青翔開智中学校・高等学校の校舎外観

青翔開智中学校・高等学校の「将来の進路を見つける」探究学習|中高一貫校

独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、鳥取県鳥取市にある共学校「青翔開智中学校・高等学校」を紹介します。

同校は2014年に開校し、2018年からは文部科学省「スーパーサイエンスハイスクール」にも指定されています。

グローバル教育、科学技術・理数教育だけでなく、探究学習にも注力しており、常に新しい教育プログラムを導入するなど最善かつ先端の教育活動に努めています。

今回は、そんな青翔開智中学校・高等学校の教育目標や特徴的な取り組みについて、広報と理科を担当する兼重先生と、広報と司書を担当する横井先生にお話を伺いました。

好奇心を飛躍につなぐ、青翔開智中学校・高等学校の教育目標

青翔開智中学校・高等学校の課外活動風景

▲地域の伝統文化を継承する課外活動にも全力で取り組む生徒たち

編集部

最初に、青翔開智中学校・高等学校の建学の精神や教育目標についてお聞かせください。

兼重先生

本校は、「探究・共成・飛躍」の3つを建学の精神に掲げています。自分の興味関心を社会で求められていることと照らし合わせ、自分なりの課題や解を見つけていくのが本校の「探究」です。

自分の興味関心を広げていくときに、周りの助けなしではうまくいきません。周りを巻き込んでいく力、共に生きる共生ではなく、他者と共に成長するのが本校の「共成」です。

「飛躍」は、探究と共成の先にあるものです。挑戦を続け、なりたい自分になっていく、主体的に・創造的に未来を築く力です。6年間で、これら3つを実現するための学校教育カリキュラムを作っております。

青翔開智中学校・高等学校の探究学習とは

青翔開智中学校・高等学校の生徒たち

ここでは、青翔開智中学校・高等学校の建学の精神の1つでもある「探究」について伺いました。6年間の探究学習の概要から、探究の授業以外でも探究的な学びを大切にしている様子、積極的に外部と繋がりを持ち、生徒たちの視野を広げながら実践的な学習に取り組んでいる様子について紹介します。

アイデア出しから論文作成まで、段階を踏んで取り組み成長する

青翔開智中学校・高等学校の生徒たち

編集部

御校の探究学習について、具体的にどういった取り組みをされているのか教えてください。

兼重先生

探究学習は中高一貫の6年間で系統立てて行っています。まず中学校1年生の段階では、とにかく探究というものを楽しむために、アイデアをたくさん出す練習をします。答えがない中でたくさんのアイデアをスパークさせ、チームでひとつのものごとを創り上げる、「創造する力」の育成に重点をおいています。

具体的に社会課題に繋がっていくのは中学校2年生です。一般的な職場体験ではなく、職場体験の中で企業の課題を見つけ、解決するためにはどうすればいいのかを考えます。それを解決プランとしてまとめ、企業に向けてプレゼンします。生徒が企業に提案した課題解決プランが採用された事例もあります。

中学校3年生では、2023年度からウェルビーイングな社会を目指して福祉に着目しています。困っている人、例えば弱視の方や耳が聞こえづらい方、車椅子の方は具体的にどういう部分で困っているのか、困っている人の視点で課題を設定し、一歩踏み込み社会と繋がった課題解決を行っています。

ここまでが中学校の流れです。中学校から高校1年生まではチーム探究となっています。高校1年生ではテクノロジーの活用を設定しており、具体的な課題は人口減少です。人口減少によって生じる身近な課題を見つけ、その課題について、AIをはじめとするテクノロジーを駆使した解決を模索していきます。

そのためにAIを学ぶ東京研修も実施しています。2024年度は電気通信大学に行き、AIを活用されている方に講義をしていただいたり、実際の機材を使って教えていただいたりしました。

また、東京の大学生メンターと共に街を歩いてフィールドワークを行い、社会課題についてのディスカッションや解決プランのプロトタイプ提案を行いました。

高校2年生は個人の探究活動になります。中1から高1までの探究の授業に加え、各教科の授業の中でも探究スキルラーニングという方法で探究スキルを習得しています。それが一番発揮されるのが、高校2年生での個人テーマによる課題研究です。ここでは生徒が自由に課題を設定します。

