ぼてん読者の皆様に、今注目の学校をご紹介。今回取材したのは兵庫県神戸市にある共学の私立中高一貫校「滝川中学校・高等学校」です。
2018年に創立100年を越えた同校。2022年度には従来のコースを刷新し、2024年度からは一部のコースで男女共学化、新しい体制でのスタートを切りました。コースごとで実施する校外学習や、地域と連携して行う実践的な探究学習など、体験からの学びを重視し、これからの時代に必要不可欠なリーダーシップの育成に力を入れています。
滝川中学校・高等学校が実践する「リーダーシップ教育」を軸とした取り組みについて、学校長の下川先生に伺いました。
この記事の目次
常に相手の立場を慮る「真のリーダー」を育てる滝川中学校・高等学校の教育
最初に、滝川中学校・高等学校の校訓をお聞かせください。
創立当初から「至誠一貫」「質実剛健」「雄大寛厚」の3つが校訓として伝承されてきました。激動の時代であった創立当時はもちろん、予測不能な未来へと向かう今の時代にもとても重要な要素だと思います。
特に「至誠一貫」には重きをおき、物事に誠実に取り組んでいく姿勢を大切にしています。これは生徒たちに対してしっかりと教育を実施していく本校の姿勢でもあります。
本校のはじまりは男子校です。社会、ひいては日本を牽引するエリートを育成する学校として創立された沿革を考えても、3つの校訓を重視し、長くリーダーを育てる教育が実践されてきた土台があります。
社会のリーダーとして、一人ひとりがたくましく時代を生き抜く力は今の時代にも必要不可欠です。それは女子生徒にとっても同様だと考え、2024年度から男女共学校となりました。
コース別に取り組む探究活動で、生徒の夢や目標を後押し
2022年度よりこれまでのコースを一新し、中学校入学時から「医進選抜コース」「Science Global 一貫コース」「ミライ探究一貫コース」の3つのコースに分かれて学ぶカリキュラムを実施している滝川中学校・高等学校。各コースの取り組みの軸となるのが探究活動です。
各コースが目指す最終目標に沿った内容で取り組む探究活動で、生徒一人ひとりの興味関心を深め、希望進路へ進むための教養や知識の習得、さらにその意義についても深く向き合います。
滝川中学校・高等学校の3つのコースやそれぞれの探究活動について伺いました。
生徒の多様な希望進路をかなえる滝川中学校・高等学校の3つのコース
御校で設定している3つのコースについてお聞かせください。
中学校では、入学時に「医進選抜コース」「Science Global 一貫コース」「ミライ探究一貫コース」の3つのコースに分かれて学びます。男女共学となる「医進選抜コース」「Science Global 一貫コース」は名称からもわかるように、目的がはっきりしている生徒が多く在籍しています。
「医進選抜コース」は文字通り、最難関医学系大学・学部への進学を目標とするコースです。医療体験実習や大学の医学部見学などのコース独自の「メディカル探究」、また医学部への進学を見据えた放課後学習「滝川メディカルゼミ」の開講をはじめ、進路指導なども医学部進学を目標に特化して行っています。
「Science Global 一貫コース」は、国際社会で活躍できるグローバルリーダーの育成を掲げ、最難関大学や海外大学への進学を目標に、実践的な英語力やグローバルな視野の獲得に取り組みます。理数教育と英語学習に力を入れ、中3の1月~3月に全員が3ヶ月間のニュージーランドターム留学に参加します。
「ミライ探究一貫コース」は、広く知識や教養を得ることで、これらの不確実な社会で活躍できるスキルを身につけていきます。
「ミライ探究一貫コース」には、まだ明確な夢や進路が決定していない生徒が多く、ほかの2コースとは異なり、自分の興味関心を発見するところから学びを深める「探究」の実践にもっとも重きをおいたコースといえます。
学びが深まる!コースそれぞれの目的に合わせた探究活動
各コースの探究活動についてお聞かせください。
「医進選抜コース」「Science Global 一貫コース」では、コースの最終目標に沿った内容の探究活動に取り組みます。
「医進選抜コース」では、中1〜高2で、「いのち」をテーマに国内外の医療問題に取り組み、グローバルな視点で探究活動を行います。健康維持のためにできることや医療現場の課題など、医療に関連したテーマに絞っての活動がメインです。
「Science Global 一貫コース」では、中3全員参加の「ニュージーランドターム留学」で、SDGsの17の目標から1つを選んで、日本とニュージーランドとの取り組み方の違いなどを探究します。高校からは科学的なテーマで行う研究や、多彩な海外研修が探究活動の場になります。
中学校の「ミライ探究一貫コース」、高校の「ミライ探究コース」では、さまざまな探究活動に取り組みます。特に高校では、「総合的な探究の時間」、いわゆる探究活動を週に3時間確保し、さまざまな課題に向き合います。そのなかで「将来何をしたいのか」をじっくりと考えてほしいと思っています。
地元から地域へ!生徒の視野を広げる「ミライ探究一貫コース」「ミライ探究コース」の探究活動
「ミライ探究一貫コース」「ミライ探究コース」での探究活動への取り組みとはどのようなものなのでしょうか。
中学校では、学校の近隣にある板宿商店街をテーマに、地域の活性化についての探究活動に取り組みます。板宿商店街と本校には、学園祭を共催するなど深いつながりがあります。
また昨今、シャッター商店街が増えているなか、板宿商店街はとても活気があり、ビジネスモデルとして興味深い場所でもあります。
そこで、人が集まる商店街をどのように実現したのか、さらに活性化するにはどうすれば良いのかを、本校の中学生が探究活動を通して掘り下げていく取り組みにもご協力いただいています。
実は、板宿商店街の活気の秘訣を探り当てたのは、この探究活動に取り組んだ生徒たちです。板宿商店街についてリサーチし、お店の方々へのインタビューや実際に利用しているお客さんへのアンケートなどを集め、データ化し、説得力のある研究結果にまとめあげました。
▲学園祭では板宿商店街で書道部がパフォーマンス。活気ある商店街づくりに一役買っています
その探究活動報告によると、地元の企業や店舗にこだわらず新規出店のハードルを低くしていることと、同業他社の参入を制限しないという板宿商店街の融通性の高さが理由であることが分かりました。
小規模な商店街ですが、全国規模の大手チェーン店があったり、パン屋だけで6店舗あったり、そういった自由度の高い運営方針がお客さんを呼んでいるようです。
教員たちも不思議に感じていた点に生徒が着目して、その疑問について探究活動を通して詳らかにしてくれた生徒たちに頼もしさを感じました。
高校では学校周辺からさらに広い地域へと目を向け、神戸市三宮の地域活性化に取り組むそうですね。
はい。高校になると神戸市の主要エリアである三宮の人口減少問題に取り組みます。今、大阪市への人口流出対策が神戸市三宮の大きな課題となっています。
その課題解決に向けて、市役所とともに共同研究を行っています。若い世代の意見や考えが必要とされていることから、生徒たちにとっても社会の一員として取り組む重要な探究活動となっています。
人口減少を食い止めることもそうですし、「神戸市三宮の地域活性のために必要なことは何か」を生徒の目線で探究していきます。
▲神戸市三宮の地域活性のための提言を行う生徒たち。このようなプレゼンテーションの機会も多く用意されています
高1でフィールドワークに出かけ、そこでの気づきを神戸市の三宮再整備事業課の方々に向けて発表する機会を得るなど、大人に混ざって意見を発信し、自分たちの考えが実社会で評価される経験を得る機会にもなっています。
さらに高2の学年末には、校内で「滝川クエストカップ」を開催し、ポスターセッションで探究活動の成果を発表します。
また、他校と共同で探究成果を発表する機会も設けています。本校を含む私学5校とともに探究成果発表会を開催することで、同世代のさまざまな考えに触れ、生徒たちにとっては大きな刺激になるようです。
このように6年あるいは3年間でさまざまな探究活動に取り組み、実社会でそのアイデアが生かされる経験や培われるプレゼンテーション力は、今後、総合型選抜入試や推薦入試などの大学受験の場でも活かしていけるようにしたいと考えています。
行事や校外学習を通して育む「リーダーとしての自覚」
▲実体験を通して多くの気づきを得る「白川郷探究研修合宿」では、リーダーシップについても学びます
リーダーシップ教育に重きをおく滝川中学校・高等学校では、コース毎で取り組む学校行事や校外学習を通して、生徒たちがリーダーとしての素質を開花させ、その力を生かす場を豊富に設けています。
探究活動の一環でもあるこれらの取り組みを通して、失敗からの学びや生徒同士の学び合いを大切にし、精神面での成長や協働力、コミュニケーション力の育成につなげています。そんな滝川中学校・高等学校のリーダーシップ教育について伺いました。
生徒同士の関わりを増やし、実践のなかでコミュニケーション力を磨く
リーダーシップ教育につながる、「授業以外の取り組みからの学び」を重視していらっしゃるそうですね。
そうです。リーダーとは先頭に立って物事や人を引っ張っていく人材を指しますが、一朝一夕で育つものではありません。さまざまな体験や人との交流のなかで、考え、実践することで育まれていくのがリーダーシップだと考えています。
リーダーシップ教育に不可欠なのがコミュニケーション力の育成です。忙しい現代社会のなかで育つ今の子どもたちは、経験を積む機会が圧倒的に少ないと感じます。そのような時代においては、学校こそがコミュニケーション力を育む場としての機能をしっかり果たすべきです。
そこで本校では行事や校外学習などの、授業以外の学校での活動を積極的に行っています。行事や校外学習などの、コミュニケーションが取れなければ成り立たない取り組みをなるべく増やし、「外に出る」機会を増やすことで生徒たちの経験値を高めたいと考えています。
校外学習や行事は学年で取り組むものもあれば、コース別に他学年と取り組むものもあり、すべてを挙げるとかなりの数になります。
生徒同士でのコミュニケーションにおいては、ときには意見の相違があったり、言い争うことがあったり、一筋縄ではいかないシーンが多々あります。しかし本校では、生徒たちがもまれて鍛えられる状況を敢えて作りだすことにしています。
なかには行事に積極的になれない生徒もいるでしょうが、学校側が積極的に機会を設けることで、否が応でも参加せざるをえない環境を作り出しているといえます。こういった経験を避けていては人間としての大きな成長の機会を逃すことになると考えるからです。
例えば中1で取り組む淡路島での農業体験は、体験型農場「タネノチカラ」で実施されるSDGs体験型研修なのですが、そのなかで土壌改良のためにウッドチップをまく作業や火起こし、草刈りをはじめタマネギの収穫なども経験します。
そういった作業の一つひとつで、生徒同士で協力したり、誰かが先導して効率的に作業を進めたりといったやりとりがあり、ときにはぶつかり合いながらやり遂げる経験を積んでいくなかで、リーダーシップや協働する心を育んでいってほしいと考えています。
上級生が下級生を牽引することで生まれる「リーダーシップ」
▲校外学習は、全員共通のもののほか各コース別に特色ある取り組みも豊富に用意されています。写真は「医進選抜コース」の校外研修の様子
異年齢での取り組みについてもお聞かせください。
本校では、校外学習や行事を他学年混合で実施する場合も多くあります。一般的にはクラスや学年で実施する行事というイメージが強いと思いますが、コースごとに上級生が下級生を引率する形で行います。
規模の大きな取り組みとなると宿泊学習が挙げられます。2023年度からスタートした「白川郷探究研修合宿」では中2の生徒がリーダーとなって中1の生徒を先導しながら宿泊研修に取り組みました。
研修中は上級生が手本となって下級生に作業の指示を出したり、教えたりというやりとりが必然的に起こります。下級生はそういった上級生の姿から多くのことを学び、次年度に同じように下級生に対してリーダーシップを発揮します。
研修にはあらかじめリーダーとして参加する中2の生徒を決めて臨み、さらに中1の生徒から来年度のリーダー候補を選出し、今度は彼らが次年度の中1を牽引するというサイクルを続けていきます。可能な限り上級生が下級生に対して積極的にリーダーシップを発揮しながら校外学習や行事に参加できるようなカリキュラムになっています。
中1の生徒にとってははじめての経験ばかりで、「何が分からないのかも分からない」状態なのですが、年の近い先輩になら質問もしやすく、研修に関する質問を重ねるうちに打ち解けて、学校生活のことなどもいろいろと教わるという、親しい関係を築くきっかけにもなります。
学年やクラス単位で行う取り組みもありますが、大がかりな取り組みだけでなく、遠足などの小規模な行事も含め、他学年と合同で実施する機会をなるべく多く設けています。そうすることで、上級生がリーダーシップを発揮し、下級生がそれを学ぶ機会を多く得られるというわけです。
この取り組みと並行して、さまざまな探究活動を通して実社会で評価される経験を積むことで、グローバルリーダーの育成につなげていきます。
こういった取り組みのなかで、生徒さんの成長を感じるのはどのようなときですか。
このカリキュラムはスタートから3年目を迎え、生徒たちから少しずつ成長を感じる瞬間が増えてきました。さまざまな取り組みのなかでリーダーシップを発揮する生徒が増えてきている実感があります。生徒同士、相手を思いやる姿が見られたり、ちょっとした気配りができていたりするのを見かけます。
本校としても、勉強を頑張るだけが学校ではないという信念を改めて打ち出し、「集団行動・モラル・キャリア・コミュニケーション・探究」をテーマとした取り組みを積極的に行っていきたいと考えています。探究活動の時間を多く取っているのも、リーダーシップ教育や人間教育にも重点をおきたいという思いからです。
経験には失敗はつきものです。トライアンドエラーを繰り返しながら、「もっとこうすれば良かったのではないか」という学びを得てもらいたいと考えています。
滝川中学校・高等学校からのメッセージ
▲インタビューにお応えいただいた学校長の下川先生
最後にこの記事をご覧の受験生やその保護者の方々にメッセージをお願いします。
滝川中学校・高等学校には「経験」が豊富にあります。本校での6年間あるいは3年間を「体験」しにきていただきたいですね。本校でたくさんの経験を積むことで大きく成長し、自分の目指すべき道をしっかりと選んでいただきたいと思います。
ありがとうございました。
コースの刷新、共学化と大きな変革に次々と取り組む滝川中学校・高等学校。新たなコース分けでは、生徒一人ひとりの将来に合わせたさまざまな取り組みで夢の実現を後押しし、将来が明確でない生徒たちには、じっくりと取り組む探究活動を通して、自分の興味関心に気づくきっかけを豊富に用意しています。
リーダーシップ教育にも積極的に取り組み、さまざまな校外学習や行事では、挫折や人とぶつかり合う状況をあえて経験させることで、多くの「失敗からの学び」を生徒たちが得る機会になっています。これらの経験は社会に出てからこそ、生徒たちの生きる糧となるだろうと感じました。
▲2024年度より共学化され、さらなる飛躍が期待される滝川中学校・高等学校。トイレなどの施設も共学化に合わせて整えられました
滝川中学校・高等学校の合格実績
2023年度卒業生の大学合格実績は、大阪大学、北海道大学をはじめとする難関国公立大学合格者が45名、慶應義塾大学、上智大学、東京理科大学などの難関私立大学に574名となっています。
国公立大学、私立大学の医学部医学科、歯学部・薬学部合格者は合わせて12名と、毎年コンスタントに合格者を輩出しています。
また、連携校推薦・指定校推薦制度も充実。指定校推薦は100大学約500名の枠があり、立命館大学理工学部、マレーシアのテイラーズ大学、ハンガリー国立大学医学部などへの連携校推薦制度も利用可能です。
滝川中学校・高等学校の大学進学実績(公式サイト)https://takigawa.ed.jp/admission/university/
滝川中学校・高等学校の保護者・在校生の声
▲6月に行われる学園祭は、中高の実行委員が力を合わせて運営します
ここでは、滝川中学校・高等学校の保護者・在校生の声をお届けします。
■在校生の声は、一部を公式サイトから引用しています。
https://takigawa.ed.jp/education/jhs/
経験を重視したたくさんの行事や、学習面での手厚いフォローや充実したカリキュラムに評価が集まりました。また、学校の魅力として、文武両道を実現できる部活動を挙げる在校生が目立ちました。
▲書道部の作品。力強いメッセージが書かれています
滝川中学校・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人瀧川学園 |
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電話番号 | 078-732-1625 |
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