長い伝統を持ち、特色ある教育を進める学校を紹介するこの企画。今回は東京都新宿区にある1885年(明治18年)創立の伝統校、成城中学校・高等学校を紹介します。
成城中学校・高等学校は私立の完全中高一貫の男子校です。約140年前に「文武講習館」として創立された同校は、歴史と伝統を受け継ぎつつ、グローバル教育や探究型学習など時代に応じた独自の教育プログラムを推進しています。
今回は同校校長の岩本先生、教頭・入試広報室長の中島先生に、成城中学校・高等学校で得られる学びや学校生活の魅力を伺いました。
この記事の目次
古くから伝わる「学習十五則」をもとに、自学自習の姿勢を育む
▲インタビューにご対応いただいた岩本校長
まずは成城中学校・高等学校の教育方針を教えてください。
成城中学校・高等学校では「社会に有為な人材を育成する」という創立当初から引き継いでいる建学の精神のもと、「自学自習・質実剛健・敬愛親和・自治自律」を校訓に掲げています。その中でも特に自分から知識を獲得していく「自学自習」の姿勢を重要視し、最終的に生徒の「自治自律」を実現するのが本校の教育の目指すところです。
「自学自習」の精神に基づく「学習十五則」を古くから継承しているのも、歴史と伝統を持つ本校ならではの特徴です。学習十五則自体は100年以上前に制定されたものですが、根本的な考えは変わらず現代に引き継がれています。
例えば15番目にある「学習せる知識技能は常に之を日常生活に応用することを力むべし。深淳なる知識技能は、蓋し応用醇熟の結果なり。」というのは学びの本質を指す言葉で、まさに探究活動にも通じる考えですよね。「学習十五則」を現代の教育現場にも落とし込みながら、自学自習の実現に向けた教育を実施しています。
企業とつながる、成城中学校・高等学校の探究学習
今お話に出た、探究活動の取り組みについてお聞きします。成城中学校・高等学校ではどのような探究活動のカリキュラムを実施しているのでしょうか。
2023年度から中学3年生を対象に実施しているのが、企業とのつながりを通じて仕事や働くことの意義を学ぶ1年間のプログラム「コーポレートアクセス」です。コーポレートアクセスには、イオンリテールや吉野家、コンタクト等を取り扱うメニコン、PC等で知られる富士通といったさまざまな企業が参画しています。
生徒たちは、会社名は知っていても実際にどのような仕事をしているのかは分からないことがほとんどです。そのため、まずは参画している企業のことを調べることから始めます。そして各々が”ここで働きたい”と考えた企業にエントリーし、チームを組み、企業から与えられた課題に対して何ができるのか、アイディアを考えるというのがプログラムの流れです。
生徒さんたちのアイディアは、どこかで発表する機会があるのでしょうか。
文化祭時に中間報告として途中経過を公開プレゼンしています。これは本来のプログラムにはない本校独自の取り組みです。ここで、これまでの成城生活で培ったプレゼン力が発揮されます。
また、コーポレートアクセス自体はいろいろな学校で実施されているプログラムのため、生徒たちのアイディアを集め、一斉に審査するコンテストが開催されています。本校の生徒もそのコンテストへの応募によって、1年間の学びの成果を表現します。
コンテストで評価を受けたり、印象に残ったりしたアイディアはありますか?
『イオンの店舗にどのような付加価値をつけるのが効果的か』というテーマで、「店舗を活用して伝統工芸の継承者不足の問題解消につなげる」というアイディアは印象に残っています。店舗を技術者の住まいとして提供し、伝統工芸の工房もイオンの店舗内につくることで、工芸品の売り場として活用しつつ、後継者に向けたアピールの場とするという提案です。
このアイディアは、全国大会の一歩手前の賞をいただくことができました。高校生の応募もある中で、中学3年生としては健闘したのではないかと思います。
「コーポレートアクセス」の取り組みは今年度が初めてだったため、まずは与えられたテーマに対してチームで取り組むという活動から始めましたが、次は自分自身で課題を設定して解決するという段階に進める予定です。
成城中学校・高等学校の探究活動は、成績だけでない生徒の個性発露の場
▲インタビューにご対応いただい中島教頭
探究活動を進める中で、生徒さんたちの変化として感じられるところはありますか?
