仙台白百合学園中学・高等学校が取り組む「宗教教育」と「国際教育」の特色|中高一貫校

この記事では、特色ある教育に取り組む注目の学校として、宮城県仙台市にある中高一貫の私立女子校「仙台白百合学園中学・高等学校」をご紹介します。

フランスで誕生したシャルトル聖パウロ修道女会を母体とする同校は宗教教育を重視しており、聖書の言葉に耳を傾ける修養会やボランティア活動のほか、高校ではカリキュラムの中に「宗教音楽」が盛り込まれています。

また、海外研修やポーランドの学生との文化交流など、国際教育においても特色ある取り組みを行っています。

今回は、そんな仙台白百合学園中学・高等学校の教育内容について教頭の渡邊先生、校務部長で宗教科と芸術科を担当する若松先生、国際教育委員で社会科主任の岩渕先生にお話を伺いました。

仙台白百合学園中学・高等学校が目指す「グローバルサーバントリーダー」の育成

仙台白百合学園中学・高等学校の渡邊教頭、若松先生、岩渕先生が並んで立つようす

▲仙台白百合学園中学・高等学校の渡邊教頭(中央)、若松先生(左)、岩渕先生(右)

編集部

はじめに、仙台白百合学園中学・高等学校の教育理念について教えてください。

渡邊先生

本校は、1696年にフランスのシャルトル郊外のルヴェヴィルという村で誕生したシャルトル聖パウロ修道女会を母体としています。

当時のフランスは戦火で貧困にあえぐ人々がたくさんおり、村にやって来た神父様と村の若い女性たちの手で、貧しい人や虐げられた人たちのための奉仕と教育活動が始まりました。それから300年以上が経った今も、「人のために」という思いのもと世界40カ国以上で福祉や医療、教育活動を行っています。

この流れを組む本校の教育において目指す人間像は、「グローバルサーバントリーダー」です。聖書に「すべての人に、すべてのものとなりました。」という言葉があるように、生徒には社会から忘れられがちな人々にこそ共感し、奉仕の心を持って共に歩むことができる人になってほしいと願っています。

編集部

そのような教育を行う仙台白百合学園中学・高等学校で過ごすことで、どのような人間性が育まれているとお感じですか?

渡邊先生

本校の生徒には、優しく思いやりのある人がとても多いです。自分の手や足や声を使って誰かのために行動しようという姿勢が醸成されていると感じますね。お互いに支え合える関係性が築けるので、生徒にとって学校は安心できる空間になっていると思います。

先日、卒業したばかりの生徒が学校を訪ねてきてくれたのですが、「卒業して、自分がどれだけ恵まれた環境にいたかが改めてわかった」と言ってくれました。

教育理念に共感いただき、親子三代にわたって本校に入学してくださる方や、3姉妹が小中高それぞれに在籍してくれているようなご家庭もあります。

仙台白百合学園中学・高等学校の「宗教教育」へのこだわり

仙台白百合学園中学・高等学校の生徒がマ・スール(シスター)と語らうようす

仙台白百合学園中学・高等学校は、人が人として成長する土台を築くために大切な学びとして「宗教音楽」をカリキュラムに盛り込むなど、特色ある宗教教育を行っています。

ここからは、宗教科・芸術科を担当する若松先生に同校の宗教教育について詳しく伺っていきます。

朝礼で祈りと聖歌を歌い、高校では「宗教音楽」の授業も

仙台白百合学園中学・高等学校の生徒が祈るようす

編集部

若松先生は宗教科と芸術科を担当されていますが、仙台白百合学園中学・高等学校では宗教と芸術を密接なものとして考えているのでしょうか。

若松先生

宗教と芸術は、どちらも人間形成に欠かせない「心の部分の教育」においてなくてはならないものです。そのため、本校では聖書の教えを土台に、生徒が正しいことや良いことを受け入れ、美しいものに素直に感動できる心を育むような教育を行っています。

特に「宗教音楽」を大切にしており、毎朝祈ることと聖歌を歌うことから1日が始まります。昔から、祈りや聖歌はひとつの共同体の中で心を一致させる重要な役割を担っており、学校教育の現場においても「生徒も教員もみんなひとつになって良いものを作っていこう」という思いを持っています。

編集部

聖歌はどのように歌っておられるのでしょうか?

