「英語で学ぶ」環境でぐんぐん成長する帝京大学可児小学校のグローバル教育とは

「ぽてん」をご覧の皆様に、注目の学校を紹介するこの企画。今回取材したのは岐阜県可児市にある私立の「帝京大学可児小学校」です。

同校では、小1から「フォニックス(※)」を取り入れたネイティブ教師による授業やイマージョン授業を取り入れ、全員参加の海外研修、国内での語学研修を実施するなど、小学校の6年間で本格的な英語学習を実施しています。(※)英語の発音とつづりの規則性を学ぶことで、知らない単語の発音やつづりのパターンを予測できるようになる音声学習法

また、探究活動を軸としたオリジナルのカリキュラム「はっけん」「ぼうけん」では、日本文化体験やICT教育、地図だけで進む「中山道ウォーク」などのダイナミックな体験学習などに取り組み、グローバル社会に通用する人材育成の礎を築きます。

そんな帝京大学可児小学校の教育について、小学校教頭の酒井先生と小・中高広報担当教頭の鬼頭先生にお話を伺いました。

独自の「4-4-4制」の教育システムを導入。帝京大学可児小学校の「建学の精神」

帝京大学可児小学校で行われた信州大学生へのインタビュー風景

編集部

まず「建学の精神」をお聞かせください。

鬼頭先生

「努力をすべての基とし、偏見を排し、幅広い知識を身につけ、国際的視野に立って判断ができ、実学を通して創造力および人間味豊かな専門性ある人材の養成を目的とする。」という一文を「建学の精神」としており、帝京大学や帝京大学小中高と共通のものです。

「努力をすべての基とし」という言葉からはじまる通り、本校の教育の中心には努力する姿勢があります。学校全体で、頑張る児童をサポートしていきたいと考えています。

また、中ほどには「国際的視野に立って判断ができ」という文言があります。これからの社会では必要不可欠なグローバルな視点の育成には特に力を入れています。

編集部

これらの精神は、小学校生活の中でどのような教育活動に結びついているのでしょうか。

酒井先生

さらに小学校では「つよく」「やさしく」「うつくしく」という教育目標を立て、「建学の精神」を達成するための教育を「知」「情」「意」「体」の4つのカテゴリーに分けて実践しています。

「知」では、基礎学力を土台とした主体的な学びをもとに、さらに高い学力を身に付けることのできる児童の育成を目指します。「情」では、豊かな心、人を思いやる心、感動する心を大切にしながら感性を磨くことを目標としています。

そして「意」では、意欲をもってチャレンジする心や自主的・自立的な態度を育成し、「体」では、食育を含め、健やかでたくましい児童の育成を目指します。

編集部

小学校から高等学校までの一貫校という環境を生かした教育カリキュラムはあるのでしょうか。

酒井先生

本校独自の「4-4-4制」の教育システムを導入しています。子どもたちの精神的な発達などを加味して、小1~4を第1ステージ、小5~中2を第2ステージ、中3~高3を第3ステージと捉え、段階に応じた教育を行うカリキュラムです。

「4ー4ー4制」を取り入れることで、中高への接続をスムーズにする狙いがあります。

小1から本格的に取り組む「英語」を通してグローバルな視野を育成

帝京大学可児小学校のイングリッシュキャンプの様子

▲イングリッシュキャンプでは、さまざまなアクティビティを通して「英語で学ぶ」体験をします

小学校入学時から本格的な英語教育を実施する帝京大学可児小学校。グローバル教育の一環として取り組むため、「英語を学ぶ」のではなく、「英語で学ぶ」環境です。低学年から「話す」「聞く」「書く」「読む」の4技能をバランスよく学び、コミュニケーションツールとしての英語の習得を目指します。

そんな同校のグローバル教育や英語力の成長について伺いました。

「フォニックス」や様々なアクティビティを通して英語力を伸ばす

帝京大学可児小学校の英語のイマージョン授業の様子

▲小1の図工と、小2、小3のオリジナル教科イングリッシュタイムでは、イマージョン教育を実施

編集部

貴校の英語教育を軸としたグローバル教育についてお聴かせください。

酒井先生

グローバル教育への取組として、まず取りかかるのが英語教育です。小中高の12年間を通して「英語で学ぶ」環境を重視しているため、小学校では、日本人が苦手とするコミュニケーション能力や自己表現力を伸ばすことに力を入れています。

