自己肯定感を高める「ヴェリタス城星学園高等学校」の探究学習と心の教育

2025年度より共学化が決定!

ぽてん読者の皆さまに、いま注目の学校を紹介するこの企画。今回は大阪市中央区にある私立高校「ヴェリタス城星学園高等学校」を紹介します。

自己肯定感を高める探究的な学びの時間「学びの森」と心の教育に力を入れる同校には、生徒が伸び伸びと成長できる環境が用意されています。そんな同校は、2025年度からの共学化を決定しています。

今回は、同校のシスター古屋校長に、同校が大切にしている教育について話を伺いました。

生徒の自己肯定感を育む「ヴェリタス城星学園高等学校」

ヴェリタス城星学園高等学校の小聖堂

編集部

まずは、ヴェリタス城星学園高等学校の建学の精神について教えてください。

古屋校長

本校の建学の精神の根底にあるのは、「生徒が幸せになる」ということです。幸せになるためには、教育が何よりも大切だと考えています。ここでの「教育」とは、勉強ができる・知識があるということではなく、生徒それぞれが「自分が存在していること自体が幸せである」ということに気づけるようにすることです。

「自分が存在していること自体が幸せである」という本質的な自己肯定感が身につけば、生徒は自ら学び、自分の価値観で生き方を選び取れるようになります。

“やらされている”と感じているときはどんなことも身につきません。自ら進んで学ぼうとするときに本当の意味で深い学びが得られると考えています。

編集部

教育理念についても教えていただけますか?

古屋校長

本校は創立者が聖ヨハネ・ボスコが大切にしてきた「Assistenza(アシステンツァ)」(イタリア語)というメソッドを通じて教育理念の実現を目指しています。アシステンツァとは「そばにいる」「常に寄り添う」という意味を持ちます。

「そばにいる・寄り添う」というのは、ただ物理的に先生が生徒のそばにいて面倒をみるということではありません。身近な大人である先生が、「生徒たちにとって大きな魅力ある存在として共にいること」、生徒が先生の姿を見て、「大人になるって素晴らしい」「この先生から学びたい」と思い、また、そういう人物から学ぶことだと考えています。

そして、「そばにいる・寄り添う」のうえで大切なことは、「今日はちょっと元気がない」「今日は少し眼差しが違う」など、先生が生徒の心の変化に気がつくことです。生徒の出すさまざまな信号に気づくことが、本当の意味で生徒に寄り添うことになると考えています。

自己肯定感を育み、自ら発信するための自信をつける探究学習「学びの森」

学びの森で活動する生徒たち

▲「学びの森」では、縦割りのクラスでさまざまなプログラムを進める

編集部

ヴェリタス城星学園高等学校の探究学習について教えてください。

古屋校長

本校では、“自ら考え、発信できる人物を育成する”をテーマに「学びの森」という探究的な学びの時間を週4時間、時間割に組み込んでいます。

導入当初は「学びの森」の時間を減らして英語や数学にあてた方が良いという声が生徒や保護者から聞かれました。ですが、今では保護者の方から「帰宅後、『学びの森』の話をする子供の顔が生き生きしている」という声をいただいています。

編集部

生徒の自己肯定感が上がっている証拠、とも言えますね。

御校の探究学習では“自ら考え、発信できる人物を育成する”を目指しておられるとのことですが、自己肯定感を高めることも狙いの一つなのでしょうか?

古屋校長

そうですね。社会全体を見渡してみても、自ら考え発信できる人が少ないと感じるのですが、その理由は自己肯定感の低さにあるのではないかと思っています。

現代の日本は競争社会の様相が強く、「勝ち組」・「負け組」といった乱暴な評価が行われたり、偏差値の高い大学や有名企業に入ることに価値を置くことが多い社会になっていると感じます。ですが、いわゆる「勝ち組」の人でも、自己肯定感が低いためか、自分から発信できる人というのは少ないと思っています。

本校の「学びの森」では、このような一面的な価値観を生徒に植えつけないためにも、生徒が本質的な自己肯定感を身につけ、自分で考えて発信できるような工夫をしています。

興味に応じて選べる複数のプログラム。生徒が自分で成長を実感できることが重要

パソコンを使い学習する生徒

編集部

「学びの森」では、具体的に、どのようなことをされているのでしょうか。

古屋校長

まず、生徒が自分の興味に応じて選択できるよう、多彩な講座を用意しています。

例えば東京農業大学と連携した「オホーツク学」と名付けられた講座では、大学とともに他校とも連携しながら、環境共生や農業、漁業などをテーマにした探究学習を行います。この講座では、夏休みの期間を利用して実際に他校の生徒ともに北海道オホーツクへ行き、探究学習において与えられた課題の解決策を、現地での大学の学びや地域の方々との交流などを通じて考える機会もあります

また、歩いて国土を測量し日本地図を作った伊能忠敬をテーマにした講座では、伊能忠敬が歩いた大阪の道を実際に歩き、「どのようにしてあの時代に正確な地図を作れたのか」を考え、研究内容を発表しています。

東京農業大学と連携したオホーツク合宿のようす

▲東京農業大学と連携した「オホーツク学」での合宿のようす

別のプログラムでは音について取り上げ、好きな音・嫌いな音について、「なぜ好きなのか・嫌いなのか」を考えていました。実は、このプログラムは私にとっても学びになりました。

踏切の音が嫌いな一人の生徒が、「踏切の音は、人に不快感を与える不協和音だ」と気づき、そこから「なぜ不快を与える音を使っているのか」を調べました。すると、人が線路に近づかないようにするために、あえて人に不快感を与える音を採用しているとの答えにたどり着いたのです。

こうした些細な疑問や違和感を無視せず、一度立ち止まって能動的に調べる姿勢は、学びの森が目指す姿です。

他にも、色々な種類のカボチャの種をまいて成長の違いを観察したり、学校のトイレの改装を考えたり、ミュージカルを演じたり、韓国語を学ぶというプログラムもあります。

編集部

学びの森で学んだ成果というのは、どのようにして評価されるのでしょうか?

古屋校長

私自身は、「生徒が自分でやろうとした姿勢」がもう“満点”に値すると考えています。他者と比較するのではなく、生徒それぞれが自分の過去と比較して成長していたら、満点です。

学びの森では「いろいろなことができる方がいい」「早い方がいい」「綺麗ならいい」のような、よくある評価の枠を外しています。生徒が自分自身の成長を認識できる、それが本質的な自己肯定感につながると考えています。

世界の問題に目を向ける、ヴェリタス城星学園高等学校の心の教育

編集部

ヴェリタス城星学園高等学校の「心の教育」について教えてください。

古屋校長

本校の「心の教育」は、世界のさまざまな問題を“自分ごと”として受け止め、考え行動できる人間を育成するという目的で行っています。自分ごととして捉えられるようになるために、まずは実情を知ることからはじめています。

例えば、本校の元教員で、今はミャンマーで迫害されている少数民族のサポート活動のためのNPO法人を立ち上げている方がいます。その方の協力で、実際に現地の生徒たちと本校の生徒をオンラインで繋ぎ、話をする機会を得ることが出来ました。

日本では、ミャンマーの社会問題が取り上げられることが少なく、知ろうとしなければミャンマーの状況を知ることが出来ないかもしれません。本校ではこのような知るための機会を設けるだけでなく、生徒に「世界で今何が起きているのかを知るためには、日本の新聞だけでなく、外国の新聞も読めるようになりなさい」と話しています。

そのためには、英語力が必要です。授業で英語を学習するだけではなく、自分が知りたい情報を吸収するために、英語力を伸ばしたい、と思えたら素敵ですよね。

編集部

自ら進んで学ぶのと、やらされているのとでは吸収力が違うというお話にもつながるわけですね。

ちなみに心の教育について、生徒の皆さんの反応はいかがですか?

