本記事では、佐賀県佐賀市にある共学の私立学校「成穎中学校・佐賀学園高等学校」を紹介します。平成9年開校の成穎(せいえい)中学校、昭和33年創立の佐賀学園高等学校は県下で唯一、高校の選択が自由な「オープン制」を採用する共学の中高一貫校です。
成穎中学校では、宿泊研修や英国語学研修などの豊富なプログラムを通じ、生徒の「生き抜く力」の形成に注力しています。
佐賀学園高等学校は、甲子園出場6回の実績を持つ野球部や県高校総体でアベック優勝を果たしたバレーボール部、県下随一の実力を誇る吹奏楽部など、運動・文化系ともに部活動が盛ん。全国的に珍しいゲームクリエイター部も生徒たちに人気です。
今回は、成穎中学校・佐賀学園高等学校の青木校長、佐賀学園高等学校の笠教頭、成穎中学校の小部副校長にインタビューを実施し、建学の精神や教育方針、両校の特徴を教えていただきました。
▲取材にご対応いただいた成穎中学校・佐賀学園高等学校の青木校長(左)、中学校副校長の小部先生(中)、高校教頭の笠先生(右)
この記事の目次
社会に貢献する人材を育成する「成穎中学校・佐賀学園高等学校」の建学の精神
▲両校の校舎外観。佐賀駅から徒歩4分という好立地にある
まず、成穎中学校・佐賀学園高等学校の成り立ちや建学の精神について教えてください。
昭和33年に、佐賀学園高等学校(旧校名「佐賀実業高校」)が開校したのですが、当時の日本は戦後まもなくで、産業界での復興を支える人材の育成が急務でした。そのような背景から、「産業界の第一線に貢献する人材の育成」という建学の精神を掲げ、まずは商業高校としてスタートし、昭和45年普通科が併設されました。
その後、平成9年に成穎中学校が開校しました。高校・中学校ともに「創造」「躍動」「貢献」という校訓は共通していて、そこには次のような想いが込められています。
実社会を取り巻く環境は激変し続け、近年では予測不可能な時代といわれるようになりましたよね。そのような環境においても生徒自身が自律して考え、生き抜く力を身につけることを教育の核としています。
成穎中学校と佐賀学園高等学校は、中高一貫校という位置づけでよいのでしょうか?
中高一貫であることは間違いないのですが、我々は県内で唯一「中学校がオープン制」なんです。通常の中高一貫校だと、基本的には中学から高校にエスカレーター式で上がっていきますが、成穎中学校の卒業時には高校を自由に選択できます。
両校は敷地を共有しているので、同じ環境で6年間学びを深めていきたいのであれば専願で高校にそのまま進んでもいいですし、高校受験というハードルに挑戦し成長していきたいのであれば、併願という形で他校に進むこともできます。
なるほど。そういった機会があれば、中学校への入学後、3年間もしくは6年間かけて自分がどう学んでいくか、生徒の皆さんは将来を真剣に考えていくのだろうと感じました。
「生き抜く力」を身につける成穎中学校の一貫したプログラム
▲リスペクトアザーズの取り組みの一環である人権講話。「人を尊重し話を聞く」という対話の基礎を身につける
次に、成穎中学校の特徴的なプログラムについて小部副校長に伺いたいと思います。御校の公式サイトでは、玄海エネルギーパークの見学やイギリスへの語学研修など、多様なプログラムが紹介されていますね。
はい。中学校では、学年ごとに段階を踏んで、生徒の自主性を育むプログラムを実施しています。
1年生では、まず5月から6月にかけて「リスペクトアザーズ」という取り組みをしています。リスペクトアザーズは、他者を尊重する気持ちを育てるための人権講話です。スクールカウンセラーの先生や担任の先生の講話を通じ、相手の話に耳を傾けて尊重する姿勢を身につけます。
御校ではいろいろなエリアから生徒が集まってくるので、入学当初に傾聴の姿勢を身につけるのは重要ですね。
そうですね。次に2年生は、校外学習を重点的に行う時期です。水俣環境宿泊研修やイギリスへの語学研修などを通じ、環境や語学などの学習はもちろんのこと、他者と協力しながら自分の力でいろいろなことを解決していく経験を重ねます。
▲水俣環境宿泊研修では、慰霊碑への献花や水俣病資料館への訪問を通して環境・人権について学んでいく
そして受験期となる3年生では、これまで身につけた自主性を総合的に発揮し、自らの進路を実現していきます。どの高校に行きたいか、そのためにどんな学習が必要か、一人ひとりが考えられるようにサポートしています。
まさに「生き抜く力」を身につけるためのプログラムを、3年間通して形成されているのですね。
はい。中学校入学の段階では、何でも教員に頼ってしまう生徒が多く見受けられます。
ただ、宿泊研修で自分の身の回りを整える、語学研修の際にパスポートを管理する、ホームステイで緊張しながらホストファミリーに話しかけるなど、自ら考えて行動する経験を重ねるうちに自律心が育っていきます。私たち教員も、生徒の自主的な行動を促せるよう意識して接していますね。
異文化に触れ自発的な学習意欲を促す「英国語学研修」
▲タワーブリッジを見学したときのようす
中学2年生で実施されているイギリスへの語学研修について、詳しく教えてください。
2年生は全員、4泊6日ほどの英国語学研修に参加します。ホームステイや現地の中高生との交流会、観光地巡りなど、充実したスケジュールです。イギリスの歴史や伝統を学び、リアルな英語に触れる貴重な経験になっています。
海外研修を中学3年生や高校1年生で実施する学校も多いと思うのですが、御校では中学2年生で実施されるのですね。
はい。英語スキルへの不安もあると思いますが、自分たちで考えてしっかり現地の方とコミュニケーションを図っています。早いうちに海外研修に参加することで、留学などへのハードルが下がっているように思います。
たしかに実際に海外の生活を経験することで、高校や大学でも留学したいなどの目標につながりそうですね。
海外研修の影響は、本人だけでなく次の1年生にも引き継がれる仕組みになっています。イギリスでの経験を、保護者や1年生に帰国報告会としてプレゼンテーションする場を設けているんです。
交流会やホームステイ先で「イギリスはEUから脱退したけど、実際みんなはどう思っているの?」と質問し、返答内容を報告会で発表してくれた生徒もいました。体験してそのままにするのではなく、誰かに伝えることで自分たちの学びも深まっていると感じます。
▲イギリスでの経験や調査活動した内容を保護者や1年生に報告。この活動によりプレゼン力の育成にもつなげている。
イギリス渡航前にも、学校で取り組んでいることはありますか。
イギリスに向かう前に、テーブルマナーのレッスンをします。ホテルを訪れて、実際にナイフとフォークを使ってランチをいただくんです。ランチの前後ではイギリスの食事マナーも学ぶので、渡航前の心の準備につながっていると思います。
自主的な生徒会活動で生徒自身が学校生活を変えていく
▲行事の機会もさまざま。学芸発表会では、毎年3年生による和太鼓が披露されている
成穎中学校で育まれる自主性は、普段の学校生活の中でも発揮されているのでしょうか。
体育大会や学芸発表会など多彩な行事があるのですが、できるだけ生徒主導で進められるようにしています。生徒が中心となって練習や当日の運営を進めていきます。「自分たちのことは自分たちでやる、自分のことは自分で決める」という意識を持てるよう、教員も日々指導しています。
具体的に、生徒が主導して学校生活に変化があったエピソードを教えていただけますか。
例えば成穎中学校では朝の読書時間を設けているのですが、現在の生徒会会長の発案で英語の動画をみんなで見る機会を作りました。生徒会から「英語力を上げたい」という声が上がったんです。自主的な学びの場が創造されて嬉しく思いました。
イギリス語学研修の影響もあるのかもしれませんね。
そうですね。生徒会役員はそれぞれ就任前に「公約」を掲げ、実現に向けて取り組んでいます。有言実行の経験を重ねることで、本人たちの自信にもつながっていると感じます。
生徒の自主性が育まれると、受験勉強に向けたモチベーションも上がりそうです。
実は生徒会の学習文化部が学習計画表を作成して、全校生徒に提供しているんです。教員側が一方的に学習スケジュールを立てるよりも、前向きに学習に取り組めていると感じます。
運動・文化系ともに強豪チームが活躍する佐賀学園高等学校の部活動
▲生徒たちが部活動に励む広々としたグラウンド
次に、佐賀学園高等学校の部活動や同好会活動についてご紹介します。同校には、全国レベルで活躍する部活動が複数あります。各部活動の強さの秘訣や、特色ある珍しい部活動について、笠教頭にお話をうかがいました。
全国レベルで実績を残す運動部や吹奏楽部の強さの秘訣
▲高校男子バレーボール部の春高バレー出場時のようす
佐賀学園高等学校は、野球部の甲子園出場や水泳部の県高校総体優勝など、輝かしい実績が多数あります。部活動にかなり力を入れているのでしょうか。
はい。佐賀学園高等学校には、同好会含めて現在28の部活動があります。全国高校サッカー選手権大会の出場経験があるサッカー部、32回連続で県高等学校総合大会の男子総合優勝を果たした水泳部など、伝統的に力のある部活動が多いです。
最近力をつけてきているのは、やはり男女のバレーボール部ですね。令和4年度の県高等学校総合体育大会では男女そろって優勝し、全国大会出場を決めるなど目覚ましい活躍を見せています。