小学校の英語教育では、オールイングリッシュの環境を多く取り入れ、3人のネイティブ教師による英語の授業時間を一般的な公立校の4倍ほど確保しています。

豊富な授業数を生かし、英語力を高めるためにフォニックスを重点的に行っています。アルファベットの「B」は「ビー」ではなく「b」と発音し、音と文字をつなげて読むなど、フォニックスならば、「読む」「聞く」の力を付けると同時に「書く」力も付けることができます。

フォニックスを軸にしたネイティブ教師による取組は小1~6まで段階的に行っています。その他にも、英語に触れる機会を増やすために高学年で希望参加のイングリッシュキャンプを行ったり、小6でグアムに語学研修に行ったりしています。

また、中学年・高学年では希望者による国内の短期留学を実施し、海外への短期留学も計画中です。

帝京大学可児小学校の小6のグアム研修旅行の様子

▲小6の「グアム研修旅行」は3泊4日で現地の小学生と交流し、歴史や文化についても学びます

酒井先生

高学年向けのイングリッシュキャンプは校内で行い、さまざまな特技をもった外部のネイティブ講師を招いて実施します。例えば、映像作品を作ったり、ミュージカルやドラマを作って演じる講座を行ったり。ピラティス講座が開かれたこともありました。さまざまなアクティビティを英語でのコミュニケーションで楽しむ2日間です。

また、小1の図工など一部でイマージョン授業を取り入れたり、多読学習で語彙力を高めたりと、英語力向上のための取組は多彩です。

英語力を飛躍的に高める「日常に英語がある環境」と「きめ細かな発音指導」

帝京大学可児小学校の英語の授業での児童の発表の様子

▲小5では英語でのプレゼンテーションにも挑戦します

編集部

高学年になるとよりネイティブに近い発音はもちろん、英語でのスピーチなども行うそうですね。

酒井先生

はい。発音に関しては、小1からネイティブ教師と親しく関わりながら過ごすうちに自然と身に付いていくケースが多いですね。

ネイティブ教師との授業は、低学年のうちはクラスを半分に分けた少人数制で行い、より多く教師とコミュニケーションをとることができるようにしています。教師の方でも、一人一人に寄り添い、児童の発音が間違っていれば正すというサイクルを6年間繰り返し行います。

また、発音は低学年のうちから取り組むことにより、成長とともにネイティブの発音を真似ることに照れが生じる弊害を防ぎ、自然と身に付けることができます。このような環境の中で子どもたちは、正しい発音を発達段階に応じて無理なく習得しています。そのため、高学年になる頃には流ちょうな発音でスピーチする児童が多くいます。

授業以外でも、ネイティブ教師と接する際は自然と英語が出てくる児童が多いですね。

日本人の教員と接する時と変わりなく、相手がネイティブの教師なので英語でコミュニケーションを図っているという印象です。それはイングリッシュキャンプなどで外部の講師と接するときも同じで、積極的に交流する姿が見られます。

このような英語教育は開校当時から実施しており、徐々にブラッシュアップを重ね、今の形になってきています。英語を通して学ぶ教育は定着してきており、児童たちの「話す」「聞く」力は飛躍的に伸びています。

小学校卒業時に全員英検4級取得を目標としており、2023年度からは新たな習得指針として「TOEFL Primary」を校内で導入しました。218点満点中、本校の平均点が212点という結果をみても、高い英語力の定着が実証できていると感じています。

帝京大学可児小学校の小2のイマージョン授業で行われた英語劇の様子

▲英語劇などの取組を通して、さらに成長していきます

鬼頭先生

本校は中学校進学時からの入学生(外進生)の受け入れも行っており、外進生たちも小学校からの内進生たちと一緒に英語を学びます。

その際、内進生たちは、発音やコミュニケーションをはじめとする「聞く」「話す」能力に関して、授業を先導する存在です。外部コンクール出場の際など、学校代表に選ばれる機会も多く、小学校で学んだことが生かされていると感じます。

オリジナル授業「はっけん」「ぼうけん」で「なりたい自分」が明確に

帝京大学可児小学校の「ぼうけん」の授業の「中山道チャレンジウォーク」の様子

▲「ぼうけん」で挑戦する中山道チャレンジウォークで山道を進む様子

子どもたちの「心を育てる教育」にも力を入れる帝京大学可児小学校。オリジナルの教材や独自の取組を取り入れた「はっけん」「ぼうけん」の授業を通して、児童たちの感性を育てています。

ここでは、「はっけん」「ぼうけん」での取組に関して、お話を伺いました。

さまざまな探究活動を通じて「幅広い知識」を習得し「協働力」を育成

帝京大学可児小学校の「はっけん」の授業でのお茶の体験

▲「はっけん」の授業でのお茶の体験

編集部

「はっけん」や「ぼうけん」の授業ではどのような取組を行っているのでしょうか。

酒井先生

「はっけん」や「ぼうけん」の授業は本校独自の教科で、いわゆる「総合的な学習の時間」に当たり、さまざまな探究活動に取り組みます。必修科目としての「総合的な学習の時間」は本来小3~6で実施するものですが、本校では小1からスタートし、じっくりと取り組みます。

この授業では、例えば生命の尊重について考えたり、自己肯定感を養うカリキュラムを行ったり、コミュニケーション能力、問題解決能力を伸ばす課題に取り組んだりと、さまざまな能力を伸ばすことを目的に幅広いテーマに向き合います。

また、「はっけん」は先ほどお話しした「知」「情」「意」「体」の4つのカテゴリーのなかの「情」や「意」により深くつながる取組といえます。

グローバル教育の一環としても重要な、日本の良さや和の心への理解を深める取組では、季節行事やお茶・焼き物体験などを通して日本文化に触れる機会を積極的に設けています。

加えて、ICT教育にも取組、情報処理能力や活用力の向上を目指します。「スクラッチ」などのアプリケーションを利用してのプログラミング学習を通して論理的思考力を養い、1人1台所持しているタブレット端末を有効活用し、習熟度別学習やグループワークにも取り組みます。

帝京大学可児小学校のICT教育でのタブレット端末活用シーン

▲日本文化体験やICT教育などに小1から取り組みます

「ぼうけん」では、「体」への取組を軸に行います。健康な体づくりはもちろん、心の成長を促すことを目的に、自己理解・他者理解を深める取組も行います。

「自分はこういう人間なんだ」と自覚した上で、自分以外の人々とどのように関わっていけば良いのか、課外活動を通して学んでいきます。

編集部

その他にも、ダイナミックなアクティビティを行うと伺いました。

酒井先生

そうですね。遊びや自然体験などの体験プログラムを通してさまざまな能力を育てる活動をしているNPO法人と連携し、学年に応じた取組を行っています。沢登りやクライミングなど、普段はなかなか体験できないダイナミックな取組にチャレンジしています。

例えば、小6の「中山道ウォーク」は、小学校生活の集大成ともいえる取組です。岐阜県を通る中山道を歩くカリキュラムで、31kmの距離を2日間の日程で歩きます。

クラス全員で、地図だけを頼りに参加するので、児童たちの間でもさまざまなやりとりや葛藤が生まれます。ゴールに設定されている本校の校門の前に到着した際は、児童全員が横一列に並んで、「せーの」でゴールする姿には、教員も含め、関係者すべてが感動の嵐です。

帝京大学可児小学校の児童が中山道を歩く様子

▲「ぼうけん」の授業で中山道を歩く子どもたち

対「自分」から他者理解へ!新たな気付きを生む事後学習を重視

帝京大学可児小学校の異学年交流の様子

編集部

活動後の事後学習も大切にされているそうですね。

酒井先生

はい。活動後は自分の感じたことなどをクラスメイトと共有したり、作文にしたりといった「振り返り」を事後学習として行うことを大切にしています。友だちの意見を聞くことで、自分とは違う価値観を学ぶ機会にもなります。

低学年では「自分はどう思ったか」に焦点を当てて絵を描いたり、色で表したりという取組を行い、2年生の後半から3年生くらいになると、自分の思いだけでなく、友だちとどのように関わったかにも注目するよう促すなど、児童の成長に合わせて段階的に難易度を上げていきます。

そして高学年になると、活動を振り返ることで、新たに学んだことや気付きを見つけ、今後の学校生活にどう生かしていくかを考えられるようになります。

実際に児童たちの口からも、「これからの学校生活や学級活動のなかで、自分はこう行動したい」といった感想を多く聞きます。

そういった意味でも、「ぼうけん」での取組は単発的なイベントというよりも、日常的な成長につながる活動だといえます。また、このような児童の成長は、やはり低学年から「はっけん」や「ぼうけん」の授業での体験を積み重ねたからこそだと感じています。

帝京大学可児小学校からのメッセージ

帝京大学可児小学校のスポーツ大会でのリレーの様子

▲10月に行われるスポーツ大会は児童たちが大好きな行事の一つ

編集部

校風や児童たちの様子をお聞かせください。

酒井先生

本校で教鞭をとって7年目のネイティブ教員が、児童たちのチームワークが年々良くなっていると感じているそうです。それは教員同士の連携が取れていることや児童と教員の関係性の良さなど、さまざまな要因が重なり合って成り立っているように感じると報告してくれました。

子どもらしい純粋な児童が多く、そんな子どもたちの力を引き出すことに一生懸命な教員たちの存在もあって、とても活気のある学校だと感じています。授業のみならずスポーツ大会(運動会)などの行事も含め、何事にも一生懸命に取り組む児童が多いです。

帝京大学可児小学校の鬼頭先生と酒井先生

▲インタビューに答えてくださった鬼頭先生(左)と酒井先生(右)

編集部

最後に、この記事をご覧の受験生やその保護者に向けて、メッセージをお願いします。

酒井先生

予測不能なこれからの時代、今の子どもたちは大変な時代を生きていかねばなりません。今後はさまざまな国の人々と協働していく機会が増えるでしょう。英語をコミュニケーションツールとして活用しながら、相手を認め、受容し、自ら思考する姿勢は必要不可欠です。

本校が育成したい能力のひとつに、「困難にぶつかったときに自分で解決策を考える力」があります。この能力はグローバル教育においても重要だと感じていますし、その育成のために小中高の12年間で探究活動などにも積極的に取り組んでいます。

そして、その土台となるのが基礎的基本的な知識・技能や、思考力・判断力・表現力だと考えています。これらの能力をしっかりと身につけて育っていってほしいとの思いでさまざまな教育課程を組んでいます。

鬼頭先生

小中高一貫校である本校の最終目標は、グローバル社会で活躍できる人材の育成です。

希望する大学へ進学し、卒業したその先の長い人生を、世界や社会、地域、家族といったそれぞれの環境で自分らしく他者と関わり、協力し合いながら何かを成し遂げていくことができる人間形成、そのための第一歩が帝京大学可児小学校でのさまざまな取組です。

ぜひ本校の体験イベントに参加して、雰囲気を味わっていただけると嬉しいですね。

編集部

独自のカリキュラムや英語学習をはじめとするグローバル教育に、小1から本格的に取り組む帝京大学可児小学校。基礎学力を土台に、さまざまな経験を通して「見えない能力の育成」にも力を入れているところに魅力を感じました。

児童の成長に合わせてじっくりと取り組むからこその成果が学校生活のさまざまな場面で現れており、今後の中高でのさらに質の高い学びの場で、子どもたちがどのように成長していくのかが楽しみになりました。本日はありがとうございました!

帝京大学可児小学校の卒業後の進路

帝京大学可児小学校の校舎全景

帝京大学可児小学校は高等学校卒後までの12年間一貫教育を実施しているため、学力などの条件を満たした上で帝京大学可児中学校へ進学できます。現在は8割強の児童が帝京大学可児中学校へ進学しています。

外部の私立中学や公立の中高一貫校への受験、公立中学校への進学も可能です。

帝京大学可児小学校の卒業生・保護者の声

帝京大学可児小学校の昼休みの風景

ここでは、帝京大学可児小学校の卒業生・保護者・在校生の声をお届けします。

(保護者)スキー研修や世界遺産研修、6年生はグアムへの海外研修など、校外学習がとても充実していて内容も濃いと感じます。パソコン・タブレット端末、電子顕微鏡、天然芝のグラウンドなど施設や設備が充実していて、学びの場としてとても良い環境です。

(保護者)自立して学習に向かう姿勢やアウトプットする場も増えて力がついていると実感しています。またタブレット端末でプレゼンしたり動画を編集したりと高度な技術が身についていて驚きました。※公式サイトより抜粋

(保護者)毎日学校に行くのが楽しみで、元気に登校しております。帰宅後も大好きな担任の先生との会話や授業のこと、お友だちと遊んだことなど臨場感たっぷりにお話ししてくれます。※公式サイトより一部抜粋

(卒業生)帝京大学可児小学校では、1年生の時からネイティブの先生によるオールイングリッシュの英語の授業があります。その6年間の積み重ねによって、「話す」「聞く」という力をしっかりと身につけることができました。(略)私の国際化の礎は、帝京大学可児小学校で学んだ6年間にあります。※公式サイトより一部抜粋

小1から本格的に取り組む英語教育やオリジナルカリキュラムへの評価が高く、教員の熱心な指導姿勢に感謝する声が多く聞かれました。

帝京大学可児小学校へのお問い合わせ

運営 学校法人帝京大学
住所 岐阜県可児市桂ケ丘1-2
電話番号 0574-64-5101
問い合わせ先 https://www.teikyo-kani-s.ed.jp/inquiry/
公式ページ https://www.teikyo-kani-s.ed.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください