この記事では、特色ある教育に取り組む“注目の学校”として、横浜市鶴見区にある「聖ヨゼフ学園中学・高等学校」をご紹介します。
男女共学の私立中高一貫校である同校は、カトリックの教えをベースに教育活動を進めている学校法人アトンメント会運営のミッションスクールです。
中学では「国際バカロレア(※1)中等教育プログラム(MYP)」の認定校として、全科目において探究型の授業を行っていることが大きな特色です。高校には3つのコース(※2)があり、生徒一人ひとりの進路目標や興味・関心に合ったカリキュラムを提供しています。
(※1)国際バカロレア機構(本部ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラム
(※2)文系・理系・学際系の科目を進路に合わせて選択できる「総合進学コース」、話す・書くといった発信型の能力を中心に英語力強化を目指す「アドバンスト・イングリッシュコース(AE)」、プロジェクト型の学びを通じて主体性や探究力を磨く「インクワイアリーベースト・ラーニングコース(IL)」の3つ
今回、ぽてんでは聖ヨゼフ学園中学・高等学校にて中学入試委員長を務める熊澤先生にインタビュー取材を行い、同校の教育方針や学習カリキュラムの特徴、校風などを詳しく教えていただきました!
この記事の目次
「信・望・愛」を基盤に“自分を大切に生きる”教育を行う聖ヨゼフ学園中学・高等学校
▲今回インタビュー取材に応じてくださった熊澤先生
まず、聖ヨゼフ学園中学・高等学校の教育方針について教えてください。
本校の校訓は「信・望・愛」です。「信」は信仰、つまり神を信じることで、「望」は神の約束の実現を希望すること、そして「愛」は神が我々を愛してくれるように、我々も人々を愛することを意味しています。
この「信・望・愛」をベースとしてカトリックの教えに基づいた人間教育を行いつつ、より身近な生活目標として掲げているのが「自分を大切に生きる」ことです。キリスト教というと「隣人愛」の考え方が広く知られていますが、隣人を愛するには、まず、神様に愛され大切にされている自分をしっかりと自覚することが大切で、それ故に、隣人もまた同じように神様に愛され、大切にされていることが実感できるのだと考えます。
それによって他者を認める意識が芽生え、相互に助け合える関係性が築けると思うんです。ティーンエイジャーの段階ではそういった道筋をしっかりと示すことが大切であると考え、まずは「自分を大切に生きる」ことを第一に掲げています。
ちなみに、これらの校訓や生活目標は額に入れて各クラスに掲示しており、生徒たちにはとても身近なフレーズとして一人ひとりの心に刻まれているように感じます。
週に1時間の「宗教」の授業でキリスト教的価値観を学ぶ
カトリックの教えに基づいた人間教育は、具体的にどのようなプログラムで行っていらっしゃるのでしょうか?
本校では「宗教」の授業を週に1時間設けており、聖書とイエスの生き方や教えを通して互いの存在を大切にしながら理解し合い、助け合っていくキリスト教的価値観を学びます。
具体的には、中学では旧約聖書や新約聖書を読むことが主となる学習です。日本では聖書の知識は一般常識的なものとして知られていないため、まずは聖書をしっかりと読み解いてキリスト教への理解を深めることを目標としています。
一方、高校の宗教の授業ではさらに視野を広げ、高1では世界の宗教について学び、高2では修学旅行で訪れる長崎に紐づけて平和学習を行います。また、高3では6年間の学校生活の振り返りを行いながら、校訓の「信・望・愛」の愛について考えるなど、哲学的な授業を展開しています。
宗教の授業とはいえキリスト教を広めるための教育ではなく、宗教を通じて自分を知り、他者を知り、世界を知ることによって生徒一人ひとりの心の成長を促すことを目的としています。
▲年間の節目には講堂で伝統的なミサ(典礼)も行われる
そういった人間教育を通じて、生徒さんにどのような変化が生まれていると感じていらっしゃいますか?
