鳥取大学附属小学校が自由進度学習で目指す「自己実現を行える環境づくり」|国立の共学校

この記事では、特色ある教育に取り組む“注目の学校”として、鳥取県鳥取市にある「鳥取大学附属小学校」をご紹介します。

国立の共学校である同校は、1882年に設立された長い歴史を誇る伝統校です。鳥取大学と同じ敷地内に校舎を構える附属校であり、ほかに附属幼稚園・附属中学校・附属特別支援学校も存在します。

大学の附属校としての強みを活かし、大学の資源を活用した先進的な学習指導やキャリア教育等を行っていることが大きな特徴です。また、2024年度からは自分のペースで学習を進める「自由進度学習」による学習指導にも力を入れており、主体的に学ぶ力や自己実現力の高い児童の育成に励んでいます。

今回、ぽてんでは鳥取大学附属小学校の砂場副校長先生・完田教頭先生・研究主任の大杉先生にインタビュー取材を行い、同校の教育方針や学習カリキュラムの特徴、児童の雰囲気などを教えていただきました!

児童の“ワクワク”を引き出す教育を目指す「鳥取大学附属小学校」

鳥取大学附属小学校の校舎外観

編集部

まず、鳥取大学附属小学校の運営方針・教育方針について教えてください。

砂場副校長

本校を運営するうえで最も大切にしていることは、「児童がワクワクしながら通える学校づくり」です。安心して学べる環境下でのびのびと自己実現を行える環境を提供していきたい、といった想いで日々学校経営を行っております。

また、教育方針としては「地をみたす塩となれ」「おおらかな器となれ」「考える葦となれ」の3点を掲げています。「地をみたす塩となれ」では確かな学力や創造性、豊かな感性を育むこと、「おおらかな器となれ」では人権尊重の精神と学びを支える力として人間関係力やコミュニケーション能力を養うこと、そして「考える葦となれ」の部分では、主体的・積極的に取り組んで課題を見い出し、解決する力を身につけることが目標です。

この3つの言葉は校歌の歌詞に含まれているほか、学校の入口や玄関にも掲げられており、日々の学校生活のなかで児童たちの心にも深く刻まれていきます。

鳥取大学附属小学校の入口にある石碑

▲学校の入口には「地をみたす塩となれ」「おおらかな器となれ」「考える葦となれ」と書かれた石碑があります

ちなみに、本校は鳥取大学の附属校ですので、教育実習を通じて次世代を担う新しい教員を養成すること、さらに本校で研究した成果を公立校での教育に役立てられるように意識して各種活動に取り組んでいることも教育理念のひとつです。

鳥取大学附属小学校の「自由進度学習」による学習指導

鳥取大学附属小学校で自由進度学習を行う生徒たち

鳥取大学附属小学校は、児童の主体性や課題解決能力を育成する目的で、年間100時間程度「自由進度学習」による学習指導に力を注いでいます。ここでは、具体的な特徴について詳しくお話を伺いました。

教員が作成した計画表をもとに、児童は自分のペース・やり方で自主学習を実施

鳥取大学附属小学校の大杉先生

▲鳥取大学附属小学校の自由進度学習について教えてくださった大杉先生

編集部

「自由進度学習」の目的や特徴についてお聞かせいただけますか?

大杉先生

自由進度学習とは児童が自分のペースで主体的に学ぶ学習方法で、高学年では国語や算数、社会、外国語、体育など、中学年では算数や理科、社会、図画工作などで導入しています。

低学年は自分で進めていくというのがまだまだ難しい段階ではありますが、国語や算数、生活などで少しずつ進めているところです。自由進度学習を発展させていき、将来的には探究学習にも結び付けたいといったビジョンがあります。

編集部

具体的にどのような形で行っていらっしゃるのでしょうか?

大杉先生

たとえば中学年の算数科ですと、教科書のQRコードを使用してデジタルコンテンツにアクセスできたり、自分で目当てを立ててまとめる項目があったりと一人学びを促す仕様になっています。

具体的には、たとえば8単元であれば1時間目から8時間目までの計画表を細かく立てて児童に渡し、児童はその計画表を見ながら「今日はここまで進めなきゃいけないな」「ちょっと遅れてるから少し急いで進めよう」などと計画的に一人学びを行っていきます。学習の最後は必ず振り返りカードに記入しますので、そこで自分の学びの進捗状況や教科の理解度をしっかりと把握することが可能です。

それをもとに「ここがよくわからないから家でやってきます」という子もいたり、「ここはすごくよくわかったから今度は友達に説明してみたい」という子もいたりして、振り返りカードは私たち教員が各児童の習得度合いを把握する際にも非常に役立っています。

なお、一人学びは動画のコンテンツの「NHK for school」を観ながら進めたり、学校で取り組んでいる「すららドリル」に取り組んだり、各児童が自分のスタイルで行っています。それらを用いてもわかりづらいときは教師や友達に教えてもらって解決している児童が多い印象ですね。

自由進度学習によって主体的に学ぶ児童が増加

鳥取大学附属小学校での自由進度学習中に教え合う生徒たち

編集部

自由進度学習の導入によって、児童たちにどのような変化がみられますか?

