独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、宮城県仙台市にある私立の中高一貫共学校「尚絅学院中学校・高等学校」を紹介します。
キリスト教主義の同校では、キリストの教えを土台とした教育活動を通じて、自分を大切にし、他者も大切にし、共に生きようとする姿勢を身につけることを目指します。学習面では探究学習に力を入れているのも特徴で、答えのない問題に立ち向かう力を養います。
今回は、そんな尚絅学院中学校・高等学校の教育理念や学習プログラムの特色などについて、佐藤教頭先生にお話を伺いました。
この記事の目次
謙虚さある“行動できる人”を育てる尚絅学院中学校・高等学校
▲インタビューに答えてくださった尚絅学院中学校・高等学校の佐藤教頭先生
まずは、尚絅学院中学校・高等学校がどのような学校であるのかについて、教えてください。
尚絅学院という学校名は中国の古典に出てくる『衣錦尚絅(いきんしょうけい)』という言葉に由来しているのですが、これには「きらびやかで高価な着物を着ていたとしても、それ見せびらかすのではなくて、その上に薄い打掛を着て隠す」という意味があります。
外面よりも内面を磨いて欲しい。そしてそれを自慢げに誇るのではなくて、謙虚さを持って他者と接する。そんな願いが込められているんです。
また、本校はキリスト教の学校で、「キリスト教を土台として、人間のあり方を探り、他者と共に生きる」という教育目標を掲げています。
具体的に生徒たちには、「弱い立場にある人に目を向ける」「身につけた知識や技術を自分だけのためだけでなく隣人のため、他者のためにも用いていく」ということの大切さをよく伝えています。
キリスト教の教えをもとにした取り組みなどもあるのでしょうか?
そうですね。毎朝の礼拝や週に1回の聖書の授業に加えて、老人ホームや施設の訪問・クリスマス礼拝など、年間を通して「他者と共に生きる」ことを学び感じて実践するような機会が設けられています。
実際にキリスト教を信仰して教会に通っているような生徒はほとんどいないのですが、学校生活の土台としてこうした時間があることで、しっかりと道徳心や感性が磨かれていっていると感じます。
中3になると、礼拝の時間に生徒が自分で「クラス礼拝」と言って、生徒がキリスト教に触れて自分の成長を語る機会があるのですが、非常に感慨深いものがあります。
▲礼拝などの宗教教育を通して道徳心や感性が磨かれていく
例えば生徒さんからはどのような声や意見が聞こえてきますか?
例えば老人ホームに行くと、コミュニケーションを取ることが難しくなった方や、頻繁に家族と会うことができなくなった方などにも出会います。
そうした方々と触れ合ったときに「自分が何かをしてあげよう、楽しませてあげよう」と思うことももちろんあるのですが、キリストの教えにもあるように「自分自身も弱さを抱えた人間であり、周りの人に助けられているんだ」ということに気付き、生徒たち自身も励まされて帰ってくるといったことがあります。
家族や先生など、自分が周りの人から受けた励ましやサポートに感謝して、今度は自分が他者に聞かれていく体験を語ってくれる生徒が多いです。
▲老人ホームで入居者のお年寄りと交流する尚絅学院の生徒たち
「誰一人傍観者にならない」が尚絅学院中学校・高等学校のモットー
尚絅学院中学校・高等学校の校風や生徒さんの雰囲気について教えてください。
特に中学校に関しては1クラスしかなくて3年間クラス替えもないため、生徒の間で絆が生まれますし、かなり密な関係が生まれています。生徒間で何かトラブルがあってもクラス替えでうやむやにするということもできません。クラス全体の課題として解決していくことを大切にしています。
2008年に男女共学になってからはすごく活気も出てきました。そんな中で生徒たちによく伝えているのは、「誰一人として傍観者にならない」ということです。
実際、行事にしても探究活動にしても、「みんなで関わって、みんなで達成して、みんなで感動する」という雰囲気がありますね。特に中学3年生になると海外研修がありますが、そこではクラス全体で感動を共有するような、そんな素晴らしい体験が得られると思いますよ。
中学校は1クラスということですが、少人数の環境で学ぶからこそのメリットを教えてください。
尚絅学院中学校は1学年30名程度で1クラスしかありません。小さな学校なので、普段の授業の中でもひとり一人が意見を述べたり発表したりする機会がとても多いです。大人数の中で埋もれて「逃げる」ということができないんですよね。
例えば国語の授業では日常的に個人やチームで発表する機会があります。英語の授業でも、ただ英語を話すということだけではなく、どうしたら聞き手に伝わるかということをしっかりと考えさせます。先日は、英語でお母さんが小さな子どもに読み聞かせをするようなイメージで物語を読むという発表会をやっていました。
3年間で生徒たちの成長を感じますか?
そうですね。高校は基本8クラスほどあって外部の生徒が多く入学してくるのですが、やはり尚絅学院中学校から内部進学した生徒たちはプレゼン力がかなり優れていると感じますよ。高校でもこうした力を発揮して、けん引役として高校全体にいい刺激を与えてほしいと願っています。
▲教員と生徒との距離も近い同校。なんでも相談しやすい距離感である一方、必要な時には厳しく指導することも
尚絅学院中学校・高等学校の探究学習
続いて、特徴的な学習カリキュラムについてお伺いします。尚絅学院中学校・高等学校では探究学習に力を入れているとお聞きしていますが、その特徴や具体的な内容について教えてください。
最近、答えのない課題に立ち向かうという”探究学習”に注力する学校が増えていますが、本校では2008年に男女共学になったころから、探究力を磨くようなプログラムを構築して実践してきました。
具体的には、PBL(プロジェクトベース学習)というプログラムを実践しています。PBLでは、それぞれが興味のあるテーマで課題を設定し、その課題をクリアするための計画を立て、仮説検証を繰り返してまとめます。
ただ机に向かって考えるのではなく、実際に学校の外に飛び出して専門家や有識者に意見を聞いたり、場合によってはチームを組んだり仲間を巻き込んだりなど、実際に行動し、他者と協働しながら探究を深めていくというのが特徴です。
例えばどのようなテーマでどのような探究を行うのでしょうか?
例えば「ゴミを減らすためにどうすればいいか」というテーマで探究を行っていた生徒がいました。
これだけ聞くとありきたりだと思うかもしれませんが、ただ問題意識を提示して終わるのではなく、「ゴミを減らすという意識作りを教育の中でどうやって実践していくか」というところまでしっかりと深掘りして考え、仮説検証していました。
大学の先生など有識者にアポを取ってインタビュー調査を実施したり、”ゴミを持参すること”を参加の条件とするお子さん向けのイベントを主催したり、イベントに賛同してくれる仲間を増やして活動の輪を広げたりなど、他者をまきこみながら具体的な行動を起こしていたという点も素晴らしかったですね。
他には、「選挙の投票率を上げるためにはどうしたらよいか」「日本の医療保険制度について」などのテーマもありました。それぞれ専門家や現場で活躍している方などにアポを取ってインタビューするなどして探究を深めていました。
ただ一人で調べて終わりというわけではなく他者も巻き込みながら探究を深めることで、社会に出たときに役立つ実践的な力が身につきそうですね。
グローバル社会で生き抜く力を!中3の海外研修では探究の成果を英語でプレゼン
PBLでは、それぞれが探究した成果を発表する機会はあるのでしょうか。
はい。PBLは、人前でプレゼンするところまでを一連の流れとして実施しています。
グローバル社会では“英語で伝える力”を求められることも多いので、中3になると英語でパワーポイントやスピーチ原稿を作ってプレゼンするということにも挑戦します。
中学3年生は修学旅行として海外研修に行きますので、この機会を利用して、現地のスタッフさんや学生、英語の先生などに向けて英語で発表してもらいます。行先はその年によって異なりますが、2024年度はハワイを予定しています。
英語でプレゼンするのは難易度が高そうですが、かなり準備を重ねるのでしょうか?
そうですね。授業の中でも何度も声出しをさせて訓練していきますし、スピーチ原稿を覚えるところまでしっかりと練習を重ねていきます。たとえ苦手意識を持っていても逃げることはできませんから、全員に諦めずに取り組んでもらっていますよ(笑)。
英語のキレイさは生徒によって差はありますが、英語は“伝える手段”ですから、大事なのは英語で自分の意見を整理し、相手に伝わる言葉を使い、表情や身振り手振りを工夫しながら伝えるということです。これを意識して、長い時間をかけて練習を重ねていきます。
この海外研修を乗り越えると生徒たちは大きく成長しますし、苦手だけど頑張ってよかったという声もたくさん聞こえてきます。楽しいのはもちろんですが「楽しかった」だけに留まらない充実した経験になっているようです。
▲シンガポールで実施した海外研修の様子。英語で探究活動の成果を発表するという試練を乗り越えて、生徒たちはさらに大きく成長する
尚絅学院中学校・高等学校からのメッセージ
▲2024年度からは私服登校も可能となる同校。制服か私服か、生徒が自由に選択できるようになる
最後に、尚絅学院中学校・高等学校に興味を持たれた方に向けてメッセージをお願いします。
私たちが大事にしている教育は大きく三つあると思っています。
まず一つ目は大学への進学をしっかりサポートするということです。ペーパーテストでしっかり点数が取れるような基礎学習能力を身につけるよう指導していきますし、土曜日も活用して何度も何度も演習を繰り返すような時間も設けています。
ですがそれだけでは真に優秀な人材は育ちませんから、答えのない問いに立ち向かう力も同時に養っていきます。PBLの活動などを通して、自分で課題を設定して答えを考え、伝えていくという力を育てていきます。
そしてこれらの土台にあるのが、冒頭でお話したような内面的な部分の教育だと思っています。本校が大切にしている「他者との関わり合い方」に関する教育は、授業や探究活動で論議をするような場面においても、「友達が発言しているときは遮らない」とか「まずは他者の意見も受け入れてみる」といった意識としてしっかりと生きているんですよ。
こうした本校の理念や教育に興味を持ってくださった方は、ぜひ一度本校にお越しいただいて、実際の生徒たちを見て、生徒たちと言葉を交わしていただきたいと思います。教員目線ではなく生徒たち目線で学校の魅力をお伝えしたいと思いますので、オープンキャンパスや説明会などの機会に足を運んでみていただけると嬉しいです。
ありがとうございます。
御校では、他者との関わり合いを大事にしながら答えにない問いに立ちむかうという、とても素晴らしい経験を積むことができそうですね。本日はたくさんのお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
尚絅学院中学校・高等学校の進学実績
尚絅学院高等学校には、「総合進学コース」「文理進学コース」「特別進学コース」の3つのコースがあり、コースごとのコンセプトに基づいて進路指導が行われています。
特別進学コースでは国公立大学合格を目指して低学年時から多くの講習会や進路・学習指導が実施されています。
2023年度には、秋田大学、新潟大学、福島大学、山形大学などの東北エリアの大学を中心として、35名の国公立大学合格者を輩出しています。
私立大学の直近数年の合格実績を見ると、東北学院大学、東北福祉大学、宮城学院女子大学、尚絅学院大学など同じく東北エリアの大学が目立ちますが、東京理科大学、国際基督教大学、GMARCHなど全国の難関私立大学合格者も輩出しています。
■尚絅学院中学校・高等学校の進学実績(公式サイト)
https://sh.shokei.jp/hs/shinro/results.html
尚絅学院中学校・高等学校の卒業生・保護者の口コミ
▲施設が新しく快適な環境で過ごせる同校。
ここでは、尚絅学院中学校・高等学校に通う生徒の保護者や卒業生の口コミを紹介します。
海外研修やボランティア活動など授業以外の学びの機会が多く、生徒の成長につながっているという口コミが複数見られました。
▲紹介した取り組み以外に、ペットボトルロケットを飛ばす実験など体験を重視した取り組みも豊富。
尚絅学院中学校・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 尚絅学院中学校・高等学校 |
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住所 | 宮城県仙台市青葉区八幡1-9-27 |
電話番号 | 022-264-5881 |
問い合わせ先 | https://www.shokei.jp/sh/contact/ |
公式ページ | https://sh.shokei.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください