東京学芸大学附属竹早中学校の外観

未来の学校を創るプロジェクト進行中!東京学芸大学附属竹早中学校の主体性と多様性を育む探究学習

この記事では、特色ある教育に取り組む注目の学校として、東京都文京区にある共学の国立中学校「東京学芸大学附属竹早中学校」をご紹介します。

国立の学校として地域のモデル校の役割を担う同校は、産官学連携で学校システムを変革する「未来の学校 みんなで創ろう。PROJECT」や、生徒が選んだテーマに基づいて探究する「竹早Dプロジェクト」など、主体性や学びの多様性を意識した先進的な教育に取り組んでいます。

また、理数教育では身近な事象に理数的な観点からアプローチすることで生徒の探究心を刺激。実験室が各学年ごとに設置されるなど、教育設備も充実しています。

今回は、東京学芸大学附属竹早中学校の教育理念や特色ある教育について、校長の馬場先生、副校長の森先生、そして研究部主任の上園先生にお話を伺いました。

主体性と多様性を育むことが東京学芸大学附属竹早中学校の理念

東京学芸大学附属竹早中学校の生徒がグループで課題に取り組むようす

編集部

はじめに、東京学芸大学附属竹早中学校の教育理念や特色についてお聞かせください。

馬場先生

本校は、公立学校と同様に普通教育を行う公教育を担うとともに、教員養成を目的とする大学の附属学校として教育の理論と実践に関する研究・実証の場、そして国立の学校として地域のモデル校になるという役割を担っています。

教育目標として掲げているのは「自ら求め、考え、表現し、実践できる生徒」や「他人の立場や意志を尊重できる、視野の広い生徒」の育成で、それぞれ「主体性」と「多様性」と言い換えることもできるでしょう。

編集部

馬場先生は校長として、これからを生きる子どもさんにどのような人になってほしいとお考えですか?

馬場先生

まずは、真理を追求できる人です。特に現在のように情報があふれる時代においては、その真偽真贋を判断する力が求められます。インターネットなどに溢れる情報を鵜呑みにするのではなく、信頼できる証拠があるのか、論拠があるのかを自分で確かめる能力や態度、習慣を身につけてもらいたいと考えています。

また、好きなことを深く学び追求することも大事ですが、苦手なことに一歩踏み出すことも同じくらい大切です。失敗は人を賢くし、挫折は人を強くし、遠回りは人生を豊かにしてくれます。恐れずに挑戦できる人であってほしいですね。

さらに、これからのAIの時代においては、人間に求められる資質や能力を再定義したり、AIをどう活用するのかを考えることも必要です。教員としては、そのようなことを踏まえた教育目標の設定をしていきたいと考えています。

「問い」を立て、多様な人と協力する東京学芸大学附属竹早中学校の探究学習

東京学芸大学附属竹早中学校のDルーム

編集部

主体性や多様性を重視する東京学芸大学附属竹早中学校ですが、それを実現するための教育プログラムにはどのようなものがありますか?

上園先生

私たちは、真の主体性とは「問い」を持ち、自分の考えだけでなく多様な価値観や人々と協力し合って物事を成し遂げていくことだと考えています。本校には附属の幼稚園と小学校もあるので、中学校まで11年間かけて主体性を育む教育を行っており、中学校はその最終仕上げとして主体性を発揮する場面をたくさん設けています。

なかでも大きなプロジェクトとして、産官学連携プロジェクトの「未来の学校 みんなで創ろう。PROJECT」や、学びの多様性に着目し生徒が自由に探究テーマを選ぶ「竹早Dプロジェクト」があります。

産官学で学校システムを変革する「未来の学校 みんなで創ろう。PROJECT」

編集部

「未来の学校 みんなで創ろう。PROJECT」について詳しくお聞かせいただけますか?

