土浦日本大学中等教育学校の校舎外観

「謎解き」も導入。土浦日本大学中等教育学校の独自の入試システム|中高一貫校

独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、茨城県土浦市にある私立の共学校「土浦日本大学中等教育学校」を紹介します。

同校は、2003年4月に開校した土浦日本大学中学校を前身に、茨城県初の中等教育学校として2007年4月に開校しました。中学校と高等学校という枠組みをなくし、6年一貫した教育を行う中等教育学校です。
(※)同じ敷地内の「土浦日本大学高等学校」とは、カリキュラムも学校生活もまったく別となっている

今回は、そんな土浦日本大学中等教育学校の教育理念や特徴的な取り組みについて、先端教育担当副教頭を務める藤田先生と第5学年主任の太田先生にお話を伺いました。

グローバル化・情報社会に対応する土浦日本大学中等教育学校の教育目標

土浦日本大学中等教育学校の授業風景

編集部

最初に、土浦日本大学中等教育学校の教育理念についてお聞かせください。

藤田先生

本校は、時代の変化に合わせて、革新的な教育を行う学校を作ろうということで2003年に日本大学の付属校としてスタートし、2024年で21年目を迎えたという経緯があります。

2003年時点で今後の社会がどうなるかを考えたとき、キーワードとして「グローバル化」と「情報化」を設定しました。そのため本校は開校当初からグローバル教育とICT教育に力を入れており、グローバル社会で活躍する人材の育成を大きな目標として掲げています。

象徴的なプログラムとしては、開校以来続けている海外研修が挙げられます。毎年国内外の研修を実施していて、1年で京都、2年でイギリス、3年で広島、4年(※)ではイギリスへ行くんです。
(※)6年一貫教育のため、高校1年生を4年と称している

これらの研修は、語学研修にとどまらず、リサーチ学習とリンクしています。リサーチ学習についてはこの後、探究学習で詳しくお話ししますが、こうした国内外の研修、中でもイギリス研修がグローバル教育の象徴的なプログラムとなっています。

また、本校には外国人の教員が11人おり、単にアシスタントとして授業に加わるのではなく、専任の教員としてホームルームに入りますし、部活の顧問も担当します。日本人の専任教員と同じように学校生活に入り込んで多方面の指導をしています。

土浦日本大学中等教育学校のイギリス研修

▲イギリス研修では、リサーチ学習として街頭インタビューを実施

編集部

グローバル社会で活躍する人を育成するために、御校ではリベラルアーツの考え方を基本にしているとお聞きしました。

藤田先生

はい。リベラルアーツは古代ギリシャにさかのぼる考え方で、本校では「幅広く深い世界観・価値観と高度な言語運用力を基礎にして自由で柔軟な思考を発揮し、グローバル社会に貢献する力」と定義しています。

そうした考えのもとでクラス分けをしており、1年生から6年生までの全学年で「リベラルアーツクラス」と「理系インタークラス」の2コースを設けています。

リベラルアーツクラスは、その名の通りリベラルアーツをじっくりと学ぶコースです。リベラルアーツを重視するのは理系インタークラスも同じですが、それに加えて、ゼミ活動を通じてより専門的・実践的な活動を行います。

欧米では、文系理系の分け方よりも「リベラルアーツ」と「サイエンス」というコース分けが一般的です。基礎教養とそれを土台にした専門性という分け方にしています。

土浦日本大学中等教育学校ならではの実践的な学びとは

土浦日本大学中等教育学校の授業風景

土浦日本大学中等教育学校では、リベラルアーツを身につけるために、さまざまな工夫を取り入れています。ここでは探究的な学びとして「教科指導での取り組み」「総合的な学習・探究」「ゼミ」の3つについて紹介します。

公式を自分で考えて理解する「感動」と「サプライズ」のある授業

編集部

教科指導での取り組みについてお聞かせください。

藤田先生

日々の授業でのキーワードは「発見と活用」です。数学の授業を例にしてお話しすると、一般的な授業では最初に概念や公式の説明があり、それをもとに問題を解いていきます。本校ではそれを逆転して、公式の概念を導き出すことをゴール地点にするんです。

身近なたとえやゲームを使い、一見すると全然関係ないような題材を楽しみながら、効果的な方法や戦略などを考えていくと、実はそれが数学的な公式だったりします。

例えば、三角比について公式から教えるのではなく、「ラグビーのコンバージョンキック(※)はどの位置から蹴ると一番いいか」というテーマでいろいろ試して考えてみるんです。そうすると、三角比の計算が絡んでいることに気づきます。
(※)トライを決めた後のゴールキックで、ゴールポストの間を通すと得点となる。角度によって難易度が大きく変わる