全国レベルで活躍されている運動部が複数あるのは素晴らしいですね。バレーボール部の強さの秘訣は何だとお考えですか。
まず、佐賀学園高等学校のバレーボール部は部員集めの段階からかなり力を入れています。顧問が県内の中学校に直接足を運び、「ぜひ佐賀学園高等学校でプレイしないか」と声をかけているんです。各中学校の先生やクラブの指導者と関係を築けていることが、優秀な生徒の獲得につながっていると思います。
▲高校女子バレーボール部の春高バレー出場時のようす
強いチームを作るためのメンバー集めに注力されているのですね。実際に指導をされる中で、気を付けていることはありますか。
バレーボールの技術指導はもちろんのこと、人間力向上に向けた指導に重きを置いています。挨拶や礼儀、学校生活の過ごし方や勉学への取り組みなど、総合的な「人間教育」に注力していることが、バレーボール部の強さの根底にあると思っています。
素晴らしいですね。佐賀学園高等学校の文化部のご活躍はいかがでしょうか。
佐賀学園高等学校の吹奏楽部も、毎年九州大会に出場する力のある部活動です。現在は部員数が約70名と、かなり大きな規模です。コンクールへの出場以外にも、小学校や特別支援学校、地域のイベントなどで積極的に演奏しています。
地域の皆さまからも愛される吹奏楽部なのですね。
そうですね、「佐賀学園高等学校といえば吹奏楽部」と言っていただくこともあります。毎年2月に定期演奏会を行っているのですが、高校生でここまで迫力のある演奏ができるのかと私も感動しています。ぜひみなさんにお越しいただきたいですね。
▲地域に愛される佐賀学園高等学校吹奏楽部の定期演奏会のようす
佐賀学園高等学校の吹奏楽部には、演奏経験のある生徒だけでなく未経験の生徒も多くいます。スタートのレベルはまちまちでも、先輩が後輩にしっかりと指導していく風土があるため、全体として質の高い演奏ができていると感じます。
未経験の部員もいる中で、九州大会に出場する強豪として活躍されているのですね。特別な指導を受ける機会もあるのでしょうか。
国内で有名な演奏家の方をお招きし、直接指導いただく機会を設けています。プロに習う経験は、技術力の向上に欠かせません。
加えて、生徒自身が主体的に計画を立て、練習に取り組んでいることが上達の秘訣だと思っています。顧問がしっかりと全体を見ているのですが、あくまでも部長・副部長がリードして練習をまとめています。生徒自身の主体性が、良い演奏につながっているのだと思いますね。
佐賀学園高等学校が育む生徒の主体性が、各部活動の強さにもつながっていることがわかりました。
ゲーム創作やeスポーツに挑戦!「ゲームクリエイター部」が人気
▲ゲームクリエイター部で楽しみながら活動している生徒たち
佐賀学園高等学校には、「ゲームクリエイター部」という珍しい部活動があるとうかがいました。
はい。ゲームクリエイター部は2018年にスタートして、現在の部員数は31名です(取材は2024年5月時点)。みんなで創作ゲームを作ったり、eスポーツの大会に出場したりしています。
イラストが得意、プログラミングに興味があるなど生徒たちの特長はそれぞれですから、個々の強みを生かして活発に活動していますね。
それぞれの興味を掛け合わせて、1つの作品を作るのはとても楽しそうです。
そうですね。ゲーム作りの経験がなくても、アニメが好き、ゲームが好きという気持ちがあれば楽しく活動できます。入部へのハードルが低いことも、多くの生徒が楽しめている理由かもしれません。
ゲーム作りというと、パソコンなどの機器が必要になると思います。学校で準備されているのですか。
はい。佐賀学園高等学校には商業科コースがある関係で、パソコン室が4部屋あります。その中の一室をゲームクリエイター部の拠点として使用してもらっています。専用のパソコンも導入して、制作環境を少しずつ整えています。
ゲームクリエイター部は、商業科コースが活発な御校ならではのユニークな部活動といえますね。運動部、文化部ともに、生徒たちが自律的に活動し、学校側が積極的に環境整備をされていることがわかりました。
成穎中学校・佐賀学園高等学校での学習・進学サポート
成穎中学校・佐賀学園高等学校は、佐賀駅から徒歩4分程度とアクセスの良い立地も特徴のひとつ。実際にさまざまなエリアから生徒が通っています。両校での学校生活の様子を詳しくうかがいました。
佐賀県内の各地から集まった生徒たちが学び合う少人数クラス
課外活動や部活動で有名な成穎中学校・佐賀学園高等学校ですが、通っている生徒たちの特長を教えてください。
成穎中学校は、在学中にしっかりと勉学に励み、高校進学に備えたいという生徒が多いですね。積極的に学びたいという意欲が高いと感じます。実際に授業の様子を見ていても、自由に発言しながら授業に参加している生徒が多い印象です。
成穎中学校は中高一貫校ですが、オープン制を導入されています。佐賀学園高等学校と併願して他校も受験できる選択肢の多さが、勉強熱心な生徒たちにとってうれしい環境ですね。
そうですね。結果として佐賀学園高等学校には成穎中学校の卒業生だけでなく、他の中学校からの入学者も多いんです。
佐賀学園高等学校の佐賀駅徒歩4分という立地の良さがあるため、いろいろな地域から進学しやすいのでしょうね。
はい。実際に、佐賀県内のJR沿線エリアからたくさんの生徒が通学してくれています。いろいろな地域の学生が集まり、多様な進路選択をしているため、各クラス25~35名の少人数体制を取り、教師がきめ細やかにサポートできる体制を整えています。
県内外の難関校へ合格者を輩出する佐賀学園高等学校の進学対策
▲部活動に打ち込むことが、大学進学においても好影響を与えている
成穎中学校を卒業し、佐賀学園高等学校以外の高校に進学される生徒も多いとうかがいました。佐賀学園高等学校に進学する生徒の割合はどれくらいでしょうか。
割合でいうと、佐賀学園高等学校への進学者が3割弱です。もともと商業科に強い学校ですから、普通科だけでなく情報処理科や商業科に入学する学生もいます。
なるほど。佐賀学園高等学校に進学した後は、どのような進路を選択される学生が多いのですか。
ここ数年、大学や専門学校含め、次の進学を目指す学生が増えていると感じます。そのような背景を受けて、佐賀学園高等学校の普通科では特別進学コースにも注力しています。
ただ、近年では学科試験のみを実施する4年制大学は減少傾向にあり、高校時代に何を成し遂げたかを総合的に判断する学校が増えています。本校ではそのような総合型の入試傾向に合わせ、社会課題に対する研究やアプローチを磨く「総合的な探究」の時間をキャリアデザインタイムと設定して進めているところです。
御校は部活動にも注力されていますから、総合型入試で高く評価される可能性もありますね。
はい。実際に昨年度は、吹奏楽部での活躍から推薦入試を活用し、立命館大学に合格した学生もいます。部活動での実績も高く評価されますので、それもある意味では総合型の進学といえると思います。
御校の進学に対する積極的な取り組みが、県内外の難関大学などへの進学実績を支えていると感じました。
成穎中学校・佐賀学園高等学校からのメッセージ
▲学校法人佐賀学園の笠理事長(左)と、取材にご対応いただいた青木校長(右)
それでは、成穎中学校・佐賀学園高等学校への進学を検討しているお子さま・親御さまに向けたメッセージをお願いします。
本校は中学校・高校が併設している中高一貫校です。駅から歩いて4分という立地の良さもあり、生徒たちは県内各地から通学しています。多様な生徒が入学し、多様な進路を選択して卒業しています。
充実した学校生活、進路実績を支えているのは、少人数学級によるきめ細やかな指導体制です。とても熱心な先生方が、学習面、生活面、部活動など懇切丁寧に関わっています。生徒一人ひとりの夢や目標を実現し、日本や世界のリーダーとなる人材を育成したいと思っています。
成穎中学校・佐賀学園高等学校で、一緒に楽しい学校生活を送りませんか。みなさんにお会いできるのを楽しみに待っています。
今回の取材を通して、御校の生徒一人ひとりが自主的に活動する姿勢と、生徒たちを支える教員のみなさまによる充実したサポート体制を知ることができました。本日はありがとうございました!
成穎中学校・佐賀学園高等学校の進学実績
成穎中学校で学ぶ生徒たちは、佐賀学園高等学校のほか、佐賀西高校などの県内の難関公立高校へ多数進学しています。過去には灘高校やラ・サール高校などへの進学者も輩出。進学校としての実績を重ねています。
また、佐賀学園高等学校の卒業生は、佐賀大学や東京外国語大学などの国公立大学のほか、日本大学や中央大学、国士舘大学などの有名私立校にも進学。商業科などで培ったスキルを生かして専門学校に進学する学生、民間企業に就職する学生もいます。
成穎中学校・佐賀学園高等学校で培った自立心を生かし、それぞれの意思で幅広い卒業後の進路を選んでいることがうかがえますね。
公式:成穎中学校「進路指導」
公式:佐賀学園高等学校「進路情報」
成穎中学校・佐賀学園高等学校の卒業生・在校生の口コミ
最後に、成穎中学校・佐賀学園高等学校の感想・口コミを紹介します。
成穎中学校・佐賀学園高等学校では多様な体験学習があることや部活動が熱心なこと、先生によるサポートが手厚いことが伝わってきました!
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