ぽてん読者の皆さまに、今注目の学校を紹介するこの企画。今回紹介するのは、愛知県豊明市にある共学の私立中高一貫校「星城中学校・星城高等学校」です。この記事では、特に星城中学校の取り組みについて紹介します。
グローバルリーダーの育成を目指す同校では、リーダーに必要となる精神、国際社会で活躍できる英語力、そして、自ら問題に気づき解決に向けて行動できる自発的行動力を身につけるための教育に力を入れています。
今回は、そんな星城中学校の各学年担任である吉川先生、加藤先生、櫻井先生と教頭の喜夛嶋先生にお話を伺いました。
この記事の目次
たくましく生き抜く力を育む「星城中学校」
まず、星城中学校の教育理念についてお聞かせください。
本校では、「“感謝のできる”実践力に富んだ逞しい人間の育成」を教育目標に掲げています。
実践力に富んだ逞しさを身につけてもらうため生徒発信での活動を大切にしており、日々のさまざまな局面で教員が介入しすぎず、生徒に進行を任せています。このような環境があるため、本校の生徒はどんどんリーダーシップを発揮し、とても逞しく育ってくれています。
「感謝の気持ちを持つこと」も重要だと考えているため、入学後に学園長や校長が最初に生徒に伝えるのは、礼節を重んじることの重要性・感謝の気持ちを言葉や行動に表すことの大切さです。
健康で勉強に励むことができる今の自分があるのは、両親や周囲の人の支えがあってこそ。そのことを自覚し、何事にも感謝の気持ちを忘れずに取り組む姿勢を育てたいと考えています。
良いリーダーシップを発揮するためにも周囲への感謝の気持ちも忘れてはならない、ということを教えていらっしゃるのですね。
星城中学校では新入生による「決意表明」があると伺いました。こちらはどのようなものなのでしょうか?
これから始まる中学・高校6年間の学校生活を通して挑戦したいことや将来の目標を作文にまとめ、壇上で発表してもらいます。
合格が決まった直後に書いてもらうこの作文は、文字通り生徒たちの決意表明です。人前で宣言することで改めて自分の目標を確認し、その発言に責任をもつことが、生徒たちを逞しく成長させていくのではないかと考えています。
▲敷地内にある石田記念館ホールで行われる決意表明発表会。同級生や保護者を前に1人ずつ発表に臨みます
入学式・学校説明会も生徒主導!生徒を信頼して任せる星城カルチャー
星城中学校では生徒発信の活動が盛んだということですが、どのような取り組みをされているのでしょうか?
卒業式や入学式など校内で行われる式典や学校説明会の仕切りもすべて生徒主導で行われ、始業式では新学期への抱負を、終業式では学期の振り返りを代表生徒が全校生徒へ呼びかけます。生徒主体ですから、「これは生徒がやるべき」と学校側では決めていません。そのため、取り組む内容はその年によってさまざまです。
ある年では、研修旅行の計画を生徒が中心になって進めたこともありました。コロナ禍での話ですが、海外への語学研修を中止せざるをえなかった時期に、生徒たちが「国内でなら実施できるのではないか」と国内での研修旅行を計画したことがありました。旅程や予算、旅行代理店決めまですべて行い、さらにはYouTube動画を作成して、旅費を出してくれるよう保護者へのプレゼンまで行ったのです。教員の手を借りず、生徒たちだけで校長から国内語学研修の許可を得ました。
このように本校では、教員や保護者が生徒たちの成長にふたをすることがないように、生徒がやりたいと言えば「生徒を信頼して、挑戦させ任せてみる」という文化が根付いています。
▲星城中学校の名物行事「健脚会」も、企画の提案から当日の運営まですべて生徒たちが行います
一人ひとりの役割が大きい小規模校だからこそ「自主性」や「リーダーシップ」が育まれやすい
「たくましさ」を育成する環境について、他にも特徴的な取り組みがあれば教えてください。
本校は、2・3年生が1クラス、1年生が2クラスで編成される小規模校です(2023年度)。1クラスの人数も20〜30人と少ない分、必然的に役割を与えられる機会が多く、学年が上がるごとにどの生徒も自然とリーダーシップを発揮できるようになります。
3年生にもなると、さっそく4月から1年生を歓迎する校外学習の指揮をとりますが、どの生徒もしっかりとリーダーシップが取れています。これまでの2年間で、失敗しながらも経験を積んできたことの成果で、大きく成長したことを実感します。
なかにはリーダーとして振る舞うことに不安をのぞかせる生徒もいますが、行事などを通して生まれ変わったように積極的になる姿や、これまでと打って変わって凛々しい表情を見せる生徒をこれまでにもたくさん見てきました。
このような姿を見ると、やはり生徒を信頼して任せることが大切だと感じますし、3年間でここまでリーダーシップがとれるようになるのは、本校ならでは強みだと感じますね。
生徒の視野を世界へ広げる、星城中学校のグローバル教育
星城中学校では、これからの時代に必要不可欠なグローバルな視点を育むさまざまな取り組みを行っています。なかでも英語でのコミュニケーション力の養成に力を入れており、英検取得のための講座や留学生との交流、全員参加のオーストラリア語学研修など、英語を使ったコミュニケーション力を高めるだけでなく生徒の視野を世界へと広げる機会を多く設けています。
ここからは、そんな同校のグローバル教育について詳しく紹介します。
オールイングリッシュ授業&全員参加の海外語学研修で、生きた英語を学ぶ
星城中学校では、どのような英語学習を行っているのでしょうか?
本校は、国際社会で活躍できるリーダーの育成を目標にしています。そのため、英語の授業も、英語を「覚える」ではなく「コミュニケーションがとれる」ことを目指した内容です。
週に一度ネイティブ教員によるオールイングリッシュの授業を行っているのですが、タブレットを使った動画制作やプレゼンテーション、映像に合わせたセリフあてなど、その内容はさまざまです。どれも生徒が興味を持ちやすい楽しい内容なので、生徒は積極的に英語を口にするようになり自然と上達しています。
▲タブレットを使って動画を制作する生徒たち
星城中学校では、オーストラリアで行われる全員参加の語学研修もあるそうですね。こちらについても詳しく教えてください。
語学研修は3年生の2月にオーストラリアのメルボルンにある提携姉妹校へ赴きます。英語力はもちろん、生徒たちがこれまでの学校生活で学んできたことを生かす絶好の機会です。
入学時から海外語学研修に向けて、現地での行動目標の設定・自国の文化を知る取り組み、自己紹介や日常会話などの実践的な英語力を養う準備を進めます。
▲オーストラリア語学研修で交流する様子。2023年度はコロナ禍以降4年ぶりの実施となった。
語学研修での生徒たちの様子はいかがですか?
出発前は不安そうな表情を見せる生徒もいます。特に2023年度の生徒たちは、コロナ禍の影響で先輩たちから経験談を聞くことができない状況だったので、自分たちなりにさまざまな状況を予想しての準備となり、すべてが新鮮で、すべてが挑戦といった様子でした。
ところが私の心配をよそに、現地の生徒やホストファミリーとの交流を通して、分からないなりにジェスチャーで意思疎通をしたり、伝えようと努力したりする姿をたくさん見ることができました。英語が苦手な生徒から「もっと英語が話せるようになりたい!」という前向きな感想を聞くこともでき、コミュニケーションツールとしての英語の学びへの意欲が上がった生徒も多くいました。
また、文化や生活環境の違いを実感したことで改めて日本の良さを認識した生徒もいて、現地で過ごしたからこその気付きがたくさんあったようです。
中学卒業時には8割以上の生徒が英検準2級を取得
星城中学校では、中学校卒業までに英検準2級取得を目指して徹底した指導をされていると伺いました。どのようなお取り組みをされているのでしょうか?
学年の枠に縛られず、受検する級に合わせてコース編成をし、生徒一人ひとりが自ら達成目標を設定し、挑戦していきます。目標達成に向けた対策講座は、週に2回、月曜と水曜の授業後に実施しており、2023年度は8割以上もの生徒が英検準2級を取得することができました。全体目標の英検準2級よりさらに上の英検準1級・2級取得を目指す上級コースもあり、そこでは、より高度なリスニング力やスピーキング力を身に付けられるようにしています。
英語学習に対する生徒たちの取り組み方はいかがですか?
本校が英語教育に力を入れていることを謳っていることもあり、英語への関心が高い生徒が多い印象を受けます。帰国生や英検取得者など英語力の高い生徒がほかの生徒たちを引っ張る形で、クラス全体が切磋琢磨しながら英語力の向上に励む雰囲気がありますね。
それは英検対策講座でも同じで、生徒同士で教えあったり、積極的に教員に質問したり、同じ目標に向かってみんなで取り組んでいる一体感が、生徒たちの学習へのモチベーションになっていると感じます。
この学習への積極的な行動は、本校ならではの学習環境の影響も大きいと思います。本校には、与えられる学習をこなすことから、自らが課題を見つけ学ぶ学習への転換をサポートする仕組みとして、「GKタイム(学力向上タイム)」というものを設けています。これは、授業での気づきと課題に向き合い、自らで解決する学びの場となります。
たまたまそこにいた高校の生徒が中学生に勉強を教えている光景も目にします。このような光景を見ると、自宅学習ではできない、学校だからこそできる学習時間だと思いますね。
生徒が主役!自由度の高いESD活動・探究活動
星城中学校では、国際社会のなかで生き抜くための行動力・発信力・表現力・問題解決力を持ったグローバルリーダーの育成を目指し、探求活動にも力を入れています。なかでもESD(持続可能な開発のための教育)活動に注力し、2023年にはESD活動の推進拠点「ユネスコスクール」への加盟も果たしました。
ここからは、同校のESD活動・探求活動について詳しく紹介します。
生徒主体で地域創生に挑む、ユネスコスクール加盟校ならではのESD活動
ユネスコスクール加盟校として特徴的な活動があれば教えてください。
コロナ禍の影響で活動を縮小していますが、2020年以前はSDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」の達成に向けて、持続可能な社会を作る「地域創生」に取り組んできました。具体的には、毎年自然体験研修でお世話になっている福井県・美浜町の町おこしへの取り組みです。
この活動は、研修中に苗付け体験をしたサツマイモを使用し、オリジナル焼き菓子「サツマイモバウムクーヘン」を作る活動からスタートしました。もともとは美浜町に新しい特産品を誕生させる取り組みでしたが、何度も試作を繰り返して作り上げたバウムクーヘンを実際に現地で販売することで新しく6次産業(※1)を生み出し、定着させることを生徒たちが考案しました。
(※1)1次産業である農林漁業が、食品加工などの製造業、小売業などにも業務を広げている経営形態のこと
また、農林水産省に6次産業に関する補助金制度があることを見つけてきたり、販売促進のためのアイデアを出したりと、美浜町への事業化に向けての提案はとても充実したものになりました。実際に事業に関する協定を結び、現地のお祭りで限定100個の「サツマイモバウムクーヘン」を売り切るという成果も出しています。
本校の卒業生が営む洋菓子店や地元のサツマイモ農家の方、現地の加工工場の方など、たくさんの人に助言や協力を仰ぎながら実現に漕ぎつけたことは、生徒たちにとって何ものにも代え難い貴重な経験になったと思います。
こういった規模の大きな活動も、生徒が主体となって行うのでしょうか。
そうです。あくまでも教員は生徒が助け舟を求めてきたときのサポート役で、このような活動も教員からの働きかけではなく、生徒が自発的に行ったものです。
お世話になっている美浜町のために役立ちたい、町を盛り上げたいという生徒たちの思いが、これらの探究活動への原動力です。本校の建学の精神に「自分にできることを、どのように社会に還元していくか」というものがありますが、まさにこれを体現した取り組みと言えます。
クラスごとに行うESD活動では、感謝祭で成果を発表
▲さまざまな取り組みを行うESD活動にはTOKYO GLOBAL GATEWAYでの研修も。画像は英語でグループディスカッションを行う様子
他にも、SDGsをテーマにした、ESD活動を行っています。
年度はじめからクラスごとにテーマを決めて探求学習に取り組み、9月に行われる感謝祭(文化祭)でその結果を発表します。本校では中・高6年間にわたってESD活動を行っていますが、毎年趣向を凝らした大がかりな発表ばかりです。
SDGsのくくりであればテーマは自由で、発表の形式もすべて生徒たちに任せています。
各クラス、どのようなテーマで発表をされているのでしょうか?
2年生のクラスでは、「SDGsは人間にとって本当に良いのか」をテーマに寸劇を披露しました。発表内容が伝わりやすくなるようセリフを工夫し、ひと月以上かけて芝居の稽古に励んでいましたね。
3年生は「SDGsの普及」をテーマに、さらなる周知を目的とした発表を行いました。
SDGsに関する海外の取り組み事例から着想を得て、動画やオリジナルソングを交えた独自の教育プログラムを制作したのですが、夏休み中も協力して撮影や動画編集、原稿作成を行い、ギリギリまでプレゼンテーションの練習などに取り組んでいました。
探究を進めていくうちに、どんどん生徒たちのエネルギーが増し、「もっと深く知りたい」「もっと分かりやすく伝えたい」と自発的に行動する様子が見られます。
星城中学校ならでは!弦楽器を演奏する「器楽」の授業
他にも、星城中学校ならではの取り組みがあれば教えてください。
本校では生徒全員が弦楽器に取り組む「器楽」の授業があります。音楽の授業とは別に週1回行っており、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスから選択して取り組みます。
はじめて楽器に触る生徒がほとんどなので、最初は「きらきら星」などの初心者向けの曲からスタートします。カラーシールを楽器に貼って弦を押さえる指の位置を覚えるレベルから、最終的には楽譜を読めるようになる生徒も多くいます。
1曲弾けるようになると演奏を楽しむ気持ちが出てくるので、改めて音の出し方などを丁寧に指導していきます。
楽器は学校所有のものを使用しますが、器楽の授業がきっかけで自分の楽器を購入する生徒もいるほどです。なかには音楽(楽器)に触れたことがきっかけで、弦楽器のアンサンブルを行う音楽部へ入部する生徒もいます。放課後の部活動の時間に加え、朝早くに登校して練習時間を捻出する姿も見られ、とても活発に活動しています。
演奏を披露する機会はあるのでしょうか。
代表的な発表の場は入学式・卒業式で、生徒による弦楽合奏の生演奏で国歌や校歌斉唱を行います。オーストラリア語学研修では文化交流の一環として、現地で演奏します。
そのほかにも、有志の生徒が式典のBGMをアンサンブルで担当してくれるなど、生徒自身が演奏の場を作り出すこともあります。
楽しんで取り組んでいる様子が伝わってきますね。
クラスメイトが一生懸命に練習する姿を間近に見ながら、学年一丸となって演奏に取り組む雰囲気を肌で感じる。これこそが器楽の授業の醍醐味です。
自分のパートだけでは全貌がつかめなかった曲が、全員で合奏してみたら校歌になったり、最初はうまく弾けなかったものが少しずつ形になったり、演奏を通して机上の学びだけでは得られない達成感や一体感を感じてくれていると思います。
星城中学校からご家族・お子様へのメッセージ
▲左から、櫻井愛先生(令和5年度3年生担任・英語担当)、吉川重輝先生(令和5年度1年生担任・音楽と器楽の授業も担当)、加藤祐太先生(令和5年度2年生担任・英語担当)
最後に、この記事をご覧になっているお子さんや保護者の方にメッセージをお願いします。
本校のさまざまな行事や取り組みは生徒が主体となって行うものばかりです。本校の環境での学びを通して、たくさんのことが「自分で」できるようになります。自分の可能性を伸ばしたいと考えるお子さんには大きな成長の場になると思います。
加藤先生のおっしゃる通り、生徒発信での活動が本校の大きな魅力です。自ら何かに挑戦することが得意ではなくても、「自分を変えてみたい」という気持ちが少しでもあるならば、ぜひ本校に入学してほしいですね。
本校は、全校生徒数が少ないことで、生徒同士はもちろん、生徒と教員の距離が近い学校だと思います。私たち教員も生徒一人ひとりに丁寧に接する余裕・キャパシティがあるので、入学したての1年生でも教員を頼りやすい雰囲気があります。
そうした環境で生徒一人ひとりが持つ可能性が最大限発揮され、挑戦する体験が生まれています。これが、周りの人たちへ感謝の気持ちを生んで、本校の校風そのものとなっていると思います。
星城中学校は自分の興味の幅を大きく広げることができる学校だと感じました。自由である分責任も増えますが、失敗も含め、先生方が温かく見守ってくださる環境があるからこそ、生徒たちにとっても思い切って挑戦できる環境なのだろうと思います。
本日はありがとうございました。
卒業後は星城高校へ。高校卒業後は系列大学への内部進学も
星城中学校は中高一貫校のため、卒業後は星城高校の仰星コース・特進コース・明徳コースから、自分の目標にあったコースに進学します。
星城高校からは毎年多くの生徒が大学進学を希望し、国公立大学や青山学院大学、東京理科大学などの有名私立大学への進学実績があります。また、医学部や歯学部、薬学部をはじめとする医療系の学部への進学も目立ちます。
星城大学、星城大学リハビリテーション学院へ内部進学を希望することもできます。
◾️近年の大学合格者数(星城中学校・公式サイト)
https://seijoh-jr.ne.jp/future/university/
星城中学校の保護者・卒業生の声
ここでは、星城中学校に通うお子様を持つ保護者や卒業生の声をご紹介します。
このように、卒業生や保護者の声からは、小規模校ならではの手厚さや勉強へのフォローの充実さに満足するものが多く見られました。
お問い合わせ
問い合わせ先 | 学校法人 名古屋石田学園 星城中学校 |
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住所 | 愛知県豊明市栄町新左山20 |
電話番号 | 0562-97-3121 |
公式サイト | https://seijoh-jr.ne.jp/ |
※詳細は公式サイトでご確認ください