全校生徒でルールをつくる!和光学園「和光中学校」の生徒自治活動の魅力

独自性ある教育を実践する学校を紹介するこの企画。今回は東京都町田市にある私立の共学中学校「和光中学校」を紹介します。

学校法人和光学園が運営する和光中学校は、自由な校風のもとで生徒による自治活動が活発に行われているのが特徴です。学校生活におけるルール決めが必要な際には「生徒総会」で話し合うなど、学校運営への主体的な関わりを促進する中で、生徒の考える力や他者理解の心を育んでいます。また「学級演劇」などさまざまな体験的な学びを通じて幅広い学びの機会を提供しています。

今回は中学校副校長の亀山先生に、同校の教育理念やそれに基づく特徴ある教育プログラムについて詳しくお話を伺いました。

「共に生きる教育」を理念に掲げる和光中学校

和光中学校の生徒が手をつないで校内に立っている写真

編集部

最初に、和光中学校の教育方針を教えてください。

亀山先生

本校では「共に生きる教育」を教育目標に掲げています。学校生活におけるたくさんの出会いを通じて多様な価値観に触れ、お互いに受け入れ合って共生できる社会をつくっていくというのが本校の教育の目指すところです。

その実現のために打ち立てているのが「自己肯定感を育む全面発達の教育」「自己表現と他者理解を大切にする教育」「権利行使の主体を育てる教育」の3本柱です。

1つ目の「自己肯定感」というのは点数や学力といった一面的な評価ではなく、ありのままの自分を大切にできることを意味します。2つ目の「自己表現と他者理解」は、自分の考えを相手に伝える表現力と同時に、自分とは異なる考えや文化を尊重すること、そして3つ目の「権利行使の主体」は、人生の主体者として社会で生きていく上で自分と他者の権利を大切にすることを意味します。

個性を尊重する本校の校風の中で、自分と他者を大切にし、誰もが自分らしく生きられる社会づくりに向けて主体的に行動できる生徒を育んでいくという本校の教育方針が、この3つの目標で表されています。

“対話”重視で、他者に寄り添い考える力を育む「和光中学校」の生徒自治活動

和光中学校の生徒連絡総会の様子

▲生徒総会の様子。生徒は学年ごとに分かれ、発言する生徒が前のマイクのところで発言する

編集部

御校の「共に生きる教育」という方針は、実際の教育活動の中にどのように落とし込まれているのでしょうか。

亀山先生

本校では「対話」の機会を大切にし、生徒同士で話し合いながら生活、文化、ルールをつくり出す自治活動を進めているのが大きな特徴です。誰もが安心して充実した学校生活が送れるための取り組みを生徒会が進めています。

例えば「拡大委員長会」という、全校の各クラス2名学級委員と生徒会執行委員12名で構成される会議を月に1回実施しています。ここでは学校生活における日常的な課題や困りごと、ルールについて話し合いが行われます。拡大委員長会は意見交流の場と位置付けられており、全クラスに問いかけたり、学年をまたぐやりとりをしています。

さらに全校生徒の話し合いの場として、1学期に1回「生徒総会」を実施しています。生徒総会では事前に設定したテーマについてまずクラスで話し合い、その意見を生徒総会の場でクラスの代表生徒が伝えます。それに対してさまざまな角度から議論していくという流れです。

今年の6月の生徒総会では上級生と下級生の関係性のテーマについて話し合いが行われました。上級生がリーダーとして行事を引っ張っていく機会が多い中で、下級生が安心して行事に参加するためには日頃からの友好的な関わり合いが大切なのではないかという意見が下級生からあがり、それに対してさまざまな立場から意見交換がなされました。

一対一だと言いづらいことやうまく伝えられないことも、生徒総会の場ではお互いの考えを建設的に話し合うことができるため、学年を超えた生徒間の良い関係性の構築にもつながっています。

和光中学校の生徒連絡総会に向けた生徒会執行部、議長団打ち合わせの様子

▲生徒総会に向けた生徒会執行部、議長団打ち合せの様子

亀山先生

また生徒総会では新たなルール決めについての検討も行われます。本校は自由な校風ではありますが、だからこそ細かなルールが必要な場面が多いんですね。

例えばスマートフォンの持ち込みが不可なのであればそこに関する新たなルール決めは不要ですが、持ち込み可能であれば校内使用をどこまで許可するかのルール決めが必要ですよね。直近ではカメラ機能の使用可否について生徒総会で話し合い、学校内では使用しないというルール案が合意されました。その結果が学校三者連絡協議会の場で報告され協議を経て、学校としてルールを確定しました。

ルールづくりの過程に生徒たちが関わっているからこそ、自分たちで決めたルールを守るという意識が生まれている点もポイントです。

和光中学校の生徒連絡総会議案書と三者連絡協議会の様子

▲生徒総会の意見は「議案書」としてまとめられ、教員代表・生徒会代表・保護者の代表で構成される「三者連絡協議会」にかけられる

編集部

そのように生徒皆が学校づくりに主体的に関わっていく中で身に付けられる力は何だと思われますか?

