この記事では、中学受験を検討中のお子さま・親御さまに向け、東京都文京区の私立学校「小石川淑徳学園中学校高等学校」の実践を紹介します。
同校は、学校法人淑徳学園が運営する女子校で、2024年度から校名が変わりました。その中でも一貫している教育の特徴としては、ネイティブに近い指導法の英語教育やロボット・アプリを起点にしたICTの学び、興味を深める探究学習を軸に、これからの社会で活躍できる力を育んでいることが挙げられます。
今回は、入試広報部・部長を務める白鳥先生にインタビュー取材を実施し、小石川淑徳学園中学校高等学校の教育理念や力を入れている取り組みについて教えていただきました。
この記事の目次
小石川淑徳学園の仏教情操教育で「人間力」を育む
▲インタビューに対応してくださった白鳥めぐみ先生
御校は、どのような校訓に基づいて教育を行っているのでしょうか?
本校は創立者の輪島聞声(わじまもんじょう)先生が残した「進みゆく世に後れずに、有為な人間(ひと)となれ」を校訓に、時代の先端をいく女性教育を目指しています。
元々、女性の教育が社会的に整っていなかった明治時代に、尼僧(女性のお坊さん)だった輪島先生が「仏教に基づいた女子教育を受けられるように」と本校を設立したという経緯があり、このような教育方針となっています。
設立から130年以上が経過しましたが、変わりゆく時代に対応していくことや、その中でできることを増やしていくという考え方は、今も昔も貫かれていますね。カリキュラムを調整したり、最先端のプログラムを導入したりと、工夫を重ねながら社会で活躍できる女性を育てています。
▲校祖・輪島聞声先生の銅像
私たちは、『3領域プラス』としてこれからの社会を生き抜く力を育む教育をおこなっていますが、「高い英会話力」「探究力」「デジタルリテラシー」の3つの力を伸ばすとともに、仏教を土台にした情操教育により「人間力」を育むということを大切にしています。3つの力と人間力はそれぞれ相互に関係しあいながら育っていくものになっています。
コミュニケーションツールがデジタル化していっても、画面の向こうには人間が存在しますよね。ただデバイスを使えるだけではなく、「相手はどんな気持ちになるか」を想像できて初めて、社会を良くする行動につながると思うんです。
「語学力」ではなく「英会話力」としているのも、人と理解し合うためのツールとしての英語、自分の思いを表現するための英語、という相手のいるイメージを大切にしているからです。
近年はAI時代が到来したと言われていますが、先端技術がどれだけ発展しても、社会をつくるのは人間です。だからこそ本校は、人と協力したり、相手を思いやったりする人間力の育成を最も大切にしています。
生徒は合掌で心を落ち着かせる。傳通院との繋がりが深く、仏教行事も多数実施
▲学校に隣接する傳通院の外観
学校生活のどのような場面で、仏教の考え方が取り入れられているのでしょうか?
そうですね。一例として、生徒たちは授業の開始時・終了時や朝礼・終礼などの「人と向き合う」タイミングで合掌をします。一般的な学校だと起立の後に「気をつけ」をすると思うのですが、その代わりに手を合わせて、心を落ち着かせているんです。
仏教徒を育てるための教育をしているわけではないので修行のようなことはしませんが、年間行事の中で仏教行事に参加する機会があります。代表的なものとしては、4月8日のお釈迦さまの誕生日に実施する「花まつり」が挙げられます。本校は体育館のステージの上部に仏壇があるのですが、花まつりや始業式、終業式といった節目の式典では仏壇の扉が開くんです。
学校の隣にある「傳通院(でんづういん)」というお寺も関連しているのでしょうか。
はい。そもそも、本校は傳通院の寺小屋から始まったという経緯があるので、規模は変われど「お寺の中にある学校」という意味では変わっておらず、繋がりは深いです。
仏教行事の際には傳通院のお坊さんが念仏を唱え、生徒たちに法話をしてくれます。花まつり以外にも、12月8日の「成道会(じょうどうえ)」(※1)、2月15日の「涅槃会(ねはんえ)(※2)など、年に4回〜5回のペースで仏教行事を実施しています。
(※1)お釈迦さまが悟りを開いた日を祝賀する会
(※2)お釈迦さまがお亡くなりになった日を偲ぶ会
仏教に触れる時間というのは呼吸を整える時間であると考えています。いろいろなことに全力で取り組む毎日の中で、仏教に触れて自分自身の内面と向き合い、呼吸を整える。そんな時間です。様々な日々の活動を通してたくさんの学び、たくさんの疑問を抱える中で、自分自身はどう生きていくべきか、自分の中にしかない答えを見つめる時間は、前に進む力をくれるものになります。10代のうちに仏教の教えの意味を理解するというのは難しいと思いますが、今は深い意味が分からなくても、彼女たちの成長を支えてくれるものとなり、いつかきっとその意味を実感するときが来ると思います。
実際に本校の卒業生は、親になって感じるところがあるのか、「子どもも同じ環境で育てたい」と入学を希望されるケースも多いです。2世代・3世代で通う方や、姉妹で通っている方もたくさんいらっしゃいますよ。
小石川淑徳学園中学校高等学校の国際社会を見据えた取り組み
小石川淑徳学園中学校高等学校は「社会をつくるチェンジメーカー」を育てるべく、国際社会を見据えた取り組みを実践しています。特に力を入れている英会話力・情報教育・探究学習について、詳しくお話を伺ってみましょう。
全生徒が英検2級の取得を目指す!ネイティブに近い英会話力を育てる授業
中学2年生の英語の授業を拝見しましたが、生徒さんたちが楽しそうに英語を話している姿に驚きました。どのようにして、生徒さんの英語力を高めているのでしょうか?
英語教育では慶應大学の名誉教授・田中茂範(しげのり)先生が作成したオリジナルのテキストに沿って、ネイティブの先生が英語で授業をします(校内に4人在籍)。音から入る「音声教育」を重視しています。
英語で授業が展開されるので、本校の中学1年生・2年生のうちは「話せるけれど、書けない」単語も少なくありません。例えば「apple」は「fruit」「red」「round」といったように、はじめから英語で意味を学び単語を理解していきます。このようにして言葉を覚えていく流れは、ネイティブの子どもたちに近い感覚なんです。
教科書の単語を覚えてから英文を読むのではなく、耳で英語を聞きながら習得していくので、生徒たちの意欲も違ってきます。本来、ネイティブの先生の前で話すのは緊張するものですよね。ただ、本校の生徒たちは英語を楽しんでいて、当たり前のようにみんなの前で英語を話します。
さらに本校は1クラスが20人定員の少人数制の学校なので、みんなの前で発表する機会も多いです。英語で話すアウトプットと、先生や友達の英語を聞くインプットを何度も繰り返せるので、自然と英語力が身についていきます。
▲2年生は合計で20人ほど。学年を2つに分け、10人前後で授業を受ける
高校生になると大学受験が迫ってきますが、英語の入試対策はどのように進めていらっしゃいますか?
本校では中学校・高等学校の6年間で、英語検定2級の取得100%を目標にしています。さらに、その中でも英語の得意な生徒はワンランク上の準1級を目指します。
本校は放課後を7時間目・8時間目として、英語に限らず講習を受けられる時間になっています。英語検定は特に力を入れていて、専門性の高い外部の先生をお迎えして講習をしていただきます。希望制の講習ですが、参加して勉強している生徒が多いです。
入学した時点では英検を受験したことがなくても、中学2年生の終わりぐらいには多くの生徒が英検3級を取得しますよ。「中学校卒業までに英検3級を取得する」というのが一般的な基準ですが、本校では中学2年生時点でクリアすることを目標にしています。
また、英語検定のために必死で勉強しているわけではないのですが、音声英語で育った本校の生徒たちはリスニングに強い傾向にあります。一般的な英語学習では「聞けない」「読めない」という点でつまずいてしまう生徒が多いですが、本校の英語学習では音声学習を中心にスタートするのでつまずくことなく力をつけることができます。
「聞く」「話す」力を身につけた自信を土台に基礎を固め、「書く」「読む」技能を伸ばし、大学進学の対策へとつなげていきます。
得意分野から学びを深められると、苦手意識が少なく済みそうですね。ちなみに、海外留学などの機会もあるのでしょうか?
本校には夏休みの3週間と、春休みの3か月間、2種類のターム留学があり、2024年はオーストラリアに行きました。始まったばかりの取り組みなので、これから留学先の国を増やしていく予定です。海外留学を上手に活用し、「学んだ英語が現地でどれぐらい通用するか」を試し、英語の意欲につなげてもらいたいと思っています。
少人数で「好き」をとことん深められる「探究学習」
小石川淑徳学園中学校高等学校の探究学習では、どのような取り組みをしていらっしゃいますか?
