お友だちを大切に!「清泉小学校」の体験を重視した心の教育・探究学習に注目

小学校受験を検討している保護者に向け、注目の学校を取り上げる本企画。この記事では、神奈川県鎌倉市にある私立「清泉小学校」の教育活動を紹介します。

同校は1947年に、キリスト教・カトリックの「聖心侍女(せいしんじじょ)修道会」が設立した学校です。聖書の「互いに愛し合いなさい」の言葉に基づき、学校生活を通して「お友だちを大切にする心」を育てています。生き物の飼育や野菜の栽培、田植えなど、ホンモノの自然・動物に触れる活動も豊富です。

今回は、校長の有阪先生にインタビュー取材し、同校の教育理念や、キリスト教を軸にした感性・心を磨く教育、自然体験を取り入れた探究学習について詳しく伺いました。

清泉小学校のモットーは「お友だちを大切に」

「清泉小学校」の有阪校長と児童たち

▲取材に対応してくださった有阪校長と子どもたち

編集部

最初に、清泉小学校の教育目標を教えていただけますか?

有阪校長

本校は、キリスト教・カトリックの精神を主軸にした学校です。小学校では、設立母体である修道会の創始者・聖ラファエラ・マリアの思いを大切にしています。また、「お友だちを大切に」は、聖書にある「互いを愛し合いなさい」を小学生に分かりやすく表した言葉です。

「お友だち」には、クラスメイトから上級生・下級生、おうちの方、先生、校内の事務職員なども含まれます。さらに、登下校の電車・バスで一緒になった乗客の方や、住む国や文化、言語が違う方々も全て、「お友だち」と考えるんです。

日本にいると実感しにくいですが、世界には戦争・貧困などで心を痛めている人がたくさんいます。「お友だちを大切に」のモットーには、「隣人」に目を向け、やさしく支えられる人に成長してほしいとの思いが込められています。

体験を重視!清泉小学校の感性・心を磨く教育

「清泉小学校」の授業風景(読書)

▲1年生の「読書」では、本の面白さを伝えている

「お友だちを大切に」をモットーに掲げる清泉小学校は、子どもたちの思いやりの心や感性を育む活動に力を入れています。ここからは、同校の心・感性を磨く活動に迫ってみましょう。

生き物の飼育を通して、奉仕する喜び・命の大切さを学ぶ

「清泉小学校」の総合学習の様子(リャマとの触れ合い)

▲仲間と協力して、リャマのお世話をします

編集部

清泉小学校は、子どもたちの心・感性を磨く教育を重視しているそうですね。具体的に、どのような活動をしているのか紹介していただけますか?

有阪校長

一例としては、2年生の総合学習において最近は約1年かけて生き物を飼育する活動を取り入れ、子どもたちの思いやりの心や観察力を養っています。育てる生き物は年度によって違うのですが、2023年度は14羽のニワトリをヒヨコの状態から飼育しました。

生き物への愛情は、子どもたちの観察力を伸ばします。飼育して間もないころにヒヨコの絵を描くと、当然ながら子どもたちは「見える」通りに表現するんですね。ただ、1年ほど経ってから成長したニワトリの絵を描いた際には、クチバシの鋭さや抱いたときのフワフワとした感触など、より細かな部分までしっかりと観察してきた姿が絵に表れました。

きっと、世話をしているうちに、ニワトリへの愛情が芽生えたのでしょう。見た目だけでは分からない「やわらかさ」「温かさ」などを表現する姿勢に、感心しましたね。

「お友だちを大切に」するためには、相手が「何をしてほしいか」「何を嫌がっているか」といった心の動きをキャッチすることが大切です。生き物の飼育を通して、言葉にならない声に気付ける人に成長してほしいと思っています。

編集部

確かに、愛着がわくほど「もっと知りたい」と細かな部分まで観察するようになりますね。生き物を育てる経験は「命の大切さ」を学ぶ機会にもなると思うのですが、子どもたちの反応はいかがですか?

有阪校長

テリトリーの争いで怪我をしたニワトリを描いた子どもは、羽に血がにじむ様子を表現していました。目の前でニワトリが傷つき、怪我をして弱ったりする姿を見るうちに、子どもたちも命の重みを感じていくようです。

一方で、14羽のニワトリは毎日ひとつずつ卵を産むんですね。新鮮な卵を使って子どもたちが料理をすることもしました。卵料理をおいしく食べて、子どもたちは育てる喜びを感じたようです。また学校を訪れた方に卵をプレゼントしたこともありました。

編集部

2023年度の内容について伺ってきましたが、2024年度はどのような動物を育てているのでしょうか?

