ぽてん読者の皆さまに、特色ある教育プログラムで注目を集める学校を紹介するこの企画。今回紹介するのは、沖縄県浦添市にある私立・共学の中高一貫校の私立高等学校「昭和薬科大学付属高等学校・中学校」です。
同校は、沖縄県随一の進学校であり、特に医学部医学科の合格率は全国的にも高いレベルにあります。加えて、近年は医学部以外にも視野を広げて挑戦する生徒の育成にも注力しており、東京大学をはじめとする難関大学合格に向けたさまざまなサポートを提供しています。
また同校の生徒たちは、進学を見据えて勉強に熱心に取り組む一方で、部活動にも主体的に取り組み素晴らしい成果を見せています。
今回は、そんな昭和薬科大学付属高等学校・中学校の進路指導や教育プログラム、注目の部活動などについて、教頭の砂川先生にお話を伺いました。
この記事の目次
平和を希求し、社会・沖縄に貢献できる人を育てる昭和薬科大学付属高等学校・中学校
まずは、昭和薬科大学付属高等学校・中学校の設立の経緯や教育理念について教えていただけますか?
本校は、昭和薬科大学の付属校として1974年に設立された学校です。
昭和薬科大学は東京都の町田市にある大学ですが、さきの太平洋戦争で甚大な被害を受けた沖縄を見た当時の第七代学長の荻原先生が、教育を通して沖縄の復興に尽力したいという想いを抱き、沖縄に附属校を設立することとなりました。
そういう背景のもと本校が掲げている教育理念は、「平和を希求する」ということです。
そして、移り変わる時代の要請に応えながら、沖縄を中心とした社会の発展に主体的に寄与できる人材を育成することを目指しています。
医学部だけじゃない!難関大合格に導く充実した進路サポート
▲学内で開催された進路相談会の様子。
昭和薬科大学付属高等学校・中学校は沖縄県随一の進学校であり、国公立大学の医学部医学科への合格者数は毎年雑誌などでも上位にランキングされていますよね。
最近では医学部医学科以外の難関大学への進路指導にも力を入れていると伺っていますが、具体的な指導方針について教えていただけますか?
本校は母体が医歯薬系の大学なので、医歯薬系の分野で自分の資質を活かしたいという生徒が多く集まっているということが、医学部医学科への高い合格率につながっていると思っています。
それはもちろん誇らしいことですし、保護者や生徒のニーズでもありますから今後もこのまま維持していかなければならないと考えていますが、一方で、学校全体がその分野に偏ってしまって、政治・経済・文化など他の分野ではそれほど広がりがなかったというのが実情です。
そこで、医学部以外にも視野を広げ、積極的に挑戦していく生徒を育てていくためのひとつの取り組みとして、「東大シフト」というキーワードを掲げて、難関大合格に向けた進路指導・サポートを行っています。
東大という名前がついていますが、東大というのはあくまで一つの象徴であり東大受験を強制するわけではありません。東大を目指すくらいの視野を持って学習に取り組むことで、受験の際の可能性を広げてほしいと考えています。
難関大ツアーなど、さまざまな支援を提供する難関大志望者向けの「東大プログラム」
▲難関大ツアーで東京大学を訪れたときの様子。
東大をはじめとする難関大合格に向けて、具体的にはどのような取り組みを行っているのでしょうか?
「東大プログラム」というのを用意していて、このプログラムに参加する生徒たちに対しては、東大が提供しているオンラインの金曜特別講座を積極的に受講させたり、他校と連携して実施する夏休みの合宿勉強会を優先的に紹介したりしています。
また、本校を卒業した現役東大生が母校に貢献したいということで立ち上げた「ALOHA」という団体があるのですが、この団体と密に連携して、勉強法や受験対策などに関するアドバイスをいただくような場を積極的に設けています。
オンラインでの交流が中心ですが、ALOHAのメンバーが夏休みや冬休みに沖縄に帰省するタイミングで学校に招いて交流するような機会もあります。
現役東大生との交流の場を持つことで、進学後のイメージも沸いて学習に対するモチベーションが高まりそうですね。
おっしゃるとおり、進学後のイメージを膨らませるということがとても大事だと思っています。
その一環として、本校では10年以上前から、東大・早稲田・慶応・一橋・東工大などの難関大を2泊3日で巡る「難関大ツアー」を実施しています。
研究室の中を見学させていただいたり、学食でご飯を食べたり、講堂や図書館など校内を見て回ったりするのですが、生で見て感じることで生徒たちは本当に目を輝かせていますよ。
▲難関大ツアーでは、卒業生との交流の機会も設けられている。
百聞は一見にしかずということですね。ツアー後、学習面や気持ちの面で生徒さんに何か変化は見られますか?
明確な目標を持つことでやはり高いモチベーションを持って学習に取り組む様子が見られますし、保護者の方からも「急に勉強に取り組む姿勢が変わった」「目の色が変わった」といった言葉をよくいただきます。
そして実際に、学力がしっかりと上がっていくんですよ。これまで東大に現役で受かっている生徒や難関大に受かっている生徒の多くが、このツアーに参加しているんです。
「東大に行くぞ!」という高い士気が、周囲を刺激し相乗効果を生む
東大プログラムに参加している生徒はどのくらいいるのでしょうか?
今までの成績や面接などの審査によって選抜された中3から高2までの生徒50名ほどがこのプログラムに参加しています。
難関大ツアーに関してはある程度人数がいた方が割安になりますし、東大以外の大学も巡りますので、空きがあれば他のメンバーの参加も募っています。
東大プログラムに参加されているメンバーは、一般の生徒さんとクラスは同じですよね?クラスの中に東大を目指してモチベーション高く勉強している生徒さんがいると、周囲にもよい影響を与えそうですね。
まさにその通りで、核となる生徒がクラスに数名いることで、周りが引っ張られて相乗効果が生まれていると感じます。
もともと、医学部医学科を受験しようという学校全体の雰囲気が、毎年多くの医学部合格者を輩出できている要因になっていると思いますが、それと同じように、今度は「東大行くぞ」という生徒がどんどん周囲に影響を与えていってほしいと思いますし、実際にそのような効果が生まれていると感じています。
学校を準会場化して英検受験を推進!実践的な英語力強化を目指す
昭和薬科大学付属高等学校・中学校では、グローバル教育にも力を入れていると伺っています。こちらについてもご紹介いただけますか?
これからの時代に活躍するには、やはり英語の力が必須ですよね。本校の生徒は受験英語という観点ではしっかりとした力を持っていますが、それだけでは不十分だと考え、「英語シフト」というキャッチコピーを掲げて、実践的な英語力を伸ばすための取り組みを行っています。
そこでまずは英検やケンブリッジ英検のような検定試験の受験の推進を始めたのですが、沖縄の人の特性として若干引っ込み思案なところがあって、なかなかそういう場に出向いて受験するというところに至らないんですよね。
それならばということで、いろいろ調整をして学校を英検の準会場化したところ、途端にいきなり400名ぐらい受験者が出てきました。
ケンブリッジ英検に関しては一番近い受験地が福岡で、往復の渡航費や保護者の付き添い費用なども踏まえると1回の受験で7~8万くらいかかるような状況でしたので、こちらもケンブリッジ英検協会と直談判して、沖縄では唯一、本校だけ準会場に指定していただいています。
受験しやすいような環境をしっかりと整えてサポートされているのですね。これにより、生徒たちの英語学習への向き合い方は何か変わりましたか?
英検やケンブリッジ英検には、2次試験のスピーキングがありますから、その対策が必要になるんですよね。本校にはアメリカ人とイギリス人の講師が2人いるのですが、休み時間や放課後に積極的に話しかけたり面接対策を依頼したりする姿が多く見られるようになりました。それまで授業外では全くかかわろうとしなかったことを考えると、その姿勢に大きな変化を感じます。
留学に目を向ける生徒も増えてきて、交換留学制度に応募する生徒が以前に比べると倍増しているんですよ。
きっかけを与えたことで自ら考えて次の行動に移せていることが素晴らしいですね。
もともと学びに対する意欲のある生徒が多いので、主体的に学ぶ姿勢があるんですよね。ちょっとだけ背中を押してあげれば、あとは同時にコロコロと転がっていくような気持ちよさを感じますね。
名門海外大の学生を招いて、5日間「日本語禁止」のグループワークを実践
▲海外の名門大学の生徒を招いて実施したEnglishCampの様子。
検定試験以外にも英語力強化のための特徴的な取り組みがあれば教えてください。
例えば昨年度(2023年)は、東進主催の「Global English Camp」を、本校を会場にして実施しました。このプログラムはオックスフォード・ケンブリッジ・MITなどの海外大の大学生・大学院生を学校にお招きし、5日間かけて「SDGsの観点で、世界をよりよくするためにはどうすればいいか」というテーマについて、英語でグループワークを行うものです。朝9時から夕方5時までホールにこもり、外国人と集中してコミュニケーションをとります。
4人ほどのグループに1人外国人を配置して、日本語は一切禁止というルールを設けたので、校内留学のような体験ができたのではないかと思います。
5日間で何か成長を感じられましたか?
初日の午前中はブルブル震えているようなくらい全くコミュニケーションが取れなかったのですが、最終日には立派に英語でプレゼンしていましたし、私に英語で冗談を言ってくるくらいに成長していました。
引っ込み思案の生徒が、決して流暢な英語とは言えなくても、身振り手振りで気持ちの伝わる熱いプレゼンをしているのを見て、私も非常に感動しましたよ。
基礎は身についているのに自信がなくて使えないという、いわゆる受験体質から脱却して、「あくまで英語はツールなんだ」「英語の向こう側に自分のやりたいことがあるんだ」ということに気付ける瞬間があったのではないかと思います。
今後もこのような取り組みを続けていく予定ですか?
今年度(2024年)の「Global English Camp」については、残念ながら校内実施はできませんでしたが、チャンスがあればまた実施をしていきたいと考えています。英語力強化の取り組みはまだ始めたばかりなので、今後もいろいろと検討したいと考えています。
現在は、外部の業者さんや団体さんがいろいろな企画を作ってくださっているので、そういったものを上手に利用していく形でどんどん外国人とコミュニケーションを取る機会が持てたらと考えています。例えば、オンラインで外国の方々と交流ができるようなシステムなどの導入も具体的な検討に入っています。
ディベート部など全国大会常連部も。自慢の部活動を紹介
▲全国大会の常連にもなっているディベート部の活動風景。中学と高校に分かれ、それぞれ10名~20名で活動に励んでいる。
続いて、昭和薬科大学付属高等学校・中学校の自慢の部活動をいくつかご紹介いただけますか?
自慢の部活動はたくさんあって、強豪部としては吹奏楽部や剣道部などがあります。あとは、なぜかプールがないにも関わらず水泳部が強いんです。週3日ほど、すぐ近くにある別の高校に行って合同で練習を参加させてもらったり、休日にプールに行ったりして練習しています。
本校の看板とも言える部活動はディベート部ですね。沖縄ではやっている学校自体が少ないんですが、九州でもなかなか強くて全国大会の常連になっています。
先ほども申し上げたとおり、本校の生徒を含め沖縄の子ども達は引っ込み思案な傾向がありますので、そういうところを直したいという想いから軽い気持ちでこの部活が誕生したのですが、もともとの資質が高いのか、ノウハウを吸収していくと自信がついてどんどん上達していくんですよね。
もう大人顔負けの弁論ができますし、困ったことにときどき論破されそうになりますよ(笑)。
例えばどのようなテーマでディベートするのでしょうか?
例えばオープンスクールの際にディベートをするんですが、そういった場では「学校に制服は必要かどうか」「校則は生徒と学校どちらが決めるべきか」など身近なテーマで討論しています。とても白熱しますよ。
普段は、ディベートの全国大会で過去に出題されたようなテーマを中心に練習しているようで、死刑制度や脳死の問題など、大人でもすぐに答えを出せないようなテーマも取り扱っています。
子ども達なりの視点を持って、今どきの方法も駆使しながら情報を集め、自分なりの意見を組み立てていくような様子を見ていると、本当に立派だと思いますよ。
背中を押すだけで自走する!生徒の主体性が学校を支える
▲合唱コンクールの様子。修学旅行や文化祭などの学校行事も、生徒たちが主体的に動きのびのびと楽しんでいる。
昭和薬科大学付属高等学校・中学校の校風や、生徒たちの特徴について教えてください。
生徒たちはとてものびのびしていて、主体性のある生徒が多いですね。勉強にしても部活にしても学校が無理矢理やらせるという雰囲気はありません。
特に部活の方は「勉強第一だから気楽にやってね」というようなところもあるのですが、もともとのポテンシャルと好奇心があるためか、ちょっと道を示して背中を押してあげるとあとはもう自分たちで勝手に走り出すというようなイメージですね。
本当に生徒に支えられている学校だなと感じますし、我々は優秀な生徒達が花開くのをちょっとお手伝いしているだけというような感覚です。
実は私は神奈川県育ちなので客観的に沖縄の生徒を見ることができるのですが、彼らは恥ずかしがり屋の一方で、脈々と受け継がれているエナジーというかマグマのようなものを感じる瞬間があります。これは、さまざまな歴史や文化を育てている沖縄で生まれ育った彼らのDNAに刻み込まれた性質なのではないかと、私は勝手に思い込んでいます。
教師の約3割以上が卒業生というアットホームな雰囲気も魅力
▲校舎や施設は、新しくてとてもキレイ。生徒たちにも評判。
ほかにも、昭和薬科大学付属高等学校・中学校の自慢があれば教えてください。
本校は、教員が全体で80名弱いるのですが、そのうちの約30名は本校の卒業生なんです。私のかつての教え子が、今、同僚になっています。この比率は、ほかの学校さんに比べてかなり高いのではないでしょうか。
後輩のためひいては沖縄のために、自分たちが磨いてきた技術や知見を還元していきたいという想いを持って戻ってくるわけですが、彼らが持つ薬科イズムのようなものが生徒に伝わっていき、またその中の誰かが戻ってきてくれるというような感じで、脈々と受け継がれていっているんです。
教え子が立派に成長して戻ってくるので、いつも本当に感動しますし、大学卒業後に戻ってきてくれるということは、本校が良い学校だという証なのではないかと受け取っています。
アットホームというかファミリーのような雰囲気が生まれそうですね。
そうですね。とてもアットホームな雰囲気がありますよ。一方で、同じ教師になれば対等な同僚なので、なあなあにならないように注意しながら接するようにはしています。
昭和薬科大学付属高等学校・中学校からのメッセージ
▲インタビューに答えてくださった砂川教頭先生と校舎外観
最後に、昭和薬科大学付属高等学校・中学校に興味を持たれた読者の方に向けてメッセージをお願いします。
冒頭に申し上げたとおり、本校は沖縄、そして日本の発展のためにリーダーとなる人材を育てるために作られた学校です。
今は医学部医学科での高い合格率が目立っていて、もちろんここもますます強化していきたいと思っていますが、それ以外の分野への進学もしっかりとサポートしていく方針で指導にあたっています。東大を中心とした難関大学に進学して、将来、沖縄はもちろん日本を担っていくリーダー的な存在になりたいというお子さんは、ぜひ本校を選んでいただければと思います。
アットホームな環境の中で丁寧に育てていきますので、ぜひオープンスクールや説明会にも足を運んでいただき、そのような本校の雰囲気を感じていただければ幸いです。
ありがとうございます。インタビューを通じて、御校には生徒さん達が勉強・部活動ともに主体的に取り組む雰囲気が根付いているということがわかりましたし、それを後押しする充実したサポートがあるということもわかりました!
本日は、たくさんの貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
昭和薬科大学付属高等学校・中学校の進学実績
昭和薬科大学付属高等学校・中学校は、毎年安定して多くの国公立大合格者を輩出しています。2024年の実績を見ると、現役・既卒あわせて136名が国公立大学に合格しており、東京大学1名・京都大学2名・北海道大学3名など、多くの難関国立大学が名を連ねています。
昭和薬科大学、早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学などの難関私立大学への合格者も毎年数多く輩出しています。
同校は、特に医学部医学科で高い実績を誇っており、2024年度の国公立大学の医学部医学科合格者数は42名(現役22名、既卒20名)にも及びますが、インタビュー中にもあったとおり、近年はさまざまな分野での活躍を視野に入れて、充実した進路サポートを提供しています。
昭和薬科大学付属高等学校・中学校の卒業生・保護者の口コミ
▲図書館や食堂などの施設も充実している
ここでは、昭和薬科大学付属高等学校・中学校の卒業生や保護者の口コミをご紹介します。
友達同士が切磋琢磨しながら学校生活を送っている様子が、多くの口コミから伝わってきました。
昭和薬科大学付属高等学校・中学校へのお問い合わせ
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