ぽてんをご覧の皆様に、注目の学校をご紹介する本企画。今回ご紹介するのは、静岡県静岡市清水区に位置する私立の「静岡サレジオ幼・小・中・高等学校」です。
同校は一条校として日本初かつ唯一である幼稚園から高等学校までの国際バカロレア教育一貫校として知られています。キリスト教精神に基づく教育理念のもと、独自の「4・4・4制」システムを採用し、12年間を通じて生徒の個性と可能性を伸ばす教育を実践しています。また、国際バカロレアの考え方を軸にした探究学習で興味関心を引き出し、将来に役立つ探究心を育てます。
そんな静岡サレジオ幼・小・中・高等学校の教育理念やカリキュラムの特徴について、小学校から高校までの学校長を務める沼波岳臣先生にお話を伺いました。
この記事の目次
「誠実な人・良き社会人」を育成する静岡サレジオの教育理念
▲同校を運営する星美学園の設立母体であるカトリック女子修道会の創立者「ドン・ボスコ」像
まずはじめに、静岡サレジオの教育理念についてお聞かせいただけますか?
私たちの教育方針の根本には、「誠実な人間、良き社会人」を育成するという目的があります。これは、イタリアに本部があるサレジオ会という修道会の精神にもとづいており、学園すべてで統一している理念でもあります。
「誠実な人間」になるためには、価値教育が大切です。身の回りのできごとに対し、どう行動するかの基準を自分の中にしっかり持った人間を育てます。
「良き社会人」については、人間は社会の一員であり、自分一人では幸せになれないという考えにもとづきます。自分の幸せは他者の幸せと連動しているからこそ、他者を大切にできる人を育てたいと考えています。
理想の姿を目指してもらうために、先生方は生徒たちに対してどのように接していますか?
家庭以外で関わる大人の代表として生徒に寄り添い、喜びも悲しみも共に経験しながら、しっかりと愛情を伝えていこうと心がけています。いちばん大切なのは、他者にどれだけ愛情を持てるかということ。ですから、自分が愛されているという実感の中で、他者を愛する人になってほしいと考えているんです。
伝え方や対応なども学年によって変えるものなのでしょうか?
そうですね。年齢によって、大人が積極的に関わるべき時期と、一歩引いて見るべき時期があると思います。理解力や最適なサポート方法が変わってくるので、そのときどきに合った愛情のかけ方をするように意識しています。
その点、本校では一人の生徒を幼稚園から高校まで見ることになりますから、個々の性格などに合わせて年代に応じた関わりができるという点が大きなメリットのひとつだと考えています。
日本初の国際バカロレア一貫校、静岡サレジオのグローバル教育
世界に通用する大学入学資格を取得できる国際的な教育プログラム「国際バカロレア」。グローバル人材を育成するため、3〜12歳を対象とした「PYP(初等教育プログラム)」、11〜16歳を対象とした「MYP(中等教育プログラム)」、16〜19歳を対象とした「DP(ディプロマプログラム)」と、年齢ごとに3つのプログラムが提供されています。
2024年現在、日本における国際バカロレア認定校は約240校ですが、この中でPYP、MYP、DPの資格を同一校で取得できるのは何と静岡サレジオだけです。同校は、日本初の国際バカロレア一貫校であり、PYP、MYP、DPすべての過程においてコーディネーター資格を持つ教員がいるのも特徴です。
そんな同校の学年ごとに分かれるカリキュラムやプログラムの特徴について伺いました。
「4・4・4制」による12年間の一貫教育システム
国際バカロレアのプログラムを実践されている静岡サレジオでは、「4・4・4制」という独自のシステムを採用されていると伺いましたが、詳しく教えていただけますか?
「4・4・4制」は、小学校から高校までの12年間を4年ごとに区切った教育プログラムです。最初の4年間、つまり小学校1年生から4年生までは「プライマリーステージ」と呼び、PYP教育で人間力と学力の基礎を磨く時期と捉えています。生徒たちはこの4年で学ぶ楽しさ・生きる楽しさを感じとります。
次の5年生から中学2年生までの4年間は「ミドルステージ」で、MYP教育を行います。この期間は学びを深める時期であり、私生活でも習い事に行くなどして学校以外の社会との関わりが増える時期でもあります。なので、より他者のための行動や表現、活動を意識した学びを展開しています。
最後の中学3年生から高校3年生は「カレッジステージ」。DP教育を行い、いよいよ将来に向けた自己実現に注力する期間となります。なので、この4年間はさらに3つのコースに分けてそれぞれの進路に合わせたサポートを行います。
充実したカリキュラムが印象的ですが、そもそも御校が国際バカロレアを取り入れた狙いはどんなところにあるのでしょうか?
まず1つ目は広い視野を持った人を育てることです。世界平和や地球市民としての視点を持ち、自分だけでなく他者や世界全体のことを考えられる人になってほしいと考えています。
2つ目は言語教育。思考を深めるには母国語がいちばん大切です。国語の授業はもちろんのこと、すべての授業において、一つひとつの言葉を大切にした授業を展開していきます。それに加え、低学年から多読多聴で鍛える読むとくメソッド、5年生から始める小論文の授業などを通して日本語力を磨きます。もちろん世界中の人と関わるツールとして英語教育も大事にしていますが、自分の意見を発信するためには語学そのものよりも、思考力が最も重要だと考えています。
3つ目が表現力です。これまでの日本の教育で足りなかったのは、学んだことを表現する力だと思います。国際バカロレアのプログラムでは、常に自分の中に取り入れた知識をアウトプットする機会があります。グループ活動も多いので、自分の考えを他者に共有し、コミュニケーションを取る練習にもなると考えています。
プログラムを通して、生徒たちはどのように成長していますか?
ひとりひとりの個性や意見を尊重し、生徒の声を聞きながら授業を進めるので、今学んでいることに対する自分なりの考えを持ち、それをグループやクラスに向けてしっかり発表できるようになります。
たとえば、プライマリーステージでは毎年保護者に向けた学習発表会があります。特に4年間の集大成となる小学4年生の発表会では、親御さんは「人前でこれだけのことを話せるようになったのか」とお子さんの成長に驚かれていますね。
将来につながる「カレッジステージ」での学び
先ほどお話に出てきた、中学3年生から高校3年生までを対象としたカレッジステージの3つのコースを紹介いただけますか?
はい。カレッジステージには、「エグゼコース」「フロンティアコース」「ソフィアコース」があります。
エグゼコースは、従来型の受験勉強を重視したコースです。毎年、東大や医学部に合格する生徒を輩出しています。
フロンティアコースは、探究学習を中心としたコースで、目的意識をしっかり持った生徒を育てます。最近の大学入試で注目されている総合型選抜や学校推薦型選抜に対応しています。
ソフィアコースは、国際バカロレアの学びを継続し、上智大学への特別推薦枠で進学するコースです。国際バカロレアのカリキュラムは素晴らしいのですが、その先の進路が不安という声もあったので、しっかりとした出口を用意しました。
これらのコースを作った狙いはどこにあるのでしょうか。
教育の在り方がどんどん変化していて、何が「良い」のか、一概には言えない状況があります。ですが本校では、受験勉強に邁進する学びも、自分の興味関心に打ち込み個性を伸ばす学びも、どれも正解だと思っているんです。
どの学び方も、どんな進路も素晴らしい。だからこそ、生徒それぞれの個性や目標に合わせて、最適な学び方を選択できるようにしています。
また、これらのコースを作ったのは、下級生たちのためでもあります。小学生の段階では、どの進路に進むかはまだわかりません。ですが、自分たちの将来像でもある高校生がどのコースでも活き活きと学んでいる姿を目の当たりにすることは、大きな自信と希望につながると思います。
学んだことを実践する機会が豊富な静岡サレジオの探究学習
静岡サレジオの探究学習について教えてください。
プライマリーステージで行う探究学習では、「何のために、どのように学ぶのか」を感じることを重視し、年間で6つのテーマについて探究します。
その過程では毎回「セントラルアイデア」と呼ばれる仮説を立て、仮説を証明するためにさまざまな教科で学んだ知識を総動員して探究学習を進めます。この作業を繰り返すことで、生徒たちは今学んでいることとテーマがどう結びつくのかを理解していくのです。
一方、ミドルステージでは教科別で探究学習を行います。このため、8つの教科ごとに探究課題をこなすのですが、本校ではこの課題が約130も用意されています。最初に提示される評価の基準と目標を把握し、個人やグループでの探究に取り組みながら学びを深めるとともに、自己管理能力や計画性なども身につけていきます。
カレッジステージの探究学習は、学び方そのものを学ぶ時間になります。どうすればそのテーマを深く追求できるか、その方法自体を考え実践するんです。たとえば、「世界平和」について学ぶ場合は、修学旅行でも平和学習を意識するといったように、自ら考え活動することを大切にしています。
部活や地域と連携した活動など、自分らしい時間を過ごす「サレジオメソッド」
授業とは別で、自由に参加できる探究学習もあるそうですね。
そうなんです。毎日、7〜8限の放課後に「サレジオメソッド」という自己探究の時間を設けています。
陸上部などの「運動系部活動」、吹奏楽や演劇などの活動が行える「文化教養系講座」のほか、地域交流やボランティア活動ができる「地域連携・エージェンシー講座」、プログラミングやプレゼンテーションなどが学べる「知識習得講座」の4つに分類され、50以上の講座から自由に組み合わせて参加することが可能です。
毎日、放課後1コマ~2コマ選択することができます。たとえば、水曜日は地域活動をやり、それ以外の曜日は陸上部の練習に打ち込むといったこともできます。
すごいですね。サレジオメソッドの中で、特徴的なものはありますか?
ひとつは「草薙フューチャーセンター」の取り組みですね。これは本校の生徒が運営する組織で、地域の企業や団体、行政などと連携し、地域を盛り上げる活動をしています。
たとえば、地元のサッカーチーム「清水エスパルス」とのコラボグッズをプロデュースしたり、地元の弁当チェーン店「天神屋」とコラボし商品開発を行ったりもしています。約半年かけて完成したおにぎり「うさぎむすび」は、当初は期間限定販売予定だったのですが、好評につきレギュラーメニューとして天神屋さんで販売していただくことになったようです。
▲草薙フューチャーセンターでの講演会のようす
もうひとつは、生徒主体で運営する会社「草薙ファーマーズカフェ」です。
静岡はお茶で有名ですが、後継者不足で放置されている茶畑が実は多いんです。その課題を解決できないかということで、草薙ファーマーズカフェでは放棄茶園の茶葉を使った三年番茶を作って販売したりしています。
大事なのは、学んだことを自分の活動に結びつけること。学内で行う探究学習だけでは完成しないと思っています。ですから、こういった実践の場も用意しているんです。
すばらしいですね。探究活動を通して、生徒たちはどのように成長していると感じますか?
さまざまな活動に打ち込んだ経験を大学入試のプレゼンテーションに活かしたり、人生のライフワークに繋げた生徒もいます。例えば、探究活動でSDGsを深く学んだ生徒が、大学でもその活動を続けているケースもあります。
一つの活動に縛られず、複数の経験ができる環境にあることで、「これも楽しい」「こっちも魅力的だ」といったワクワクを日常的に味わってほしい。そして自分の可能性に気づき、学びを将来に結びつけていってほしいと思っています。
静岡サレジオから読者へのメッセージ
▲お話を伺った学校長の沼波先生
最後に、記事をご覧のお子さんと保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
日々の活動の中でいちばん大切にしていることは、いかに生徒に「学びたい」という気持ちを持ち続けてもらうかということです。実際に、本校で12年間学べば、自分に合った学び方を見つけ、そこで得たものを将来にわたって発揮できる力が身につくと思います。
本校は純粋で素直な生徒が多く、のびのびと自分の興味関心のある分野に打ち込める環境が整っています。どんな場所でも活躍できるスキルを得られる学校です。静岡サレジオ幼・小・中・高等学校を、ぜひ進路のひとつに加えていただけたらうれしいです。
多様な学び方を認め、それぞれの生徒の可能性を伸ばす教育方針が印象的でした。御校で楽しそうに自らのスキルを伸ばす生徒たちの姿が目に浮かびます。本日はありがとうございました。
静岡サレジオの進学実績
高大連携を積極的に進める静岡サレジオ。教育提携校である上智大学をはじめ、南山大学などとも高大連携協定を結んでいます。各校20〜30名規模の特別推薦枠があるほか、法政大学、同志社大学、関西学院大学といった有名大学にも推薦枠があります。
2024年以前の過去5年では、東京大学、一橋大学、東北大学、大阪大学などの国公立大学や、名古屋大学、筑波大学をはじめとする全国の医学部医学科、早稲田大学、慶應義塾大学、東京理科大学、国際基督教大学(ICU)をはじめとする難関私立大学などに多数の生徒が合格しています。
■近年の大学合格実績(静岡サレジオ幼・小・中・高等学校公式サイト)
https://collegestage.ssalesio.ac.jp/2024/
静岡サレジオの卒業生・保護者の口コミ
最後に、静岡サレジオ幼・小・中・高等学校に通う生徒の卒業生・保護者から寄せられた感想の一部をご紹介します。
受験対策が手厚く、志望校合格までサポートしてくれるといった声が上がっていました。また、教育熱心な先生が多い一方で校風は穏やかで過ごしやすいといった声も多数見られました。
静岡サレジオ幼・小・中・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人 星美学園 |
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住所 | 静岡県静岡市清水区中之郷3丁目2番地1号 |
電話番号 | 054-345-2296 |
問い合わせ先 | 静岡サレジオ中学校 |
公式ページ | https://ssalesio.ac.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください