ぽてん読者の皆様に、今注目の学校を紹介するこの企画。今回は長崎県佐世保市にある私立中高一貫女子校「聖和女子学院中学校高等学校」を紹介します。
聖和女子学院中学校高等学校はカトリック長崎大司教区をスポンサーシップ(教会法上の責任)とするカトリック女子校です。キリスト教の「隣人愛」に基づく心の教育を軸に、実践的な英語力が身につき海外留学機会も多いグローバル教育、ツールの利活用にとどまらない発展的なICT教育など特色ある教育を展開しています。
今回は広報部主任の山本先生、DX部主任の依藤先生に、キリスト教精神に基づく同校の教育理念や心の教育、またグローバル教育やICT教育の特色などについて詳しくお話を伺いました。
この記事の目次
キリスト教の隣人愛に基づく、聖和女子学院中学校高等学校の校訓
▲聖和女子学院中学校高等学校の聖堂
まずは聖和女子学院中学校高等学校の成り立ちや教育理念を教えていただけますでしょうか。
本校は1953年、オーストラリアのシドニーに本部をもつ「善きサマリア人修道会」のシスターによって創設されたカトリック女子校です。2010年に本学院の精神的支柱は「善きサマリア人修道会」から「カトリック長崎大司教区」に引き継がれましたが、戦後の荒廃した長崎県のために尽力してくださったシスターの「隣人愛」は、今もなお本校の根幹をなしています。
この「隣人愛」の教育理念をもとに掲げているのが「苦しむ人と共に苦しみ、喜ぶ人と共に喜べるよう、キリストの愛の心をもって人々に接しよう」という本校の校訓です。人の痛みに寄り添い慈しむ豊かな心を持つ女性を育んでいく、というのが本校の教育の軸となっています。
また、普遍的な「隣人愛」の理念を大切にしながら、同時にその時代にふさわしい女子教育を実践しているのも本校の特徴です。本校の教育を通じてグローバル化やテクノロジーの進化にも対応できる能力を培い、国際社会に貢献できる人材を育んでいけたらと考えています。
日々の宗教行事や宗教の授業が、生徒たちの“隣人愛”を育む
▲聖和女子学院中学校高等学校の講堂
聖和女子学院中学校高等学校の「隣人愛」を根幹とする心の教育は、実際の教育活動にどのようにおとしこまれていますか?
聖和女子学院中学校高等学校では毎朝のホームルームで「主のお祈り」や聖歌合唱、お昼清掃の後に「アベマリアの祈り」を行うなど、日々キリスト教精神に触れる機会を設けています。また学年別の黙想会や聖和女子学院全体で行う学院ミサ、クリスマス会など年間を通じて宗教行事を行っています。
そういった日々の活動に加え、中高の6年間を通じて「宗教」という科目を週に1回実施しているのが特徴です。「宗教」はキリスト教に基づく隣人愛を中心とした人間形成を目的とする科目で、神父様から直接授業を行っていただいているため、生徒たちにとってより深くカトリックの精神を理解する機会となっています。
▲聖歌を合唱する聖和女子学院中学校高等学校の生徒の様子
長崎県というお土地柄もあって、元々キリスト教に慣れ親しんでいる生徒さんも多いのでしょうか。
そうですね。カトリック信者の生徒もいますし、この学校でのミサを通じてカトリック信者になった教員もいます。もちろんそうではない生徒の方が多いですが、カトリック教徒の生徒や教員とのふれあい、日々の宗教行事や宗教の授業を通じて、自分とは異なる宗教的背景を持つ人を理解し、自然に受け入れ合う土壌が育まれていると思います。
そういった他者を尊重する“隣人愛”の精神が、学校生活の中で実践されていると感じる場面はありますか?
私が聖和女子学院中学校高等学校に来て印象的だったのが、職員室に向かって廊下を歩いていたときに生徒が先回りしてドアを開けて待っていてくれたことです。教員が荷物を持っている、いないに関わらず生徒がドアを開けてくれる場面が多く、中学生や高校生がこんな気遣いを自然にできるんだということにとても驚きました。
それ以外にも、教員が雑巾がけをしていたら生徒が「私がやります」といって代わってくれるというようなことが普段から自然と行われています。そういった行動がさりげなくできるというのは、「隣人愛」の考えが生徒に根付いているからこそだなと感じますね。
言語や異文化を学ぶ機会が多い!ネイティブ教員とのふれあいが生きた英語力を培う
▲ネイティブ教員とのコミュニケーションから英語や異文化を学ぶ環境がある
続いてグローバル教育について伺います。まずは聖和女子学院中学校高等学校の英語教育の特徴を教えていただけますか?
中学校では公立校と比べて約1.5倍の英語授業数を確保し、少人数クラスかつティーム・ティーチング制で生徒の能力に応じたきめ細かな指導を行っているのが特徴です。ネイティブ教員からの指導や留学生との交流機会を通じて日頃から英会話能力を高めつつ、さらに中学2年次に行う「冬季英語集中講座」で英語力を高めています。「冬季英語集中講座」は3日間英語漬けの時間を過ごし、英語を使う楽しさや英語学習の意欲を高めることを目的としたプログラムです。
高校からは英語学習に特化したコースとして「英語科」を設けています。英語科ではオーストラリア、アメリカ出身のネイティブ教員が日本人教員とペアで担任を持っているのが特徴です。日本人教員がサポートしつつホームルームなどをオールイングリッシュで実施するため、生きた英語力を身につけられる環境があります。
御校では英検指導も重点的に実施されていると伺ったのですが、こちらについてはいかがでしょうか。
聖和女子学院中学校高等学校では毎年英検に多数の生徒が参加しており、2次試験の合格率はほぼ100%です。1級合格者も輩出しており、在学中にかなりハイレベルなところまで到達できるのが強みです。
英検指導で特に力を入れているのが面接試験の対策です。お昼休みや放課後の時間も活用して、徹底した指導を行っています。
オーストラリアへの修学旅行や短期・長期留学の機会が生徒の成長につながる
▲中学校・高校ともに留学のチャンスが多い聖和女子学院中学校高等学校
聖和女子学院中学校高等学校の英語教育で培った英語力を、生徒さんが実際に海外で発揮するような機会もあるのでしょうか?
全員が参加する中学3年生の修学旅行では、3年間の英語教育の集大成として語学研修もかねて本校の姉妹校があるオーストラリアでのホームステイを行っています。ホームステイ先には生徒が1人で滞在するためもちろん不安もありますが、生徒たちは自分の英語がどこまで通用するのかを確認する機会としてモチベーション高く参加してくれていますよ。また英語力を試すだけでなく、海外の文化や歴史を理解し、グローバルな感覚を身につけるための良い機会となっています。
修学旅行は全員参加のプログラムですが、希望制の長期・短期留学制度も設けています。短期の留学制度として、中学生も高校生も参加可能な夏季休暇期間を利用した3~4週間の短期海外研修を実施しています。希望制ではありますが、毎年20人程度の生徒が参加している人気のプログラムです。また、海外に行かなくても短期や長期の留学生を受け入れており、校内に言語や文化を学ぶ環境が整えられています。
長期留学制度の期間は10か月となっています。長期留学は英語科に限らず普通科国公立コース・普通科総合コースの生徒も参加可能で、英語圏だけでなくノルウェーやフランス、ドイツなど、生徒の希望に応じた国に留学できるのがメリットです。
10か月という長い期間現地の学校に通うため、帰国後は1つ下の学年に下がることになります。しかしこの長期留学は同じ学年から10人程度参加しており、留学仲間皆で1つ学年が下がるため、そこまで抵抗感なく参加できるのも魅力です。
修学旅行や留学制度を経験した生徒さんについて、何か印象的なエピソードがあれば教えてください。
留学に行く前は人前に出るのが苦手だった生徒が、帰国後には生徒会活動を行ったり全校生徒の前で行う弁論大会に参加したりと、見違えるほど積極的に変わっていたのはとても印象的でした。やはり海外では自己主張しないと生活できないため、その部分がすごく鍛えられる環境なのだと思います。
このエピソードからも分かる通り、海外生活の経験は語学力だけでなく物事の向き合い方や学習姿勢など広い範囲で生徒に好影響を与えます。特に英語科は留学をする生徒が多いため、留学を経て発信力や自己表現を身につけている生徒が多い印象がありますね。
ICTを協働やコミュニケーションに活かす、発展的なICT教育
続いてDX部主任である依藤先生に、ICT教育の特徴について伺います。御校のICT教育及びDXはどういった部分に重点を置いて進められているのでしょうか。