編集部

現実のものに関連づけることで公式を学ぶわけですね。

藤田先生

はい。いわば「公式発見型」の授業です。これは主に共通テストなどで新傾向としてよく取り上げられますが、共通テストで出題されるから取り入れているわけではありません。本校では、数学に限らず全教科において、感動をもたらす、サプライズをもたらす授業を目指しています。

これが実はリベラルアーツにも繋がっていきます。単に問題を解く、解いて点数を取るのではなく、世界観や価値観といった深い次元への気づきをいかに作っていくかを重視しています。

イギリスの街頭で100人からアンケートを取るリサーチ学習

土浦日本大学中等教育学校のイギリス研修

▲海外研修とリンクしたリサーチ学習では、イギリスで街頭インタビューをすることも

編集部

2つ目の、総合的な学習・探究活動についてお聞かせください。

藤田先生

総合的な学習・探究活動としては、先ほど少し触れましたが、国内外研修とリンクしたリサーチ学習を行っています。

毎年、行き先にテーマがあり、事前指導を行い、各自がテーマを設定・調査し、その後、論文を書いて、パワーポイントでプレゼンテーションを行います。さらに代表者は、年度末に全校生徒の前でプレゼンテーションを行います。

テーマは、1年生は京都奈良で日本文化、2年生はイギリスで日英比較文化、3年生は広島で太平洋戦争・日本の近代の歩み、4年生はイギリスで現代社会の諸問題の日英比較となっています。5年生は交渉術から模擬国連、未来構想を探究します。

例えば4年時には、イギリスの街頭で、英語で現地の人に話しかけ、1人100人くらいからアンケートを取ります。それを帰国後、エクセルに結果を打ち込み、統計解析を行って論文を書きます。

編集部

これは全生徒が取り組んでいるということでしょうか?

藤田先生

そうです。ちょうど2年生は明日からイギリスへ発ち、再来週は4年生が出発するため、今はアンケート作りに追われています(取材は2024年7月)。

土浦日本大学中等教育学校の3年生の広島研修

▲海外だけでなく国内研修も実施。こちらは3年生の広島研修の様子

編集部

イギリス研修のアンケートは、例えばどのようなテーマがありますか?

藤田先生

今、見ている生徒は、自己肯定感に関するテーマで取り組んでいます。一般的に日本人は自己肯定感が低いと言われていますが、イギリスの人は自己肯定感がどの程度あるか、生育環境が自己肯定感に関係するかといったことを知る目的のアンケートを用意しています。日本でもアンケートを取り、比較分析を考えています。

さらにはその生徒は、「特に日本の中高生は諸外国と比べて自己肯定感が低いだろう、その背景には周りの目線を気にする同調圧力が強いからだ」という仮説を立てています。今回の研究ではそれを検証したいとのことです。

今回の研究で、もし仮説通りの結果が得られた場合、次のステップとして、周りの目線を気にしないようにする方法を考えます。

例えば、メイクをすることによって周りの目線を意識せず、人と話せるようになると自己肯定感が高まるかもしれません。そう考えてメイクセラピー的なワークショップを展開するといった内容です。仮説を立て、立証して解決策を考えるのが大事なプロセスですね。

ゼミでの研究をアピールし、難関私大にAO入試で合格した卒業生も

土浦日本大学中等教育学校の発表会

編集部

3つ目のゼミについてお願いします。

藤田先生

ゼミに関しては、理系インタークラスの生徒は必須で、何か1つ以上参加しなければならないことになっています。これまでは理系インタークラスのみだったのですが、2024年からリベラルアーツクラスに関しても、希望者が参加できるように変更しました。ゼミは放課後の時間を使って行います。

ゼミに関しては、各自の関心に沿って、より特定した領域を見つけて研究していきます。それは当然大学あるいは大学院でも研究することになると思いますので、どのような研究があるかを知り、学びへの意欲を高めていく意図が大きいです。

そのため実際の研究分野にかなり近づけて講座を設定しています。物理・化学・生物・数学以外にも、先端領域のスポーツ科学やシステム工学、哲学、表象文化論、歴史学、言語論、教育学、ファイナンス、社会実践などもあります。こういった多種多様な領域があることは、本校の特徴的なところだと思います。

研究の最前線に触れながら、博士号を持っている教員や研究者とも連携したりしながら研究していくので、内容としてもレベルが高いものになっており、特に生物分野は全国トップレベルの賞を複数受賞しています。ファイナンス分野では、2023年に日経STOCKリーグに入選しました。

編集部

面白いと思った研究やエピソードがあれば教えてください。

藤田先生

1つ挙げるとすれば、生物ゼミでの線虫の研究です。線虫にいろいろな色の光を当てると光によって線虫の行動が変わるということで、当てる光の色や波長と線虫の行動を研究していました。これを人間の睡眠の質のコントロールに繋げることができるということです。

その生徒は将来、その研究を生かしてアプリやデバイスを作り睡眠問題を解決したいという構想を立てています。その思いを堂々と話し、慶應義塾大学にAO入試で合格しました。現在はバイオ関係のゼミに入り、実際に線虫研究を応用した睡眠の課題に取り組んでいます。

土浦日本大学中等教育学校ならではのパフォーマンス入試

土浦日本大学中等教育学校の校名

編集部

土浦日本大学中等教育学校の入試制度の特徴についてお教えいただけますか?

藤田先生

本校は多様な生徒獲得のために、入試の種類をたくさん用意しているのが特徴です。その中で、筆記方試験の学力にとどまらない力を測るために、2021年度から「ICAP入試」を採用しています。

これはInteractive(インタラクティブ)、Constructive(コンストラクティブ)、Active(アクティブ)、Passive(パッシブ)の頭文字で、新たな発想を生み出す力を重視した試験となっています。

ICAP入試では、筆記試験型ではわからない力を見て、特にリーダーにふさわしい人物を獲得したいと思っています。リーダーはどんな人間にふさわしいかと言えば、人をわくわくさせる人だと思います。では、わくわくさせるために何が必要かと言えば、2つあります。

1つは、ある枠の中で最適解を目指すのではなく、枠自体を疑ったり、枠の外側を考えたり、別の言い方をするとサプライズを生み出す力、面白いアイディアを出す力が大事です。

今の社会を見渡してみると、コストパフォーマンス、タイムパフォーマンスを重視し、与えられた枠組みの中で効率化を重視する傾向が強まっているように思われますが、その枠におさまらないユニークで斬新な発想をしてもらいたいんですね。

もう1つは人を動かす表現力、アイディアを人にうまく伝えていく力です。その際に、言葉だけではなくて、体の感覚、いわゆるなりきる力です。これからは相手の感覚にもなりきり、相手の動きを誘発するような力が大事になってくると考えています。そうした人に対する影響力も大事です。

編集部

入試では、具体的にはどういったことを行うのでしょうか?

藤田先生

パフォーマンス課題と面接があります。この他に、志望理由や何に熱中してきたかとかといった履歴も書いてもらいます。

特にパフォーマンス課題のところで特色を持たせていて、とにかく面白いことを考える、常識の外側を考える力と、言葉だけではなく体全体を使った表現力の2点を重視して見ています。

過去問としては、人間以外のものになりきるという課題がありました。例えば、セミは7年間地中にいて、地上に上がってきたら7日間で死んでしまいますが、「地上にようやく上がってきたセミのその後を4コマ漫画で表現し、その上でセミになりきって演じてください」という内容の試験を実施しましたね。

2025年度から新しく導入するのは「謎解き入試」!

土浦日本大学中等教育学校の謎解き入試のイメージ

▲2025年度からは謎解き方式の入試を導入予定(写真はイメージ)

編集部

入試制度について、新しいトピックがあれば教えていただけますか?

藤田先生

2025年度から、従来のパフォーマンス方式と新しく取り入れる謎解き方式のどちらかを選べるようにしようと考えています。謎解きはグループ単位で取り組むので表現力・チームワークも問われますが、それ以上に発想力の根本にあるような、法則性を見つけ出す力を評価したいと思っています。

現在、松丸亮吾氏が代表を務めるRIDDLER(リドラ)株式会社さんと提携して問題を用意している最中です。

編集部

太田先生はこの新しい入試形式においてどんな役割を担われているのでしょうか?

太田先生

今までの入試では、文学的であったり空想的、芸術的な部分が多い傾向がありました。今回は、少し科学的な要素といいますか、規則性を発見したり試行錯誤したりする過程を見たいということで、謎解き方式のアイディアを出しました。

RIDDLERさんは、小学生向けの啓発ツールをいくつも作っているので、本校としてもぜひコラボさせていただきたいということで進めています。現在は公平かつ本校が見たい内容を見るための問題や形式の詳細を調整しているところです。

編集部

まだ計画中とのことですが、受験生の皆さんがグループになって、同じ謎を解いていく様子を見るといった形式でしょうか?

太田先生

そうですね。未知の問題に対してどうアプローチをするか、そしてチームメイトに対してどういうアクションをするのか、想像力を働かせながら周りをうまく動かすリーダー的な部分、相手を想像してうまく声をかけるところが引き出せるような問題を考えております。

土浦日本大学中等教育学校からのメッセージ

土浦日本大学中等教育学校の藤田副教頭と太田先生

▲取材に対応いただいた藤田先生(左)と太田先生(右)

編集部

最後に、御校に興味をもったお子さまや保護者の方に向けてメッセージをお願いします。

藤田先生

ICAP入試で求めている人材、自分自身もわくわくし、周りの人をわくわくさせる人を育てたいという想いが根本にありますので、わくわくに惹かれる皆さんにぜひ来ていただきたいと思います。

太田先生

教職員も含め、答えがわからないことを生徒と一緒に楽しく考えていくことがとても大切だと思っています。わくわくしながら生徒と一緒に前を向いて進む、そういう学校であり続けたいと思っています。

また、本校では楽しい授業を展開しておりますし、部活動も盛んでスポーツ系は13、文化系は12あります。もし本校に興味をもっていただけたのであれば、ぜひ一度足を運び、学校の雰囲気を感じてみてください。よろしくお願いします。

編集部

本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

土浦日本大学中等教育学校の部活動/ロボットエンジニアリング部

▲部活動も盛ん。ロボットエンジニアリング部の活動風景

土浦日本大学中等教育学校の部活動/鉄道研究会

▲鉄道研究会の部活動の様子

土浦日本大学中等教育学校の進学実績

土浦日本大学中等教育学校では、ほとんどすべての生徒が進学しており、国公立大学や難関私立大学への合格者も多数輩出しています。

令和5年度の合格者実績としては、卒業生115名に対して、日本大学へは134名が合格しました。

国公立省庁大学へは、東京工業大学1名、筑波大学2名、茨城大学2名、北見工業大学1名、秋田大学2名、宇都宮大学1名、横浜国立大学1名、横浜市立大学1名、防衛大学校2名の合計13名が合格しています。

私立大学へは、難関私立大学である慶應義塾大学2名、早稲田大学3名、東京理科大学3名、GMARCH16名を含む128名が合格しています。

■進学実績(土浦日本大学中等教育学校公式サイト)
https://www.tng.ac.jp/sec-sch/career_guidance/result/

土浦日本大学中等教育学校の卒業生・保護者の口コミ

土浦日本大学中等教育学校のサッカー部

ここからは、土浦日本大学中等教育学校の口コミを紹介します。実際に通学していた卒業生や保護者の声をまとめました。

日大中等での6年間、多くの先生方に支えていただきながら、特に英語のスキルアップに力を入れました。大学時代には積極的にさまざまな国を訪れ、異文化に触れる機会を作りました。6年間で培った英語力は現地の人々とのコミュニケーションにとても役に立ちました。(卒業生)

土浦日本大学中等教育学校では、6年間同じメンバーで様々な研修や、文化祭、体育祭などを行います。そのため、受験期に入る頃にはそれぞれの目標を持ちながらも励ましあう仲間、そして先生方との強力な絆ができています。本校の先生方は、生徒ひとりひとりと親身に向き合ってくださいます。また、課外授業などをフルに活用し、効率よく勉強することができました。(卒業生)

職員室には質問に懇切丁寧に対応してくださる先生方がいます。志望校を決める際や不得意教科の克服法について多くのアドバイスをしていただきました。学習環境だけでなく、「人」の存在が大きな助けとなりました。(卒業生)

先生方は熱心で面倒見が良い学校です。英語に力を入れており、入学まで英語に触れることなかった娘が英語を話せるようになりました。気の合う友達もたくさんでき、毎日楽しく通っています。(保護者)

■卒業生の声は学校公式サイトから引用しています。
https://www.tng.ac.jp/sec-sch/career_guidance/almuni.html

土浦日本大学中等教育学校へのお問い合わせ

運営 土浦日本大学中等教育学校
住所 茨城県土浦市小松ヶ丘町4-46
電話番号 029-822-3386
問い合わせ先 https://www.tng.ac.jp/sec-sch/inquiries/
公式ページ https://www.tng.ac.jp/sec-sch/

※詳しくは公式ページでご確認ください