教養を活かす力が身に付く「東洋大学京北中学高等学校」の教育とは | 中高一貫校

ぽてん読者の皆様に、今注目を集める学校を紹介するこの企画。今回紹介するのは、東京都文京区にある私立中高一貫共学校の「東洋大学京北中学高等学校」です。

東洋大学京北中学高等学校は1898年(明治31年)に創立された、120年超の歴史を持つ伝統校です。開校以来男子校として歩みを進めていましたが、2015年に東洋大学の附属校となり、男女共学校として新たなスタートを切りました。

同校では創立者である井上円了氏の考えに基づく「哲学」を根幹に据えた教育を特徴としており、中高6年間を通じて哲学を学ぶ多様な機会を提供しています。また近年では理数教育にも重点を置いており、東洋大学と連携した「未来の科学者育成プロジェクト」など独自性のある取り組みを展開しています。

今回はそんな東洋大学京北中学高等学校の教育の中心にある「哲学」の考え方や、哲学教育、理数教育といった独自の教育プログラムについて、広報部長の井出先生、哲学教育推進部長の福田先生、理数教育推進委員会の赤石先生にお話を伺いました。

知識を活かせる人を育てる、東洋大学京北中学高等学校の哲学教育

東洋大学京北中学高等学校の井出先生

▲広報部長の井出先生

編集部

御校の掲げる「諸学の基礎は哲学にあり」の建学の精神について、どういうお考えなのかを教えてください。

井出先生

世の中にはさまざまな学問がありますが、それらを学ぶ意義は知識を身につけることそのものではなく、身につけた知識を使ってどうするかを“考える”ことにあります。哲学の本質は、その“考える”ことです。哲学とは学問に限らず日常に起こるすべての事象に対して深く考える習慣を身につけることであり、だからこそ学問の学びを実のあるものとする上で「哲学的に考える力」を養うことが重要である、というのが本校の考えです。

哲学的に考える力は、人生をより良くしていくためにとても重要な役割を果たします。例えば受験、就職など自身の人生が大切な局面を迎えた際に深く考えて判断できることは、今後の長い人生をより豊かにしていくものだと考えています。

編集部

御校の教育理念の「本当の教養を身に付けた国際人の育成」の「本当の教養」という部分も、哲学の”考える”ことに紐づいた考え方なのでしょうか。

井出先生

その通りです。本校の唱える「本当の教養」には2つの側面があります。1つが、まさに知識を得ること。そしてもう1つが、得た知識を自分のためだけでなく、周囲の人、ひいては社会のために活用できることです。人に対して優しさを持って自身の力を活用できる人こそが、本当の教養を身につけているのだと考えます。

これは、円了先生の「向上門と向下門」の考え方に基づいています。向上門というのは「本当の幸福とは何か」という真理を求めることを意味し、向下門というのはその実現のためにどうするのかを突き詰めることを意味します。本校の教育を通じて、知識を身につけるだけでなくそれをグローバルに活かせる本当の教養を備えた人材を育んでいくのが目標です。

中高ともに哲学・倫理が必修科目。自己理解を深め社会における在り方を学ぶ

東洋大学京北中学高等学校の福田先生

▲哲学教育推進部長の福田先生

編集部

そんな御校の教育理念を象徴する「哲学教育」の特徴を教えてください。

福田先生

哲学自体を教える学校は他にもありますが、中高ともに必修科目としているのは、哲学の学校である本校ならではの特徴です。

中学校では週1回、「哲学」を必修科目として学んでいます。1年生では「他者と自己」、2年生では「自己」をメインテーマとし、他者から見た自分を見つめ直すことを通じ、他者との関わり方や自己理解に関する視点を深めています。3年生は「自己と社会」をメインテーマとし、生命倫理やジェンダー、商品開発など幅広い観点から自己の社会における在り方を考えます。

高校では「倫理」と「公共」を基本としながら哲学教育を実践しています。先ほどもあったように、本校の考える哲学の本質は、知識を得るだけでなく、それを実社会に役立てていくことです。そのため倫理で「原理」を求め、それをもとに政治経済という「現象」を追うという実践的な学びを展開しています。

裁判傍聴に合宿。多彩なプログラムで哲学に触れ“深く考える”を癖づける

東洋大学・井上円了ホールで行われる「哲学の日」の様子

▲東洋大学の井上円了ホールで行われる同校の「哲学の日」

編集部

必修科目として授業の中で行うものの他にも、哲学を学ぶ機会はあるのでしょうか?