有阪校長

2024年度はリャマを育てています。もちろん教員も飼育経験がないので、手探りで世話をしているところです。毛量が多い一方で毛刈りの必要はないそうですが、美しい毛並みをしているんですね。「毛を使って何か作れないかな」という声も挙がっています。

生き物の飼育は先を見通しにくいので、アイデアを試してみる「トライアンドエラー(挑戦と失敗)」の経験を積み重ねられます。子どもたちはもちろん、教員も「次はどんなことが起きるのだろう」とワクワクしながら活動していますよ。

「ハンガーバンケット」で貧富の差を体験!世界のためにできることを話し合う

「清泉小学校」で開催されるハンガーバンケットの様子

▲ハンガーバンケットの実施風景

編集部

「お友だちを大切に」の「お友だち」には世界の方々も含まれているそうですが、世界の諸問題について考える機会はありますか?

有阪校長

もちろんです。6年生では昼食の時間を活用し、体育館で「ハンガーバンケット」を実施します。ハンガーバンケットは、世界的な問題になっている「貧富の差」を体験する活動です。

かつて「世界がもし100人の村だったら」という本が指摘したように、現在、地球上の富は一部の方々が独占しているといわれています。その理不尽ともいえる現実を、「高所得者・中所得者・低所得者」に分かれて体験してもらうんです。

普段はお弁当やスクールランチですが、ハンガーバンケットの日には学校側が食事を用意します。お昼になると体育館へ行き、入口でくじを引いて「高所得者」「中所得者」「低所得者」のグループごとに座ります。高所得者層は全体の15%ほどで、中所得者層も30%ほどしかいません。半数以上を占める55%の子どもたちは、低所得者層に振り分けられるんです。

編集部

「貧富の差」を想像するのは難しいですが、高所得者層・中所得者層・低所得者層に分かれると一目瞭然ですね。グループによって、食事の内容にも差があるのでしょうか?

有阪校長

はい。高所得者層のグループは華やかなクロスをかけたテーブルに並んだハンバーガー・フライドチキン・ケーキ・ジュースなどを自由に食べ、中所得者層はパイプ椅子でおにぎり1個とお茶のパックの昼食をとります。そして低所得者層のグループは、ブルーシートに集まり水1杯と3分の1ほどの大きさに切った食パンをいただくのです。

高所得者層のグループにはあえて大量の食事を用意するため、食べきれずに余ってしまうんですね。目の前にごちそうがあるのに食べられない中所得者層・低所得者層のグループからは、「余った食べ物はどうするんですか?」「もったいない」と声が挙がります。

編集部

余った食べ物を、中所得者層・低所得者層グループに分けることはしないのですか?

有阪校長

理不尽さを感じてもらう体験なので、余った食べ物はそのままにしておきます。実際に世界では「フードロス」が問題になり、日本でも多くの食べ物が廃棄されていますよね。教員が高所得者層の子どもたちに「食べきれないごちそうは、どうすればいいかな?」と質問を投げかけると、子どもたちは悩みながらも「これ以上は食べられないから捨てるしかない」と答えます。

教室に戻ってからは、高所得者層・中所得者層・低所得者層のグループがそれぞれに意見を出し合う時間を設けます。低所得者層・中所得者層のグループの子どもたちからは「おなかが空いて、いつもより力が出ない」「私たちにも少し分けてほしいと思った」などの率直な意見が出てきます。

一方で、高所得者層のグループになった子どもたちからも、「みんなに見られていて、食べづらかった」「もったいないから、みんなで食べればいいのに」といった意見が出るんですよ。

編集部

体験している分、子どもたちも「自分ごと」として考えていますね。余った食べ物は、どのようにされているのでしょうか?

有阪校長

近くの修道院に「余り物で申し訳ないのですが、食べてください」と伝えて、食事に役立ててもらっています。

ハンガーバンケットは、子どもたちにとって少し厳しい体験といえるでしょう。ただ、短時間ながらも貧富の差を体験すると、「食べ物を腐らせないように、必要な分だけを買うようにする」というように、自分にできることを考え始めるんです。

そのほか、毎年のように「チャリティーでお金を集めよう」「ボランティアに参加したい」との声が挙がります。ハンガーバンケットを機に、大変な思いをしている方々に目を向けるきっかけになっているようです。私の教え子も、「ハンガーバンケットがきっかけで、世界の諸問題に興味を持ち始めた」と言っていました。彼女は現在、東京大学で国際問題について学んでいるそうです。

ホンモノに触れて学ぶ!清泉小学校の探究学習

「清泉小学校」の三浦自然教室の様子(稲刈り)

清泉小学校のもうひとつの柱は、「ホンモノに触れる」をテーマにした探究学習です。どのような活動をしているのか、詳しく伺ってみましょう。

川・山・池もある「三浦自然教室」で、虫取りや農作業などを体験

「清泉小学校」の三浦自然教室の様子(田植え)

▲泥の中に踏み込んでいく「たくましさ」が育つ。農作業で足腰も鍛えられる

編集部

清泉小学校は、探究学習にも力を入れているそうですね。具体的に、どのような活動をしているのでしょうか?

有阪校長

本校が所有する「三浦自然教室」でホンモノの自然に触れてもらい、子どもたちの探究心を引き出しています。1万坪ほどの広さを誇る「三浦自然教室」には、田んぼ・畑・池・山はもちろん、芝生の広場や火おこしを体験できる「化石広場」もあります。調理スペースや寝袋で宿泊できる場所も併設されており、入浴も可能です。

学校からそれほど遠くない場所にあるので、1〜3年生はスクールバスで、4〜6年生は現地で集合して作業が終わると解散します。現地集合・解散とはいえ教員が引率し、みんなで電車を使って移動する流れです。

編集部

学校が所有している場所なら、心おきなく活動できますね。三浦自然教室では、どのような体験ができるのでしょうか?

有阪校長

広大な自然をコンパクトにしたような場所なので、季節ごとに新たな発見があります。例えば春には、おたまじゃくしがカエルになる様子を観察したり、ドジョウ・タニシなどの生き物に触れたりもできます。四季折々の草花が生い茂っているので、チョウチョなども飛んでくるんですよ。夏が近づくと木々にカブトムシが寄ってきて、子どもたちは昆虫採集を楽しみます。低学年の場合は、捕まえた虫をじっくりと観察し、絵を描くところから探究活動をスタートするんですよ。

ただ、昆虫採集の最後には、必ず元の場所に虫を返すようにしています。自然の魅力を感じてもらうと同時に、「自然を守る大切さ」についてもきちんと指導しているところです。

編集部

ひと昔前に比べると、昆虫の数が減少していると聞きます。学校で昆虫採集を経験できると、子どもたちの自然に対する興味・関心も広がりそうですね。虫との触れ合い以外には、どのような体験ができますか?

有阪校長

全ての学年で、種まきから収穫までの農作業を体験します。学年ごとに年間で3〜4種類、6年間で15種類以上の作物を育てられますよ。月に1回以上は田んぼや畑に足を運び、雑草を抜くなどの手入れをします。1年生は最初にラディッシュの栽培に挑戦し、収穫したラディッシュをよく洗ってからみんなで味わったようです。作物によっては、火おこしをして調理し、食べる場合もありますよ。

編集部

自分たちで育てた作物はきっと、味も格別でしょうね。高学年では、どのような農作業を体験するのでしょうか?

有阪校長

5年生の「田植え体験」では、「籾種(たねもみ)」からの稲作(モチゴメ)に挑戦します。苗まで育てたら田植えをし、肥料をあげたり、田んぼの雑草を抜いたりするんです。そのほか、スズメに狙われないように、網をかけて稲を守ります。

9月末の収穫期には鎌で稲を刈り、太陽の光や風を当てて乾かします。この際に収穫されたモチゴメの種が、次年度の田植え体験につながっていくんです。子どもたちは米作りを通して「作物の循環」も学びます。

餅米が完成した後には餅つきをして、5年生のみんなで餅を味わいます。一般的な田植え体験だと餅を食べて終わりなのですが、本校には「ご恩送り」という伝統があるんです。ご恩送りは、最高学年を目前にした5年生が収穫したモチゴメで作られた「紅白餅」を、次年度に入学してくる1年生にプレゼントする取り組みです。上級生から受けたご恩を下級生に返していくという「ご恩送り」の心が根付いているので、異学年同士も楽しく交流できます。

編集部

「受けた恩を返していく」という心の教育が、御校の温かな校風につながっているのでしょうね。ここまでは恒例の活動について伺ってきましたが、2024年度から新たにスタートした取り組みはありますか?

有阪校長

今年度は4年生のあるクラスが1学期、三浦自然教室にある「竹林」を活用した探究活動に取り組みました。SDGsを意識した活動を始めたようです。 昨年度は1年生が「流しそうめんをしてみたい」という声で竹を活用しています。

ただ、竹を切るのは想像以上に大変で、時間と労力がかかります。流しそうめんをするためには1本の竹を半分に割り、内側の節を取って流れやすくする必要もあるんですね。子どもたちは実際にやってみて、竹を使った流しそうめんの難しさを痛感したようです。

編集部

1年生の希望を叶えようとする姿からも、先生方の温かい人柄がうかがえますね。そのほかには、どのような体験ができますか?

有阪校長

三浦自然教室内にみかん園があるため、全ての学年でみかん狩りを体験できます。採ったみかんは持ち帰ります。甘酸っぱい美味しいみかんです。自然教室の記録としてみかんをよく見て絵を描く学年もあります。子ども達の色使いは素晴らしいです。

また、理科の一環として、近くの海の水を煮詰めて塩の結晶を作ったこともありますよ。自然が豊かな環境なので、理科・社会・図工(本校では美術)などと連携した活動も多いです。

時代劇にも挑戦!寺社の住職から話を聞く「鎌倉しらべ」

「清泉小学校」の鎌倉調べの様子

▲「鎌倉調べ」で事前に調査したスポットを訪れ、本物を体験する

編集部

自然体験以外には、どのような探究活動がありますか?

有阪校長

3年生の「鎌倉調べ」では、身近な鎌倉市について調査します。本校がある鎌倉市は、鎌倉幕府を開いた源頼朝氏(源氏)に由来する地域です。市内には100を超える寺・神社があるといわれており、2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の舞台にもなりました。

近くに寺・神社が多いという地域性を活かし、ホンモノに触れてもらいます。具体的には鎌倉市内の寺・神社をめぐり、時に住職の方から直接、鎌倉時代や仏教に関するお話を伺うんです。実際に坐禅を体験し、精神を集中させる難しさや、重要性を学びます。

2023年度の3年生は、住職の話や観察した内容を基に、源氏を主人公にした時代劇に挑戦しました。台本なども子どもたちが中心になって考え、みんなの前で発表したんです。鎌倉時代について相当調べたようで、6年生になって奈良県に修学旅行に行った際には「鎌倉の大仏とはここが違うね」と、比較する姿が見られました。

清泉小学校からのメッセージ

「清泉小学校」の少人数算数の授業風景

編集部

清泉小学校に興味を持っている保護者に向けて、メッセージをお願いします。

有阪校長

人を木の成長にたとえると、小学校の6年間は「根っこ」といえる時期です。根っこが太く、しっかりと張られていれば、多少の嵐に見舞われても倒れることはありません。

豊かな自然環境を備えた本校は、できる限り「ホンモノ」に触れてもらい、子どもたちの思考力・思いやり・観察力を育みます。もちろん少人数算数授業なども導入し、子どもたちの学習意欲を引き出していますよ。

「小学校の自然体験がきっかけで、研究に興味を持った」「飼育体験で生き物が好きな自分に気付いた」と話してくれる卒業生も多く、本校でまかれた種が大学生や社会人になってから花開くことを実感しているところです。思いやりの心を持ち、たくましく人生を歩んでいくお子さんに育てたい方は、ぜひ本校を候補に加えてください。教職員一同、お子さんのご入学を楽しみにしています。

編集部

お話からも、「体験から学びをつかみとる」子どもたちの様子が伝わってきました。自分でつかんだ学びだからこそ、進路にも影響する「原点」になるのでしょうね。

本日は、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

清泉小学校の保護者からの口コミ

「清泉小学校」の授業風景(理科)

最後に、清泉小学校にお子さんを通わせている保護者から寄せられた口コミを紹介します。

お友だちを大切にする心や、他者への気配りなど、キリスト教に基づいた人間教育に力を入れている。

バザーや運動会、学年ごとの合宿など、体験を積める行事が多い。

上級生が下級生にやさしくする伝統が根付いている。

口コミからも、お互いの個性を尊重し、成長し合える温かな校風がうかがえます。「鎌倉駅からは歩いて15〜20分ほどの距離があるが、中学年まではスクールバスを利用できる」と、設備面に関する口コミも見られました。

清泉小学校へのお問い合わせ

運営 聖心侍女修道会
住所 神奈川県鎌倉市雪ノ下3丁目11-45
電話番号 0467-25-1100(代表)
公式サイト https://seisen-e.ac.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください