月から「早稲田大阪高等学校」に校名をリニューアル。早稲田大学への推薦枠を39名から74名へと拡張するほか、早稲田大学への進学に特化した「早稲田コース」も新設するなど、早稲田大学との連携をさらに強めた環境にて“大阪のWASEDA”としての進展を目指している学校です。
教育面においては、海外提携校との活発な交流を通して国際理解教育を展開しています。また、ラボと卒論を軸とした探究活動にも力を入れており、課題発見能力・問題解決能力といった大学やビジネスシーン等で役立つスキルをしっかりと育める環境です。
今回は早稲田摂陵高等学校の早稲田コース長・米田先生に、同校の教育方針や学習カリキュラムの特徴、校風について詳しく教えていただきました!
この記事の目次
新校名の「早稲田大阪高等学校」で新たな一歩を踏み出す早稲田摂陵高等学校
早稲田摂陵高等学校は、2025年4月から「早稲田大阪高等学校」に校名変更されると伺いました。どのような背景で改称されるのか教えてください。
本校は2009年に早稲田大学の系属校となったのですが、「“大阪のWASEDA”としての魅力を強調してさらなる発展を遂げたい」といった理由で改称の運びとなりました。
この目標達成に向けて大きく変更となるのが、早稲田大学への推薦枠です。これまでの39名から大幅に拡張する形で「74名」の推薦枠を確保しており、基本的には新設の「早稲田コース」に所属して本校が定める基準を満たし、校内選考をクリアすれば早稲田大学の希望学部へ進学することができます。
この改革により、関西地方から早稲田大学進学を目指す生徒にとって大変魅力的な教育環境の提供が叶うと考えております。
ちなみに、早稲田コース以外には難関国公立大学・難関私立大学への受験に対応した「文理コース」と難関私立大学・有名私立大学への現役合格を目標とした「総合コース」があり、総合コースには「早稲田摂陵高等学校ウィンドバンド」として音楽活動を行いながら有名私立大学への進学を目指すウィンドバンドクラスも含まれます。
大切にしているのは「たくましい知性」「しなやかな感性」「ひびきあう理性」を磨く教育
御校の核にある教育理念についてもご紹介いただけますか?
本校では「自律」「責任」「質実」の校訓のもと、「たくましい知性」「しなやかな感性」「ひびきあう理性」を磨くことを軸に教育活動を行っています。この方針はグローバル・リーダーに必要な3つの力として早稲田大学が掲げているスクールポリシーであり、改称後も変わることはありません。
未知の課題にも解決策を示せる「たくましい知性」、多様な価値観を理解・尊重できる「しなやかな感性」、そして活発な議論によって思考が共鳴する「ひびきあう理性」こそが、新しい時代を創造する人材育成に向けて重要です。本校ではこれからもこの目標に基づいた教育活動を展開し、将来のグローバル・リーダーをたくさん輩出していきたいと願っています。
早稲田摂陵高等学校の特色ある探究学習
早稲田摂陵高等学校では、早稲田大学の系属校として大学の教育資源を最大限に活用した教育を展開しています。なかでも特徴的な「探究学習」について詳しくお話を伺いました。
「ICT教育」や「未来設計プログラム」による主体的・対話的な学び
早稲田摂陵高等学校が力を入れている探究学習について、特徴を教えてください。
先ほどご紹介した通り、本校には「早稲田コース」「文理コース」「総合コース」の3つのコースがあるのですが、どのコースにおいても主体的・対話的な探究学習を行います。大学進学後や社会に出たときに役立つ課題発見能力・問題解決能力を磨くことが大きな目標です。
具体的には、1人1台のiPad(次年度からBYODへ)や電子黒板を活用した「ICT教育」と、生徒が自分の興味や夢をベースに将来のキャリアを設計するための「未来設計プログラム」の2本柱を軸に探究活動を進めていきます。未来設計プログラムでは、飛躍的に進化し続ける生成AIとの付き合い方を学んだり、さまざまな大学とのコラボによる授業や第一線で活躍している方との交流を通じて「生き方」と「あり方」を考えたりしながら、自分なりの未来を探究します。
また、高校1年次に早稲田大学の見学や都内の散策を行う「関東研修」も本校ならではの探究学習です。神宮球場で伝統的な早慶戦を観るプランも含まれており、対戦や応援団の様子からも早稲田大学の雰囲気を肌で感じて大きな刺激を得られます。
早稲田コースは高2から「ラボ」に取り組み、高3では卒論を作成
新設の早稲田コースには、ほかのコースとは異なる探究活動もあるそうですね。
そうなんです。早稲田コースでは、高校2年次から週に1~2回ほど「ラボ」と呼ばれる専門演習の授業があり、生徒一人ひとりが自分の興味や目指す進路に合わせて選んだテーマに合わせた探究を行います。
具体的には、生徒3~4人に1人の教員がつき、高校3年次には論文を仕上げる取り組みです。テーマは多種多様で、たとえば2024年度においては文化人類学に関する講座や物理を英語で学ぶ講座、食虫植物を研究する講座、日本美術史入門講座などがあります。
▲英語で学ぶラボもあり、英語力の強化にもつながります
▲高3次には探究活動の集大成として発表会が行われます
また、高大連携の一環として大学の講座も受けることが可能です。大学での学びを先に体験できたり、研究室の方との連携によって探究活動を行えたりすることは、生徒たちにとって非常に有意義であると感じています。
さらに、早稲田コース全体を対象とした探究・STEAMも実施しており、過去には宇宙をテーマとして「ローバー(月面探査機)を動かす」といったミッションの探究を行いました。ローバーを取り扱っている企業の方のご協力のもと、教室内でローバーを動かす体験をさせていただき、生徒たちにとって大変貴重な機会になったと思います。
そういった実践的な探究・STEAM活動に対して、生徒のみなさんはどのような感想を持っていらっしゃいますか?
本校での探究的学びを通じて、「自分の興味がどこにあり、どのようなことを極めていきたいのかが明確になった」といった声をよく聞きます。探究のテーマが進路につながるケースも多く、進学先を決める段階でも役立っている印象です。
あとは、どの生徒も物事を深く考える習慣が身についているように感じますね。
早稲田摂陵高等学校では多彩なグローバル教育を実践
▲ニュージーランド研修でオークランドを訪れた早稲田摂陵高等学校の生徒たち
続いて、早稲田摂陵高等学校が力を入れている「グローバル教育」についても詳しく教えていただきました。
工夫を凝らしたプログラムを通じて「ツールとして使える英語」の習得を促す
御校のグローバル教育について、主な特徴を教えてください。
本校では英語をツールとして使えるようになることを目標として、実践的なカリキュラムで授業を行っています。たとえば英語でスピーチする機会をたくさん設けて表現力を磨いたり、活発なディベートによって思考力や判断力の強化を図ったりしている形です。
また、英語の講演会を実施することも本校の恒例行事となっています。たとえばカンボジアから小学校の先生が来られた際は、とあるクラスで実施していただいた講演会の様子を他のクラスの生徒が鑑賞できるようにオンラインで各教室に配信しました。
さらに、国際理解・国際意識を楽しみながら学べる「ICCアウトリーチプログラム」も本校ならではのグローバル教育です。早稲田大学の外国人留学生が本校に来てくれて、自国の言語や文化に関する授業を行ってくれます。たとえばインドネシア出身の学生の場合はインドネシアの伝統的な踊りを教えてくれて、本校の生徒たちは日本の文化を紹介するなど、相互的に国際交流を深められる取り組みです。
早稲田コースには独自のグローバルプログラムがあるそうですね。具体的にどのような内容なのでしょうか?
早稲田コースでは「Global English講座」を通じて英語での探究学習にもチャレンジします。他にも2023年度にはインドネシアの学校と交流し、金融のことを一緒に学ぶ取り組みを行いました。
また、学術的な英語力を測れるTOEFLをポイントに置いて英語学習を実施していることも特徴的ですね。
希望すれば短期留学・研修旅行での異文化体験が可能
御校では国際交流も盛んだそうですね。
はい。本校では各方面に短期留学・研修旅行を実施しています。滞在先はフィリピンやニュージーランド、アメリカ、台湾などで、たとえばフィリピンではボランティア活動を行ったり、ニュージーランドでは交換留学といった形で現地の生徒とホームステイしあったり、台湾では英語のプレゼンテーション大会に参加したりするプログラムです。
短期留学・研修旅行に参加された生徒さんからは、どのような感想を聞くことが多いですか?
フィリピンでのボランティア活動は体力的にもハードですが、「世界にはこういった生活をしている人たちがいることに刺激を受けた」と話す生徒が多いですね。また、台湾では現地の高校生とのコラボによって、お互いに第2言語の英語でプレゼンテーションを行うため、同じアジアの生徒同士で協同することに対して強いモチベーションを感じ、意欲的に取り組む生徒がたくさんみられます。
▲フィリピンでのスタディツアーに参加する生徒たち
早稲田摂陵高等学校におけるスクールライフ
早稲田摂陵高等学校の雰囲気について教えてください。
生徒同士は、多様な価値観を認め合いながら学校生活を謳歌していますね。また、生徒と教員の距離も近く、お互いに信頼関係がしっかりと築けていると思います。
教員は生徒の「自律」をキーワードとして掲げながら、与えるのではなくサポートする形で生徒に寄り添っています。
クラブ活動についてはどのような特徴がありますか?
本校では総合コースの中にウィンドバンドクラスが設けられているように、学校として吹奏楽にも力を入れています。本校のウィンドバンドは引く手あまたで、さまざまなコンクール・コンテストや地域での演奏会、校内での発表会など活発に活動しています。
また、運動部も頑張っていますよ。野球や卓球、ラグビー、サッカー、バスケ、チアダンスといった多種多様なクラブがあり、各種大会等で好成績を収めている部も多いです。
▲チアダンス部はアメリカ大会で第4位に輝いたことも!
早稲田摂陵高等学校からのメッセージ
▲今回インタビュー取材に応じてくださった米田先生
最後に、早稲田摂陵高等学校に興味をお持ちの方へメッセージをお願いします。
本校では「自律」「責任」「質実」といった校訓のもと、早稲田大学の系属校である強みを活かした教育活動を展開しています。変化し続ける社会において生徒一人ひとりがしっかりと才能と個性を発揮し、グローバルリーダーとして社会貢献を遂げることが目標です。実際に本校の卒業生は各方面で活躍しており、講演会の講師として招いて話をしてもらうこともありますよ。
また、改革期ということで新たな取り組みを多く実施しており、たとえば早稲田大学の系属校同士の連携による取り組みを実施したり、STEAMや地域創生だけでなくビジネス系の学校が実施している起業家教育を始めたりとさまざまな切り口で改革を進めているところです。
これからも生徒と教職員、そして保護者の方が一丸となり、ますます魅力的な教育環境を作っていけるように尽力していく所存です。興味をお持ちの方は、ぜひ一度本校に足を運んでみてください。
今回お話いただいたことだけでなく、これからもどんどん新しい取り組みを実施していかれるとのことで、今後どのように発展されていくのかとても楽しみです。「入学後にどのような学校生活が待っているんだろう」といったワクワク感もある学校だと感じました。
米田先生、たくさんのお話をありがとうございました!
早稲田摂陵高等学校の進学実績
早稲田摂陵高等学校における2024年3月卒業生の実績としては、系属校である早稲田大学へ28名が合格しました。また、室蘭工業大学や滋賀大学、高知大学といった国公立大学には13名が合格したほか、関西大学に15名、関西学院大学に24名、同志社大学に8名、立命館大学に22名など、難関私立大学にも多数の生徒を輩出しています。
なお、2025年4月から早稲田大学への推薦枠が74名へと拡張されるため、今後は早稲田大学への進学者数が大幅に増えることが予想されます。
早稲田摂陵高等学校の卒業生による口コミ
▲茨木市議会の訪問企画で、堂々と話す生徒
早稲田摂陵高等学校の卒業生からは、先生の親身なサポートや授業の質、クラブの充実度に関して満足している意見が多くみられます。「勉強とクラブを両立しやすい」といった声も多く、進学校でありながらもクラブ活動を通じて青春を謳歌できる魅力的な学校だと感じました。
早稲田摂陵高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人早稲田大阪学園 早稲田大学系属 早稲田摂陵高等学校 |
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住所 | 〒567-0051 大阪府茨木市宿久庄7丁目20-1 |
電話番号 | 072-643-6363(代表) |
公式ページ | http://www.waseda-setsuryo.ed.jp/ |
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