福田先生

高校を中心に、年間を通じてさまざまな希望選択制のプログラムを展開しています。例えば「刑事裁判傍聴学習会」は約20年にわたって実施する本校の伝統的な哲学教育のプログラムです。裁判傍聴自体は珍しい取り組みではないかもしれませんが、本校の場合裁判所だけでなく更生保護施設にも訪問し、罪を犯してしまった人間がどう立ち直るかまでを含めて、より深く考える機会としています。

他にも、中学3年生から参加できる哲学ゼミの合宿や坐禅体験など学校の外で行う取り組みもあります。その中の1つ、創造力育成プログラム「哲学ラボ」では、2050年問題をテーマにオランダのライデン大学を訪れ、大学生や高校生との対話を行います。

編集部

毎年実施されている「哲学の日」は、御校の哲学教育の中でどのような位置づけなのでしょうか。

福田先生

「哲学の日」は丸1日かけて全校生徒で1年間の哲学の学びの成果を共有し合う集大成の場です。円了先生の生誕日である3月18日に毎年実施しています。

全体での発表の場は年1回ですが、それ以外にも「向上門と向下門」の考えに基づき、アウトプットの場は設けるようにしています。例えば、哲学ラボではパテントコンテスト(※)に応募したり、グラミン銀行のエグゼクティブマネージャーの方に研究成果をプレゼンしたりと、外部からのフィードバック評価をもらう機会も重要視しています。
※パテントコンテスト…高校生・大学生等を対象とした発明・デザインのコンテスト。入賞した作品は特許庁への出願から特許権、意匠権取得までの手続きも体験できる。

東洋大学京北中学高等学校の生徒が「パテントコンテスト」授賞式に参加する様子

▲2023年度の「パテントコンテスト」では、同校の生徒が優秀賞を受賞

グラミン銀行のエグゼクティブマネージャーの方に研究成果をプレゼンする様子

▲グラミン銀行のエグゼクティブマネージャーに「2050年問題」についての研究成果をプレゼンする生徒も

編集部

御校の哲学教育を通じて感じる生徒の皆さんの変化などはありますか?

福田先生

生徒の進路選択や将来の目標設定に少なからず影響を与えているのではないでしょうか。実際、哲学教育で学んだことをきっかけに研究したいことが明確になったという話を生徒から聞くこともあります。また、「本当に人の役に立つかどうか」を目標設定のポイントに置いている生徒たちの姿を見ると、本校の哲学の本質が根付いていると感じますね。

東洋大学の附属校の強みを活かした「未来の科学者育成プロジェクト」

東洋大学京北中学高等学校の赤石先生

▲理数教育推進委員会の赤石先生

編集部

続いて理数教育の特徴について伺います。まずは御校の理数教育の大きな特徴である「未来の科学者育成プロジェクト」についてご説明いただけますか?

赤石先生

「未来の科学者育成プロジェクト」は2019年に開始した、中学3年生を対象とした理数教育の取り組みです。東洋大学と連携し、大学の教授と一緒に6チームに分かれ1年かけて何度も実験をしながらさまざまな研究を進めていくという、附属校の強みを活かした活動となっています。

編集部

6チームの中でも印象に残っている活動はありますか?

赤石先生

毎年本当にいろいろな取り組みを行っているのですが、直近ですと、動物の運動解析をするという取り組みが印象的でした。実際に動物園に行って動物の動きを動画で撮影し、それをパソコンに取り込んで動きを数値化するという、動物の運動を科学的に考えるとても面白い取り組みでした。

東洋大学京北中学高等学校の「未来の科学者育成プロジェクト」の取り組み例

▲「動物の動きを科学する」未来の科学者育成プロジェクトの取り組み

赤石先生

プロジェクトの中には、立ち上げ当時から継続しているものもあり、東洋大学の教授と生徒とのつながりはより強固なものになってきました。中学1・2年の生徒たちも先輩の姿を見てあこがれを抱いて、プロジェクトに応募してきます。

また天然酵母菌を用いたパンづくりは、2019年当初から継続している取り組みの1つです。購買で販売できるパンをつくることを目標に前年の内容を引き継ぎながら毎年アップデートしています。2022年度、2023年度にはジュニア農芸化学会という学会にも参加しており、本校の活動を外に向けて発信するという点でも重要な役割を果たしてくれました。

東洋大学京北中学高等学校の「未来の科学者育成プロジェクト」の取り組み例

▲2019年から続く、天然酵母を使ったパン作りの取り組み

編集部

「未来の科学者育成プロジェクト」が今年で6年目を迎える継続的な取り組みだからこそ、そういった進化も生まれているんですね。

赤石先生

6チームが独自の研究をするため最初はそれぞれのチームごとに動いていたのですが、徐々にチームを越えて連携する動きも出てきました。連携をすることでさらにそれぞれのチームの活動が広がりを見せるなど、継続しているからこその良い変化が生まれていますね。

編集部

「未来の科学者育成プロジェクト」も、哲学教育と同様、発表の機会はあるのでしょうか。

赤石先生

毎年3月に、中学校全校生徒に向けて各チームの研究内容を発表する報告会を実施しています。そこには大学の先生や来賓の方もお招きしています。報告会に向けて、それぞれのチームでスライドを作ったりデータ解析をしたりとチームで役割分担しながら準備を進めていくため、終わった後は皆がやりきった表情をしているのが印象的です。普段は控えめな生徒が大勢の前で堂々と発表している姿が見られるなど、普段の授業だけでは得られない成長を感じる機会となっています。

東大の理系研究室への訪問。“もっと研究したい”に応える自由度の高いプログラムも

東洋大学京北中学高等学校の生徒が国立遺伝学研究所を訪問する様子

▲理数教育のプログラム「KSST」で国立遺伝学研究所を訪問する生徒たち

編集部

高校ではどのような理数教育を実施されていますか?

赤石先生

高校では「KSST(KEIHOKU Super Science Team)」という理数教育のプログラムを実施しています。これは中学での「未来の科学者育成プロジェクト」に参加した生徒から「さらに研究を深めたい」という声があがったことや、中学での学びをさらに発展させ、本物に触れる機会を提供するために生まれた取り組みです。

KSSTではハワイでのフィールドワークや、東京大学・千葉大学の理系研究室や国際的な研究施設への訪問などを行っています。また哲学の探究活動と絡めたような内容のプログラムも生まれており、幅広いコンテンツから自身の興味に合うプログラムを選択できます。

KSSTは「未来の科学者育成プロジェクト」よりもさらに自由度が高く、個人で活動を広げていける点が特徴です。実際にハワイのフィールドワークで生物学に興味を持った生徒が、外部団体の研究会に参加するなど、フィールドワークへの参加をきっかけに新たな活動が生まれています。

ハワイの溶岩台地でフィールドワークを行う東洋大学京北中学高等学校の生徒たち

▲ハワイの溶岩台地でフィールドワークを行う様子

「哲学の学校」東洋大学京北中学高等学校は、行事も生徒主体で“考える”

東洋大学京北中学高等学校のカフェテリア

編集部

東洋大学京北中学高等学校の校風や学校生活の魅力についても伺います。御校の哲学の精神は、普段の学校生活にどのように表れているのでしょうか。

井出先生

「哲学的に考える」ことを重視しているからこそ、文化祭などの学校行事も生徒主体で考えることを重視しています。生徒が考えて発想したものを、教員はまず受け止め、その上でアドバイスをするという形を取っているのが本校の特徴です。

編集部

生徒さんのアイディアの一例として、校長先生が文化祭でコスプレをしたというお話を拝見しました。こういう少し変わったことも受け入れられる校風があるのですね。

井出先生

そうですね。生徒たちのやる気や責任感を引き出していくためにも、自分たちで考え、それを実行できる環境というのは大切にしています。考えさせるからこそ生徒たちの主体性が育まれていることを、こういった学校行事などさまざまな場面で実感しています。

自分の考えを素直に発信できるからこそ、安心感が生まれる

編集部

他にも、先生方の思う東洋大学京北中学高等学校ならではの魅力や特徴を教えてください。

赤石先生

哲学教育や理数教育のところでもお話しましたが、学びのコンテンツが充実しているというのは本校の大きな魅力だと感じます。理数教育のプログラムに文系の生徒が参加することもありますし、理系の生徒が哲学のプログラムに参加することもあります。さまざまな形で学びを深めていけるフィールドがあるのが本校の良いところなのではないでしょうか。

福田先生

いろいろなことを学べるコンテンツが増えてきたことで、生徒たちの様子も変わってきました。授業が終わると、よく質問に来てくれるんです。例えば最近では授業後に、「経済の語源である『経世済民』は世の中を治めて民を救うことを意味しているが、今の経済状況はそれに鑑みてどうなのか」という話をしにきた生徒もいました。さまざまな疑問や質問が生まれるのも、考える習慣が根付いているからなのだと思います。

東洋大学京北中学高等学校の職員室前の自習スペース

東洋大学京北中学高等学校の自習スペース

東洋大学京北中学高等学校の自習スペース

▲校内には学習スペースが多く、教員に気軽に質問できる(スクロールで写真がご覧いただけます→)

編集部

なるほど。生徒が先生に気軽に質問ができる雰囲気があるのだということも伝わってきました。

井出先生

哲学的に深く考えるためには、心のゆとりが必要なんですね。そういう心のゆとりを意識した環境づくりを行っていることで、生徒たちが安心して過ごせるという面はあると思います。

赤石先生

本校は全体的に、教員に対しても生徒に対しても等身大の自分で素直に接する子が多いと感じます。それも安心して学校生活を送っていることから生まれる特性なのではないでしょうか。

東洋大学京北中学高等学校の校内の様子

▲心にゆとりを生む広々と開放的な校舎内

東洋大学京北中学高等学校からのメッセージ

インタビューにご対応いただいた東洋大学京北中学高等学校の教員

編集部

最後に、東洋大学京北中学高等学校の学校生活に興味を持った読者の方に向けてメッセージをお願いします。

井出先生

本校の教育の源流には哲学があります。物事を哲学的に深く考えて行動できる人を育てていきたい、というのが本校の思いです。自分の考えを尊重される環境は、学校生活を送る上での安心にもつながります。「哲学する心」で人間的な成長を育む教育に魅力を感じていただける方は、ぜひ本校の学校説明会にお越しいただけると嬉しいです。そして、生き生きとした生徒たちの様子を見ていただきたいと思います。

編集部

井出先生、赤石先生、福田先生、本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!

東洋大学京北中学高等学校の進学実績

東洋大学京北中学高等学校の校内のプロジェクター表示

東洋大学京北高等学校は、附属校である東洋大学への内部進学だけでなく、別の大学への進学も手厚くサポートしています。過去3年間の合格実績をみると、国公立大学・省庁大学校への合格者は毎年増加しており、2023年度には北海道大学や東北大学といった難関大学にも合格者を輩出しています。また私立難関校の早慶上理(早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学、東京理科大学)への合格者は25人と、卒業生255名の約1割を占めています。

■東洋大学京北中学高等学校の大学合格実績(公式サイト)
https://www.toyo.ac.jp/toyodaikeihoku/career/result/

東洋大学京北中学高等学校の生徒・保護者の口コミ

東洋大学京北中学高等学校のグラウンドと校舎

ここでは、東洋大学京北中学高等学校に寄せられた生徒、保護者の方からの口コミを一部抜粋して紹介します。

(生徒)校舎の設備がとても充実しており、掃除も行き届いている。

(生徒)哲学の学校ということもあってか、個性豊かな先生・生徒が多く、とても面白い。

(保護者)ただ勉強ができるというだけでなく、考える力がある子が多い。生徒同士も仲が良く、明るい雰囲気の中で充実した学校生活を送っている。

(保護者)中学生の内はランチボックスを定期購入できる。成長期の栄養を意識した食事があるため助かっている。

(保護者)先生に気軽に質問ができ、親身に教えてもらえるので学校を休んでしまったときも安心できる。

「哲学の学校」「考える力」というキーワードが実際に通っている生徒や保護者の方から挙がっていることからも、学校の教育理念が浸透していることが伺えます。また施設面の充実や、教員の学習サポートが手厚い点を魅力に挙げる声も多く聞かれました。中学校でランチボックスを購入できるという東洋大学京北中学高等学校ならではの取り組みも高い評価を得ています。

東洋大学京北中学高等学校へのお問い合わせ

運営 学校法人東洋大学
住所 東京都文京区白山2-36-5
電話番号 03-3816-6211(代表)
資料請求 https://www.toyo.ac.jp/toyodaikeihoku/book/
公式ページ https://www.toyo.ac.jp/toyodaikeihoku/

※詳しくは公式ページでご確認ください