全国大会常連の強豪校「高川学園中学校・高等学校」が取り組む“生徒が主役”の学校作り|中高一貫校

注目の学校を紹介する本企画。今回取材したのは山口県防府市にある私立の共学中高一貫校「高川学園中学校・高等学校」です。

校舎には毎年のように各部活動の活躍を祝う懸垂幕さがるなど、さまざまな部活動が全国大会出場・上位進出を果たすスポーツの強豪校でもある同校。そんな同校では、生徒が「やらされてる感」を感じない教育に力を入れています。

この記事では、そんな同校の強さの秘訣でもある、教育環境や学校の取り組みについて副校長の高橋先生にお話しを伺いました。

互いに切磋琢磨し、高みを目指す高川学園中学校・高等学校の6年間

高川学園中学校・高等学校の外観

編集部

まずは、高川学園中学校・高等学校の校訓をお聞かせください。

高橋先生

校訓は「夢、志 より高く」です。「夢、志 より高く」には、高い目標を掲げ本校に入学してくる生徒が、お互いに切磋琢磨し、さらに高みを目指してほしいとの思いが込められています。

本校では、勉強面以外の部分でも、中高6年間の一貫教育を受けていただきたいと考えています。そのために、高校では中学校までの学びをさらに広げる、さまざまなカリキュラムを準備しています。

生徒主導で取り組み主体性を育む、高川学園中学校・高等学校の「部署活動」

高川学園中学校・高等学校の「放送部」部署活動風景

▲部署の1つ「放送部」では、朝や昼食時に音楽を放送することを決定。今後は校内ラジオを立ち上げる予定だそう

生徒の主体性を引き出し、目に見えないさまざまな能力の育成にも力を入れる高川学園中学校・高等学校。その取り組みのひとつが「部署活動」です。

生徒が学校生活を運営するこの活動では、さまざまな取り組みを立案・実行するなかで、トライ・アンド・エラーを繰り返しながら、より主体的に物事に取り組む姿勢を育みます。

部署活動の仕組みや取り組み、教員の関わり方などについて詳しくお伺いしました。

活動資金調達から戦術実践までを生徒が行うサッカー部の部署活動

編集部

そもそも「部署活動」とはどのような活動なのでしょうか。

高橋先生

生徒の主体性・人間としての成長を育むための活動です。部活動にしろ、勉強にしろ、自分が「やりたい」と思って行動する主体的な姿勢と人間力が、その後の人生に大きく影響すると考え、その力を養うためにこの活動を始めました。

部署活動は2017年に筑波大学サッカー部さんが行っていた活動を参考に、サッカー部の江本先生や、部員たちが自分たちの活動に合うようオリジナリティを加え、始まりました。

部員全員が何かしらの「部署」に所属し、生徒リーダーを中心に活動します。例えばサッカー部内には、「グラウンド部」、「分析部」、「強化部」といったサッカーの練習や技術向上に関わりのあるものから、「農業部」や「おもてなし部」といったユニークなものまで全部で11の部署があり、部員全員が希望の部署を選んで参加します。

農業部は、校内の畑を耕すところからスタートし、近隣の農家の方からアドバイスをいただきながら野菜を栽培しています。収穫した野菜は近くの「道の駅」で販売したり、資金調達のために始めたクラウドファウンディングの返礼品として使用したり、部署活動の資金源として大いに活用しています。

こうした生徒主体の部署活動からは、教員の想像を遥かに越えるアイデアが飛び出すことがあります。

2021年度の全国高等学校サッカー選手権大会で有名になった「トルメンタ」は、味方のコーナーキックの際に、マークにつく相手チームの選手を混乱させるためのもので、何人かの選手が手をつないでぐるぐる回り、味方ボールの動きに合わせて手を離して、四方に散らばるというユニークな策です。これも「強化部」の部員たちが考えて実行したものです。

仕組みづくりからスタート!全校生徒が「自分事」で作り上げる「より良い学校」

高川学園中学校・高等学校の「保健部」の部署活動風景

▲保健部では校内でペットボトルキャップを回収し、ワクチン支援活動につなげています

編集部

サッカー部から始まった部署活動ですが、学校全体でも取り組むことになったそうですね。サッカー部の部署活動との違いはあるのでしょうか?