例えば2023年は、「内水氾濫の浸水深予測に基づいて最適な避難経路を表示するGISを作ることはできるか」「農業的付加価値をつけることによって鳥取へワーケーションの誘致増加をすることは可能か」「遊びの中で意識づけをすることで小学生の協働性を育むことは可能か」などの課題がありました。自分の興味関心と社会から求められていること、その辺りを繋ぎ合わせ、1年間探究していきます。

そして高校3年生になると高校2年生の探究の成果を論文にまとめて、探究学習は終了します。

学外の教育関係者も多数訪れる探究活動の成果発表会「青開学会」

青翔開智中学校・高等学校の探究学習の成果発表会「青開学会」

▲毎年2月に開催される「青開学会」で探究の成果を発表

編集部

探究の成果を発表する機会はあるのでしょうか?

兼重先生

はい。毎年2月に「青開学会」という全校一斉の発表会があります。これは、外からもいろいろな方が見に来られます。そこで高校2年生は自分だけのポスターを作って発表します。

編集部

外部の方はどういった方が見に来られるのですか?

横井先生

中学校・高等学校・大学などの教育関係者や教育に関心が高い一般の方、本校の入学を検討されている方などさまざまです。中学校2年生で職場体験をさせてもらった企業の社長さんや普段から探究の授業に来ていただいている企業の方にもお越しいただいています。2023年度は、約600名が来場されました。

編集部

発表の場である「青開学会」での生徒さんの様子や反応はいかがでしょうか?

兼重先生

みんな緊張していますね。特に高校2年生は、初めて1人で取り組んできた探究活動の成果を人前に出すので、発表会の前はかなりナーバスになっています。しかし、終わった後は自信にもつながるようです。

外から来てくれた大人が真剣に聞いてくれて、質問してくれたり、褒めてくれたりすると、自分の成果を実感できるんです。その経験をする前後では、かなり様子が違ってきます。

中学生は高校生の発表を聞きに行って「かっこいいな、自分もこういうことができるようになるんだな」といった刺激を受けるようです。高校生は中学生の発表に行って、自分も通ってきた道のりなので的確な質問やアドバイスをすることもあります。そこで、学年を超えて、中学高校の垣根を超えてやり取りが生まれるのは中高一貫ならではの魅力だと思います。

海外から講師が来ることも。大学や博物館など外部の専門家から学べる

青翔開智中学校・高等学校の生徒たち

編集部

先ほど企業の方も来られるとのお話がありましたが、職場体験以外にも企業の方と関わる機会があるのでしょうか?

横井先生

私は授業を担当している教員ではないのですが、外部と連携した授業はかなり多いと感じます。特に社会科・理科では外部から専門の方や大学の先生、企業の方、博物館などの施設からお招きして、一緒に授業をつくっていただく機会が多いです。

兼重先生

例えば私の担当する理科の授業では、中学3年生で、鳥取県立博物館に行って展示室の実物から情報収集をしたり、学芸員との対話を通して課題を立てたりといった、博物館と連携した探究活動を行っています。

天体のことを学ぶときは国内有数の天文台である「さじアストロパーク」と連携します。高校生の物理ではラ・トローブ大学から海外の講師を迎え、入門的な物理をオールイングリッシュで講義していただく機会もありました。高校3学年から約50名が参加しました。

横井先生

本校は全校生徒で約300名の小規模な学校です。学校の中だけの授業ではなかなか世界が広がらないので積極的に外の方とのつながりをつくり、生徒の学びを深めていこうということで、外部連携を進めています。

兼重先生

探究学習では、高校2年生になると生徒1人につき教員1人がついて一対一で伴走していきます。と言っても様々な分野の課題があるので、学外の方の知見もお借りしながら探究をすすめます。

生徒も自分がテーマとする分野に詳しい方とのつながりを持つことで視野を広げ、より深く学んでいけるんです。

探究学習担当の教員が進路のサポートを担当。探究学習が将来につながっている

青翔開智中学校・高等学校の生徒たち

編集部

探究学習を終えて、生徒さんはどのようなところが成長していると感じますか?

横井先生

物事に取り組む姿勢に成長を感じます。例えば、他の人が探究していることに興味を持って聞いたり、人の発表に質問をしたり、いろんな意見を出し合ったりできるようになります。

そのことは2月の発表会にも表れていて、退屈そうにしている生徒は皆無です。やらされている感がなく、生徒も教職員も保護者も探究そのものを楽しんでいる。その姿について来ていただいた外部の方に感心されることも多いです。

編集部

建学の精神の「共成」に繋がるわけですね。そのほか探究活動で何か補足があればお願いします。

横井先生

探究学習がその先の学びに繋がっていくことを目指しています。探究テーマに限らず、探究したプロセスが進路選択や自己実現につながっていけば良いと考えています。7割の生徒が探究したテーマとの関連性が高い学部・学科に進んでいます。

兼重先生

高校2年生の探究ではマンツーマンで担当の教員がつきますが、3年生で探究が終わった後は、その教員が進路支援も担当します。約1年間の探究活動を伴走しながら担当する生徒を把握しているので、進路の支援も効果的に行われます。

青翔開智中学校・高等学校のグローバル教育

外部連携授業の講師と生徒

編集部

御校のグローバル教育についてお聞かせください。

横井先生

本校のグローバル教育は、まずはマインド面の醸成を大事にしています。

いろいろな人にオープンマインドでなければ英語力も身につかないので、英語科の授業だけではなく、例えば道徳や対話の授業(学校設定科目である「共成と飛躍」)、そういったところでも誰とでも対等に話し合えるボーダレス感覚やグローバルマインドを身につけつつ、英語力を磨いています。

また、進路支援に関しても国内の情報だけではなく、海外の情報も積極的に提供しています。海外のお客さまや留学生との交流機会も増やすようにしています。

編集部

海外のお客さまや留学生との交流機会とは、具体的にどういったものなのでしょうか?

横井先生

先ほどお伝えしたラ・トローブ大学の先生を招いて講習を行ってもらうなど単発での機会もありますし、長期の留学生も毎年受け入れをしています。今年度も高校に1年間長期留学している生徒がいます。本校からも海外の高校に長期留学する生徒が年々増えています。

また、2020年から毎年、海外大学に進学する生徒が出ています。放課後に、海外大学に進学した卒業生の話を聞く会を設けています。授業以外でも、海外生活や海外の大学の情報を紹介することで生徒の視野もグローバルに広がっていると考えています。

青翔開智中学校・高等学校のオンラインでの国際交流

編集部

留学生の方は何名来られているのでしょうか?

横井先生

学年で今2名です。本校は学年全体で50名ほどなので、クラスに1人は留学生がいるイメージです。

編集部

生徒さんは留学生の方と積極的に英語で話をされていますか?

兼重先生

積極的に英語でコミュニケーションを取っています。本校では普段から英語に力を入れているため英検の取得率も高く、英語に対する熱意が高い生徒が多いです。留学生が来たときには実践の場として活発に交流しています。

発音の練習からスタートし、実践的な英語力を身につける

青翔開智中学校・高等学校のネイティブの教員と生徒たち

編集部

英語力に関して、具体的にどのような学びをされていますか?

横井先生

英語の授業に関しては、中学校1年生は文法からではなくフォニックス(発音と文字の関係性を学ぶ音声学習法)からスタートします。まず人と話すことから始めることで「英語って楽しい」の気持ちを育てます。指標としては各学年で英検合格の目標を定めているので、それに向かって学んでいきます。

高校生になると、海外大学進学に使えるIELTSという試験を取り入れているので、その試験問題に沿った形式で授業を進めることもあります。また、トピック自体に興味を持てるような教材を使っているので、英語そのものはもちろんですが、海外の文化にも興味をもって取り組める授業になっています。

英語の授業でも探究に必要な資質を育てる「探究スキルラーニング」というプロジェクト型授業をたくさん設けているので、実践的な内容が多くなっています。

模試やペーパーテストのための英語ではなく、授業自体が興味を引く内容になっており、それを楽しみながら学びつつ、指標として英検やIELTSを各自で目指している流れです。

編集部

海外留学を希望される生徒さんは、どのような理由で海外へ行きたいと思うようになるのでしょうか?

兼重先生

高校生の場合、自分の興味・関心の分野が海外にある生徒が半分、語学留学をしたい生徒が半分です。今年は、フィリピンの貧困問題に関心があり、実際に見て調査したいから留学するという生徒がいます。また、古生物が大好きで、ペルーへ発掘調査のボランティアに行く生徒もいます。

青翔開智中学校・高等学校からのメッセージ

青翔開智中学校・高等学校の教員2名

▲取材にご対応いただいた兼重先生(左)と横井先生(右)

編集部

最後に御校に興味を持たれたお子さまや保護者の方に向けてメッセージをお願いします。

兼重先生

私が面白いと思っているのは、本校では教員陣も「探究」していることです。これは本当に強みだと感じています。

教員みんなが常に新しい知見を取り入れて学び続け、授業や生徒の学校生活をより良くしていこうとしていて、その結果、より良い教育を実現することができるんです。教員がスペシャリスト揃いなので、そのことはぜひ知っていただきたいですね。

横井先生

田舎の人口最少県にある小さな学校ですが、本校の教育実践には驚かれると思います。本校へ通うために教育移住される方もいらっしゃいます。もし本校に興味をもっていただけたのであれば、ぜひ公開授業研究会や「青開学会」にお越しいただき、学校全体で探究を続けている雰囲気を感じてみてください。

編集部

本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

青翔開智中学校・高等学校の進学実績

青翔開智中学校・高等学校の教員と生徒たち

青翔開智中学校・高等学校では、ほとんどの生徒が進学しており、国公立大学や難関私立大の合格者を多数輩出しています。毎年、海外大学に進学する生徒もいます。

2024年3月の卒業生38名および既卒生の合格実績としては、東京大学を含む国公立大学は11名、難関私立大学・有名大学は、慶応大学1名、早稲田大学1名、東京理科大学1名、関関同立7名、GMARCH5名が合格。海外の大学は、ベルギーの大学に1名、韓国の大学8名、アメリカの大学に2名が合格しました。

■進学実績(青翔開智中学校・高等学校公式サイト)
https://seishokaichi.jp/career/result/

青翔開智中学校・高等学校の卒業生・保護者の口コミ

青翔開智中学校・高等学校の生徒たちの運動風景

ここからは、青翔開智中学校・高等学校の口コミを紹介します。実際に通学していた卒業生や保護者の声をまとめました。

(卒業生)青翔開智は現状維持をすることがなく、常に変化を続ける学校です。先生も生徒も、校内外でチャレンジを続ける好奇心旺盛で尖った人ばかり。そんな人たちに囲まれ、刺激を受ける日々のおかげで、内気で打たれ弱かった性格も180度変わりました。良い意味で焦燥感に駆られていた6年間は本当に有意義で一瞬でした。

(卒業生)私は親の勧めで青翔開智を受験し、入学しましたが少々不安を感じていました。しかし、実際に入学してからは先進的な教育方針や生徒が主体的に活動する校風により充実した6年間を過ごすことができました。探究型学習や大学受験においては、先生方による手厚いサポートにより、課題を解決することで壁を乗り越えることができました。

(卒業生)中高一貫の青翔開智へ高校から入学し、当初は戸惑うこともありましたが、過ごしてみると入学前には思ってもみなかった自分に変化していきました。そんな経験ができるのがこの学校の大きな特色です。今までの自分の軸を壊してみる、また新しく軸を作り直す、そのための第一歩を踏み出すことができれば、きっとここで「結構オモシロイ」が見つかるはずです。

(保護者)常に教育の最先端を実践している学校だと思います。そのため全国から生徒自身が希望して入学される方が多いようです。高校はスーパーサイエンスハイスクールに指定されていて、中学校でもいろいろな経験をさせてもらえます。少数制で先生の目が行き届いており、学習面でのサポートも手厚いです。受験対策は生徒に計画的に考えさせ情報も最新のものを豊富にいただけるようです。

■卒業生の声は学校公式サイトから引用しています。
https://seishokaichi.jp/career/graduates-message/

青翔開智中学校・高等学校の生徒たちの運動風景

青翔開智中学校・高等学校へのお問い合わせ

運営 学校法人 鶏鳴学園 青翔開智中学校・高等学校
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