上園先生

これは、学校現場をもっとオープンにし、学校と企業、自治体などがワンチームとなって教育システムの変革に挑戦する産官学連携プロジェクトです。

企業には40社から50社ほど参加いただいており、企業の方に教室にお越しいただいて生徒と一緒に未来の学校のあり方を考えています。

例えば、「未来の教室を考える」というテーマでは、教育システムやオフィス構築を手がける内田洋行さんと連携しました。内田洋行さんが考えた未来の教室を「SUGOI(すごい)部屋」として本校に実装し、生徒と教員が企業にフィードバックを行い、より良い未来の教室づくりに役立てています。

SUGOI部屋で生徒が授業を受けるようす

▲壁一面に巨大スクリーンを備えた「SUGOI部屋」。

学びの多様性を大切にし生徒がテーマを決める「竹早Dプロジェクト」

編集部

「竹早Dプロジェクト」についても詳しく教えていただけますか?

上園先生

学びの多様性を大切にし、生徒が主体となってやりたいことを実現する課外活動のことで、Dream(ワクワクする)、Decide(自分で決める)、Develop(成長する)の頭文字をとって「Dプロジェクト」と名付けました。

テーマは自由なので、ゴミを減らしたい、南極に行きたい、竹早中学校のオリジナル弁当を作りたい、米粉を普及したい、などさまざまな探究が生まれています。

東京学芸大学附属竹早中学校の生徒が幼稚園児にプレゼンするようす

▲米粉の普及をテーマにした生徒は、附属幼稚園の子どもに対して米粉の魅力をプレゼンした。

編集部

テーマは自由ということですが、テーマを選ぶうえで生徒さんに意識してもらっていることはありますか?

上園先生

どのテーマにおいても「社会問題の改善や社会貢献につながる」という視点を持ってほしいと伝えています。

例えば環境問題に取り組む場合、自分でエコなことをするだけでは活動の意義が薄いと考え、エコな取り組みが普及するような宣伝方法まで考えます。鉄道をテーマにしたグループは、鉄道がもたらす社会への影響や鉄道が持つまちおこしの力などに着目していました。

編集部

プロジェクトを進める際、専門家や企業に協力してもらうことも可能なのでしょうか?

上園先生

はい。単なる調べ学習で終わらせず、積極的に動いて情報を集めることもこのプロジェクトが大切にしている点です。

そのため、各分野で先駆的な取り組みをしている方の知恵を借りる際には、教員が生徒と専門家の橋渡しを行っています。

竹早中学校のオリジナル弁当に取り組んだ生徒はお弁当メーカーの方とオンラインでお話しし、人気が出るお弁当のおかずについて教えてもらっただけでなく、損益分岐点の考え方まで伝授してもらいました。

東京学芸大学附属竹早中学校の生徒が専門家と話すようす

▲環境問題をテーマにした生徒は、地元団体「文京ecoカレッジ」の講師からサポートを受けた。

Dプロジェクトで不要になったパソコン室をリニューアル

東京学芸大学附属竹早中学校のDルーム

編集部

ほかにもDプロジェクトで生まれたユニークな取り組みがあればご紹介ください。

上園先生

生徒と教員と企業が一緒になってパソコン室をリニューアルしたプロジェクトをご紹介します。

1人1台デジタル端末を持つようになったことで、パソコン室は役割を終えつつあります。そこで、使われなくなったパソコン室を「Dルーム」としてリニューアルすることになりました。

子どもたちからは、個別の学習に取り組めるスペースや、みんなで協力しながら物事に取り組めるスペース、クリエイティブなものやアイディアが生まれるようなスペースにしたいという意見が出され、立ったままミーティングできる場所や掘りごたつがある教室のイメージ図が出来上がりました。

そこから、空間づくりのノウハウを持つコクヨさんに協力いただき、ワークショップを通じて部屋づくりのイメージをより具体的にしていきました。

編集部

自分たちで作ったDルームを使用する生徒さんの様子はいかがですか?

上園先生

Dルームは一部が芝生のようなマットになっており、寝転んでもいいくらいリラックスできる空間に仕上がりました。生徒にとって、自分の教室の次に居心地のいい場所になっているようです。

Dルームで授業をすると言うと、みんな喜んで集まってきますよ。

東京学芸大学附属竹早中学校のDルーム

▲芝生のようなマットが敷かれたスペースは、生徒が気軽に集える人気の場所になっている。

プロジェクトの成果発表会では大学生顔負けのプレゼンも

東京学芸大学附属竹早中学校の生徒が実験室で発表するようす

▲探究学習の成果を発表する機会もたくさん。

編集部

Dプロジェクトに取り組む生徒さんを見て、先生方はどのような感想をお持ちですか?

馬場先生

Dプロジェクトでは、生徒たちが自ら課題を設定し、主体的に取り組んだ研究や実践が行われています。また、生徒たちが自由研究・卒業研究の成果を発表する文化研究発表会では、学芸大学の学生にも見せたいような本格的なものもあり、感心させられます。

上園先生

何かを追求する姿勢はDプロジェクトを通じて確実に培われていますし、好きなことに挑む子どもたちの姿はキラキラしていると感じますね。

また、Dプロジェクトは主に2年生が中心となって活動していますが、1年生が加わり、それを引き継いでいくという流れもできています。

東京学芸大学附属竹早中学校が実践する工夫を凝らした理数教育

東京学芸大学附属竹早中学校の生徒が授業を受けるようす

編集部

竹早中学校の理数教育について、特徴的な取り組みをお聞かせください。

上園先生

本校の理数教育の特徴は、日常生活との結びつきを重視し、生徒の探究心を刺激する授業を展開していることです。また、実験を重視し、科学的思考力の育成に力を入れています。

数学の授業では身近な現象を数学的に考察する機会を多く設けています。例えば、プロジェクターを遠ざけていくと画面の比率がどう変化するかを観察し、そこから数学的な公式を導き出す試みをしました。

また、ピザの配達を例に取り、「なぜ30分以内に配達するのか」という問いを立て、時間とともに下がるピザの温度を公式を用いて学ぶ授業も行いました。

東京学芸大学附属竹早中学校の生徒が黒板に計算結果を書くようす

編集部

身近なものに数学的観点からアプローチするのは面白い取り組みですね。生徒さんの反応はいかがですか?

上園先生

日常生活と結びついた題材なので、「なるほど、こんなところに数学が使われているんだ」という気づきがあります。また、自分たちで考え、発見する喜びを味わえるので、数学への興味関心が高まっています。

各学年にひとつの実験室。実験方法そのものを生徒が考えることも

東京学芸大学附属竹早中学校の先生が実験するようす

▲実験を見せる先生の手元をモニターに映すなど、授業ではICTも活用。

編集部

理科の授業ではどのような工夫をしていますか?

上園先生

理科では「なぜだろう」「不思議だな」という疑問を大切にしています。また、各学年ごとに専用の理科室があるという恵まれた環境を活かして、頻繁に実験を行っています。

特徴的なのは、実験の方法自体を生徒たちに考えさせる点です。「この目的を達成するために、どのような実験装置や器具を使えばいいか」というところから生徒たちが考え、実験のコンセプトマップを描いています。

編集部

生徒が実験方法まで考えるのは珍しい取り組みですね。難しくはないですか?

上園先生

最初は戸惑う生徒もいますが、この過程こそが科学的思考力を育むのに重要だと考えています。教員がヒントを出しながら、生徒たちの思考を導いていきます。失敗も大切な学びの機会と捉え、トライ&エラーを推奨しています。

この方法により、生徒たちは単に実験の手順を覚えるのではなく、なぜその方法で実験するのか、どのような結果が予想されるのかを深く考えるようになります。

東京学芸大学附属竹早中学校の生徒が調理実習するようす

▲理数授業だけでなく、あらゆる教科で工夫を凝らした授業を展開。

東京学芸大学附属竹早中学校の生徒が映像を見ながら体育の授業を受けるようす

▲体育の授業では動画アプリを活用し、プレーを振り返っている。

東京学芸大学附属竹早中学校からのメッセージ

東京学芸大学附属竹早中学校の校舎と行事の風景

▲運動会や文化祭は、生徒が団結力を発揮し大いに盛り上がる。

編集部

竹早中学校の校風や生徒さんの特徴について、先生方はどのような印象をお持ちですか?

森先生

本校の大きな特徴の一つは、教員と生徒の関係が非常に近いことです。これは、卒業生の高い愛校心にもつながっています。多くの卒業生が学校を訪れてくれますし、自分の子どもを本校に入学させる卒業生も少なくありません。

馬場先生

知的好奇心が旺盛であり、知的にチャレンジングなことへの取り組みに意欲的だと感じます。卒業後も多方面で活躍しており、竹早中学校で身につけた主体的に学ぶ姿勢や多様な価値観を受け入れる柔軟性を生かしていることが見て取れます。

東京学芸大学附属竹早中学校の馬場校長・森副校長・上園先生

▲取材にご対応いただいた馬場校長(左)・森副校長(中)・上園先生(右)

編集部

最後に、これから受験を考えている生徒や保護者の方へメッセージをお願いします。

森先生

本日は、近年の取り組みについて中心にご紹介させていただきましたが、本校は単に新しいことを追求しているだけではありません。

例えば、本校ではずっと前から子どもたちが自分で課題を見つけて研究することを推奨してきました。また、理科の実験室を各学年ごとに設けることや、社会科や国語専用の教室、話し合いに特化できるグループ学習室など設備面での工夫は校舎を改築した20年前から行われていました。

このように、世の中が変わっても変えてはならない教育の本質はそのままに、時代に応じた新しい取り組みを融合させる「不易流行」の精神で教育を行っていきたいと考えています。

上園先生

本校は生徒の「やりたい」という気持ちを大切にし、それを実現するためのサポートを惜しみません。自分の興味関心を深め、新しいことにチャレンジしたい方には最適な環境だと言えます。一緒に、未来の学校、そして未来の社会を創っていきましょう。

馬場先生

本校は、生徒の皆さんが自分の可能性を最大限に引き出し、未来を切り拓く力を身につける場所です。単に知識を詰め込むのではなく、自ら考え、行動し、そして多様な人々と協働する力を育てています。

ぜひ、竹早中学校で充実した3年間を過ごし、自分の未来を築いていってほしいと思います。

編集部

本日は、ありがとうございました!

東京学芸大学附属竹早中学校の進学実績

東京学芸大学附属竹早中学校の図書館

東京学芸大学附属竹早中学校は、生徒が興味関心や将来の目標に合わせて主体的に進路を選択できるような支援を行っています。

近年は卒業生の5割前後が附属高校に進学しており、難関校を含む私立や、県立・都立高校への進学者もいます。

■近年の進学先(東京学芸大学附属竹早中学校の公式ページ)
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~takechu/course/

東京学芸大学附属竹早中学校の在校生・卒業生・保護者の声

東京学芸大学附属竹早中学校のグラウンド

最後に、東京学芸大学附属竹早中学校の在校生・卒業生・保護者の声を紹介します。

(在校生)ICTを活用した授業が多く、プレゼンテーション能力が自然と身につきます。また、グループ学習を通じて協調性も養えるので、将来役立つスキルが身につくと感じています。

(卒業生)竹早Dプロジェクトでは、自分の興味のあるテーマを深く追求できるだけでなく、他の生徒の多様な関心にも触れられて視野が広がりました。この経験は高校でも役立っています。

(卒業生)卒業後も学校に愛着があり、文化研究発表会などで後輩たちと交流する機会があるのが嬉しいです。竹早での経験が今でも自分の原動力になっています。

(保護者)先生方が生徒一人ひとりの個性を尊重し、丁寧にサポートしてくれます。子どもが自信を持って自分の意見を発表できるようになり、成長を実感しています。

(保護者)幼小中連携教育のメリットを感じています。長期的な視点で子どもの成長を見守れるだけでなく、異年齢交流を通じて社会性も身についているようです。

口コミでは、Dプロジェクトをはじめとする同校の探究学習が、その後の進路においても役立っているという声が目立ちました。

東京学芸大学附属竹早中学校の生徒がケーキを作るようす

▲部活は文化部も運動部も盛んに活動。ケーキクッキング部というユニークな部活も。

東京学芸大学附属竹早中学校の生徒がバレーボールをするようす

▲バレーボール部は地区大会で実績を残している。

東京学芸大学附属竹早中学校へのお問い合わせ

運営 国立大学法人東京学芸大学
住所 東京都文京区小石川4-2-1
電話番号 03-3816-8601
問い合わせ先 https://www2.u-gakugei.ac.jp/~takechu/contact/
公式ページ https://www2.u-gakugei.ac.jp/~takechu/

※詳しくは公式ページでご確認ください