高橋先生

もちろん違いはあります。サッカー部の部署活動では分析部や強化部など、競技にちなんだものが多数あり、そのまま拡大するわけにはいきません。まずは全校でどんな部署活動を始めるべきか、そこから「リーダーズ」と呼ばれる生徒たちが考えました。

それは、これまであった委員会や係といったものを「生徒が必要だと感じた部署活動を生徒に任せて運用する」という大きな改革でした。

特に、部署活動では、どの部署にも定員を決めておらず、自分が参加したいものに参加できるようにしています。これは生徒のモチベーションを高めるために設けたルールです。これまでの委員会のように定員が決まっており、生徒が安定して集まるかわりに、興味のない活動に強制的に参加させられるという「やらされてる感」を取り除きたいという狙いがあります。

そのため、人数の少ない部署もありますが、それでも良しとしています。

編集部

学校全体の部署活動には、具体的にはどのような活動があるのでしょうか?

高橋先生

放送部では、ただ単に何かを放送するというだけではなく、放送する内容を自ら探すことから始めています。例えば、全校の掃除の点検を、一見関係ないように思う放送部が確認し、その状況を放送したり、好きな音楽を生徒にアンケートを取ったりしているようです。

何かをはじめるときに学校に許可を取ったり、教員側から取り組んでほしいと指示を出したりといった課程を経ずに、生徒たちのさまざまなアイデアが実行に移されているのを見ると、生徒たちの物事への取り組み方が大きく変わってきたと感じることができます。

毎回学校の許可を得て実行するという学校でありがちな行動規範は、生徒たちの「やってみたい」の芽を摘み取ることになりかねませんし、「自分事」として取り組む意識の軽薄化を生むだろうと思っていますので、先生方の関わり方には気を付けています。そうすることで、自分たちのことを、自分たちで責任をもって決めていこうという自覚が芽生えていると感じています。

生徒たちの取り組みがすべて正しいということはないでしょうし、失敗も間違いもあるでしょう。しかし、その失敗も生徒たちには大きな財産です。教員は見守り役に徹し、生徒たちのチャレンジを応援する立場を貫きたいと考えています。

いずれは、校則など学校のルールについても、生徒たちが主体となって変革していってくれるような、全校部署活動になってくれたら嬉しいです。今よりもっと自由闊達な意見が出て、どんどん変化する学校になってほしいです。

しかし、それすら、こちらから指示を出すことはせず、生徒たちの気づきでムーブメントが起こるのが自然な流れだという前提は変わりません。目指すは中高一貫6年計画の部署活動です!

高川学園中学校・高等学校の「広報部」「図書部」の部署活動風景

▲広報部では、学校の魅力をSNSで発信し、図書部は、生徒が集まる図書館作りを目指して活動

部活動重視のコース設定で、勉強との両立をサポート

高川学園中学校・高等学校の部活動の優勝旗

▲ズラリと並ぶ各部活動の優勝旗

勉強だけでなく部活動にも力を入れる高川学園中学校・高等学校。さまざまな大会で優秀な成績をおさめ、サッカー部や硬式野球部、バレーボール部などは全国にもその名をとどろかせています。プロスポーツ選手を数多く輩出していることでも有名です。

そんな同校の部活動や、生徒の頑張りを後押しする学校の取り組みなどについてお話を伺いました。

全国で活躍する高川学園中学校・高等学校の部活動を支える教員の熱意と設備投資

編集部

高川学園中学校・高等学校では部活動に熱心に取り組む生徒が多いそうですね。

高橋先生

そうですね。本校には運動部、文化部合わせて25ほどの部活動があります。どの部もとても真剣に活動していますね。

全国規模の大会で優秀な成績を収めている部も多く、全国大会出場が学校全体で「当たり前」になっているような雰囲気があります。全国出場の喜びよりも、先輩たちが残した輝かしい成果や強豪校としての伝統を守ることができたという安心感が強いようです。

本校が共学化して20年が経ちますが、近年の女子部の活躍は目覚ましいものがあります。ソフトボール部は全国大会で3位、女子バスケットボール部は県内の強豪校を抑え、中学は県大会で優勝、全国大会出場を果たしています。それが高校へと繋がり、県下で1、2位を争うハイレベルなチームへと進化しています。

編集部

高川学園中学校・高等学校に強豪チームが多い理由はどこにあるのでしょうか。

高橋先生

何と言っても、理事長の熱意でしょう。生徒たちのために「設備投資を惜しまない」という理事長の理念が、部活動の活性化につながっていると思います。それに加え、全国を知る各部のスタッフの情熱、工夫が好結果を生んでいると思います。

学校自体が最寄駅から徒歩1分ほどのところにあります。全国的に見ても珍しい内外野人工芝の野球グラウンドには、観客席まであり、球速も表示されます。サッカー部やラグビー部も全面人工芝のグラウンドで練習していますので、環境には恵まれていると思います。

最近では、バスケットボール部やバレーボール部により力を入れるべく、それぞれの部活動で専用の体育館として使えるよう、第2体育館もできました

4年制大学進学を視野に目的別で選択できるスポーツ特化型のコースも

高川学園高等学校の男子サッカー部

編集部

勉強や進学に関しても、部活動への取り組みを生かすコース設定をされていますね。

高橋先生

そうですね。部活動との両立を目指すコースは中学で2コース、高校で1コース設けています。

中学には、一般入試はもちろん総合型や推薦型の入試も視野に入れて勉強と部活動を両立する「学業スポーツコース」、全国トップレベルのアスリートを目指す「スポーツ選抜コース」があります。

高校には、「スポーツ進学コース」があります。4年生大学進学を目指しながら、専門的なトレーニングを受けられるなど、アスリート育成にも力を入れているコースです。

近年、教育現場では部活動を縮小する傾向にあります。ですが、本校ではこれからも部活動に力を入れたい生徒たちを全力でサポートしたいと考えています。そういった姿勢が生徒や保護者の方々にも受け入れられていると感じます。

部活動は互いを高めあう場!生徒主体の練習で人間力を育む

編集部

部活動強豪校と聞くと、上下関係や根性重視の練習など厳しいイメージがあります。御校の部活動の雰囲気はいかがですか。

高橋先生

全国優勝を果たした男子バレーボール部も全国高校サッカー選手権大会に連続出場を決めている男子サッカー部も、「生徒主導での活動」を行っており、監督などスタッフが独断で練習内容を決め、厳しく指導するということはありません。

例えば、男子バレーボール部では、日々の練習前に、監督とキャプテンをはじめとする選手4〜5人で30分〜1時間ほどのミーティングを行い、練習メニューを決めています。選手の意見を取り入れることで、主体的に練習に取り組むことができているし、「やらされない練習」では選手の伸びが違うようです。

以前の部活動はと言えば、一般的に「辛い練習にひたすら耐える」というようなイメージもありましたが、現在は、そういった活動姿勢は支持されません。

本校では、以前から生徒が主体の練習スタイルを取り入れている部活動が多くありましたので、今の時代に即していると言えますね。

編集部

部活動などに励む生徒からは、学校生活についてどのような感想が聞かれますか。

高橋先生

卒業した生徒からは、「感謝を忘れない心を学んだ」、「礼儀を身につけたことが大きな収穫だった」といった感想を聞きます。来校された方からも「あいさつをよくしてくれる」とお褒めの言葉をいただく機会が多く、実際にあいさつや手助けの声がけ、感謝の言葉を口にしている生徒をよく見かけます。

こちらはあまり意識していないのですが、そういった人として大切なことが自然と身についていることを嬉しく思っています。

ルールや規則で縛り付けることは簡単ですが、それでは本校の最終目標「社会で活躍できる人間の育成」を達成する教育にはなり得ません。入学したから「その学校のもつスタンス」を生徒が背負うのではなく、それぞれが自分の「夢や志」をもって頑張ろうというのが本校の考えです。

そういった考えが生徒たちに浸透してきていると感じるのは、吹奏楽部やダンス部など、球場や大会会場で運動部の生徒たちを応援で支えたいと考える生徒たちが増えてきているという点です。そういった生徒のお陰で、運動部も文化部も、壁のない関係を築いていると思います。

高川学園中学校・高等学校の卒業生による部活動の記念碑

▲校門をくぐると、2005年度卒業生寄贈「栄光の碑」が出迎えてくれる

高川学園中学校・高等学校からのメッセージ

高川学園中学校・高等学校の高橋先生と高川理事長

▲高川理事長(右)とインタビューに応えてくださった副校長の高橋先生(左)

編集部

最後に、受験生やその保護者に向けてメッセージをお願いします。

高橋先生

生徒が自分自身の夢を形にするために、我々教員も全力投球でサポートに取り組んでいきます。既に夢が決まっている人も、決まっていない人も、ぜひ本校で6年間を過ごしてほしいと思います。本校には夢を追う仲間たちがたくさんいます。そのような熱量の高い学びの場で、自分の夢に気づいたり、自分の夢を探したりしてみてください!

編集部

ありがとうございました。

学校生活も部活動も、生徒主導で取り組む高川学園中学校・高等学校。生徒一人ひとりが自分の役割を担うことで、「やらされる」のではなく、自分から率先して取り組む姿勢を引き出す部署制度は、生徒の主体性の必要性が叫ばれる今の時代にマッチした取り組みだと感じました。

サッカー部での実践例を生かし、今後、全校生徒での部署活動で同校がどのような進化を遂げていくのか楽しみです。

高川学園中学校・高等学校の学食「FRIENDS」での生徒の様子

▲学食「FRIENDS」。成長期の生徒たちを栄養面でサポートするメニューが豊富です。人気メニューはカツ丼とチュロスだそう

高川学園中学校・高等学校の進学実績

2024年度は、九州大学、広島大学、山口大学をはじめとする国公立大学や難関私立大学への進学実績があります。

過去10年の間には、東京大学、京都大学、大阪大学、一橋大学、お茶の水女子大学などの有名国公立大学やGMARCH、慶應義塾大学、東京理科大学などの最難関私立大学への進学実績も。また、毎年コンスタントに医学部医学科への進路実績を積み上げています。

高川学園中学校・高等学校の大学合格実績

https://takagawagakuen.com/high/result/

高川学園中学校・高等学校の卒業生・保護者の声

ここでは、高川学園中学校・高等学校の卒業生・保護者の声をお届けします。

(卒業生)スポーツだけでなく、勉強にも力を入れていて実習室なども充実しています。さまざまな資格を取得する機会があり、社会人になった今、とても役に立っています。特別進学コースの生徒はもちろん、総合進学コースの生徒も勉強を頑張っていて、優秀な進学実績を残しています。

(保護者)最寄り駅から徒歩1分という好立地で、安心して通学させられています。先生方も熱心で、我が子も毎日学校が楽しいようです。校舎もまだ新しく、グラウンドや体育館はもちろん、柔道部の畳は柔道世界選手権と同じものを使用しているなど、スポーツ施設の充実ぶりは圧巻。

(保護者)中学校の給食は系列のホテルから来た調理師の方が作っているそうで、我が子は毎日楽しみにしています。成長期の生徒たちのために栄養バランスが考えられたメニューで、毎日お腹いっぱいで大満足だそう。給食カレンダーを見るとお肉とご飯のメニューが多く、パン食でない所も保護者としては嬉しいです。

(保護者)毎日宿題があり、宿題をしていなければ部活に出られないなどのペナルティもあり、保護者としては逆に安心です。校内に「高川ハイスクール」という塾があり、無料で利用できる日があるそうなので、我が子の受験期には活用したいと考えています。

充実したスポーツ施設や給食・食堂のメニュー、さまざまな学習サポートなど、充実した学校生活を送ることができる点に評価が集まりました。

高川学園中学校・高等学校へのお問い合わせ

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