“千葉御三家”東邦大学付属東邦中学校・高等学校の「自分探し学習」とは|中高一貫校

特色ある教育で注目を集める学校を紹介するこの企画。今回は千葉県習志野市にある私立共学の完全中高一貫校「東邦大学付属東邦中学校・高等学校」を紹介します。

同校は、千葉県下有数の受験者数を誇る人気校です。旧設八医科大学の1つである東邦大学の付属校の強みを活かした理系教育が特徴で、医学部をはじめとする難関校への合格実績が数多くあります。また「自分探し学習」と呼ばれる探究型学習を中心に、理系だけでなく多様な学びを深められる環境が整備されています。

今回は、同校の教育方針や、体験を通じて生徒の学びを深めるカリキュラムの内容などについて、広報部長の岡田先生にお話を伺いました。

「東邦大学付属東邦中学校・高等学校」の教育目標

編集部

東邦大学付属東邦中学校・高等学校の教育目標を教えてください。

岡田先生

本校の教育目標は、中高の6年間を通じて生徒の可能性を引き出す教育活動を実践していくことです。これは、東邦大学の前身である帝国女子医学専門学校が創立された時に掲げた、「社会に貢献できる若者を育成する」という思いを反映しています。

東邦大学付属東邦中学校・高等学校では、東邦大学と同じ「『自然・生命・人間』の尊重」を建学理念に掲げています。これは東邦大学の創立者である額田豊、額田晉兄弟医学博士が提唱したもので、「我々の住む自然界と与えられた生命を科学的な視点で見つめ、人間の心の向上を目指す」という意味が込められています。

編集部

生徒の可能性を引き出すために、どのような教育を行っているのでしょうか。

岡田先生

生徒の可能性を閉ざさないよう、あらゆる学びに向き合ってもらえるように工夫しています。

本校では理系の総合大学である東邦大学の付属校であることから、理系に特化した教育を行っているイメージを持たれることも少なくありません。しかし実際は、文系科目や実技科目も含めた幅広い学びに取り組み、多角的な視点を身につけてもらえるようなカリキュラムを実施しています。これは伝統的に変わらない本校の教育姿勢で、「高い専門性を身につけるためには、根底に幅広い知識が必要である」という考えによるものです。

当然、生徒によって教科の得手不得手はあります。本校では学力も1つの個性と捉え、尊重していますが、苦手意識なくさまざまな分野を学ぶことは将来の可能性をひろげることにつながります。そのため本校では、文系学部を目指す生徒も「数Ⅲ」を学び幅広い知識を、また医学部を目指す生徒も「倫理」を学び医師として必要な倫理観を身につけられるようにしています。

東邦大学付属東邦中学校・高等学校の校内にある宇宙服の展示

▲金井宣茂宇宙飛行士は同校出身。校内では宇宙服の展示もある

東邦大学付属東邦中学校・高等学校の特徴的な教育プログラム


東邦大学付属東邦中学校・高等学校では「自分探し学習」と呼ばれる自主的・能動的な学びを通じて、生徒一人ひとりの可能性を切り拓くリベラルアーツ型(※)カリキュラムを実践しています。そんな同校のカリキュラムから、特徴的な教育をご紹介します。
(※)現代社会のさまざまな問題に立ち向かうための知識やスキルを身につける教育

外科手術も体験できる「学問体験講座」は、生徒の能動的な学びにつながる

東邦中学校・高等学校のブラックジャックセミナーの様子

編集部

幅広い学びの機会を提供する御校の教育を象徴する取り組みに「学問体験講座」があるかと思います。こちらの概要をご説明いただけますか?

岡田先生

学問体験講座は中学1年生から高校3年生までの全学年を対象とした選択希望制の講座です。東邦大学をはじめ多くの大学の最先端の学問を体験し、生徒の能動的な学びや新たな興味・関心につなげていくことを目的に実施しています。

編集部

学問体験講座の中で特徴的な取り組みがあれば教えてください。

岡田先生

東邦大学の理学部・薬学部・健康科学部と連携して行う理系講座は人気です。中でも東邦大学医療センター佐倉病院と連携して行う「ブラックジャックセミナー」は毎年多くの希望者を集める人気の講座となっています。

ブラックジャックセミナーは医学部を志す高校1年生を対象とした講座で、佐倉病院を舞台として実際の医療現場で行われます。特に外科手術の模擬体験ができるのが特徴で、近年では内視鏡手術トレーニングや縫合体験、電気メスを使って切開を体験するなど外科手術の基本を学んでいます。

編集部

かなり本格的な医療体験ができるのですね。体験した生徒の皆さんからはどのような反応がありますか?

岡田先生

この体験が医学部志望を強めるきっかけになったという生徒は多いですね。反対に、これをきっかけに別の道を志す生徒もいます。体験して初めて分かることも多く、そこから自分が本当に目指したい道なのかを見極める判断材料となっているのではないでしょうか。学問体験講座は生徒にとって「体験」の重要性を実感する機会にもなっています。

海外研修に夏休みのオールイングリッシュ授業。全生徒が国際交流できる環境

東邦大学付属東邦中学校・高等学校の国際教育の国内プログラムに取り組む生徒の皆さん

編集部

体験を重視するプログラムとして海外研修などの国際教育も実施されているとのことですが、具体的な内容を教えていただけますか?

岡田先生

本校の国際教育は、大きく分けて「海外プログラム」と「国内プログラム」の2つです。

海外プログラムでは、海外研修で現地の学生等との交流を行っています。オーストラリアの姉妹校St Peters Lutheran Collegeとの交流や、シンガポールの提携校Deyi secondary schoolの授業体験など、現地のホームステイやファームステイ、学生寮に宿泊をしながら実践的な英語力を養います。

また海外を訪問するだけでなく,姉妹校,提携校の学生さんを本校にお招きしての活動も行っています。その際にはご自宅へのホームステイの受け入れもでき,ご家族みなさんで体験できる人気企画となっております。

昨年11月のDeyi secondary school来校時には互いの文化を英語で紹介し合う授業を、12月のSt Peters Lutheran College来校時には、オーケストラ部を中心としたクリスマスコンサートを行いました。相互交流ができることで全生徒が交流の機会を得られます

編集部

国内プログラムではどのような内容を実施していますか?

岡田先生

国内プログラムには、「Power in ME」があります。夏休みに実施しているもので、期間集中的にオールイングリッシュでコミュニケーションを取り、英語で伝える力を育むことを目的としています。

中学生向けのプログラムは、日本の大学に通う海外の留学生に本校へお越しいただき、留学生と生徒が3日間英語のみでコミュニケーションを取るプログラムです。1人の留学生に対し、参加を希望する生徒がそれぞれ5、6人でグループを組みます。なかなかコミュニケーションが上手くいかないことも多いのですが、失敗しながら「伝わる英語」を体得する良い経験となっています。留学生にはさまざまな国の方がいるため、いろいろな国の文化を知ることにもつながっています。

楽しみながら学ぶ「物語散歩」と表現力・語彙力を育む「読書マラソンノート」

東邦大学付属東邦中学校・高等学校の物語散歩の様子

▲物語散歩の様子

編集部

他にも、幅広い学びの機会を提供する点で特徴的な取り組みがあれば教えてください。

岡田先生

本校では各教科で、体験を通じた学びの機会を提供しています。その中でも国語で行っているのが、生徒の読書活動を促進する「物語散歩」と「読書マラソンノート」です。

「物語散歩」は物語の舞台となった場所や作家ゆかりの地に足を運ぶという本校の名物課外活動で、年に3回ほど授業のない日に希望者を募って実施しています。

物語散歩では作品の具体的描写を想像しながらまち歩きを行っています。その作品を読んだことがある生徒にとって興味深いものになることはもちろん、参加したことををきっかけに作品や作家を知り、本を読むきっかけにしてもらうこともあります。

また物語散歩では物語の裏側や作家の方の思いに触れるということだけでなく、その土地のおいしいものや文化に触れることも醍醐味です。勉強と日常の楽しみを分断することなく、楽しみながら学びにもつなげてもらえたらと考えています。

編集部

「読者マラソンノート」はどのようなものでしょうか。

岡田先生

「読者マラソンノート」は入学時に1人1冊配布しています。夏休みなどの長期休暇中は「○冊以上読む」という課題も出しますが、基本的には自分のペースで読書をし、その感想やあらすじの記録を書いていってもらいます。ただ本を読んでインプットするだけで終わりにせずに感じたことや考えたことを自分の言葉にすることで、表現活動のきっかけとなってほしい、というのがこの取り組みの狙いです。

生徒による“楽しむための工夫”が光る。参加して、見て、応援して楽しむ「スポーツデイ」

スポーツデイのため校庭に集まる東邦大学付属東邦中学校・高等学校の生徒の皆さん

編集部

東邦大学付属東邦中学校・高等学校の独自の行事やイベントがあれば教えてください。

岡田先生

高校で行う「SPORTS DAY(スポーツデイ)」は体育祭と競技大会を1つにしたもので、2018年から実施している本校独自のイベントです。

2023年度は、キックベース・フットサル・3×3バスケ・ソフトバレー・卓球・リレー・ボッチャ・アジャタの8種目が行われました。定番競技だけでなく、珍しい競技を取り入れられており、生徒が新たなスポーツに触れる良い機会にもなっています。

また、体育委員からなる実行委員会を中心に、種目のルールづくりも含めて完全に生徒主体で運営されているのも特徴です。例えば、各競技のルールは短時間で多くの生徒が参加できるようにアレンジされています。ただ決められたことをするのではなく、自分たちでより楽しめるように工夫する、これからの人生でも役立つ「人生を楽しむ術」を身につけてもらう、良い機会になっているようです。

スポーツデイの大きなテーマは、参加するだけでなく、見る・応援するといった多様なスポーツへの関わりを体験することです。室内競技・屋外競技のさまざまな種目に参加できる点も魅力ですが、クラス対抗戦なので自分の出る種目以外にも「応援する」「支える」というさまざまな形でスポーツを楽しむことができます。決勝戦ではクラス一丸となって応援しており、本当に楽しそうですよ。

この日は、生徒が自分たちで作ったオリジナルTシャツを着て団結力を高めます。また、応援グッズを飾り付ける生徒も多く、応援への気合が伺えます。

東邦大学付属東邦中学校・高等学校からのメッセージ

編集部

最後に、東邦大学付属東邦中学校・高等学校に興味を持った読者の方に向けてメッセージをお願いします。

岡田先生

東邦大学付属東邦中学校・高等学校が重視するのは、ただ豊富な知識を得るだけでなく、その知識をもとに思考しようとする姿勢です。そのために自分の五感で捉え、自分の体験を通して学ぼうとするプロセスを大切にする教育を実践しています。「学び」と「自分の日常」のつながりを見出し、学びを深めてもらえるような環境があります。

小学生の皆さんも勉強して学んだことが自分の日常生活とつながっているなあと感じる時があるのではないでしょうか。そのような感性を大切にすることでどんどん学びが広がっていくと思います。そういう学びに魅力を感じる方が本校に入学すると、楽しい6年間を過ごせるのではないでしょうか。

編集部

岡田先生、本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!

東邦大学付属東邦中学校・高等学校の進学実績

東邦大学付属東邦中学校・高等学校では、伝統的に7対3の割合で理系大学への進学者が多くなっています。理系の中でも医学部・薬学部の合格者を多く輩出しているのが特徴です。医学部を中心に東邦大学への特別推薦制度を活用する生徒もいますが、全体の割合から見ると1割弱とそこまで多くありません。約9割の生徒が外部大学を受験しているのが現状です。

東京大学、京都大学、東京工業大学など国内難関校への合格者を多数輩出している同校ですが、あくまで進学先ではなく「生徒の自己実現」を尊重する指導体制を取っています。その結果として、近年は理系に限らず文系大学も含めた多様な進路が実現しています。

■東邦大学付属東邦中学校・高等学校の進学実績(公式サイト)
https://www.tohojh.toho-u.ac.jp/way/results.html

東邦大学付属東邦中学校・高等学校の卒業生・保護者・在校生の口コミ

ここからは、東邦大学付属東邦中学校・高等学校の卒業生や保護者、在校生から寄せられた口コミを一部抜粋して紹介します。

(卒業生)「自分探し」という言葉に表されるように、読書マラソンなど知的好奇心を刺激する教育内容が多くある。

(卒業生)生徒の自主性を尊重しており、自由度が高いのが特徴。その分、結果を出していくためには意欲高く取り組む姿勢が求められる。

(在校生)授業が楽しいし、先生も丁寧に質問に答えてくれる。

(保護者)勉強一辺倒ではない雰囲気の中で、子どもがのびのびと過ごせている。

生徒・保護者問わず、生徒の自主性を尊重する自由な校風に対する評価が多く聞かれました。自由度が高い分、主体性が求められるという特徴がありますが、先生の学習面のサポートもあるため安心できるという意見も挙がっていました。

東邦大学付属東邦中学校・高等学校へのお問い合わせ

運営 学校法人東邦大学
住所 千葉県習志野市泉町2-1-37
電話番号 047-472-8191
問い合わせ先 https://www.tohojh.toho-u.ac.jp/request.html
公式ページ https://www.tohojh.toho-u.ac.jp/index.html

※詳しくは公式ページでご確認ください