亀山先生

「物事を多面的に考える力」と「見通しを立てて物事を進めていくマネジメント力」が育つと考えます。学校というのはいろいろな人が生活する場なので、自分の感じ方だけでなく、他者の立場に立って考えることを常に問いかけています。自分にとっては必要ないと感じるルールも、他の誰かにとっては必要だというケースが往々にしてあります。自分のことだけでなく、誰かが困ったり不安になったりしないようなルールを考える中で、他者の立場に立って物事を見る姿勢が生まれるのではないでしょうか。

多様な意見を出し合ってまとめていくには、意見を集めるだけでなく、話し合いの進め方を打ち合わせたり、資料を作ったりと準備が必要で、ステップを踏んで取り組むことを通してマネジメント力が鍛えられます。

対話によって生徒の考える力を育む教育は、普段の授業の中でも重要視しているポイントです。さまざまな授業においてグループ学習を行い、仮説を立ててそれについて話し合い実際に検証する、探究サイクルを意識した手法を取り入れています。

和光中学校のグループ学習の様子

▲授業の中でもグループ学習で話し合いを行う

「集中ホームルーム」をはじめ、クラスや学年、縦割り、さまざまな規模で対話を実施

和光中学校のホームルームの様子

編集部

さまざまな学年が集う人数の多い話し合いの場で自分の意見を言うことはなかなか難しい部分もあると思いますが、生徒同士の話し合いを円滑に進める上での工夫などはありますか?

亀山先生

何でも話し合えば良いというものではなく、生徒にとって話し合う必要があることは何かを見極めることを大切にしています。そのために、クラスでは、学級三役(学級委員)4名や班長を含めた10人の班長会を開いて日常の事や行事に向けてクラス全体で話し合いたいことを相談することが要になっています。

学年単位では、学級三役が集まる合同三役会(16名)という会議を設けて学年単位の行事や日常のことなどについて話し合う場があり、そこでの話し合いを通して、クラスで何を話し合うのかということも考えていきます。

また、ホームルームでの話し合いや行事の後など、事あるごとに生徒が意見文を書く機会を設けています。直接の話し合いだけでなく文章での意見も集約し、それらを話し合いや授業の中で全体に返すことも多いです。

編集部

学校全体に関わることだけでなく、日頃からさまざまな範囲での課題に生徒が主体的に向き合っているんですね。クラスでの話し合いで特長的なことはありますか?

亀山先生

はい。その代表的な取り組みが2年生の3学期に行う「集中ホームルーム」です。ここではクラス内の課題や人間関係上の困り事について時間を取って話し合いを行っています。

生徒総会のような大規模な場ではなく、クラスの中であっても、なかなか意見を言いづらい関係性というのはあるものですよね。だからこそ、その中で誰かが困っていることもあるでしょう。

そこでクラス内でのアンケートやクラスの三役が事前に聞き取りを行い、クラス全員での話し合いを行っているのがこの「集中ホームルーム」です。本校は2、3年生のクラス替えがないため、2年生の3学期の段階で改めて風通しの良い人間関係をつくり、最高学年である3年生を迎えるという意図があります。

もちろんこの話し合いを経て、すべての物事が解決するわけではありません。しかしクラスの課題に対して皆で向き合ったというこの経験は、その後の1年を過ごす上でとても貴重なものとなります。「共に生きる教育」を体現した取り組みだと考えています。

和光中学校の総合学習では、演劇や学習旅行など体験型の学びを推進

和光中学校の図書館

▲約5万冊を所蔵する図書館は、総合学習や各教科の調べ学習でも使用される

編集部

先ほど、日頃の授業の中で仮説・検証といった探究サイクルを取り入れているとのお話がありましたが、それ以外に和光中学校で探究学習として実施している教育プログラムをご紹介いただけますか?

亀山先生

すべての学年で週2時間総合学習を実施しており、その中で探究的な学びを実践しています。総合学習の授業では多様性やメディアリテラシーなど学年に応じたさまざまな学びを展開していますが、中でも特徴的なのが1、3年生で実施する「学級演劇」です。

1年生では11月にある文化祭に向けてクラスで40分程度の演劇をつくりあげていきます。3年生では3年間の学校生活の集大成として、3月の卒業公演で60分の劇を上演します。脚本選びからキャスティング、構成、演出、衣装まですべて生徒たちで行うため、毎年それぞれのクラスの個性が発揮された作品が出来上がっています。

学級演劇は、脚本という文字の世界を自分たちで読み解き、何もない舞台の上に新しい世界を創り出すクリエイティブな活動です。キャストだけでなく大道具や音響、照明など、生徒はそれぞれの持ち場で力を発揮し、一つの作品を創り上げます。劇をつくる過程ではぶつかり合う場面もありますが、話し合ってそれを乗り越えて一つのものをつくり上げた経験は、学級演劇ならではの貴重な経験となります。

和光中学校の学級演劇の様子

▲学級演劇の発表風景

編集部

その他にも総合学習で特徴的なプログラムはありますか?

亀山先生

2年生の9月には「秋田学習旅行」を実施しています。秋田学習旅行は秋田県仙北市の「わらび座」(あきた芸術村)に5泊6日の日程で宿泊し、前半クラス毎に太鼓と踊りを習い、舞台発表する取り組みと後半3日間班毎に農家で農作業を行うというプログラムです。自然と人と文化と出会い、働く体験を通して自分を再発見し生き方を考えることに繋がる旅行で40年以上続けてきました。

総合学習の時間では、それに向けて食や農業について学びます。社会、理科、国語、英語、音楽、技術・家庭などいくつもの教科で関連した学習に取り組んでいます。

旅行後はそこで学んだ内容をまとめ、11月の文化祭で発表を行っています。

「秋田学習旅行」でクラス毎に行われる太鼓の練習

「秋田学習旅行」で農作業を行っている様子

また本校では70年以上にわたる伝統行事として全校生徒で行く「館山水泳合宿」を実施してきました。3年生を中心に生徒主体の学校づくりを進める本校において、3年生が全校生徒を牽引するこのプログラムはリーダーシップを育む重要な役割を果たしてきました。

しかし館山水泳合宿は今後2年の内に幕を閉じることを予定しており、現在はそれに代わる新たな取り組みを検討しているところです。

和光中学校からのメッセージ

和光中学校副校長の亀山先生

▲インタビューにご対応いただいた副校長の亀山先生

編集部

最後に、和光中学校の学校生活に興味を持った読者の方に向けてメッセージをお願いします。

亀山先生

子どもから大人へと心身共に大きく成長するかけがえのないこの時期にこそ、人と人との関係の中で、他者の考えを受けとめつつ自分で考え、判断し、伝える力を伸ばす時期だと考えています。さまざまな学び、経験を積み重ね、中学3年生になったときにその成果を発揮して輝いていける、和光中学校ではそんな3年間の学校生活を提供していきたいです。

和光中学校・高等学校はともに生徒の自主性を尊重する教育を実践していますが、中学校と高校の間でステップアップがあります。

中学校はまだ生徒だけで物事を進めるのが難しい面があるため、生徒を主体としながら教員と一緒に行事や日常の活動をつくり上げていますが、高校では一歩進んで、教員の手も離れたところで生徒たちだけで行事の運営を行っています。クラス単位での学習や取り組みが主体の中学校に対して、高校段階では多様な選択講座を設け一人ひとりが学びの道筋を創って行きます。

年齢や発達段階に応じた適切な環境を用意するために、本校では中学校と高校を区切っています。中学校の3年間だからこそできる体験を通じての成長を大切と思っていただける方は、ぜひ和光中学校を選んでいただけると嬉しいです。

編集部

亀山先生、本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

和光中学校副校長の亀山先生と生徒の様子

▲亀山先生を挟んだ楽しそうなお写真!学校の雰囲気の良さ、生徒と先生の信頼関係の厚さがうかがえます

和光中学校の生徒・保護者の口コミ

和光中学校の校舎外観

ここでは、和光中学校に通う在校生や卒業生、保護者の方からの口コミを一部抜粋して紹介します。

(在校生)自由な校風。のびのびと自分の個性を発揮して楽しく学校生活を送れている。自由な環境だからこそ、自由の本質的な意味を考えさせられる場面が多くあり、自分だけでなく周りの人のことも考えて生徒主体でルールを考えていけるのも魅力。

(在校生)知識を暗記するのではなく、自分で調べて身に付けていける学習環境がある。皆で話し合いをする機会も多いため、考える力、自分の意見を表現する力が身に付く。

(卒業生)他の学年との結びつきも強い、誰もがありのままでいられる学校。

(保護者)学校生活を通じて子どもに自己肯定感や多様性を受け入れる力が身に付いていると感じる。

(保護者)強制的に勉強させられる空気はないが、学びの本質的な楽しさが感じ取れる授業が行われており、自然と学びに対して前向きな姿勢が生まれている。先生も、分からない生徒に対して熱心にサポートしてくれる。

口コミからは異口同音に同校の自由な校風に対する評価の声が聞かれました。自己肯定感の高まりや生徒同士の結びつきの強さ、考える力の向上など、インタビューの内容を裏づけるような口コミが多々あがっていたことからも、同校の教育方針が学校全体にしっかりと浸透していることが伺えます。

和光中学校へのお問い合わせ

和光中学校の校門

運営 学校法人和光学園
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電話番号 042-734-3401(代表)
問い合わせ先 https://wakoj.wako.ed.jp/about/contactus
公式ページ https://wakoj.wako.ed.jp/

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