古屋校長

現実に世界で起こっている問題を知り、自分ごととして受け止めたことで、心のあり方が変わっていると思います。

以前、ミャンマーからタイに逃れた子どもにインタビューをした際、本校の生徒が「好きなクラブ活動は何か」と尋ねたことがありました。現状について聞いて知っていても、自分ごととして考えられていない、だからこその質問です。

彼らは、命をかけて必死で逃れたわけですから、クラブ活動なんてする余裕はなく、ただそれでも勉強したいと頑張っている子どもたちです。でも日本に住む生徒たちは、そういう境遇になったことがないので、想像できません。

自分ごととして考えられていないと相手を傷つけることもある、ということを改めて学べたのではないかと思います。

編集部

ミャンマーの子供たちと関わる機会をきっかけに、生徒のみなさんに何か変化はありましたか?

古屋校長

生徒が毎月、自主的にミャンマーの子供たちを助けるための募金活動をしています。また、中にはこの活動がきっかけで、大学進学後、ミャンマーでのボランティア活動に参加した生徒もいます。

ヴェリタス城星学園高等学校からのメッセージ

ヴェリタス城星学園高等学校の古屋校長

▲今回取材に応じてくださった、古屋校長

編集部

最後に、ヴェリタス城星学園高等学校に興味を持つお子さまや保護者の方に向けてメッセージをお願いします。

古屋校長

本校の一番の願い、それは「生徒に幸せになってほしい」ということです。現代は混沌とした時代ですが、それでも自分が幸せであることが他者と幸せを分かち合うことにつながると考えています。人と人が分かち合うことが平和につながります。幸せな人を育てる本校の教育を通じて、大きな平和を実現できると思っています。

保護者の皆様には、ご自分のお子さんに無限の可能性があるということを信じていただきたいと思います。子どもたちが無限に持っている豊かさ、その宝を発見することが私たち大人の使命だと私は考えています。

また、2025年度から本校は男女共学化します。女子生徒だけでなく男子生徒の皆さんも、ぜひ本校に入学して、自分がどれだけの豊かさを持っているかを体感していただきたいと思います。

編集部

古屋先生、本日はありがとうございました。

ヴェリタス城星学園高等学校の制服

▲ヴェリタス城星学園高等学校は、2025年度からの共学化が決まっている

ヴェリタス城星学園高等学校の進学実績

ヴェリタス城星学園高等学校の図書室

▲生徒の進学を支える、明るい雰囲気の図書館

ヴェリタス城星学園高等学校の過去3年間の進学実績は、国公立では奈良女子大学や滋賀大学、大阪市立大学、私立では上智大学、関西大学、関西学院大学、近畿大学などが挙げられます。

また、大阪医科薬科大学や神戸薬科大学、大阪芸術大学など専門性の高い大学に進学した生徒もいます。

■進路実績(ヴェリタス城星学園高等学校公式サイト)
https://www.veritas.josei.ed.jp/after_graduation

ヴェリタス城星学園高等学校の卒業生・保護者の口コミ

ヴェリタス城星学園高等学校のグラウンド

ここでは、ヴェリタス城星学園高等学校の卒業生・保護者の口コミを一部抜粋してご紹介します。

(卒業生)幼稚園児から高校生まで、全員が集まって開催される学園祭「城星フェスタ」がとても盛り上がり楽しかった!上下関係がなく、仲の良い素敵な学校です。

(保護者)とてもアットホームで先生との距離が近く、先生は生徒全員の名前を覚えているようです。カトリックの精神に基づき、とても優しい子に育つと思います。校長先生もいつも話しかけてくださり、面談して話を聞いてくださいます。

(保護者)お世話になりました。先生と生徒の距離が近く、先生も親身になって対応してくださいます。卒業しましたが、ほんとにいい学校だったと親子共々感謝しています。

口コミでは、同校のアットホームな様子について評価する声が多く見られました。みんなで和気あいあいと、大らかに高校生活を送りたい方におすすめの学校と言えるでしょう。

ヴェリタス城星学園高等学校の基本情報

学校名 ヴェリタス城星学園高等学校
所在地 〒540-0004 大阪市中央区玉造2-23-26
電話番号 06-6941-5977
公式サイト https://www.veritas.josei.ed.jp/

※最新の情報は公式サイトでご確認ください