6年間毎日英語に触れる「東京三育小学校」の国際人を育成する教育に迫る

ぽてんをご覧の皆様に、注目の学校を紹介する本企画。今回ご紹介するのは、東京都練馬区にある私立小学校「東京三育小学校」です。

1898年に前身の学校の創立以降、聖書を教育の土台としてきた東京三育小学校。豊かな心と高い知性、健やかな体をバランスよく伸ばすことを目指す教育理念のもと、社会貢献できる人材を育てる教育に力を入れています。1年生は週8回、2年生以降は週5回と、6年間毎日、英語の授業が行われています。授業の中では、1年生からネイティブ教師によってオールイングリッシュで聖書を学ぶ時間もあり、語学教育にも定評があります。

今回、東京三育小学校の校訓や語学教育をはじめとした具体的なカリキュラムについて、校長の平田理先生にお話をうかがいました。

自分の能力は社会の貢献のために。東京三育小学校が重んじる教育理念

東京三育小学校の正門写真

▲東京三育小学校ではキリスト教の教えのもと、自らの能力を誰かのために使い、貢献するよう説いている

編集部

最初に、東京三育小学校の沿革や校訓、教育理念について教えてください。

平田先生

本校は1898年、米国に本部を持つセブンスデー・アドベンチストキリスト教会の宣教師グレンジャー博士が、東京・芝に創立した「芝和英聖書学校」が始まりです。

1919年、キリスト教の精神のもと、一貫教育に取り組むべく、現在の東京・杉並に「天沼学院」の小学部、中学部、高等部を開校し、1956年に現在の東京三育小学校に名を改め、練馬の地に移転しました。

校訓は「だから、何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもそのとおりにせよ」という聖書のなかの一節です。それをより分かりやすくしたものが、本校の校是であるミッションステートメント「わたしたちは、神さまに愛されている人として、互いに愛し合い、互いの必要に応え、世界のどこにいっても平和をつくり出し、神さまの栄光を現すために共に学び、働きます」というものです。

私たちの命は神様から与えられており、自分の能力や才能は誰かのために使い、社会に貢献していきましょう、という意味が込められています。校訓、ミッションステートメントはともに、毎朝、子どもたちが唱えています。

編集部

校訓やミッションステートメントを児童が理解していくことで、学校生活における姿勢に変化は出てくるのでしょうか。

平田先生

誰かに頼られるということ、あるいは誰かの役に立つということの大切さを学ぶことで、児童自身の自己肯定感につながっています。

自分は生かされている、あるいは自分が誰かの役に立っているという思いを、一桁の年齢のうちから培っていくことで、社会に出たときも働く姿勢一つが変わってきます。また、例えばボランティア活動に臨む際にも、まさに体に染みついた状態で取り組んでくれるものと期待しています。

豊かな心を育てる「徳育」、知的好奇心を伸ばす「知育」、健やかな体を作る「体育」

東京三育小学校のグラウンド

編集部

学校名にある「三育」について、説明いただけますか。

平田先生

「三育」とは、「徳育」「知育」「体育」を指します。本校の教育で大切にしているキーワードです。

「徳育」は豊かな心を育てるもので、朝の礼拝、毎日20分の聖書の授業と土曜日の教会出席などを通し、私たち一人ひとりは神様に愛されている存在だと理解します。また他者に関しても、自分と同様の存在であるという意識を持ち、お互いに理解し認め合う価値観を養います。

「知育」においては、基礎学力の取得に加え、「なぜ?」「もっと知りたい!」という児童の知的好奇心の芽を伸ばすことを最大の目標にしています。基礎学力の向上では、算数では1枚ごとに目安の時間が決められたプリントや課題を、合格するまで繰り返し、基礎学力の土台作りをします。

子どもの表現力を伸ばす表現教育では、希望者に対し放課後にピアノレッスンも行っていますし、学年ごとに自分の学んだことや体験を発表する場も設けています。本校は全校児童数が100人少しの学校ですので、すべての児童が仲間全員の前、あるいは全保護者の前で発表を繰り返し行える環境があります。

子どもたちは、みるみるプレゼンテーションの力が身についていきます。まさに100回の練習よりも1回の本番が人を育てるという状況です。

そして「体育」では、小学生という伸び盛りの期間に、今後の基礎となる健やかな体作りを進めていきます。全学年を対象に、近隣のスポーツクラブを利用し、年間を通して水泳教室を行っているほか、始業前に縄跳び、ラジオ体操、マラソンなどを行い、基礎体力を伸ばします。

また、週2回のサッカークラブも実施しています(3年生以上の希望者)。教員に加えてボランティアで保護者の方々もご協力くださり、平日は練習を、日曜日には練習の他に系列校や地域のクラブチームと交流試合を行っています。

学校農園で命の大切さを学ぶ。東京三育小学校の感性を磨く教育

東京三育小学校のエディブル・スクールヤードと畑で栽培されたジャガイモを調理する児童たち

▲エディブル・スクールヤードは様々な食物を育て、調理や創作活動をとおして命の重さを学ぶ

編集部

東京三育小学校では、キリスト教の精神のもと、感性や心をみがく教育に注力されているとうかがいました。特色について、教えてください。

平田先生

私たちが取り組み始めている活動として「エディブル・スクールヤード」があります。校内の畑を使って食物を育て、食育に活用しようとしています。

多くの小学校では、プチトマトや朝顔の栽培を行いますが、栽培して終わり、ということがほとんどかと思います。本校では、5,6年生では、綿やハーブなどを植えて、それを加工して、ドライフラワーにしたり、ハーブティーにしたりします。ほかにも、ジャガイモを栽培して、家庭科の先生と一緒に調理をします。この取り組みは、図工、家庭と科目を横断して行うものです。

農作物を作り、自身が育てたものを食べたり、作品作りに活用したりすることで、私たちが、他のいのちに生かされていることを体験的に学びます。同時に、食物の連鎖の存在などSDGsに関係する知識も得ます。こうした農園のような場で、自分自身が能動的に様々な事実に気づき、物事を考える幅を広げていけるようにすることで、感性を磨いていけると考えています。

編集部

実際に育てた農作物を食べたり、創作したりすることで、いろいろな学びを得るのでしょうね。

平田先生

そうですね。ジャガイモの栽培では、自分たちが畑を耕して、種芋を植え、水をやって世話をしてきたジャガイモを収穫し、炒めたり蒸したりします。家庭に持ち帰ったときは保護者の方は「自分の子供がこんな素敵なものを持ち帰るとは思わなかった」と大変喜ばれますし、校長室に御礼に来られる保護者の方もいらっしゃったほどでした。私もお裾分けしてもらいましたが、2㎏の種芋から31㎏の収穫を得て、それを調理し、おいしく食する喜びを共に味わいました。

自分たちで作ったものを、誰かに分け与え、喜びを共有する。子どもたちは、こんな体験を通じて、人を喜ばせることの素晴らしさをきっと感じてくれていると思います。

英語に触れるのは「6年間毎日」。東京三育小学校の充実したグローバル教育とは

香港の系列校が東京三育小学校を訪問した際の記念写真

▲香港の系列校が東京三育小学校を訪れたときの様子。海外の系列校と国際交流し、グローバル感覚を育んでいる

東京三育小学校では、毎日英語の授業があるほか、キリスト教会のネットワークを活用した国際交流など、国際人の素地を作る教育に定評があります。ここでは、同校のグローバル教育の特色についてうかがいました。

低学年は聞く力・話す力、高学年は読み書きに重点を置く英語学習

編集部

まず、英語学習の特長や注力されている点について教えてください。

平田先生

本校は、米国に起源を持つミッションスクールということもあって、創立以来、英語教育に注力しています。

小学校英語をいち早く取り入れた学校の一つであり、英語圏で行われている英語の授業の教材を用いたオリジナルの教材の制作を行うなど、非常にきめ細やかな英語教育に取り組んでいると自負しています。一連の取り組みを受け、東京都内の英語科の先生の研修を本校で行うこともあります。

最大の特徴は、6年間毎日、英語の授業があることです。具体的には、1年生は週8回、2年生以降は週5回、ネイティブ教師と日本人のバイリンガル教師が授業を行い、低学年は『音』に重点をおき、聞く力・話す力を育てます。

 高学年からは読み書きも重視し、綴りと発音の間にある法則から正しい話し方を習得するフォニックスを用いて、読み書きの基本を学びます。このほか、英語を使って、聖書のことを学んだり、算数や音楽、歴史などを学習したりする「CLIL(クリル)アプローチ」も取り入れています。

編集部

日常的に英語に触れる環境のなかで、児童の皆さんはどんな様子でしょうか。

平田先生

子どもたちにとって、英語へのハードルがどんどん低くなっていきます。1、2年生では幼いうちに誤った発音を覚えないように、日々発音を補正するトレーニングをします。子供たちができるだけ適切な発音ができるよう、繰り返し行います。

きちんと発音できるようになることで、英語を使うことが楽しくなります。実際、臆せず国際交流に臨めますし、通学路で出会った外国の方にちょっと話しかけてみようといった積極性も生まれます。

英語に普段触れていると、学習面でも変わってきます。個人差はありますが、6年生時点で、英検の4級、5級程度のレベルには達している児童が多いです。2級や準1級を取得するケースもあります。

編集部

英語が好きになって、さらに英語を学びたいという子どもたちも増えているのでしょうか。

平田先生

そうですね。千葉、広島、沖縄にある系列の中学校にはそれぞれ英語を主体的に学ぶコースがあり、進学する児童は多いです。

とりわけ千葉にある中等教育学校は、アジア圏も含めて、国際色豊かな学校になっており、スペイン語、ポルトガル語、そして英語、中国語、韓国語、インドネシア語の言葉が飛び交っています。そこに進学して、さらに世界を強く意識するようになります。この他、本校には海外留学の経験がある教職員が多いことから、子どもたちにとって海外で学ぶことは身近になっているように思います。

高学年も低学年も、世界の系列校の児童と国際交流

編集部

東京三育小学校では、国際交流も積極的に行っておられます。特色をお聞かせいただけますでしょうか。

平田先生

米国のセブンスデー・アドベンチスト教会を経営母体とする三育学院は、国内外に数多くの系列校を有しており、それらの学校などとの国際交流が活発です。

2024年6月には、香港の系列中学校からマーチングバンドの20人が本校を訪問してくれました。子どもたちは広東語や英語の賛美歌を歌ったり、低学年の子どもも一緒に各教室で昼食を取ったりして、交流しました。

コロナ禍の前は、グアムやオーストラリアなどの中高生も本校を訪問してくれ、英語を一緒に学んだり、自国について紹介し合ったりするような機会もありました。このように、独自のグローバルネットワークを利用した国際交流というのが、本校の特色の一つと言えます。

編集部

香港からの訪問に、児童の皆さんはどんな様子だったでしょうか。

平田先生

興味深かったのは、低学年の子どもたちの方が自分の知っている単語を並べて、積極的に話そうとしていたことです。

相手は中学生ですので、小さい子たちの言葉を拾おうと一生懸命聞いてくれて、あちこちで笑いが起こっていました。一方、上級生は英語を使いつつ、英語が通じないところは、広東語をアプリで調べてやりとりするなど、きちんと対応していました。

東京三育の英語学習を入学前に体験する「プリ・プライマリークラス」とは

お祈りをする東京三育小学校の児童

編集部

東京三育小学校で幼児向けスクールとして開講しているプリ・プライマリークラスについて、ご紹介いただけますでしょうか。

平田先生

プリ・プライマリークラスの主な目的は就学年齢に達する年中、年長の子どもたちに、学校と、いわゆるプリスクールである幼稚園や保育園との違いを知ってもらうことにあります。日本の小学校では全国初の試みとして2009年度より導入しました。

特に、本校では低学年から英語を学びますので、英語教育の一部を見てもらったり、体験してもらったりすることがポイントになっています。パズルやブロックなどの知的玩具は、アメリカと同じものを使います。本校の教育の特徴である「聖書」と「英語」を取り入れながら、三育教育を体験してもらいます。

編集部

以前から英語を学んでいる子どもと、初めての子どもで差が存在しないのでしょうか。

平田先生

本校の児童のなかには、早期から英語を学んでいる場合もありますし、「全く経験がないが、大丈夫でしょうか?」と心配されるご家庭もあります。私たちはそこでラインを引くことなく、体験してみてくださいとお伝えしています。

これまでの経験ですと、当初、両者のギャップは存在しますが、いつの間にか溝が埋まってしまいます。小学校に入ると1年生から毎日英語の授業があるので、英語の歌を覚えると、皆休み時間の鼻歌は英語になってしまうほどです。英語が日常にあって、英語で話すことが楽しいという環境が、英語を学ぶ上で正しい環境だと考えています。

東京三育小学校からのメッセージ

東京三育小学校の平田理校長先生

▲インタビューに対応くださった東京三育小学校校長の平田理先生

編集部

最後に、東京三育小学校に関心をもった読者の方々へメッセージをお願いします。

平田先生

本校は小さな私立小学校ですが、子どもたちの個性を伸ばす、あるいは可能性を引き出すということを本当に考えている学校です。そして幅広く国際的なつながりもあります。個性のあふれる本校にぜひ注目していただけますとありがたいです。

そのうえで、ぜひ本校にお越しいただいて、学校生活を送る子どもたちを見てください。そうすれば、私たちがどこを目指そうとしているのかをきっと感じていただけると思います。

編集部

本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

東京三育小学校の進学実績

東京三育小学校の図書室を利用する児童たち

東京三育小学校の公式サイトでは「聖書を土台とした全人教育を最大の使命としており、いわゆる難関中学校への受験対策を目的とした、学力偏重の教育は行っていない」と紹介しています。

その一方で、過去6年間の実績では、東京大学教育学部附属中等教育学校などの国公立の中学校のほか、東京都内の難関私立中学校、大学附属校など、豊富な進学実績を誇ります。また、系列校である三育学院中等教育学校、広島三育学院中学校、沖縄三育中学校への進学者もいます。

■東京三育小学校の進学実績(公式サイト)
https://www.tokyosaniku.ed.jp/promotion/

東京三育小学校の卒業生・保護者の口コミ

東京三育小学校の校舎イメージ

ここからは、東京三育小学校の卒業生、保護者の口コミを一部抜粋して紹介します。卒業生の口コミは学校公式サイトから引用しています。

■卒業生・保護者の声(公式サイト)
https://www.tokyosaniku.ed.jp/message/

(卒業生)
三育で学んだ期間で、私は深く自分自身を見つめ自分を大切にすることや、前向きな姿勢を保つことを学びました。

(卒業生)
自己中心的な生き方ではなく、キリストがそうであったように、いつも他の人を大切にすることを学びました。

(卒業生)
三育は少人数でアットホームなので、どの学年とも知り合いになりました。

(保護者)
毎日行われる英語の授業では、特に低学年のうちは赤ちゃんが自然に言葉を覚えるように、英語を耳から学ぶことができました。これは卒業後も子供たちの大きなアドバンテージになっています。

(保護者)
少人数なので、全ての先生方が全校児童の名前も顔も把握してくださって、優しくとても丁寧にサポートしてくださいました。

東京三育小学校の口コミからは、英語教育の充実ぶりに加え、小規模校ならではの児童、先生との信頼関係の強さ、アットホームな雰囲気を評価する声が目立ちました。

東京三育小学校の修学旅行・平和学習の様子

▲6年生が沖縄で修学旅行・平和学習を行ったときの様子

東京三育小学校へのお問い合わせ

運営 学校法人三育学院
住所 東京都練馬区関町南2-8-4
電話番号 03-3920-2450
問い合わせ先 https://www.tokyosaniku.ed.jp/
contact/
公式ページ https://www.tokyosaniku.ed.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください