ぽてん読者の皆さまに、今注目の学校を紹介するこの企画。今回は神奈川県逗子市にある共学の私立小学校「聖トマ学園 聖マリア小学校」を紹介します。
学校法人聖トマ学園は、カトリック横浜教区を母体とした複数の小学校・幼稚園を設置しています。その一員である聖マリア小学校は、1951(昭和26)年に創設されました。小規模校ならではの家庭的な雰囲気の中、キリスト教の教えに基づき、児童一人ひとりを手厚くサポートしています。
同校は、「子ども達に喜びを届ける」ことを目標に、工夫を凝らした学校づくりを実施しています。また、たてわり活動や総合学習の時間を通した、「協働」の精神を身につける取り組みも特徴的です。それらの取り組みについて、校長の中田康裕先生にお話を伺いました。
この記事の目次
聖マリア小学校の「子どもに喜びを届ける」教育理念
▲インタビューに答えてくださった校長の中田先生
まずは、聖マリア小学校の教育理念について教えて頂けますでしょうか。
本校の教員間では、「子ども達に喜びを届けたい」ということを常に話し合っています。というのも、教育の基本とは、そこにいる子どもが幸せであることだと考えているからです。
幸せであるためには、学校の中に喜びを感じられる場面が多くあることが大切だから、そんな場面をたくさん作る。そして子どもが喜びを感じる様子を見て保護者や教師も喜びを感じるというふうに、関わる人みんなが喜びを共有できるような学校づくりを目指しています。
「学ぶ」「体験する」「共にいる」。3つの喜びが学校生活を輝かせる
学校生活で喜びを感じる場面はどこなのか、具体的にお教えいただけますでしょうか。
それは教員みんなで考え続けていることではありますが、大きく分けると3つあると思っています。
1つ目はやはり「学ぶ喜び」です。学校は学ぶ場ですから、学ぶことが喜びであり楽しさであることが大前提です。
そのためには色々な形が有り得ますが、本校では、子どもが自分で学びの意欲を高めることや、興味の対象について自分の力で追求していくことを大切にしています。いわば「探究型の学び」を、学校の中でたくさん実現していきたいということですね。
2つ目が「体験する喜び」です。行事なども含めて、子どもは学校で多彩な体験をします。それが楽しい・嬉しい体験だったときの大きな感情の動きが喜びとなり、成長にもつながっていくと思います。
もちろん楽しい体験だけできるということはありませんし、「負けて悔しい」「緊張してうまくいかない」など一見マイナスに見えるような感情の動きもあります。しかし、そういった感情をプラスに転じることを覚えるチャンスでもありますから、これもやはり大切にしています。
確かに、挫折感や緊張感の中でこそ友達との絆を感じられたり、これまでにない集中力を発揮できたりというケースもありますね。
はい。そういった小さな芽を見逃さないために、本校では「センス・オブ・ワンダーを養う」ということを、教員みんなで学んでいます。
センス・オブ・ワンダーというのは、「沈黙の春」という名著で知られる、アメリカのレイチェル・カーソンが使った言葉で「美しいものや素晴らしいものに出会ったときに感動できる感性を育てよう」という意味です。
体験する喜びに関しては、子ども達のセンス・オブ・ワンダーを育てることが、私達のチャレンジです。
▲毎日行っている「朝のお祈り」も、貴重な体験のひとつ
3つ目の喜びについても教えてください。
最後は「仲間と共にいる喜び」だと捉えています。学校はやはり、周りの仲間と共にいることが嬉しい、楽しいという場でなくてはなりません。この感情を、子ども達にはたくさん味わってほしいと願っています。
助け合ったり、意見を交わし合ったり、協力したりして同じものに取り組んでいく。本校では、そういったお互いのために協働するような関係性を築く機会を、できる限り提供しています。
まとめると「学ぶ喜び」「体験する喜び」そして「共にいる喜び」ですね。この3つによって、学校が子ども達にとって幸せな場になるよう日々努力しています。
子ども達と保護者の喜びがあふれる、運動会・学芸会
校長先生からご覧になって、子ども達が「喜び」を実感しているという場面には、どのようなものがありますか?
行事でいうなら、1つは運動会です。難しいことにチャレンジして成し遂げることや、勝利を目指してお互いに競い合うこと、また興奮状態の中で、普段できないことができてしまうこともあります。運動会はそういった、子ども達の心の盛り上がり・喜びを、とても多く感じられる機会ですね。
また学芸会も、たくさんの喜びに出会える行事です。各クラスでそれぞれ劇を行うのですが、台本からオリジナルで書いている先生も多いほど、教員も児童も一体となって力を入れています。本校を卒業した後、これほど人からの注目を集める機会はあまりないんじゃないかと思うくらい、盛大な行事です。
そうした舞台に出て演じるのは、子どもにとっては大きなプレッシャーで、しかしそれ以上に嬉しい体験になっていると感じられます。
▲学芸会の劇は聖マリア小学校が力を入れている行事のひとつ
壁を越えようとチャレンジすることや、みんなで作り上げること、人前で自己表現をすること、そういったところにたくさんの喜びがあるんですね。
そのようなお子様の輝いている姿を目にして、保護者の方もやはり喜ばれるのではないでしょうか。
そうですね。例えば1年生の親御さんですと「小学生になるとこんなことまでできるんだ」と感激してくださることが多いです。そこから1年ごとにできることが増えていき、高学年になってくると行事を支える係活動なども子どもたち自身が行うので、その姿を見て「心の成長を感じます」という感想も頂きますね。
聖マリア小学校の「協働」を体現する2つの取り組み
聖マリア小学校では協働する機会を多く設けているというお話がありましたが、具体的な取り組みがありましたら教えて頂けますでしょうか。
特徴的な活動としては、2つ挙げられます。ひとつは1年生から6年生までが一緒になった班で行動する「たてわり活動」で、もうひとつは、クラスの子ども達で決めたテーマに沿って学習していく「総合的な学習の時間」です。
「たてわり活動」で、異学年の子ども同士の絆が深まる
▲いろいろな場面で実施する「たてわり活動」では、1年生から6年生まで仲良く協力している
「たてわり活動」はどのような取り組みでしょうか?
たてわり活動では6年生がリーダーになり、その人数分だけ班を作ります。構成としては班長(6年生)が1人、その他の学年が1~2人で、全体で6~7人の班という形となります。
6年生の中だけですと、クラス内でリーダーになれる子は限られてしまいますが、たてわり班活動をすることによって全員にリーダーの役割と自覚が芽生えます。これによってリーダーシップや下級生に対する思いやりが育ちますし、逆に下級生は上級生の姿を見て憧れるという経験ができます。
たてわり班の子ども同士は、まるで兄弟のような関係性を築いていくんです。このような経験をすることは、児童の心身の成長にとても役立つと考えています。
異学年の子ども同士の関わりは、先生との関わりとはまた違って、得るものも多いでしょうね。たてわり班ではどのような活動をするのですか?
普段の特別教室の掃除や、海などへ出かけたときの班ごとの活動、班でプランターを1つずつ用意して好きな花や野菜を育てるような活動など、さまざまなことを行っています。
▲逗子の海岸が近い同校では、たてわり活動の一環として海で楽しい時間を過ごすことも
海に出かけるというのは素敵ですね!聖マリア小学校の立地も関係しているのでしょうか。
そうなんです。本校は逗子の海のすぐそばに位置し、学校から海岸までは歩いて10分もかからない距離なので、月1回ほどの頻度で訪れています。子ども達を見ていても、みんな海で遊ぶのが大好きですし、岩場では海の生物にもたくさん出会えたりもして、とても豊かな教育のフィールドとなっています。
海辺では安全に気をつけながらさまざまなプログラムを行っていて、たてわり班活動としては、メンバーで協力して砂で像を作る「砂の芸術」という取り組みなどを行います。また、完全に自由に過ごす日もありますし、校庭があまり広くないので、海岸でマラソン大会などをすることもあるんですよ。
研究テーマの設定から児童自身の力で決める「総合学習」
▲図書室を利用すれば総合学習の調べ物もバッチリ
協働の2つ目は「総合的な学習の時間」ということでした。
はい。本校では、総合学習の時間をとても大切にしています。
総合学習について、決まったテーマは設けていません。毎年4月に「今年はこれがやりたい」というアイディアを子ども達全員が出すところから始まります。それから話し合いをしてクラスとしてのテーマを1つに絞り、どういう活動をするか、計画・実施をしていく。それもできるだけ、子ども達自身の力でやっていくという形です。
教師は、サポートはもちろんしますけども、子ども達が自分のやりたいことを好きなようにできる時間であることを保証しているんです。何が出てくるか分かりませんから、教師の方もワクワクドキドキですよ。
実際には、どのようなテーマがありましたか?
例えば、2023年度の5年生は「初めてのことに挑戦しよう」というテーマでした。
「座禅体験がしたい」というアイディアがあったので、鎌倉の座禅体験のできるお寺へ出かけたり、また「茶道の体験をしたい」という希望もあったので、近くにある中学校・高校の茶道部さんに連絡をとって、体験させてもらったりもしました。
▲茶道体験のようす。みんな真剣な表情で伝統文化に触れていた
学校の中だけに留まらず、地域や他校さんとも連携されるんですね。その学習は、最終的には発表などを行うのですか?
はい。必ず何らかの形で総括をしています。方法はそのときによって色々ですが、例えば新聞の形にまとめて貼り出したり、保護者の方に向けた発表会のような場を設けたり、中には映画を作りたいというクラスもあって、他学年に向けた上映会を行ったこともありました。
発表の仕方にも、子ども達の工夫や個性が感じられます。校長先生にとって、印象的だった学習や発表があれば教えてください。
先ほどお話しした、5年生で茶道や座禅の体験をした子ども達は、6年生になって「今度は日本の文化のことをもっと研究したい」と言い出しました。
その背景には、5年生の活動を通して「自分達の国なのに、知っているようで知らないことがたくさんある」と気づいたことがあったようです。また、6年生の社会科で日本の歴史を習ったこともつながったのだと思います。
こんなふうに、ただ与えられたものとして学ぶだけじゃなくて、自分達の体験を出発点として、学びが広がっていくというのは、とても印象的でしたね。
一人ひとりに目が届く、聖マリア小学校のサポート体制
ここまでお話を伺っていて、聖マリア小学校の先生方の目が児童のみんなに行き届いていることや、サポートの手厚さをとても感じました。
ありがとうございます。本校は1学年1クラスで、1クラスも20人から30人ぐらいという小さな学校です。そこに教員は少なくとも担任と副担任という2人がついていて、さらに高学年になってくると教科担任制なので他の先生もたくさん入ってくるんですよ。
ですから、1つのクラスを学校全体でサポートするような形で、子ども達と教員の間にも信頼関係ができているんじゃないかと思っています。
少人数のクラスならではのアットホームな環境なのですね。保護者の方との関係性については、どんなところを意識されていますか?
やはり保護者の方が安心できること、保護者の方も喜びを感じること、それを大切にしたいと考えています。
子どもが楽しそうであれば、保護者の方は安心できるし嬉しく思ってくださるので、そういうふうに、保護者の方にも喜びを届けるような関係性を作っていきたいと意識していますね。
「聖トマ学園 聖マリア小学校」からのメッセージ
最後に、聖マリア小学校に興味を持たれた保護者の方に、メッセージを頂けますか?
本校は、冒頭にお話ししたように「喜びをたくさん感じてもらう」ということを大切にする小学校です。
お子様も保護者の方もみんなが安心して楽しく過ごせるような環境を実現するため、教員全員がいろいろな取り組みをしていますので、ぜひ一度見に来ていただけたら幸いです。
校長先生、本日は貴重なお話をありがとうございました!
聖マリア小学校に関する保護者の口コミ
▲英語の授業風景。ジェスチャーを通して楽しく学んでいることがわかる
ここでは、聖マリア小学校の在校生や卒業生の保護者からお聞きした口コミをご紹介します。
口コミからは、子ども同士の仲がよく先生方の愛情が感じられる、学校の雰囲気の良さを挙げる声が多く見つかりました。
学校生活の中で心からの「喜び」を感じることができるのも、子ども達に安心感をもたらす、そのような雰囲気があってこそと言えるかもしれません。
なお聖マリア小学校では、5・6年生になると放課後の特別授業への参加(申し込み制)など、中学受験に向けた学習をすることが可能。神奈川県や東京都の有名私立中学をはじめ、さまざまな中学校への進学実績があります。
■中学進学先(聖マリア小学校公式サイト)
https://seimaria-es.jp/shungaku.html
聖トマ学園 聖マリア小学校の基本情報
運営 | 学校法人 聖トマ学園 聖マリア小学校 |
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住所 | 神奈川県逗子市逗子6-8-47 |
電話番号 | 046-871-3209 |
お問い合わせ先 | https://seimaria-es.jp/contact.html |
公式ページ | https://seimaria-es.jp/index.html |
※詳しくは公式ページでご確認ください