低学年の段階では他者の気持ちを汲み取れないような言動がみられることもありますが、学年が進んでいくにつれてそういったことがほとんどなくなり、性格や価値観の違いを受け入れたり、個性を認め合ったりする雰囲気が広がっているように感じます。
本校は1学年2クラスで、60~70名ほどの小さなコミュニティですので、いかに人とうまく付き合えるかが非常に重要なんですよね。そういった環境下で6年間を通じてカトリック精神に基づく全人教育を展開することで、一人ひとりがお互いを認め合っていく精神が涵養(かんよう)すると考えております。
聖ヨゼフ学園中学・高等学校が力を注ぐ探究的な学び
聖ヨゼフ学園中学・高等学校は国際バカロレア中等教育プログラム(MYP)の認定校として、MYPが定める概念(コンセプト)を基盤にした「概念理解」に基づく 「探究的な学び」を実践しています。ここでは、探究的な学びの詳細についてお話を伺いました。
探究的な学びの実践が評価され、国際バカロレア中等教育プログラムの認定校へ
御校は国際バカロレアのMYPの認定校として、探究的な学びに力を入れていらっしゃるそうですね。
はい。本校は2019年度からMYPの候補校として取り組みを進め、2023年11月に認定校となったのですが、探究的な学びの実践はかなり前から行ってきた経緯があります。
併設の小学校が2018年1月に日本の一条校として初めて国際バカロレア初等教育プログラム(PYP)の認定を受け、PYPのカリキュラムに基づいた取り組みを行うなかで本校の教育理念と一致する点が多いことを実感し、中学でもMYPを実践してみようということになりました。
晴れて認定校となり、それまで行ってきた本校の探究的な学びが国際的に定評のある教育機関からお墨付きをいただけたことを大変嬉しく感じております。なお、基本的にMYPは中学校のみのプログラムですが、高校でも探究的な学びを多く実践しています。
中学:全科目で探究的な学びを実践。中3では総仕上げのプレゼンもあり
中学校では具体的にどのような探究的な学びを展開しているのか教えてください。
中学校では、基本的に全ての教科において探究的な学びを強化しています。一般的な学校では週1時間ほど総合的な学習の時間が設けられ、そこで独立した探究活動を行うことが多いと思いますが、国際バカロレアのMYPでは全ての教科の、全ての時間において探究的な学びを行っていくことが基本です。その体制をベースに、本校では知識を得るだけでなく、得た知識をしっかりと活かせる場を設けることを意識しております。
たとえば英語の場合は学習した文法を用いてスピーチの原稿を作り、みんなの前で発表します。また、数学で標本調査について学んだ際は、その知識を活用して本校のアトリウムにある巨大壁画のタイル枚数を割り出す、といった形です。
▲何万枚ものタイルによって描かれた巨大壁画があるアトリウムは、聖ヨゼフ学園中学・高等学校のシンボル的スポット
私たち教員はよく「学び方を学ぶ」「学ぶ楽しさを学ぶ」という言い方をするのですが、知識の活かし方を学ぶことによって自律して生涯学び続ける「ライフロングラーナー」になれると考えています。移り変わりが激しく、常にさまざまな知識のアップデートが必要なこの時代をしっかりと生き抜けるように、学び方を学んで自分の知識や能力を更新していく力を養成することが探究的な学びにおける大きな目標です。
そうした学びを通して、生徒さんはどのように成長していると感じていらっしゃいますか?
中学3年次にMYPの総仕上げとして「コミュニティープロジェクト」を行うのですが、その際にはプレゼンテーションスキルの飛躍的な向上に驚かされます。このプロジェクトは自らが興味関心を持ったコミュニティーが抱える課題を探り、その解決を目指すもので、同じテーマの子がいればチームを組み、いなければ個人で探究プロジェクトを進めていく取り組みです。
このプロジェクトでは単に調べるだけでなく解決に向けたアクションを起こすことも重要です。また、1~2月には同級生や保護者、今後コミュニティープロジェクトに携わる下級生の前でプレゼンテーションを行います。その際は「こんなに素晴らしい発表ができるようになったんだな」と感動するとともに、知識を活かしてアウトプットすることの大切さを実感しています。
得た知識をアウトプットする場が御校にあるからこそ、生徒さんは大きく成長できるのですね。これまで見て来られた発表のなかで、特に印象に残っているテーマがあればご紹介ください。
2024年4月に行った学校説明会で、コミュニティープロジェクトについてご紹介するために数人の生徒たちを呼んで発表してもらったのですが、そのうちのひとりが行った地域の産物を地域で消費する「地産地消」をテーマとした発表が非常に印象に残っています。
その生徒は探究プロジェクトを進めるなかで、消費者はブランド野菜や価格が安い野菜に注目しやすいことなどに注目して「地産地消の大切さを消費者にしっかりと訴えなければなかなか広まらない」と考え、地産地消を推奨するポスターを作成しました。
そして、近所のスーパーに自力で交渉して店内にポスターを掲示する了承を得るのですが、その際に何種類ものポスターを掲示してもらい、ポスターを見たお客さんが一番わかりやすかったものや心に響いたものにシールを貼る仕様にしたんです。単に解決に向けた策を実行するだけでなく、その行動(=アクション)による影響力をしっかりと確認するところまで行ったことがとても素晴らしいと感じました。
高校:「ILコース」なら主体的な探究学習を存分に楽しめる
▲英語弁論大会では、中学生はレシテーション(暗唱)を、高校生は自分で原稿を作成してスピーチを行う
高校では、どのような形で探究的な学びが継続されていきますか?
高校は「総合進学コース」「アドバンスト・イングリッシュコース(AE)」「インクワイアリーベースト・ラーニングコース(IL)」の3つのコースを選択できるシステムとなっており、そのうちILコースは中学校での探究的な学びを引き続き行っていきたい生徒を対象としています。月に2回ほど土曜日に登校し、自分が興味・関心のあるテーマに沿ったプロジェクトを立ち上げて進めていくコースです。
高校2年次の終盤には、そういったプロジェクト型の実践を積み重ねてきた全国の高校生たちが集結する大会の「マイプロジェクトアワード」があり、そこでの受賞が生徒たちの目標となっています。
ちなみに、AEコースは「英語で発信する力」を養うことを目標としており、いわば英語で探究を行っていくコースです。本校は中学・高校ともに英語弁論大会を実施するなど英語教育にも力を入れており、英語スキルをさらに高めたい生徒に向いています。
▲英語で資料を作成することも、聖ヨゼフ学園中学・高等学校の生徒にとってはお手のもの
また、総合進学コースでも探究的な学びを行っておりますので、ILコース以外でも探究的な学びを通じた成長を得られます。
聖ヨゼフ学園中学・高等学校における生徒の雰囲気
▲体育祭などの行事やクラブ活動は、生徒たちが個性を発揮しつつお互いを尊重して取り組んでいる
御校の雰囲気についてもご紹介いただけますか?
本校は全校生徒300~400人ほどの小規模な学校ということもあり、校風は非常にアットホームです。生徒も教員も、お互いに顔を見れば誰だかわかるような近い距離感ですね。
また、中学生・高校生や男子・女子の隔てがなく、非常に一体感があると感じています。行事や委員会活動、クラブ活動などのあらゆるシーンで、それぞれの生徒が何らかの役割を果たしながら協力し合って活動している様子がうかがえます。
聖ヨゼフ学園中学・高等学校からのメッセージ
最後に、聖ヨゼフ学園中学・高等学校に興味をお持ちの方へメッセージをお願いします。
まずはぜひ本校にいらして、生徒の様子や教員の雰囲気、設備環境など学校全体を見ていただけたら嬉しいです。学校選びは大変だと思いますが、実際に足を踏み入れてみて初めてわかることがたくさんあると考えています。
ほんのひとときでも校内で過ごしていただければ、きっと本校ならではの魅力を体感していただけると思います。ぜひお気軽にお越しください。
生徒一人ひとりに目が届きやすいアットホームな環境で、工夫を凝らした多彩な教育プログラムを実践している御校なら、学力・人間力ともに大きく成長できそうだと感じました。
熊澤先生、たくさんのお話をありがとうございました!
聖ヨゼフ学園中学・高等学校の進学実績
聖ヨゼフ学園中学・高等学校における2023年3月の卒業生においては、全体の84%が四年制大学へ進学を遂げました。進学先の系統としては、医療系大学や自然・人文科学系・国際系の学部が人気となっています。
また、カトリックの学校であることから、同じキリスト教系大学への進学を決める生徒も少なくありません。特に、上智大学への進学が多くなっています。
聖ヨゼフ学園中学・高等学校の卒業生・在校生の口コミ
聖ヨゼフ学園中学・高等学校の卒業生・在校生からは、ロケーションや施設環境、先生の対応、生徒同士の雰囲気などに満足している声が集まっています。のんびりとしたアットホームな雰囲気や小規模で手厚い教育などに魅力を感じて入学する生徒が多く、入学後のギャップも少ない印象を受けました。
聖ヨゼフ学園中学・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 聖ヨゼフ学園 |
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問い合わせ先 | 資料請求・問い合わせフォーム https://www.st-joseph.ac.jp/form/form.php?situation=high |
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