注目の学校を紹介する本企画。今回は、和歌山県新宮市にある共学の中高一貫校「近畿大学附属新宮高等学校・中学校」を紹介します。
同校では、近畿大学の附属校同士が合同で取り組む留学プログラムを用意するなど、特色あるグローバル教育が魅力です。
また、希望者が参加できる「医療ゼミ」「教育ゼミ」「水産ゼミ」「地域ゼミ」の4つのゼミで、生徒の興味関心と地域を結びつけながら学びを深められる独自の探究学習も用意しています。
今回は、そんな同校の教育理念やグローバル教育、そして探究学習への取り組みについて、入試広報部長の大石先生、入試広報部の植野先生、そして英語科主任の中谷先生にお話を伺いました。
この記事の目次
勉強だけではなく「人格という器」も重んじる近畿大学附属新宮高等学校・中学校
▲インタビューに答えてくださった校務広報部長の大石先生
まず、近畿大学附属新宮高等学校・中学校の校訓についてお聞かせください。
本校では「人に愛される人、信頼される人、尊敬される人になろう」という校訓を掲げています。
これは、近畿大学の建学の精神と深く関わっています。近畿大学の創設者である世耕弘一先生は、家庭の経済的な事情で学校に通わせてもらうことができず、昼間働きながら夜間学校で学び、大学に進学しました。自身のこのような経験が、学びたい熱意のある学生が満足して学べる環境を作りたいという志を生み、近畿大学創設の大きな動機となったのです。
だからこそ本校では、世耕弘一先生の教育に対する思いが大きく反映された近畿大学の建学の精神「実学教育と人格の陶冶」に基づき、勉強だけではなく「人格という器」をしっかり築いていくことを大切にしています。近畿大学の建学の精神に込められた世耕弘一先生の志は、附属校である本校の理念にも受け継がれているのです。
「成功体験を積み上げる」近畿大学附属新宮のグローバル教育
近畿大学附属新宮高等学校・中学校は、多彩な留学制度や研修などのプログラムを用意しており、国際的に活躍する人材を育成することに力を入れています。ここでは、英語科主任の中谷先生にグローバル教育について伺いました。
日常と地続きになった英語力を磨くカナダ語学研修
▲カナダ語学研修での集合写真
御校のグローバル教育における特徴的な取り組みについて教えてください。
2023年度から新たに始めたものとして、カナダへの10日間の語学研修のプロジェクトがあります。
対象学年を中3~高2とするこのプロジェクトは、近畿大学の7つの附属校のうち「近畿大学附属広島高等学校・中学校福山校」と「近畿大学附属広島高等学校・中学校東広島校」の2校との合同で行っています。第一回目には、本校から7名、福山校と東広島校からは15~20名程が参加しました。
▲カナダ語学研修の様子。ESLレッスンでお店でのやりとりを学ぶ
語学研修では具体的にどのようなことを体験するのでしょうか?
現地では、留学生向けの英語の授業であるESLレッスン(English as a Second Language)を受けます。これは場所の尋ね方やホテルでの会話など、普段の英語の授業ではなかなか体験できない日常と地続きになった英語表現をネイティブの先生から学ぶものです。
このESLレッスンを午前中に受けた後、午後にはバンクーバーのダウンタウンに出向き、実際にショッピングなどをして、レッスンの成果を活かす時間を設けています。
午後の実践では、生徒のみなさんは現地の方とどのようにコミュニケーションを取っていましたか?
たとえ英語がつたなくても、明るく自然と笑顔になれるようなコミュニケーションも上手に取っていましたね。このような交流には生徒自身の性格や個性も深く関わっていると思いますし、学校では見ることのできない新たな一面を見れた貴重な体験でした。
ESLレッスンと実践の時間の他に、語学研修にはどのようなプログラムがありますか?
留学を支援する企業にご協力のもと、現地の大学生と交流する機会を作っています。このプログラムでは、学生に大学を英語で案内してもらったり、英語でのプレゼンの方法や表現を教えてもらったりと、現地の大学生活を肌で感じることができます。
語学研修に向けて、どのような事前準備をされているのでしょうか?
研修前にも、本校のネイティブの先生方にご協力いただき、ESLレッスンのような日常会話に焦点を当てたレッスンを放課後に行っています。
語学研修に参加された生徒さんはどのようなご様子でしたか?
ESLレッスンで学んだ表現を実際に使える環境の中で、とても楽しそうに取り組んでいる様子が見受けられましたね。中には、緊張してうまく英語が話せない生徒もいたのですが、経験として意味のある時間を過ごすことができたのではないかと思っています。
▲研修中にバンクーバーの水族館を訪れた生徒たち
語学研修に参加された生徒からはどのような感想がありましたか?
