ぽてん読者の皆さまに、今注目を集める学校を紹介するこの企画。今回は千葉県君津市にある私立中高一貫校の「翔凜中学校・高等学校」を紹介します。
「生徒が幸せになれる教育」を軸として、学業だけでなく心の教育にも力を入れている翔凜中学校・高等学校。突出した才能を持つ生徒や長欠傾向の生徒、、留学生や国際児などさまざまな子どもを積極的に受け入れ、多様性を大切にする環境づくりを行っています。またグローバル教育にも注力し、英検対策やディベートとプレゼンテーションを授業に取り入れている点も特徴です。
今回は翔凜中学校・高等学校の取り組みについて、栗原校長先生にお話を伺いました。
この記事の目次
「私立学校はサービス業だ」顧客満足度を重視する翔凜中学校・高等学校
▲取材に応じていただいた栗原校長
栗原校長は民間企業(銀行)に長く勤められ、2021年に翔凜中学校・高等学校へ赴任されたと伺いました。この3年間で、学校が変化したことはありますでしょうか。
そうですね。私がビジネスの世界出身ということもあり、まず最初に教員に伝えたのが「私立学校はサービス業だ」ということです。
やはり学費をいただいている以上、その対価は必ず還元すべきだと。それは進学実績だけでなく、生徒や保護者の満足度にあると考えています。ビジネスの世界では、CS(カスタマー・サティスファクション / 顧客満足度)という言葉が重視されて久しいですが、その感覚を学校側も持つべきだと考えています。そこが私立と公立との大きな違いです。
教員が生徒の側に立つのはもちろんですが、保護者の方々にも積極的に情報還元して、本校の活動を理解してもらう、お子さんの様子を知って安心してもらう取り組みが大切です。懇談会や授業参観だけでは足りないと考えています。
保護者の方に満足してもらう取り組みとは、具体的にどのようなものでしょうか?
例えば本校では、普段の授業や学校行事の様子などを写真に撮り、各クラスごとに保護者の方々に送信しています。また、英検や数検、漢検に合格した場合は保護者の方に直接連絡して「褒めてあげてください」ということも伝えています。検定に関しては、取得級を通知表に記載するようにも変えました。
勉強面だけでなく、部活動で活躍した時も同じように連絡します。生徒を褒めるのはもちろん、保護者の方にも必ず連絡するよう、教員には伝えています。顧客に対してきちんと状況を報告することはCSにおいて重要で、ビジネスで浸透しているルールでもあります。ですので、同じことを学校でも実践した方が良いと考えています。
最初は学校側から連絡があると、保護者の方は「うちの子が何かしたんじゃ…」と身構えます。しかし、生徒が頑張ったことをこまめに連絡していくうちに、「うちの子をちゃんと見てくれているんだな」と感じていただけるはずです。実際、教員も生徒のことをよく見ていますし、生徒の良かったところは必ず保護者の方に伝えるよう、徹底しています。
不登校やいじめの原因を取り除くため、感情のセルフコントロールに注力
翔凜中学校・高等学校は、「英知」「精励」「自律」「協調」「気品」の5つを校訓としていらっしゃいますが、その中でも特に「自律」の教育に力を入れていると伺いました。
はい。自律に関しては、道徳の授業で私が直接教えています。この自律は「自分で立つ」という意味の「自立」ではありません。本校の場合、自律は自分で自分を律することができる「セルフコントロール」という意味です。
今の教育現場には、不登校やいじめなど、さまざまな問題がありますよね。その最大の原因は子供たちが「感情のコントロールができないこと」にあると考えています。ですので、私自身アンガーマネジメントを勉強して、教壇に立って道徳の授業を行うようにしています。
多感な思春期の子どもたちをお預かりしている以上、学力だけではなく、自分の感情をコントロールすることを学び、思いやりを持てる人に育てるということに、特に力を入れています。
▲翔凜中学校・高等学校は「生徒が幸せになる教育」を大切にしている
自律を習得することが、生徒さん自身の幸せにつながるのですね。
本校が1番求めているのは「生徒が幸せになれる教育」で、それが大前提です。「幸せになれる」とは何かと考えた時に、良い大学に行くことが幸せかというと、それだけではありませんよね。学力ももちろん重要ですが、社会に出た時にちゃんと1人で生きていける、活躍できるということが大切だと考えています。その力をつけるためにも、感情のセルフコントロールの教育は続けていきたいです。
コミュニケーション能力を重視する「翔凜中学校・高等学校」のグローバル教育
グローバル教育に注力している翔凜中学校・高等学校では、英語力の向上だけでなく、「コミュニケーション能力」の育成に力を入れています。ここからは、同校が特に力を入れるコミュニケーション能力向上に関する取り組みについてお話を伺いました。
重要なのはコミュニケーション能力。勉強だけじゃ社会では通用しない
翔凜中学校・高等学校では、コミュニケーション能力の向上にとても力を入れているそうですね。どういった背景があるのでしょうか?
私自身、銀行で人事の仕事をしていた経験があるのですが、その頃から良い大学を出て銀行に就職しても、対人関係で悩みを抱えたり、仕事が思うようにできなかったりして退職してしまう若い人が多いと感じていました。
その最大の原因は、コミュニケーション能力の乏しさにあると感じています。では、他者としっかりコミュニケーションを取れる人間になるために、中学高校で何をすべきか。本校ではその答えの1つが、ディベートとプレゼンにあると考えています。
つまり、相手の意見を理解し尊重する、自分の意見を相手に伝え理解してもらうことが大切です。本校では必ずディベートとプレゼンの力をつけて卒業させると決めて、プログラムを組んでいます。
グローバル教育というと英語教科に注視してしまいがちですが、まずはしっかりとコミュニケーション能力を養うことが国際的な活躍につながるのですね。
コミュニケーション能力がなければ、どんなに勉強ができても世の中では通用しないと考えています。
しっかりと自分の意見を伝え、そして相手の意見を踏まえて反論するというようなディベートの基礎は、社会に出たときに必要となります。コミュニケーション能力がなければ、学力をつけても頭でっかちになってしまう可能性があります。
また、コミュニケーション能力の向上には、ディベートやプレゼン能力ももちろんですが、礼儀や服装といった人間の基本となる振る舞いも大切です。基礎部分をきちんと養うカリキュラムを組んでいるのが本校の強みだと考えています。
ゲーム感覚の書評合戦「ビブリオバトル」に英語でのディベートも
ディベートやプレゼンについて、具体的には、どのようなプログラムがあるのでしょうか。
一例として、ビブリオバトルがあります。ビブリオバトルは、ゲーム感覚の新しい書評合戦です。発表者たちがそれぞれのおすすめの本についてプレゼンテーションを行い、プレゼンを聞いた観客からの得票数がもっとも多かった本が「チャンプ本」、いわゆるチャンピオンになるというものです。
最初はビブリオバトルのやり方から学び、授業でビブリオバトルを重ねていきます。そして最終的には、全校でビブリオバトル大会を開催します。
また、英語でも日本語でもディベートをする機会が多くあります。特に高校3年生は日本語で公開ディベート(在校生、保護者が観覧する)をやるのですが、そこではあえて「憲法改正の是非」など、一般の学校では触れられないようなこともテーマにしています。まだ高校生だからと難しい話題を避けるのではなく、正しい情報を伝えたうえで生徒たちに自分で考えさせること、つまり思考停止させない教育が大切だと考えています。
一昨年、神田外語大学と高大連携を締結し、英語のディベート練習(合宿)を行ったのち、公開ディベートを行うプログラムになりました。
▲教科によっては学習発表会を行うこともある
留学生から元長欠傾向児まで、さまざまな背景を持つ生徒が学校生活を送る
翔凜中学校・高等学校は、留学生も多いと伺いました。
高校は国際科ということもあり2割程度の留学生を受け入れています。また留学生以外にも、国際児や帰国子女、君津市長からの依頼でウクライナから避難してきた生徒の受け入れも行っています。
留学生が多いと、だんだんと外国にルーツを持つ生徒も集まってきます。そういった面で多様性というか、国際色が豊かな環境かと思います。本校は留学生クラスを作らず、一般のクラスに入れる方針のため、高校ではどのクラスにも必ず7〜8人の留学生がいる環境です。そのため、生徒自身さまざまなバックウンドを持つ子がいて当たり前という感覚を持っています。
翔凜中学校・高等学校では長欠傾向の生徒に配慮した体制づくりを行っていらっしゃるそうですね。
はい。多くの私立高校は、欠席日数が年間5~10日以内であることを入試の条件に出しています。しかしそうすると、長欠傾向の生徒はまず私立高校には行けなくなってしまいます。入試一発勝負の公立高校だと諦める生徒も多く、必然的に進学の選択肢が狭まってしまうという現状があります。
選択肢が狭まるというのは、子どもたちにとって良いことではありません。ここで私立校が門戸を閉ざしたら駄目だろうという考えで、本校では長欠傾向の生徒も少人数ではありますが門戸を開いています。
長欠傾向の生徒への門戸を閉ざさないというのは特徴的です。入学まではどういった流れで進めるのでしょうか。
生徒と保護者の方と私が直接面談を行います。生徒一人ひとりと話していると、本当にさまざまな理由で学校へ行けなくなったことが分かります。しかし「高校に行ったらゼロからやり直したい」という意欲のある子は、目を見ればわかります。「この子なら大丈夫」と感じたら、欠席日数や通知表の評定に関わらず、本校の入試にチャレンジしてもらっています。
▲校外学習ではさまざまな場所に赴く
長欠傾向の生徒の多くが登校可能に。県外から入学し寮生活を送る生徒も
長欠傾向の生徒さんは、どのように翔凜中学校・高等学校で学生生活を送っているのでしょうか。
長欠傾向だった生徒の多くは登校できるようになっていますね。もちろん全員ではありませんが。本校には留学生も多いですし、寮もありますから、県外から来ている生徒もいます。いろんな場所から集まってきているので、生徒の間で多様性を受け入れる心が育まれていると感じます。
本校では長欠傾向だったとか、そういった過去を気にする必要がありません。皆さまざまなバックグラウンドを持ちながら、とても仲が良いです。
また、無理に登校を強制することもありません。少しずつでも来れるようになれたらすごいですし、修学旅行に行けたらハッピーだねって。焦らず徐々に環境に慣れていければ良いという考えです。他の生徒たちも、そういう子もいるよね、と自然に受け止めていますね。
また、本校では週に4日スクールカウンセラーが来ているのですが、教員免許がある方なので直接授業を持ち、生徒と日頃から関わってもらうようにしています。長欠傾向の生徒も、そうでない生徒も、気軽に相談に来れるような環境づくりに努めています。
その子のレベルに合わせた授業で、個別最適を目指す
▲翔凜中学校・高等学校では生徒の習熟度に合わせた授業を行っている
翔凜中学校・高等学校は個々の生徒に最適な教育を提供する「個別最適化」を意識していると伺いました。
そうですね。私自身、教育は個別最適が理想だと思っています。しかし学校という場はそれが難しく、全体最適が基本となります。ですが本校は私立ですし、比較的カリキュラムなどの自由度も高いので、さまざまな施策を打って、より個別最適に近いところまで実施しています。
例えば、中学校は各学年2クラスなのですが、英語・数学・国語の3教科は他の私立中学と同じように習熟度別にαとβに分けて授業を行っています。αとβは、定期テストの結果と生徒本人との話し合いのうえ、随時入れ替えを行っています。
本校ではさらに、αでも足りない(=簡単過ぎる)という生徒のためにその上の「Sα(スーパー・アルファ)」というクラスを設置しています。いわゆるギフテッドと呼ばれるような突出した才能を持つ生徒は、Saに行くことが多いですね。結果的にαとβの生徒も、Saに行きたいと頑張るので見事な相乗効果が生まれています。
▲実験も積極的に取り入れ、生徒自身に考えさせる教育を大事にしている
個別最適だから、ギフテッドの生徒の才能も伸ばせるわけですね。
以前授業を見学した際に、授業内容が簡単過ぎて授業中に別のことをしている生徒がいたんですね。その光景を見て、「できるから良い」ではなく、できないぐらいの高レベルの課題を与え、さらに才能を伸ばせるような教育を提供できなければならないと感じました。
飛び級制度ははやりませんが、それに近いことはやっていきたいと考えています。
例えば以前一度だけ、英検の準1級や2級を持っている中学1年2年の生徒に、高校2年の特進クラスの英語に体験参加させたことがあります。オールイングリッシュの授業だったのですが、中学生の子たちは「こんなに楽しい授業は初めて」と目を輝かせていました。そして同時に、特進コースの高校生たちも負けてられないとさらに勉強に励むようになりました。カリキュラムの範囲内でできる限り才能を伸ばし、こうした良い化学反応を生んでいきたいです。
夏期講習は学年を問わず、各講座を自由に受講できるようにしているそうですね。
はい。対象学年を設けず、塾と同じようなカリキュラム構成で行っています。ですので、英文法基礎に高校生が出席したり、逆に高校レベルの授業に中学生が出席したりしています。生徒も誰も不思議に思わず、自分たちで好きな講座に出席し、実力を伸ばしたり苦手を克服しようという雰囲気になっていますね。
先ほどの個別最適に通じるお話ですね。
例えば、私自身の学生時代にもありましたが、テストでいつも100点を取る生徒に対しては、周りが褒めますよね。すると生徒は自分を完璧だと勘違いし、努力をやめてしまう。その結果、3年後の大学受験で失敗するケースが多くなります。周囲の子は3年間絶えず努力を続けてきたわけですから、最後には追い付かれ、差をつけられてしまうんですね。
そういった事態を起こさないためには、子どもたちが「さらに上を目指そう」と思える仕掛けを学校側がつくることが大切です。ですので私は教員に、100点が出る定期テストは作らないように指示しています。100点を取れたら満足してしまいますが、80点だったら残り20点のために努力しますよね。この努力がなければ、生徒は伸びないと思います。
どんなに優秀な子でも、まだまだ伸ばせることはあると考えています。
ここまでお話を伺ってきて、学校の体制をかなり改革された印象を受けました。やはり変化は大きいですか?
そうですね。相当変わったと自分でも感じています。進学実績などの数字面もそうですが、本校に入りたいと思ってくれる生徒が増えています。
また目に見えるものだけでなく、近隣の中学校の先生方からもお褒めの言葉をいただくことが多くなりました。本校の面倒見の良さや方針というものに共感していただける方が随分増えたと、肌で感じています。
翔凜中学校・高等学校からのメッセージ
最後に、翔凜中学校・高等学校に興味を持つお子さまや保護者の方へ向けてメッセージをお願いします。
多様性の時代なので、お子さんが「こうしなきゃいけない」「ああしなきゃいけない」ということは、あまり考える必要はないと思います。もちろん学校や社会のルールは必要ですが、例えば「成績が良いから・悪いから」「長欠傾向だから」「友達が多い・少ない」など、そういったことで悩む必要は無く、いろいろな生徒がいて構わないと思います。
ですので中学校を選ぶ際は、本校でも他の私立学校でも、お子さんに本当に合うところを選んでいただきたいと思います。お子さんの特徴というのは、保護者の方でないとわかりませんから。本校では、できる限り多様な生徒を幅広く受け入れて育てていこうと考えています。ご興味がありましたら、ぜひ受験していただきたいですね。
魅力的なお話ばかりで、時間があっという間に過ぎました。本日はどうもありがとうございました!
▲翔凜中学校・高等学校は部活動も盛ん
翔凜中学校・高等学校の進学実績
2022年度は、医学部医学科へ2名合格したほか、国際基督教大学教養学部や上智大学法学部など、MARCH以上の大学へ多く進学しました。144名の卒業生のうち、MARCH以上へ合格した生徒は87名です。
▼翔凜中学校・高等学校の詳しい進学実績は、公式サイトで確認できます。
翔凜中学校・高等学校の進学実績(公式サイト)
翔凜中学校・高等学校の卒業生・保護者の口コミ
ここでは、翔凜中学校・高等学校の卒業生・保護者の口コミを一部抜粋してご紹介します。
翔凜中学校・高等学校校へのお問い合わせ
学校名 | 翔凜中学校・高等学校 |
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