そもそも本校がICT教育の強化に至ったきっかけは、GIGAスクール構想に伴い、生徒1人につき1台のパソコン端末を整備したことです。はじめはパソコンをどう使うかなどICTの利活用スキルの向上をメインにICT教育を行っていたのですが、これからの時代、ただ道具をうまく扱えるだけでは不足しているのではないかという考えに至りました。
そこで、協働力やコミュニケーション力、計算論理的思考力などのいわゆる「21世紀型スキル」と呼ばれるスキルにフォーカスした教育をICTを活用して展開していくという新たな方針を打ち出したのが本校のICT教育です。まだまだ未完成ではありますが、今後の社会を見据えたICT教育・21世紀型学習の実現を目指す本校の教育を評価いただき、マイクロソフト社の「マイクロソフトショーケーススクール2023-2024」にも認定いただきました。
21世紀型学習とICT教育を掛け合わせていくというのは、具体的にどういった教育なのでしょうか。
本校のICT教育が最も活きるのが、総合的な探究の時間です。チームで行う調べ学習や発表、成果物の作成といった場面でパソコンを活用することで、作業効率の向上や表現の幅の広がりが顕著に表れています。本校ではマイクロソフト社のTeams(※)を導入しているのですが、Teamsの共同編集の機能を活用して非常に効率化が図られていますし、効率化が図られた分中身のブラッシュアップに割ける時間も増えて成果物の質も上がっているなと感じます。
※Teams… Microsoft365が提供する、チャットやファイル共有、ビデオ会議など、チーム作業に有用な機能を利用できるサービス。
また、ただICTを活用することだけに注力するのではなく、アナログとデジタルツールの双方を活用できる力を育んでいるのも本校のICT教育の特徴です。その象徴となる存在が、2024年4月に改修した本校の図書館です。生徒が自由に学習できる空間であるラーニングコモンズを併設し、パソコンでの調べものと、本を使ったアナログな調べものをシームレスに行えるような造りとなっています。
新しい図書館を拝見しましたが、壁のない開放的な空間がとても魅力的だなと感じました。生徒の皆さんは実際どのように活用されていますか?
おっしゃる通り、図書館が開放的な空間となっているからこそ生徒にとっても居心地が良いようで、自習やグループ学習に積極的に活用してくれています。もちろん授業を行う場としても活用されているので、新しい教育を支えるプラットフォームとしての役割を果たしてくれる場所となっていますね。
▲ラーニングコモンズを併設し、生徒の主体的な学習を促進する図書館(スクロールで写真がご覧いただけます→)
隣人愛を大切にする聖和女子学院中学校高等学校だからこそ、情報モラル教育も重点的に行う
その他にも、聖和女子学院中学校高等学校のICT教育の特徴があれば教えてください。
ICTツールを有効に使うためには、スキルだけでなくリテラシーも大切です。相手の気持ちに寄り添う「隣人愛」を教育理念とする本校だからこそ、誰かを傷つけず自分も周りの人も気持ち良く使えるような「情報モラル教育」に重点を置いています。
情報モラル教育の焦点は、単にツールとして活用できるだけでなく、相手を思いやって正しく利活用できる人材を育んでいくことです。例えば「情報の信憑性」「ネット上でのコミュニケーションの取り方」「文章と口頭での伝わり方の違い」「メールマナー」など、SNSも含めて気軽にインターネット上でやり取りできる現代ならではのモラル教育を行っています。
ただし何でも過敏に規制をかけることはしないというのが本校の基本姿勢です。実際に使いながら、たまに失敗をしたとしてもそこから学んでいこうというスタイルで情報モラルを身につけてもらえたらと思っています。
多様性を受け入れ、尊重し合う聖和女子学院中学校高等学校の校風
聖和女子学院中学校高等学校にはどのような雰囲気の生徒が多いと思われますか?
女子校かつカトリック校ということでどういう雰囲気なのか不安に感じる方も多いと思いますが、本当に素直で明るく、挨拶もしっかりとできる生徒が多い学校です。そして先ほども言ったように、誰かのために自然に行動できる生徒が多いのが魅力です。教員からみても、生徒間のトラブルも本当に少ないですね。
誰に対しても分け隔てなく話をし、他人のことも自分事として受け止める様子は、まさに「隣人愛」だなと感じます。カトリック教徒の生徒や海外にルーツを持つ生徒、留学生など多様なバックグラウンドを持つ生徒がいる中で、生徒は皆多様性を受け入れ、お互いに尊重し合って学校生活を送っています。そういう意味で、とても居心地の良さのある学校なのではないでしょうか。
「自分らしく着こなせる」聖和女子学院中学校高等学校の新制服
多様性というお話に関連して、制服も2024年4月にリニューアルされてかなりバリエーション豊かになったんですよね。
はい。ジェンダーの問題からスラックスを取り入れる学校も増えていますが、本校ではジェンダー問題に限定せず、「生徒それぞれが過ごしやすい制服」をテーマにリニューアルを行いました。
もともと本校の冬服はジャンパースカートだったのですが、実はこれには留学を経て帰ってきた生徒の体型変化に対応できるように、という意図があったんです。実際に向こうの食習慣に慣れて、かなり体重が変わる生徒も多いんです。
でもリニューアルにあたって「生徒それぞれが過ごしやすい制服」とは何かと考えたときに、さまざまな形の制服を取り入れることが大切なのではないかという結論に至りました。そこでスラックスやキュロット、スカートを導入して、生徒一人ひとりが好きに着こなせるような制服としたんです。
中学校と高校とでは制服は異なるのでしょうか?
リニューアル前は中学校と高校でまったく違う制服を採用していたのですが、中高一貫の6年間本校にお子様を預けていただく保護者の方の経済的な負担を少しでも軽減したいと思い、リニューアル後は中学校と高校で全く同じ制服としました。ただし区別をつけるために、ブラウスの色は中学校でピンク、高校生でブルーと変えています。
なるほど。生徒の皆さんの自分らしいファッションや、保護者の方の経済的負担にまで配慮されたリニューアルとなっているんですね。バリエーション豊富なので、自分のこだわりやその日の気分に合わせて制服の着こなしを楽しめそうです!
聖和女子学院中学校高等学校からのメッセージ
▲インタビューにご対応いただいた依藤先生(左)、山本先生(右)
最後に、聖和女子学院中学校高等学校に興味を持った読者の方に向けてメッセージをお願いします。
本校は小規模校だからこそ教員と生徒の距離感が近く、学習面でのフォローも手厚く行うことができます。また学校に通うことが難しく感じられるお子様にも、教員たちはとても親身に対応しています。ゆったりとした環境の中でお子様にのびのびと育っていってほしいと感じられる方には、とても良い環境があるのではないでしょうか。
そして6年間を楽しく過ごしていただく上で、心の教育はとても大切です。本校は人の痛みに寄り添い、誰かのために動く、そんな心を持った生徒を育むために教員一丸となって取り組んでいます。そういう子に育ってほしいと思われる場合は、ぜひ本校を選んでいただきたいと思います。
山本先生の言った通り、多様性を受け入れ、思いやりのある生徒を育てる心の教育が本校の魅力です。同時に、予測不可能な社会の中で、最先端の情報をキャッチしながら時代に合った教育を行える点も本校の強みだと考えています。グローバルな視点やテクノロジーの変革を踏まえた上で、社会に出た後も役に立つようなスキルを身につけていける環境があるため、ぜひ聖和女子学院中学校高等学校を選んでいただければと思います。
山本先生、依藤先生、本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!
聖和女子学院中学校高等学校の進学実績
聖和女子学院中学校高等学校の過去3年の合格状況を見ると、国公立大学では筑波大学、東京外国語大学といった難関大学への合格者を輩出しています。また、理工学部や工学部といった理系学部への進学者がいるのも特徴です。上智大学、早稲田大学といった最難関私立大学への合格者に加え、海外大学の合格者も輩出しています。
■聖和女子学院中学校高等学校の進学実績(公式サイト)
https://www.seiwajoshi.ed.jp/high/careers/proven
聖和女子学院中学校高等学校の生徒の口コミ
ここでは、聖和女子学院中学校高等学校の学校案内パンフレットに掲載されている生徒の声を一部抜粋して紹介します。
ICT教育やグローバル教育など、聖和女子学院中学校高等学校の独自の教育プログラムに魅力を感じている生徒が多いことがわかります。また教員や生徒、生徒同士が良い関係性の中で学校生活を送れる環境があることが伝わってきました。
聖和女子学院中学校高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人聖和女子学院 |
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