「ポストカードプロジェクト」という取り組みについては、一番大きな反響がありましたね。
このプロジェクトは、街中のショッピングセンターで一般の知らない方に話しかけて行います。日本の景色などが写ったポストカードと、本校の住所が書かれたカナダのポストカードを用意します。生徒たちはショッピングセンターで話しかけた人に、日本のポストカードをおみやげとして渡し、もう一枚のカナダのポストカードに「メッセージを書いて送ってほしい」ということを英語で伝えるんです。
そして研修後、ちゃんとポストカードが送られてくると、自分の英語が通じていたことがわかるだけでなく、見ず知らずの人、それも違う国の人との手紙でのやり取りができたことに大変満足していましたね。
ESLレッスンなど日常生活に即した英語学習に力を入れたことで、生徒たちも成功体験を積むことができたようです。ポストカードプロジェクトをはじめ、研修でのさまざまな場面で達成感を得られたと言ってもらえましたよ。
カナダへの語学研修は始まったばかりですが、今年以降どのような計画がありますか?
今年の研修の反響も、これからアンケートを取って確認していくところです。生徒たちの感想をもとにより研修内容の精度を上げていきたいですね。
E3[e-cube]で英語に対するモチベーションを高める
近畿大学の施設である「近畿大学英語村E3[e-cube]」で開催する行事についても詳しく教えていただけますか?
E3[e-cube]では中学3年生と高校1年生を対象に、カジュアルに英語を学ぶ場を設けています。夏休みや春休みの期間中を利用し、3泊4日滞在します。ネイティブの教員が在籍し英語のコミュニケーションが身近にある環境で学んでいきます。
5人1グループにネイティブの教員が一人つき、それぞれ英語で自己紹介をします。その後、自己紹介の内容がきちんと聞き取れていたかどうかを、クイズ形式で答えて確認していきます。ESLレッスンのような授業もありますが、自己紹介のように基本的に遊びに近い形で英語に触れられます。
実際にE3[e-cube]に参加した生徒のみなさんはどのような様子でしたか?
私が授業を担当している中3のクラスでは、E3[e-cube]の希望者が定員を上回ってしまったので、全員の参加は叶わなかったのですが、参加した生徒は、カフェでの注文の仕方を学んだ後、実際にE3[e-cube]内にあるカフェで会話を実践したり、パワーポイントを使ってプレゼンを準備したりと、充実した時間を過ごせたようです。
▲近畿大学英語村E3[e-cube]でプレゼンに挑戦!
プレゼンは、E3[e-cube]に参加する生徒たちだけで行うのでしょうか?
ネイティブの教員の方々も行います。教員によるプレゼンでは、世間で話題になっていることや時事問題などに触れながら、自身の生い立ちなどを紹介しています。そして自己紹介と同様に、最後には聞き取れていたかの確認をクイズ形式で行っています。
E3[e-cube]に参加する前と後で、生徒のみなさんにはどのような変化が見られましたか?
3泊4日なので、英語が飛躍的に伸びるというわけではありません。とはいえE3[e-cube]は、英語力だけでなく英語を学ぶモチベーションを上げることも重要視しています。参加した生徒の多くが満足している様子ですので、英語村で得られたモチベーションをバネにしてほしいですね。
地域貢献を結びつけながら学びを深める4つのゼミ
▲インタビューに答えてくださった入試広報部の植野先生
近畿大学附属新宮高等学校・中学校の探究学習における特徴的な取り組みについても教えていただけますか?
本校では、希望者を対象に放課後の課外学習として4つのゼミを用意しています。将来、医師や看護師などの医療関係の職業を目指す「医療ゼミ」と教員や保育士などを目指す「教育ゼミ」、水産業をはじめ、広く生物系に関係のある職業を目指す「水産ゼミ」、そして地域活性化について考え、地域のために活躍する公務員などを目指す「地域ゼミ」の4つがあります。
本校のある新宮市は、人口減少にともなう課題を多く抱えている地域でもあります。4つのゼミではこうした背景をふまえ、生徒たちが大人になり地元に帰ってきてもしっかり活躍できる場を作ることも目指しているんです。
医療従事者の勉強会にも参加できる!「医療ゼミ」
▲医療ゼミでの救急救命の体験
まずは医療ゼミについて詳しく教えていただけますか?
医療ゼミには、医師や看護師を始め、医療従事者と呼ばれる職種を目指している生徒たちが参加しています。生徒数は20~30名ほどです。ゼミではお招きした医療従事者の方々や本校の教員に講話をしていただいて学習を深める場を設けています。
医療従事者の方々は講話でどのようなお話をされるのでしょうか?
地域医療がテーマの講話では、医師不足を始め、地域が抱えてる問題に対する医療従事者の方々の取り組みについて教えていただきました。
講話の他、医療ゼミではどのような活動ができますか?
総合病院で実施される、医療従事者の方々が受講する勉強会にも参加する機会があります。救命士や内科医、外科医、言語聴覚士など、医療従事者の方々の職種も多種多様なので、勉強会では様々なテーマに触れられます。
医療ゼミには希望する職種が明確に定まっていない生徒も多くいるので、医療との関わり方をたくさん知ることができる場となっています。なにより、高校生の立場ではなかなか経験できないことを早くから勉強させてもらえるのが、医療ゼミの一番のメリットですね。
▲医療ゼミの講義風景
生徒のみなさんは、講話や勉強会での体験をどのように活かしていますか?
大学生で勉強したいテーマが明確になったり、受験の小論文のテーマに選んだり、医療の問題点を自分なりに考えたりと、医療ゼミを通して生徒たちは将来をよりくっきり描けるようになっています。
生徒のみなさんからは具体的にどのような意見があがりましたか?
医療従事者不足を抱えている三重県の医療従事者の方々のお話を聞く機会が多いこともあって、医療ゼミの生徒の中には、地元で医療に携わりたいという声がどんどんあがるようになりましたね。このゼミを通して、地域に貢献できるのが嬉しいですね。
その他、医療ゼミで取り組んでいることはありますか?
「紀南メディカルラリー甲子園」という外部のイベントにも参加しています。様々なシチュエーションに対し、医療従事者だったらどのような対応をするかということを競い合い、日々実践しながら学ぶことを大切にしています。
教育の場の現実と向き合う「教育ゼミ」
▲教育ゼミで小さなお子さんを引率している生徒たち
続いて、教育ゼミについて詳しく教えていただけますか?
教育ゼミには、基本的に教員を志す生徒が参加しています。小・中・高の教員だけでなく、幼稚園や保育園の先生を目指す生徒も所属しています。
このゼミでは理想の教師像というテーマでグループディスカッションを行ったり、実際に本校の教員にインタビューしたり、教育にまつわる書籍を読みプレゼンしたりと、多岐に渡る活動をします。また、高校3年生の時期に来られる教育実習生のお話を聞く機会も作っています。
グループディスカッションや教員や教育実習生へのインタビューでは、どのようなテーマがあがりますか?
教育における問題・課題や、いじめ、制服の要否など、実際に教育の場で話題になっているテーマが多いですね。
医療ゼミのような課外活動はありますか?
幼稚園などに体験学習をさせてもらう機会も用意しています。それから今後の計画では、地域の学童保育所でボランティア活動ができるように準備を進めています。教育の現場でも、地域への貢献という形で携われたらと思っています。
水産学会への参加のチャンスもある!?「水産ゼミ」
▲水産ゼミの様子。養殖の現場で学べるのはとても貴重な体験だ
続いて、水産ゼミについて詳しく教えていただけますか?
水産ゼミでは、マグロやマダイの実験場や研究所が複数ある近畿大学に協力してもらいながら、水産の勉強を深めることができます。水産分野に関心のある生徒だけでなく、生き物そのものに興味のある生徒が集まるのもこのゼミの特徴です。
活動内容として、マダイとチョウザメの養殖のお手伝いや学校内での販売、マグロの孵化観察実験など、養殖の現場を身近で体験することができます。そして体験だけでなく、大学で実際に行われている講義にも高校生のうちから参加が可能です。
本校の生徒の中には、日本の水産学会にも参加し、水産のスペシャリストたちの前で自分の研究を発表した貴重な体験をした生徒もいます。こういった機会に恵まれるのも水産ゼミの魅力ですね。
地域を愛する者たちが地域を動かしていく「地域ゼミ」
▲地域ゼミで滝を訪れた生徒たち
最後に、地域ゼミについて詳しく教えていただけますか?
地域ゼミには、職業などに関係なく地元が好きで地元に貢献をしたいという生徒たちが参加しています。生徒数は40名弱と、こちらも人気のあるゼミです。
実際に地域の方や役場の方に講義をしてもらい、地域の発展のためにできることを話し合います。このゼミでは生徒たちの方からも、地域に貢献できることを積極的に考えてくれるんですね。生徒たちのおかげで、とても活発な活動ができています。
▲地域の応援に情熱を注ぐ生徒たち
地域ゼミの生徒たちのどのような姿に情熱を感じますか?
自分たちが暮らしている地域だけでなく、山間部にまで赴いて、現地にお住まいの方にお話を聞かせてもらったことがありました。地域のことをしっかり知ろうとする熱意がとても伝わってきましたね。こういう生徒たちが大学を卒業した後、地元の役場に就職して引き続き地域貢献をしてくれるのが地域ゼミの一番の魅力ですね。
卒業生がサポートしてくれる4つのゼミのほか、受験に向けた「難関ゼミ」も
4つのゼミは、それぞれ違うアプローチで地域に貢献しているのですね。
そもそもこの4つのゼミは、本校を卒業して地元で活躍している卒業生たちに現場のお話を聞かせてもらうというところからスタートしているんです。
医療や水産に関わっていたり、地元の市役所に勤めていたり、何らかの形で地域に携わっている卒業生がゼミに協力してくれているので、地域というテーマが4つのゼミの共通点にもなっていますね。また、都会にはないコミュニティの濃さもあり、地域の結びつきも自然と強くなるのだと思います。
その他、ゼミに関することで特徴的な取り組みはありますか?
4つのゼミとは別に、15名ほどの生徒が参加している難関ゼミがあります。これは、中学校3年生以上を対象として、英語、数学、国語の3教科について難易度の高い学習を行うゼミです。難関国公立大学レベルの入試問題や本校教員の自作の問題を含む難問に取り組みながら、自分たちが目標とする大学合格に向け、高い意識を持つ生徒が多く参加していますよ。
難関ゼミは4つのゼミと同様に放課後に実施しているのですか?
そうですね。1週間に1〜2問の課題を出して、生徒たちには次回までに解いてきてもらいます。わからない場合は質問もできますし、答えを導き出すまでを一つの流れとして念入りに教えています。生徒たちも、何時間もかけて問題を解いてきてくれています。
近畿大学附属新宮高等学校・中学校からのメッセージ
最後に、近畿大学附属新宮高等学校・中学校に興味をお持ちのお子さま・親御さまに向け、メッセージをお願いします。
我々は、近畿大学の附属校として、大学という存在を身近に感じてもらえる学校だと思います。近畿大学に進学を考えている場合、附属校ならではのメリットも大きいので、入学後に近畿大学への進学を希望する生徒も少なくありません。
また3校の附属校合同の留学プログラムなど、特色あるグローバル教育も用意しています。こういった部分は、公立学校ではなかなか味わえない経験ではないかと思います。
本校に入学した生徒たちを傍で見ていると、気持ちよく挨拶をしてくれたり、感受性豊かな人間性が育まれていたりと、その成長ぶりに誇らしい気持ちになります。しかし我々教員たちがあれこれ教育し、型に当てはめようとしているわけではありません。むしろ生徒たちは、先輩たちの姿を見て自然と学んでいるのです。
こうした彼らの姿そのものが、本校の何よりの自慢ですね。この記事を読んでいただいている皆さんも、ぜひ私たちの一員になってもらえたらなと思います。
本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
近畿大学附属新宮高等学校・中学校の進学実績
近畿大学附属新宮高等学校・中学校ではほとんどすべての生徒が大学へ進学しており、国公立大学や難関私立大学の合格者も多数輩出しています。また、近畿大学への合格者は81名と、群を抜いて多くの生徒が進学しています。
近畿大学附属新宮高等学校・中学校の2024年の大学合格実績としては、医学部医学科に3名、国公立大学に19名、早稲田大学に1名、ほかにも同志社、東京理科、立教、明治などの難関私立大学に22名が合格しています。
■進路実績(近畿大学附属新宮高等学校・中学校の公式サイト)
https://www.shingu.kindai.ac.jp/admissions-course/
近畿大学附属新宮高等学校・中学校の卒業生、保護者の口コミ
近畿大学附属新宮高等学校・中学校の卒業生から寄せられた口コミを紹介します。
口コミからは、大学進学に向けた充実したカリキュラムや、教員による熱心な指導を近畿大学附属新宮高等学校・中学校の魅力に挙げる声が聞かれました。
近畿大学附属新宮高等学校・中学校へのお問い合わせ
運営 | 近畿大学附属新宮高等学校・中学校 |
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住所 | 和歌山県新宮市新宮4966 |
電話番号 | (0735)22-2005 |
問い合わせ先 | https://smoothcontact.jp/front/output/ 7f000001605ff4d65f65804c5b13bdeb |
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