探究の時間に疑問を持ったことについて調べたり発表したりといった取り組みをしています。またそれに加えて、各教科の中でも探究力を高める学びを取り入れ、発表の場面を多く持ち、互いの考え方を学び、深める時間を多く持つ授業をしています。
また授業だけではなく、放課後には7、8限講習も開講しています。ここでは少人数で学べるゼミのような雰囲気を生かして、生徒の学びたいと思う気持ちを最大限に引き出し、主体的に学べるような授業を展開しています。希望者がいる限り開講するので、教員と生徒が1対1で学ぶケースもありますよ。
進路選択についても個々に合わせて対応しており、高校2年生からは理系・文系よりも細分化した形で対応できるような授業選択制を取り入れています。
高校2年生だと、進路がまだ決まっていない生徒さんもいるかと思います。選択授業で興味のある分野に触れてみて、進路につながるケースもありそうですね。
そうですね。「物理や理論を考えることが好き」という理由で化学総合や数学Bなどの理系の授業選択をした生徒が、専門的に学び、気になるテーマについての実験を繰り返したり、中央大学でのサイエンスセミナーに参加したりするうちに、物理を生かした仕事に就きたいという夢を持ち、それを叶えられる学部に進学したという例もありました。また、逆に学んでいるうちに他のことに興味が出てきたり、挫折して方向性を修正したりと、受験対策という枠を超えて、進学のさらに先の自分の生き方について考えていく時間になっています。
本校は一人ひとりに合わせた学びを実現できる環境を整備しているため、何事にも意欲的にチャレンジできる雰囲気があります。様々な活動を通して互いの考えを学び、あらゆる問題に前向きに立ち向かっていける環境が整っています。
大学と連携した「デジタルリテラシー」の学び。女性に合った「情報教育」
▲情報の授業のようす。この日のテーマは社会人になってからも役立つ「Excelの基礎」だった
先ほど、入口でロボットの「Pepperくん」が出迎えてくれました。小石川淑徳学園中学校高等学校は情報教育にも力を入れていらっしゃるそうですね。
これからのICT社会に対応するため、中央大学の理工部と教育連携を結び、情報系の分野について深く学べる環境を整えました。情報活用能力は、これからのデジタル社会に欠かせない要素です。だからといって、いきなり理工系のプログラミングをすると苦手意識につながる可能性もあります。
そこで本校では中央大学の教授の先生方と本校の情報教諭が連携し、専門的な学びを楽しく学べるようなカリキュラムを構築しました。デジタルと社会のつながりを知り、「デジタル技術をどのように活用することで、世の中を良くしていけるか」に目を向ける授業にしていきたいと思っています。
「プログラミング」と聞くと抵抗感がある生徒さんでも、アプリやロボットからなら挑戦しやすいですね。デジタルの選択授業は高校2年生以上が対象ですが、中学1年生から高校1年生までにプログラミングを学ぶ機会はありますか?
もちろんです。総合的な学習の時間で、専門性の高い外部の先生からプログラミングを教えていただきます。「Scratch」や「Tinkercad」「Robo Blocks」を活用し、プログラミングの基礎からしっかり学んでいきます。中学1年生から高校1年生までに培ったプログラミングの基礎を土台に、高校2年生・3年生でさらに高度なデジタル技術を学べるようになっています。
また、中央大学がすぐ近くにあるので、生徒たちが理工学部の授業を体験する機会も作っていただいています。実際に大学の授業を受け、理系分野の学習に興味を持つ生徒も増えました。
▲3Dプリンターなど、最新鋭の設備も揃っている
小石川淑徳学園中学校高等学校のスクールライフ
▲学校は文教地区に立地。お寺の敷地内に建っていることもあり、落ち着いた環境で学校生活がおくれる
ここからは、生徒さんたちの学校生活について教えてください。クラブ活動での特徴はありますか?
本校はバレーボール部の活動が熱心で、高等学校においては今年関東大会出場40回目です。そのほか、スケート競技でも好成績をおさめており、フィギュア選手権大会で優勝したり、インターハイに出場したりした生徒も在籍しています。中学生・高校生が一緒に活動するので、先輩・後輩の絆も深まるようです。
何年か先をいく高校生の姿を見ることは、中学生の意欲につながりそうですね。学校行事でも、中学生と高校生が関わる機会はあるのでしょうか?
もちろんです。体育祭は近隣の屋内球技場を借り、中学校・高等学校の合同で実施します。高校1〜3年生と中学生で対抗するのですが、2023年度は中学生が優勝しました。本校は、中学生・高校生が関わる機会が多く、お互いに触発し合える環境ですね。
▲茶室「聞聲庵」
校内の日本間にご案内いただきました。ここではどんなことをされているのですか?
日本間では、総合的な学習の時間を活用して茶道を学んだり、家庭科の着付けの授業をしたりしています。本校では全生徒が、中学1年生・高校1年生で華道を、中学2年生・高校2年生には茶道を体験します。
体験といっても、外面だけを理解するわけではありません。茶道であれば単にお茶をいただいて終わりではなく、ふすまの開け方から入室の仕方、実際にお茶を立てるまでの作法を実践するんです。
中学生は講義の終了時に「お免状」をもらえるので、教養がある女性を目指していく上でのひとつの証となりますね。また日本間の中には本格的な茶室『聞聲庵』があり、そこで茶道部が活動しているのですが、茶道の授業をきっかけに入部する生徒も多いです。
▲2階のフロア全体を使った開放的な「図書コーナー」。SDGsに関する本がピックアップされている
開放的な図書コーナーを拝見すると、SDGs関連の書籍が目立ちますね。
そうですね。本校は仏教を基本にした平和教育など、SDGsに関する取り組みに以前から力を入れていて、2022年11月にはユネスコスクール(※)に認定していただきました。
(※)国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の憲章に示された理念を実現するため、国際的な連携に取り組み、質の高い教育を実践する学校
ユネスコスクールでは、「知る」「為す(なす)」「人間として生きる」「共に生きる」の4つを柱に活動します。ユネスコスクールとしての学びを機に、世界の戦争・飢餓といった問題に対して「自分たちは何ができるのだろう」という当事者意識を高めていきたいと思っています。
▲左右にスライドすると、学校生活の様子をご覧いただけます
小石川淑徳学園中学校高等学校からのメッセージ
最後に、小石川淑徳学園中学校高等学校に興味を持っているお子さま・親御さまに向けたメッセージをお願いします。
本校は、「進みゆく世に後れずに、有為な人間(ひと)となれ」という建学の精神からもわかるように、生徒たちのチャレンジ精神や主体的に動いていくという気持ちをとても大事にしています。
とはいえ、何に挑戦すればいいのか、どこに向かっていけばいいのか入学時点で明確になっていることは少ないですよね。ひょっとすると「自分の長所はどこだろう」と悩んでいるお子さんもいらっしゃるかもしれません。
そんな生徒に対して、小石川淑徳学園中学校高等学校は一人ひとりの生徒の「輝くところ」を見つけて、強みにしていけるような教育を実践しています。個に対応した教育環境ときめ細やかなサポートの中で、自信を持ってのびのびと学んでいける環境が整っていますので、ぜひ一度説明会にお越しいただき、雰囲気を感じてみてください。教職員一同お待ちしております。
少人数制だからこそ仲間との絆も深まりそうですし、活躍の機会が多い分、人前で話したり、自分で考えて行動したりする力も鍛えられると感じました。本日は、学校選びの参考になるお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
小石川淑徳学園中学校高等学校の進学実績
小石川淑徳学園高等学校を卒業した生徒たちは、四年生の私立大学や短期大学に進学するケースがほとんどです。過去5年間では、上智大学・立教大学・中央大学などにも合格者を輩出しています。
また、国際系や医療系、体育系、美術系など、進学する学部が幅広いことからも、生徒の個性を尊重した校風がうかがえます。
公式:小石川淑徳学園中学校高等学校「過去5年間の大学合格実績」
小石川淑徳学園中学校高等学校の保護者・在校生の口コミ
最後に、小石川淑徳学園中学校高等学校の在校生や保護者の感想・口コミを紹介します。
部活動の兼部や学習サポートなど、生徒目線の取り組みに満足している保護者・在校生が多いようです。10人ほどの生徒に2人の先生がつくケースもある少人数制の学びのスタイルが好評で、「とても楽しい学校です」という声もたくさん見られました。
小石川淑徳学園中学校高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人 淑徳学園 |
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住所 | 東京都文京区小石川3-14-3 |
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