大杉先生

単元内の自由進度学習においては普段おとなしい子も「先生これどういうことですか?」と手を挙げることがすごく増えたと感じています。また、友達に教えたり、逆に教えてもらったりするなかで理解を深めていく姿もみられ、一斉学習にはない魅力を実感しているところです。

特に低学年・中学年においては「ちゃんと進めていけるか不安」と感じている子もおりますが、それでもみんな楽しみにしていて、自分なりのやり方で自由進度学習に取り組んでいます。高学年になると「自分はこうしたい」といった考えが確立していて、こちらが何か言わなくても進んで取り組む児童が多いですね。

まだ始めて間もない取り組みですが、従来型の学習と自由進度学習を続けていくことによって各児童のなかで自分に合った学び方が自然と見えてくると思うんです。また、自由進度学習で培った主体性や課題解決能力は、中学校での探究学習等に大きく役立つことはもちろん、今後の人生において随時自分で道を切り開きながら歩んでいくことができると考えています。

児童の好奇心を刺激することで、学習への興味を引き出す

鳥取大学附属小学校の「自由進度学習」による学習指導風景

編集部

自由進度学習において先生方はどのような工夫をされていますか?

大杉先生

児童はチャレンジ要素がある学習を好む傾向があるため、教科書から少し離れた問題を出して「この問題を考えるときにはこの教科書のここを見て考えてみてね」と話すなど、好奇心を刺激できるよう工夫しています。また、学習への興味をより引き出せるよう、1人1台タブレットを普段使いできる環境を整えていることもこだわっているポイントですね。

鳥取大学附属小学校では各学年で「キャリア教育」を実施

鳥取大学附属小学校における6年生のキャリア教育の様子

編集部

ほかに、鳥取大学附属小学校で力を入れている取り組みがあればご紹介ください。

完田教頭

本校ではキャリア教育に力を入れており、特に「キャリアに拓く(ひらく)」というプログラムを通じて1年生から6年生までの全児童が自分の興味・関心を深められる機会を各学年ごとに提供しています。たとえば鳥取大学の医学部や工学部、農学部、地域学部の先生方にお越しいただいたり、こちらから研究室に伺ったりして学びの楽しさ・奥深さに関してお話いただく内容のプログラムです。

具体的には、1年生は大学や研究室がどのような場所なのかを学ぶことが主なねらいで、2年生は生活科の学習の中で農学部の「フィールドサイエンスセンター」という大きな農場へ出かけ、サツマイモなどの野菜の収穫や調理体験を行いながら農学部の専門的な学びについてお話いただくような内容です。

3年生は大学のすぐ近くにある湖山池(こやまいけ)を訪れ、現地で水質についてのお話を聞きながら生き物について調べる学習などを行い、4年生は国際交流を中心とした学びが主体で、大学に在籍している留学生との交流を通じて母国の言葉や文化、遊びを教え合います。

鳥取大学附属小学校の4年生が鳥取大学の留学生と触れ合う様子

▲留学生との触れ合いによって外国をより身近に感じられ、国際理解が深まります

5年生では「知的財産創造教育」や「発明楽」とも呼んでいるのですが、医学部の先生にお越しいただいて発明や創造に関する学びを中心としたお話を聞く機会があります。また、米子市にある大学の医学部を訪問し、実際に医療機器を見せていただきながらどのように開発していくのか、どのような発想が元になっているのかなどを学びます。

鳥取大学附属小学校の5年生が医療機器を見学している様子

▲最先端の医療機器に触れることで、知的財産を生み出し、活用することの意義について学びます

そして、6年生は鳥取大学の工学部の先生方にお世話になりながら、機械の仕組みやプログラミングに関する学びを得ることが主体です。このように各学年で多彩なキャリア学習を行うことで、児童が将来の目標ややりたい仕事を見つけるきっかけになればと願っています。

鳥取大学附属小学校の6年生が工学について学んでいる様子

▲6年生は機械の構造やプログラミングなど、工学に関する高度な内容を学びます

編集部

キャリア学習によって、児童のみなさんにはどのような変化がありますか?

完田教頭

年度末に保護者を招いて学習発表会(「実りの学校」)を行っているのですが、そういった場面では6年生にもなると就きたい職業の話を具体的にしたり、キャリア教育を通じてどういうことに気づき、これからどういうことが必要なのかを自分事として語れるようになってきていると感じます。

また、保護者の方のなかには医療関係のお仕事をされている方も多くいらっしゃるため、医学部での見学をした学年の生徒が体験を通じて「親の仕事の大切さがわかった」といった感想を述べていた児童も何人かいたのが印象的でした。

医学部で血圧測定を体験する鳥取大学附属小学校の児童

▲医学部でのお仕事体験を通じて医療の道を志す児童も少なくありません

また、たとえば5年生が医療機器の見学をする際には最先端の内視鏡が内臓を傷つけないように工夫してつくられていることや、患者さんの負担を軽減するために短時間で正確な映像を見られる仕様になっていることなどを教えていただくのですが、そういった具体的なお話を聞いて医学に興味を持ち、「将来は医療関係の仕事に就きたい」と考える児童も多いです。

さらに、大学訪問時に自分たちと年齢の近い大学生が行っている実験や演習を見学するなかで、「自分も将来的にこういう研究をすると楽しそうだな」などと学びの面白さや大切さを深く実感している児童も多く、非常に有意義な活動であると感じています。

鳥取大学附属小学校における児童の雰囲気について

鳥取大学附属小学校における全校集会の様子

編集部

鳥取大学附属小学校には、どのようなお子さんが多いですか?

完田教頭

受験を経て本校に入学していることもあり、本人も保護者も学習への意識が非常に高いです。また、自分で学び、自ら課題に対する答えを導き出したいと考える児童が多く、集中力や探究力がしっかりと備わっていますね。先ほどご紹介した「キャリアを拓く」の講義中も熱心に話を聞いている姿がたくさんみられ、講師の先生が感心されることが多くあります。

編集部

小学生のうちからそういった意欲的な姿勢が身についていらっしゃるとはすばらしいですね。学習面以外の、普段の雰囲気はいかがでしょうか?

砂場副校長

朝から外で元気いっぱいに遊んでいますよ。虫取り網を持って駆け回ったり、サッカーなどをしながら走り回ったりと、子どもらしさに満ちあふれた個性豊かな児童が多いです。

鳥取大学附属小学校の「砂の学校(全校遠足)」の様子

鳥取大学附属小学校の「森の学校」4年生宿泊学習の様子

鳥取大学附属小学校の「雪の学校」5年生宿泊学習の様子

鳥取大学附属小学校の全校一斉造形遊びの様子

▲宿泊合宿など郊外での学びの機会も多い同校。子どもたちはさまざまな経験を積むことができます

鳥取大学附属小学校からのメッセージ

鳥取大学附属小学校の砂場副校長と完田教頭

▲インタビュー取材に応じてくださった砂場副校長(左)と完田教頭(右)

編集部

最後に、鳥取大学附属小学校に興味をお持ちの方へメッセージをお願いします。

砂場副校長

大学附属校の強みを活かした充実の教育環境下で、落ち着いて学べる学校です。個性豊かな教員たちが、各児童の能力を伸ばそうと日々一生懸命取り組んでおります

ぜひ本校に興味を持っていただき、入学を検討していただけたら嬉しいです。

編集部

自主性を高める自由進度学習をはじめ、大学との連携による実践的なキャリア教育などの魅力的なプログラムが揃っている御校なら、ワクワク感あふれる日々を過ごせそうだと感じました。

砂場副校長先生・完田教頭先生・大杉先生、本日はたくさんのお話をありがとうございました!

鳥取大学附属小学校の保護者による口コミ

鳥取大学附属小学校で自由進度学習を行っている生徒たちの様子

指導熱心な先生が多く、子どもに大変好かれている印象です。

児童自身に考えさせる授業が基本で、発表する機会もたくさんあるので主体性・積極性が身につきます。

鳥取大学の敷地内にあり、大学との連携による学習も多いため、小さな頃から大学を身近に感じることができます。

教育実習を通じて、鳥取大学の学生との関わりもたくさんあって良い刺激を受けています。

鳥取大学附属小学校の保護者からは、大学との連携による教育指導に関して満足している口コミが多く挙がっています。また、教員の対応に関する評判も高く、「親身にサポートしてもらえるため安心して任せられる」といった意見がたくさんみられました。

鳥取大学附属小学校へのお問い合わせ

鳥取大学附属小学校・中学校の正門付近の風景

運営 鳥取大学附属小学校
住所 〒680-0945

鳥取県鳥取市湖山町南4丁目101番地
電話番号 0857-31-5171

(受付時間は平日7:40~17:30まで)
公式ページ https://torifusho.fuzoku.tottori-u.ac.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください