独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、静岡県静岡市にある中高一貫の私立女子校「静岡英和女学院中学校・高等学校」を紹介します。
同校は、日本女性の教養を高めることを目的に、1887(明治20)年に創立された、キリスト教精神に基づいた教育活動を行っている歴史ある伝統校です。キリスト教に基づいた思いやりの心を育む教育を実施するとともに、全員参加の海外研修プログラムを設けるなどグローバル教育にも力を入れています。
今回は、そんな静岡英和女学院中学校・高等学校の豊かな心を育む教育方針やグローバル教育について、同校高等学校の教頭を務める石岡先生にお話を伺いました。
この記事の目次
躊躇せず人助けできる心を育む「静岡英和女学院中学校・高等学校」
最初に、静岡英和女学院中学校・高等学校の建学の精神や教育理念について教えていただけますか?
本校は、1887年にカナダから来日した女性宣教師によって創立された、静岡県初の私立学校です。当時の日本では、女性の教育が遅れていたため、当時の県令(県知事)や地元の有力者に協力していただき、女子教育を目的として開校しました。
建学の精神は「心を尽くし、魂を尽くし、力を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。また、隣人を自分のように愛しなさい。」です。本校では、聖書の教えを土台とし、「愛と奉仕」の心を受け継ぎながら、キリスト教に基づいた教育活動を行っています。人に思いやりを持ち、人と社会に貢献できる女性の育成が根本的な教育方針となっております。
キリスト教教育に関する取り組みや生徒さんの反応をお伺いできますか?
本校は開学以来、毎朝欠かさずに礼拝を行っています。全校生徒が礼拝堂に集まり、キリスト教学科の先生や近隣の牧師先生にお話をしていただきます。そして、讃美歌を歌い、お祈りをしてから、教室に戻って授業が始まります。
毎朝の礼拝は、自分を見つめる時間でもあり、知らず知らずのうちに心の中にキリスト教の教えや考え方が根づいていると思っています。実際、「当たり前のようにしていたことが、周りの人から“すばらしい”と褒められた」といった話を卒業生や在校生から聞くことが多々あります。
例えば「駅で気分が悪くなって座り込んでいたら、御校の生徒が助けてくれた」とお礼の電話をいただいたことがあります。また、大学に入学した卒業生からは「同級生が元気のない声を出していたので、心配になって声をかけたら、仲良くなった」という話を聞きました。些細なことかも知れませんが、このような話を聞くと、人に対する思いやりの気持ちが行動に表れていると感じますね。
お互いを思いやることが当たり前の集団の中で過ごしていると、卒業後も自然と行動に表れるということですね。
中学からは6年間、高校からは3年間、毎朝礼拝で話を聞いていると、困っている人に手を差し伸べることが当然だと思えてきます。いざという場面に遭遇しても躊躇しない、人を助けることや人を思いやることに抵抗感がないのです。
▲取材に対応いただいた石岡教頭先生
静岡英和女学院中学校・高等学校のグローバル教育
▲留学先の制服を来ている静岡英和女学院中学校・高等学校の生徒の皆さん
静岡英和女学院中学校・高等学校では英語教育・グローバル教育に力を入れておられると思いますが、その中でも特徴的な取り組みについてお聞かせください。
本校では、中学校からコース分けがあり、進路に合わせてカリキュラムを組んでいますが、本校グローバル教育の最大の特徴としては、どのコースの生徒も留学のチャンスがあることだと思っています。
本校では、希望者制の長期・中期・短期の留学プログラムに加え、交換留学、全員参加のスタディーツアー(修学旅行)を実施しています。
まず、10ヶ月~1年の長期留学があります。中期留学としては、中学ではニュージーランドの中学へ3ヶ月、高校ではカナダの姉妹校へ5ヶ月の留学があります。この中期留学プログラムを、本校では「メイプルプログラム」と呼んでいます。そして、短期留学は1週間程度の留学です。短期留学は今年から新しく実施するもので、今年(2024年)の夏に27名がシンガポールへ行く予定です。
また、姉妹校との交換留学では、本校の生徒が1週間から10日程度、海外の姉妹校へ留学し、姉妹校の生徒が本校に来て学びます。
そして、全員参加のスタディーツアー(修学旅行)は高校2年生で実施します。毎年、全員でカナダへ留学していたのですが、コロナ禍以降2023年までは国内に切り替えて実施していました。今年(2024年)から海外留学を復活させたのですが、円安などの影響で行き先はオーストラリアにしました。今後も、全員で海外へ行く経験をさせてあげたいと思っています。
このように本校では、英語力や予算など個々の希望に合わせて選べるように、留学・海外研修のプログラムは豊富に準備しています。
海外留学中はどのように過ごすのでしょうか?
例えば、高校でのカナダ留学(5ヶ月間)の場合、前半は寮で過ごし、後半は一般家庭へのホームステイで過ごします。
留学する学校は他国からの留学生も受け入れているので、最初に寮で過ごすことで、自分と同じような立場の生徒と接することができます。寮生活で英語や現地での暮らしに慣れてからホームステイをするので安心です。向こうではほとんど英語しか使えない状況になりますので、このように馴染みやすい形をつくっています。
→スライドでカナダスタディツアー(修学旅行)の様子をご覧いただけます
ネイティブ講師による授業にイングリッシュキャンプ。実践重視のプログラム
▲英会話が中心になるネイティブ講師による英語の授業
そのほか静岡英和女学院中学校・高等学校の英語教育について教えていただけますか?
本校の英語教育では、4技能をバランス良く習得することを目標にしています。読む、書くだけではなく、特に聞くことや話すことに重点を置いています。そのため、実際に英語の音を聞いたり、話したりする機会を多くとっています。
具体的には、本校には常駐する2名のネイティブ講師による英会話の授業を多く設定しています。これにより、リアルな英語でのコミュニケーションができます。また、校内で英語のスピーチコンテストを行っており、実際に英語で発表する経験を積んでいます。
中学2年生では「イングリッシュキャンプ」を実施しており、これは朝霧野外活動センターに宿泊し、英語劇を完成させるものです。キャンプには静岡在住のネイティブスピーカーの方々にも参加していただき、その方たちとディスカッションしながら演劇を作っていきます。
このように本校では、英語の発音を重視し、声を出して読むことに焦点を当てています。本校では中学1年生から全員がタブレットかパソコンをもっておりますので、声に出して英語の文章を読み、それを録音して提出するなど、デバイスも活用しています。
▲ネイティブ講師による英語の授業でも、タブレットやパソコンを活用
英語以外の言語に日本文化、世界中の文化に触れる「英和学」「ジュニア英和学」
静岡英和女学院中学校・高等学校の公式サイトを拝見していて「英和学」、中学では「ジュニア英和学」がとてもユニークだと思ったのですが、それについて教えていただけますか?
段階を追って日本文化を学び、海外文化も学び、それを将来の進路や職業に結びつける基礎知識として役立てようということで始まった取り組みです。
最初は高校で、茶道・華道を体験したり琴を弾くなどの日本文化の体験活動を週1回のペースで実施しました。次に、海外文化を学ぶために、英語以外の第二外国語を学ぶことにしました。系列の大学に協力してもらい、韓国語、スペイン語、フランス語の基礎を学ぶプログラムを組みました。
中学ではもともと自分史づくりをしていたので、自分を見つめるところから始め、地域を知り、さらには日本を知るというプロセスで、3年間を通じて広げ、総合的な学習の時間で実施していたものを「ジュニア英和学」と名付け、カリキュラムを再編しました。
国内外の文化を学んでいく中で、どの取り組みが生徒に人気がありますか?
基本的に外国語に興味がある生徒が多く、特に韓国語に興味を示す生徒が多いです。そのため、ここ2、3年は韓国語の先生が大学の方から来てくれています。
また最近では、世界中で活躍する大人の仕事や生き方、価値観などを知れる動画教材「インスパイア・ハイ」を取り入れています。科学者・国連職員・環境保護活動家から、マサイ族の長老のインタビューも聞ける教材です。その動画で、世界のいろいろな著名人やジェンダー問題を扱っている人のインタビューを見て、自分の課題やSDGsの問題を考えることをしています。
これら全体を「英和学」と名付けております。
静岡英和女学院中学校・高等学校のスクールライフ
ここからは、静岡英和女学院中学校・高等学校の学校生活の一部をのぞいてみましょう。入学したらどんなスクールライフが待っているのか、想像しながら読んでみてください。
パイプオルガンのある、心落ち着くクラシカルな礼拝堂
静岡英和女学院中学校・高等学校の礼拝堂は、とても素敵なデザインですね。
1999年に建て直した礼拝堂で、正面には大きなステンドグラスを施し、講壇近くにはパイプオルガンが備え付けられています。本校の礼拝堂は、日本で多くの歴史的な建造物を手掛けている一粒社ヴォーリズ建築事務所が設計に関わっており、観光ツアーのスポットとして見物客が訪れることもあります。
昔ながらのキリスト教の建物の雰囲気が随所に残っているため、生徒たちも気持ちを落ち着けて礼拝を行えるのでしょう。
毎日見ていると当たり前だと思ってしまいますが、卒業生に学校の一番好きな場所や学校の自慢の施設を尋ねると「礼拝堂」や「パイプオルガン」という答えが多く、誇りに思ってくれているのだと感じます。
▲うっとりと見惚れてしまうほど美しい、礼拝堂のステンドグラス
一般客も招待する「クリスマス礼拝」では、聖歌隊とハンドベルも
▲学校クリスマスで歌う聖歌隊
礼拝では讃美歌を歌うとのことですが、音楽部やハンドベル部も静岡英和女学院中学校・高等学校の自慢だとお聞きしました。
音楽部は、朝の礼拝などでも讃美歌を披露してくれます。12月には「学校クリスマス礼拝」という行事があり、そこでも歌います。学校クリスマス礼拝は、昼間の生徒だけの部と、一般の方を招く夜の部があります。夜の部は、近隣の方や卒業生など、たくさんの方が訪れます。
学校クリスマス礼拝での聖歌隊は、音楽部を中心に一般の生徒や音楽を専攻している有志が集まり、結成します。クリスマスシーズンだけ聖歌隊に所属し、練習して発表という本校ならではの貴重な体験ができます。
音楽部は校外での活動も一生懸命がんばっており、NHK全国学校音楽コンクールほか大きな全国規模のコンクール3つに出場しました。
また、本校にはハンドベル部があり、12月のクリスマスシーズンにはほぼ毎日、どこかのイベントに招かれて演奏しています。教会のクリスマスや公民館で行われる子ども会のクリスマスイベント、商業施設のイベントなどに大忙しです。
▲クリスマスシーズンには大忙しのハンドベル部
100年以上続く、生徒や他校からも人気の伝統セーラー服
▲静岡英和女学院中学校・高等学校の伝統あるセーラー服姿の生徒たち
静岡英和女学院中学校・高等学校の制服は100年以上同じデザインだとお聞きしましたが、ずいぶん人気があるようですね。
本校の制服に憧れて入ってくる生徒は多いと思います。日本でも長い歴史をもつセーラー服で、古い写真が残っているのですが、今と全然変わっていません。変わっていないけれどもまったく古さは感じませんので、普遍的な魅力がある制服と言えます。
生徒たちは本当にこの制服が好きで、特に夏服の白いセーラーが気に入っているようです。秋の衣替えの前日、夏服最後の日になると、放課後に記念写真をたくさん撮っています。高校3年生は、最後の夏服になるので、盛大に撮影会が行われます。
生徒たちはたいへん気に入っていますし、OGの方もこの制服が平和のシンボルと考えており、変えて欲しくないようなので、今のところ変える予定はないです。ただ、ジェンダーニュートラルの考え方から、女子校の制服もスラックス化が進んでいるので、その点は検討しています。
静岡英和女学院中学校・高等学校からのメッセージ
最後に静岡英和女学院中学校・高等学校に興味をもったお子さまや保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
今、男女共学化が進んでいく中で、女子校は珍しくなっていますが、女子校ならではの良さがたくさんあります。男子の目がないので、本当にのびのびと自由に、学校生活を送れます。
ジェンダーフリーの中で、女子だから、男子だからという考えではなく、人として何をすべきかが見えてきます。もしも男子がいたら、男子に任せたり、一歩引いてしまったりするかもしれませんが、自分でやらなければいけないので、主体性が伸びていきます。
また、本校はキリスト教系をはじめ多くの大学から指定校推薦をいただいているので、学校の基本的な勉強をきちんとしていれば、進学先の選択肢が広がります。その分、習い事や生徒会など、積極的にいろいろな活動をしながら進路実現が叶います。指定校推薦は本校の強みだと思っています。
6年間または3年間、自分らしさを大事にしながら、楽しい学校生活を過ごしたい、そして進路実現を果たしたいという女子に最適の学校だと思います。
もし本校に興味をもっていただけたのであれば、ぜひ一度足を運び、学校の雰囲気を感じてみてください。
本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
▲宗教行事も多い同校。毎年6月に開催される花の日礼拝では、社会福祉施設や児童養護施設などに花を持って訪問している
静岡英和女学院中学校・高等学校の進学実績
静岡英和女学院中学校・高等学校では、生徒一人ひとりの希望に合わせてきめ細かなサポートをしています。進路先は、人文科学系、社会科学系、理工学系、情報系、芸術系、福祉系などさまざまで、毎年、国公立大学や難関私立大学、有名私立大学の合格者を数多く輩出しています。
有名大学をはじめ指定校推薦枠が多いことも伝統校である同校ならではの強みです。主な指定校推薦大学としては、青山学院大学(教育提携校)、関西学院大学(協定校)、東京女子大学(特別提携校)、麻布大学(重点校)ほか多数あります。系列校である静岡英和学院大学への推薦枠もあります。
過去3年間(2021~2023年度卒業生)の合格実績としては、筑波大学などの国公立大学に9名が合格しています。私立大学の合格実績としては、青山学院大学25名、関西学院大学12名など、多数の私立大学に合格しています。
■進学実績(静岡英和女学院中学校・高等学校公式サイト)
https://www.shizuoka-eiwa.ed.jp/education/results.html
静岡英和女学院中学校・高等学校の卒業生・保護者の口コミ
ここからは、静岡英和女学院中学校・高等学校の口コミを紹介します。実際に通学していた卒業生や保護者の声をまとめました。
先生のメッセージにもあった通り、指定校推薦枠が多く、勉強以外にも打ち込める環境であることがあげられています。また、制服への評価も高く、同校の魅力の一つであることがわかります。
▲卒業生の声にもある聖歌隊。ぜひ感動を体験してください。
静岡英和女学院中学校・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人静岡英和学院 静岡英和女学院中学校・高等学校 |
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住所 | 静岡県静岡市葵区西草深町8番1号 |
電話番号 | 054-254-7401 |
公式サイト | https://www.shizuoka-eiwa.ed.jp/ |
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