座って授業を受けるのとは全然違い、生徒が活動的になっていると感じます。その姿勢が身についていけば、他の授業でも能動的な学びが生まれてくるのではないかと思っています。
生徒が活動的になることで、教室全体の雰囲気も賑やかになって前向きな空気が生まれています。また必ずしも成績上位の生徒だけが結果を出すわけではないというのもポイントです。一生懸命取り組んで個性を発揮することで、成績だけではない部分で評価される生徒が増えるのも、探究活動のポジティブな一面です。そういう場があることで、学習のモチベーションにもつながっていると思います。
校内で留学体験が味わえる「グローバル・スタディーズ・プログラム」
成城中学校・高等学校ではグローバル教育にも力を入れられているとのことですが、特徴的な取り組みがあれば教えてください。
海外の大学生・留学生と生徒が交流を行う「グローバル・スタディーズ・プログラム」は、2013年から継続して実施している本校の特徴的なグローバル教育のプログラムです。夏休みの期間を利用して、中学3年生から高校2年生の希望者を対象に1日6時間、5日間の校内研修を行っています。
年々プログラムは変わっていますが、基本的に海外からの留学生1人と本校生徒4・5人で1グループ作り、英語でディスカッションをしながら表現力を高めるという流れで進めています。
「グローバル・スタディーズ・プログラム」を毎年実施する中で、どのような効果を感じられていますか?
特に中学生は海外の人と接する機会があまりないため、授業で習っている英語がどこまで通用するのか分からない状態の生徒がほとんどです。1日6時間をすべて英語で話すのは大変ですが、自分の英語力を試す良い機会となっていると感じます。
また、優秀な海外の大学院生と触れ合うことで、語学以外の部分でも刺激を受け、勉強に対する意識を高める機会にもなっているようです。「グローバル・スタディーズ・プログラム」は留学の疑似体験ができる場でもあるのですが、その経験を経て実際に海外研修に行く生徒が多いのも特徴です。
語学研修の枠を超えた経験ができる、海外での「グローバルリーダー研修」
成城中学校・高等学校の海外研修にはどのようなものがありますか?
オーストラリアと台湾で行う「グローバルリーダー研修」があります。これは単に言語の習得を目的としているのではなく、グローバルな視点を持ってさまざまな国の人と協業する力を身につけることを目的としています。そのため、語学研修ではなく「グローバルリーダー研修」という位置づけです。
今まで自分の頭になかった考えに触れ、自分を確立することで「自治自律」を実現するというのも、海外研修の目的の1つです。例えば、台湾の高校生は当たり前のように英語を使ってコミュニケーションしています。同年代のそういう姿を目の当たりにすることで、生徒は衝撃を受け、視野を広げていくきっかけになっています。
また、海外の同年代の生徒と交流して自分たちの国や学校紹介を行うことで、他の国との違いを知りつつ、自分たちがいかに自分の国や学校のことを知らないのかを改めて実感する機会にもなっています。
台湾は日本に近いアジアの国だからこそ、違いがよりリアルに感じられ、語学を超えたさまざまな学びを得られそうですね。
その通りです。また語学を超えた学びでいうと、2023年度からはカンボジアへの研修も実施しています。カンボジアの国が抱える課題を知り、それに対して何ができるのかを考えることを目的に行うプログラムです。事前準備を行ってから6日間の研修に臨み、戻ってからは発表を行います。その全てを10か月ほどの時間をかけて実施します。
カンボジアでの研修は具体的にどのようなことをテーマとしているのですか?
カンボジアではゴミの処理が社会問題になっており、ゴミを集めて売却することで生計を立てている方もいます。実際にカンボジアにあるゴミ山を見に行きインタビューを行いながら、そうした社会問題の背景を調査しました。
その調査結果をまとめて発表したものは、拓殖大学の「第7回 国際理解及び国際協力に関する研究発表会」で拓殖大学学長賞を受賞しています。
また「第9回高校生国際シンポジウム」にもチャレンジし、書類審査を通過して鹿児島県でプレゼンも行ったのですが、そこでは大学の先生からかなり厳しい意見もいただいたようです。生徒にとっては悔しい経験となりましたが、そういう経験があるからこそ、次の学びへのモチベーションも生まれるのだと思っています。
100年続く成城中学校・高等学校の伝統行事「臨海学校」
御校で行われている行事やイベントについても伺います。成城中学校・高等学校は歴史ある学校ということで、長年受け継がれてきた伝統的な行事などもあるのでしょうか。
1925年(大正14年)から始まった臨海学校は、本校を象徴する伝統的な行事です。これを経験しないとうちの生徒にはなれないというくらいの通過儀礼ですね(笑)。
臨海学校は中学1年生が参加する行事で、高校2年生が指導の補助をするのが代々の伝統となっています。昔は泳ぐことを目的とした行事だったのですが、今は学校を離れた場所での経験や、先輩である高校2年生を成長の指標としてもらえるようロールモデルとして示すといったことがメインの目的となっています。
また高校2年生にとっても、臨海学校の場で1年生を見守ることで責任感やリーダーシップを育むきっかけとなっています。新入生を学校全体で見守るという雰囲気も醸成されるため、それが本校の穏やかな風土にもつながっているのではないでしょうか。
臨海学校ではどのようなことを行うのですか?
3泊4日でクラスごとに分宿し、泳いだり、スイカ割りなどのレクリエーションを行ったりします。遠泳を行う班もありますが、6割の生徒が初級版です。なので、泳げなくても思いきり楽しめますよ!
クラスの絆も強くなりますし、高校2年生との縦のつながりも生まれています。今年度で100年を迎える伝統行事ですが、これまで一度も事故なく実施しているので、きっとこれからも続けていくことでしょう。
成城中学校・高等学校のスクールライフの魅力を紹介
成城中学校・高等学校は新宿区という都心の真ん中、都営地下鉄大江戸線「牛込柳町駅」から徒歩1分の好アクセスの地に位置しています。2015年に創立130周年の記念事業として校舎を改築しており、最新の設備と綺麗な校舎の中で学校生活を送ることができます。
ここからは学校施設を巡りながら、成城中学校・高等学校で過ごすスクールライフの魅力を案内していきます。
個性を尊重し合い、居心地良く過ごせる
▲美術の授業で制作した「人間の中身」。機械化した場合の中身もあり、生徒の独創性が光る作品に。
成城中学校・高等学校には全体的に、どのような雰囲気があると感じられますか?
成城中学校・高等学校には本当にいろいろなタイプの生徒がいるのですが、それを受け入れ合う風土があります。それぞれの個性を尊重し合って過ごしているので、居心地良く過ごせる環境があるのではないでしょうか。我々教員としても、生徒一人ひとりの個性を良く見て、その子が輝ける舞台を見つけてあげるのが役割だと思っています。
▲校内カフェテリアでは2限目の休み時間からテイクアウト可能。何と早弁OKなんだとか!
「数学統計」「表現活動」などオリジナリティあふれる授業を受けられる
成城中学校・高等学校で特徴的な授業があればお聞きしたいです!
「数学統計」という本校オリジナルの授業を行っています。「数学統計」といってはいますが、数学や統計に限定せず、情報リテラシーや簡単なプログラミングなど多岐にわたる学習内容を中学1年生から教えています。
統計は小遣いの金額など身近なテーマから学習していますが、単に知識を教えるのではなく、「論文や発表におけるデータ活用」を念頭に置いた学習内容としているのが特徴です。探究型学習にはデータを扱ったり加工したりすることが必要な場面が多くあるため、その基礎を中学1年生から学べる内容となっています。
また図書館と共同で「表現活動」という国語の授業を行っているのも、本校ならではの特徴です。思考力と表現力を育むためにグループワークを中心にさまざまな取り組みを行っており、例えば本のポップをつくるという活動も行っています。ポップをつくるためには本をしっかり読まないと魅力を伝えられないため、読書習慣のきっかけにもなっていますよ。
▲生徒が制作した本のポップ
読書意欲をかき立てる展示が魅力の図書館
▲図書館には本を読みたくなる展示の工夫がいっぱい
国語の「表現活動」のお話から、読書習慣を非常に重要視されていることが伝わってきました。そんな成城中学校・高等学校の図書館ならではの特徴にはどういった点があるのでしょうか。
図書館の特徴というと、やはり展示ですね。本をただ書架に並べておくだけでなく、特定のテーマで1か月おきに展示を変えながら、本を手に取りやすくなるような工夫をしています。
また図書委員の活動も特徴的です。講談社の出版社見学に行ったり、他校と合同で読書会を行ったりと、活発に活動しています。
文武両道で部活動が活発!人工芝のグラウンドも魅力
成城中学校・高等学校は文武両道を掲げられているように、部活動も盛んに行われているんですよね。
はい。グラウンドにはロングパイルの人工芝を使用しているため、あまり天候に左右されず練習ができるのが魅力です!
▲クッション性のあるロングパイルの人工芝は、運動部の練習場所にピッタリ
運動部だけでなく文化部も盛んで、吹奏楽部なども人気です。吹奏楽部は毎年3月の終わりに数百人を収容できるホールを貸し切り、定期演奏会を行っているんですよ!
▲部活動の実績を物語る、数々の賞状やトロフィー
「自学自習」の姿勢が身につく「自修館」では、OBのチューターも常駐
自習室は普段かなりの数の生徒さんが使用しているとお聞きしました。
本校の大切にする「自学自習」の精神のもとに、大正時代に「自修館」という自習室が設置されました。それが現代まで引き継がれています。本校のOBがチューターとして常駐し、生徒のサポートを行っているのも特徴です。ただ勉強を教えるだけでなく、受験の悩み相談など、年が近いからこそできるアドバイスを送っていますよ。
来年度は自修館のチューターだけでなく、探究のアドバイザーとしても活躍してもらうことを検討しています。大学での研究の内容を活かしてアドバイスをしてもらえたらと考えています。
先生と生徒のコミュニケーションを促進する職員室
職員室はガラス扉になっていて、中が良く見えますね。
成城中学校・高等学校では生徒と教員の対話をとても重要視しています。そのため職員室もガラス扉にして中の様子を分かりやすくすることで、生徒が入りやすいようにしています。また職員室のすぐ前にオープンなスペースがあって、そこで生徒が先生に質問できるようになっています。個室になっている面談室も4部屋あるので、勉強だけでなくさまざまな悩みを気兼ねなく相談できますよ。
自修館と職員室、進路指導室はすべて同じフロアにあるので、勉強や進路の相談をしやすいのもポイントです。
成城中学校・高等学校からのメッセージ
最後に、成城中学校・高等学校に興味を持ったお子様や保護者の方に対してメッセージをお願いします。
何かやりたいことがあるお子様は、ぜひ本校に来ていただきたいです!成城中学校・高等学校はさまざまなことに挑戦できる環境を用意しています。現時点で本校に仕組みがないものでも、もし本当にやりたいのであればできるだけ実現してあげたいと思っています。
「学校にないけれど、これはできますか?」というお願いもウェルカムです。校長先生に直談判する生徒も結構いるんですよ(笑)。
「田んぼをつくりたい」などの突拍子もないお願いも多いのですが、それはそれで代わりにプランターを用意しました(笑)。このように、生徒のやりたいことは、実現可能な範囲でできるだけ叶えてあげたいと思っています。
「こういうことがやりたいな」ということを内に秘めているお子様が成城中学校・高等学校で学校生活を過ごすことで、何かが花開く可能性を広げていけると思っています。
今学校にない環境であって、「やりたい」という気持ちがあれば柔軟に対応してもらえるというのは素晴らしいですね。
岩本校長、中島教頭、本日はありがとうございました!
成城中学校・高等学校の生徒からの口コミ
ここでは、成城中学校・高等学校の生徒からの口コミを一部抜粋してご紹介します。
インタビューの中のお話にもあったように、生徒の主体性や「やりたい」という気持ちを尊重し、後押ししてくれる環境があることが口コミからも伝わってきました。また新宿区という立地やアクセスの良さに魅力を感じる声も多く聞かれました。
成城中学校・高等学校の進学実績
成城中学校・高等学校では中学校・高校の6年間を2年ずつ3つに分けた教育課程で、中高一貫性の強みを活かした段階的な学習サポートを行っています。また自修館でのチューターへの相談を始め、勉強や進路に関する悩みを相談できる体制が整っており、「自学自習」の姿勢を身につけながら進路実現に向けて邁進できる環境があります。
そんな成城中学校・高等学校の過去5年の進学実績を見ると、東京大学や京都大学など国内最難関大学への合格者をコンスタントに輩出しています。慶應義塾大学や早稲田大学といった難関私立大学には毎年数十人単位で合格者を出しています。
■過去5年間の大学合格状況(成城中学校・高等学校公式サイト)
https://www.seijogakko.ed.jp/career/result/
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