若松先生

放送朝礼を毎朝行っており、放送部の生徒がその週の聖句を伝えたあとに、こちらも週ごとに決まっている聖歌を、放送室から各クラスの宗教委員の歌声とオルガン伴奏者による生演奏を流します。生徒と教員は教室でスピーカーから流れる演奏を聴きながら歌います。

仙台白百合学園中学・高等学校の放送部が朝礼の放送を行うようす

若松先生

また、高校では週に1時間、宗教音楽の授業があります。音楽室でただ授業を受けるだけでなく、聖堂に行って美しい空間の中で本物のパイプオルガンの美しい音色を聞き、祈りの心を養います。

また、バッハやモーツァルトなど、カトリックやプロテスタントの教えをもとに作られた音楽を鑑賞し、分析をし、理解を深めるという授業も行っています。

仙台白百合学園中学・高等学校の聖堂

▲荘厳な聖堂には大きなパイプオルガンも置かれている

編集部

聖歌や宗教音楽の授業は、生徒の皆さんにどのような影響を与えているとお感じですか?

若松先生

中学の3年間は音楽の授業で聖歌を歌う機会があるのですが、聖歌の内容よりも「上手に綺麗に歌おう」という意識が強い生徒が多いです。しかし、高校で宗教音楽の授業を受けるようになると、「聖書のこの箇所が聖歌になっているんだ」などと深いところまで理解できるようになります。

その結果、キリスト教をより身近な存在として捉え、聖歌を通じて元気づけられたり勇気づけられたりする生徒が増えてきます。

編集部

授業や学校生活を通じて、次第に理解が深まっていくのですね。

若松先生

その通りです。宗教教育というのは時間がかかるもので、「1足す1は2」というシンプルなものではなく、成長とともに分かってくるものではないかと思っています。

卒業生からは、「たまに聖歌を歌いたくなる」という声をよく聞きます。本校で宗教教育を受けたからこそ、大学生や社会人になってからも聖書や聖歌を思い出して、思い悩んだときなどに勇気づけられることがあるようです。

炊き出しから清掃活動まで、ボランティア活動に積極的

仙台白百合学園中学・高等学校の生徒が炊き出しのご飯を茶碗に盛るようす

▲炊き出しなど、ボランティア活動への参加も大切にしている

編集部

そのほかに、宗教教育に関する取り組みはあるでしょうか。

若松先生

本校では、神様や聖書について考え、自らの言動を振り返る「修養会」を年に1度開催しています。神父様やキリスト教に詳しい方に来ていただき、さまざまな観点でキリスト教について教えていただきながら、1日かけて自分を見つめ直す大切な行事です。

また、「隣人を大切にする」という考えのもと、ボランティア活動にも力を入れています。ボランティアを行う中高合同の部活「宗教部 (小百合会)」があるほか、希望する生徒が週末などにボランティア活動に参加することもあります。

編集部

どのようなボランティア活動をしているのでしょうか?

若松先生

路上生活者のための炊き出し支援やこども食堂のボランティア、ベトナム国籍の方を対象とした日本語教室ボランティア、自然災害などに見舞われた国への募金活動、海岸の清掃活動など、多岐にわたります。

仙台白百合学園中学・高等学校の生徒が海岸のゴミを拾うようす

▲海岸での清掃活動のようす

仙台白百合学園中学・高等学校の「国際教育」の特色とは

仙台白百合学園中学・高等学校の生徒が登校するようす

ここからは、仙台白百合学園中学・高等学校のグローバル教育について、国際教育委員の岩渕先生に詳しくお話を聞いていきます。

ポーランドの学生との国際交流では生徒の家にホームステイも

仙台白百合学園中学・高等学校の英語の授業風景

編集部

仙台白百合学園中学・高等学校のグローバル教育の特色について教えてください。

岩渕先生

海外研修や留学の支援はもちろんですが、本校の国際教育は何よりも日々の学びの中にあると言えます。

朝礼や終礼では世界の人たちに思いをはせてお祈りをし、困難な環境にある国の方々を募金活動で支援するなど、毎日の行いの積み重ねが国際教育となり、グローバルサーバントリーダーへと成長していきます。

編集部

宗教教育として行っていることも含めて国際教育と位置付けているのですね。グローバルサーバントリーダーを育成するための具体的な教育内容についても教えていただけますか?

岩渕先生

中学1年生から高校2年生まで、年に1回「グローバルデイ」として国際理解のための講演会を実施しており、講師を招いてさまざまなテーマでお話していただいています。

また、本校ならではの国際交流として、ポーランドの学生との交流があります。2011年の東日本大震災後に、現地の学校から励ましの手紙をいただいたことをきっかけに始まったもので、現地の日本語学校などに通う中学生や高校生が日本を訪れ、本校生徒の家庭にホームステイしながら交流を深めます。

編集部

ホームステイを受け入れたご家庭からは、どのような感想が寄せられていますか?

岩渕先生

異文化理解が深まり「今度は自分がポーランドに行ってみたい」と言う子も多く、国際交流が新たなアクションや挑戦のきっかけになっていると感じます。

ホストファミリーになるのは一部の家庭ですが、これとは別に「ポーランドフレンドシップ」というオンライン交流も開催しており、参加は希望制でzoomを活用しています。こちらも相互理解を深める大切な行事になっています。

この行事は秋から冬にかけて4、5回に渡って開催していて、お互いの国の魅力や文化などについて話し合うんです。あちらは日本語学校の学生さんなので日本語が流暢な人も多く、本校の生徒とは英語や日本語で会話をしていますよ。

また、来年度はポーランド友好訪問として現地にいく予定の年のため(隔年)、実施に向けて打ち合わせを進めています。

2024年度からは中学1年生も海外研修を経験

編集部

海外研修についてもご紹介いただけますか?

岩渕先生

高校ではコロナ禍前に1、2年生の希望者を対象とした、フィリピンへのボランティア・スタディー・ツアーを実施してきました(隔年)。10日間程度現地を訪れ、貧しさや豊かさとは何かを考え、貧富の差などに問題意識を持つ機会にしています。現在、今年度の実施に向けた打ち合わせを進めています。

中学ではこれまで2年生の希望者を対象にニュージーランド研修を実施していましたが、2024年度からは海外研修の対象を1年生〜3年生に拡大しました。新たな研修先は毎年変わる予定ですが、24年度は韓国のパジュ英語村(※)に約1週間滞在することになっています。
(※)イギリスの村をモデルにして造られた公立の英語テーマパーク

編集部

1年生から海外研修を実施する学校はあまり多くないと思いますが、どのような狙いがあるのでしょうか?

岩渕先生

1年生の段階から海外に目を向け、精神的な成長や英語学習の楽しさを体感してもらい、グローバルサーバントリーダーへと育ってもらうためです。

中学3年間における海外研修の機会を増やし、行き先やプログラムの選択ができるというのが魅力です。また、本校の併設小学校には英語に力を入れているクラスがあり、中学に入学する頃には海外研修などの実践的な場に連れていっても問題ないレベルの英語力を身につけています。中学入学以前に語学学習に力を入れてきた生徒には、ぜひ海外研修に参加してほしいです。

留学しても3年で高校を卒業できるようしっかりサポート

編集部

仙台白百合学園中学・高等学校の留学制度についてもご紹介いただけますか?

岩渕先生

本校では、海外の正規の高校への3ヶ月~6ヶ月の中期留学、1年間の長期留学が可能です。留学しても休学せずに3年で高校を卒業できるように、必要な資格情報などを随時提供しながらしっかりとサポートしています。

中学時代に海外研修などを通じて準備をし、高校で留学する生徒もいますが、高校から入学した生徒であっても不安を感じずに留学できるように支援しています。

編集部

海外研修や留学などのお話を伺い、中学でも高校でも国際感覚を身につけられる機会が充実していると感じました。

岩渕先生

本校は「体験を通して心が動く、学びに心が開かれていく」ということを大切にしています。

「心が動けば必然的に学びに向かっていく」と考え、自走できる子どもを育てるためにもボランティア活動、講演会、海外留学、海外研修など多くの体験を提供できるように力を尽くしています。

編集部

そのような教育は、国際舞台で活躍する人に求められる「自ら課題を見つけ、解決する力」にもつながりそうですね。

女子サッカーで活躍する生徒が在籍。U-17アジア杯に出場した選手も

仙台白百合学園中学・高等学校のサッカー場

▲2024年6月、照明設備を完備した全面人工芝のグラウンドが完成した

編集部

仙台白百合学園中学・高等学校は、女子サッカーで活躍する生徒さんが何人もいることでも知られていますね。

渡邊先生

本校には現在のところサッカー部はありませんが(※)、女子プロサッカーチーム「マイナビ仙台レディース」と「地域のスポーツ・文化振興に関する包括的連携協定」を締結しており、同チームのユースとジュニアユースには本校の生徒が何名も所属しています。
※2025年度サッカー部開設予定

スポーツコースがあるわけではないので彼女たちはほかの生徒と同じように最後までしっかり授業を受けてから練習に参加します。ハードなスケジュールですが元気に頑張っており、U-17アジアカップに出場した生徒もいますよ。

編集部

サッカーで活躍する勇姿をほかの生徒さんが見る機会もあるのでしょうか?

渡邊先生

マイナビ仙台レディースさんからご招待いただいて練習試合を観に行ったり、U-17アジアカップ代表に選ばれた生徒が出場する試合のパブリックビューイングを校内で開催したりしています。

ユニフォーム姿でピッチに立つ彼女たちは、制服姿で学校生活を送っている時とは全く違い、教員もクラスメイトも新鮮な驚きを覚えました。

編集部

目標に向かって努力し活躍する姿は、ほかの生徒さんのやる気も刺激しそうですね。

仙台白百合学園中学・高等学校からのメッセージ

仙台白百合学園中学・高等学校の校舎

編集部

仙台白百合学園中学・高等学校の学校の雰囲気についてもご紹介いただけますか?

渡邊先生

中高一貫校ということもあり、時間をかけてじっくりと自分の夢や自分らしい生き方を見つけることができる環境があると思います。

また、本校は仙台市郊外の閑静な住宅街の真ん中にあり、緑豊かな落ち着いた環境で学校生活を送ることができます。

駅からは距離があるので、校長はよく「来るまでは大変だけれども、一度来てしまったら最強の環境を提供できます」と言っておりますが、我が校のことながらその通りだと感じますね。天気のいい日は窓の外に遠く蔵王連山や泉ヶ岳を望むことができますし、1日の終わりには息を呑むくらい美しい夕焼けがキャンパス中に広がります。

編集部

最後に、記事をご覧の子どもさんや保護者の方にメッセージをお願いします。

渡邊先生

本校の教育の柱は、宗教教育、女子教育、国際教育です。生徒たちには落ち着いた環境で自分自身の心と向き合い、学校生活のあらゆる場面で高め合いながら、愛の心を持って人類社会に奉仕できる女性へと育ってほしいと願っています。

また、高校では全日制課程のほかに併設の通信制課程もあり、生徒さんや保護者の皆様のさまざまな教育ニーズにお応えできると思います。

オープンスクールや説明会のほか、個別のご相談や見学にも随時対応しておりますので、少しでもご興味をお持ちいただきましたらお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

編集部

本日はありがとうございました!

仙台白百合学園中学・高等学校の進学実績

仙台白百合学園中学・高等学校では2023年度、東北大学やお茶の水女子大学といった難関国公立大学のほか、上智大学に9名、青山学院大学に6名などGMARCH以上の私立大学へも多くの合格者を出しました。

■合格実績(仙台白百合学園中学・高等学校の公式サイト)

https://jh.sendaishirayuri.net/course/pastresults

仙台白百合学園中学・高等学校の保護者や在校生の口コミ 

仙台白百合学園中学・高等学校の宗教の授業風景

最後に、仙台白百合学園中学・高等学校の保護者や在校生の声を紹介します。

(保護者)英語教育に力を入れており、英語暗唱大会など発表の機会もたくさんあります。また、キリストの教えが学校生活の中でも生かされていると感じます。

(保護者)面倒見が良い学校で、入学時と卒業時を比較すると学力もしっかり向上します。

(在校生)先生方は生徒の話をよく聞いてくれ、質問にもしっかり答えてくれます。また、叱るべき時は叱り、頑張った時にはしっかりと褒めてくれます。

(在校生)住宅街の中にあるので、静かな環境で授業に集中することができます。価値観が合うクラスメイトが多く、入学して良かったと感じます。

口コミでは、宗教教育をはじめとする同校の教育内容のほか、教員と生徒の関係性や学校環境を評価する声が多くあがっていました。

仙台白百合学園中学・高等学校へのお問い合わせ

運営 学校法人白百合学園
住所 宮城県仙台市泉区紫山1-2-1
電話番号 022-777-5777
公式ページ https://jh.sendaishirayuri.net/

※詳しくは公式ページでご確認ください。