ぽてん読者の皆さまに注目の学校を紹介するこの企画。今回は鹿児島市にある私立の共学小学校「学校法人三育学院(さんいくがくいん) 鹿児島三育小学校」をご紹介します。
同校は聖書を教育の土台とし、1学年が10人未満の少人数教育や、掃除や遊びなどでの異年齢交流、保護者の就労状況にかかわらず利用できる放課後児童クラブなどが特徴的な小学校です。
今回は校長の河合 博先生と、教諭の河合 美穂先生、山崎 朋子先生に、児童が主役の探究学習や奉仕活動などの心を磨く活動について詳しくお話を伺いました。
この記事の目次
他者への思いやりの心を育む「鹿児島三育小学校」
初めに、鹿児島三育小学校の建学の精神や校訓について伺えますでしょうか。
鹿児島三育小学校の建学の精神は「神に仕え人に奉仕する人物の育成」、校訓は「だから、何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもその通りにせよ」です。
本校は、正しいことを行い、世界や周りの人たちに貢献できる人物を育成することを目指しています。
建学の精神や校訓は日々の授業にどのように落とし込まれていますか。
本校では「だれかの祝福になろう。人にしてもらって嬉しいことを自分からしよう」という声がけを頻繁にしています。これが日常生活にも反映されていて、例えば、誰かが色鉛筆を落とすとすぐに数人が拾ってあげたり、鬼ごっこ中に誰かが転ぶとみんなが集まってきて「大丈夫?」と声をかけたり、児童たちは人の必要に気づき、行動しています。
上級生が下級生のお世話をする。支え合いを自然に学べる環境
▲上級生が下級生のお世話をすることが自然になっている
他にも、鹿児島三育小学校ならでは取り組みがあれば教えてください。
本校では、全学年が一緒に行動する縦割り活動を大切にしています。
1・2年生は普段上級生にお世話してもらっているので、系列の幼稚園生と関わる際には、自分が上級生にしてもらったように優しく接することができています。幼稚園生とは仲も良く、休み時間には手を振り合ったりしています。
このような環境で育つので、6年生になると下級生の面倒を自然に見られるようになります。特に指示しなくても、成長とともに、思いやりや面倒見の良さが自然に育まれているんです。校訓に基づき、「人にしてもらいたいことを自分からする」姿勢が体現されている部分だと思います。
また、行事や休み時間に学年を超えたコミュニケーションが取れることで、社会的なコミュニケーションスキルも育まれています。今日は全校生徒で田植え体験を行なったのですが、5・6年生が1年生のお世話をしつつ、全身泥だらけになりながら、のびのびと楽しんでいました。(取材は2024年6月)
児童の知的好奇心を刺激「鹿児島三育小学校」の学習スタイル
鹿児島三育小学校の授業の様子についてお伺いします。御校ならではの特徴があればお聞かせください。
本校は複式学級(※)なので、授業中も縦の関係があることでの良い影響が多々見られます。
(※)2つ以上の学年の児童を1つに編成した学級。児童一人ひとりに目がとどきやすい
下級生は上級生を見て「来年はこういう勉強ができるんだ」と楽しみにしています。上の学年が下の学年の勉強をお手伝いしたり、下の学年は自分の課題が早く終わった後に、上の学年のお勉強をちょっと覗いてみたりすることもあります。
また、児童の「もっと知りたい」「新しいことを知るって楽しい」という気持ちを引き出すような授業を心がけており、児童主体で授業を進めています。
例えば、算数では児童たちが自分で目標を決め、それに向けて取り組みます。教師は必要に応じてサポートし、児童同士で考え合ったり、ヒントを出し合ったりすることもあります。また、社会では、3・4年生は教師の指導を受けながら自分でノートにまとめる学習をします。これが定着する5・6年生になると、自分で教科書を開いてひとりでまとめることができるようになります。
学年が上がるにつれ成長しているなと感じることはありますか。
1年生では文章や字を書くことを重点的に指導します。3・4年生になると学習方法を工夫することを学び、5・6年生では少人数教育の利点を活かし、自主的に学習を進めたり、グループで学習したりします。こうした段階的な学習形態により、5・6年生になると教師がほとんど介入しなくても学習が成り立つのが、この学校の特徴であり、児童の成長を感じる点でもあります。
今、6年生は修学旅行の2週間前で沖縄にある姉妹校を訪問する予定なのですが、沖縄について自分で調べたい内容を決めて事前学習を行っています。教師が一方的に教えるのではなく、子供たちが自分で調べた内容をまとめ、発表し合って学びを深めています。(取材は2024年6月)
修学旅行中は、沖縄独自の文化体験や地理について学び、平和祈念公園やひめゆりの塔を訪れる予定です。
本校では日頃から聖書の言葉に基づいて、児童にも世界の平和にも関心を持たせており、訪問後には児童たちが平和に繋がる行動を考えます。これは毎年行っており、児童は平和について何ができるかを学び、実践していきます。修学旅行から戻ると、誰かの役に立つことや一緒に笑うことなど、日常生活の中で平和に繋がる小さな一歩を見つけて実践しています。
▲6年生の沖縄修学旅行
聖書の授業に奉仕活動「鹿児島三育小学校」の心を磨く教育
鹿児島三育小学校で実施されているキリスト教教育など、心を磨く教育についても教えていただけますか?
毎日聖書のお話を聞くほか、月曜日には一人で聖書を読む授業があります。児童たちは自分で聖書を開き、神様と自分と向き合い、生活の中から感謝や自分課題を見つけます。みんなノートいっぱいにまとめています。
心の振り返りをするノート「ルーブリック(※)」を使い、自分たちで気づき、学ぶ姿勢を大切にしています。聖書の言葉に基づき、内面的な成長を重視し、6年間かけて心を見つめる力を育んでいます。
(※)表を用いて学習の達成度を測る評価方法のこと
バイブル週間というものが年に3回あり、普段は一緒にいない牧師の先生から、オンラインなどで話を聞く機会があります。三学期は6年生が小学校生活をふりかえり、在校生や保護者の前でお話をします。このようにインプットだけでなくアウトプットも重視しています。
他にも、キリスト教教育を実施する御校ならではの取り組みはありますか?
クリスマスシーズンには街で賛美歌を歌いながら募金活動をし、その募金を社会福祉協議会に寄付しています。コロナ禍以降は老人ホームへの訪問ができなくなり、代わりにカードを贈る活動を続けています。
建学の精神に「神に仕え人に奉仕する」とあるように、奉仕活動は当たり前のこととして行なわれています。奉仕活動に限らず、運動会の後片付けなども、教師が指示しなくても自然に行なわれています。
▲毎年クリスマスシーズンには、賛美歌を歌って募金活動をしている
讃美歌も日々練習するのですが、児童たちは賛美歌を歌うのが大好きで、1年生から6年生まで、恥ずかしがらずに喜びを持って全力で歌います。学校が居場所であり、安心して自分を表現できる環境が整っているからです。
本校では他にも奉仕活動をしており、月に一度のシティクリーニングを行っています。シティクリーニングでは、宝物探しのようにゴミを見つけるのを楽しんでいます。褒められたいからではなく、他の人が喜んでくれたら嬉しいという気持ちで活動しているのだと思います。活動後、「大人になったらポイ捨てはしない」と話している児童もいます。
一人ひとりが主人公になる。1学年10人未満の少人数校ならではの環境
学校の雰囲気や生徒たちの雰囲気についても教えてください。
鹿児島三育小学校では、全ての活動について、全員が他人ごとではありません。全部、自分の学びであり自分の活動で、一人ひとりが主人公です。運動会も代表の人がリレーで走るわけではなく、足が速かろうが遅かろうが、全員参加となっています。
ですから、主体性や責任感は自然と身につくという点が、本校の少人数教育の特徴だと思います。「誰かがやってくれるから自分は関係ない」という姿勢の児童は一人もいません。
普段の児童たちの様子で、主体性や責任感を感じるのはどんな時でしょうか?
例えば掃除の時間でも、掃除のルールを児童たちが自分たちで決め、各自が主体的に黙々と動きます。誰も見ていなくても、丁寧に取り組むことを大切にし、この日々の積み重ねが運動会や他の行事にも生かされています。
運動会のリレーに授業参観など、保護者も児童と一緒に取り組む
保護者の方との関わりについてはいかがでしょうか?
本校には放課後児童クラブもあるので、お迎えに来た保護者の方とお話をすることもよくあります。
本校は小規模の学校なので、運動会や行事では保護者の参加が不可欠です。保護者の皆さんは道具出しや片付けなど積極的に参加してくださり、競技にも関わります。例えばリレーでは、児童たちが全員走った後に保護者が走ることがあります。保護者が多くの種目に関わることで、運動会は忙しくも楽しいものとなっています。
授業参観も保護者がただ見るのではなく参加してもらいます。児童と一緒にグループ活動に加わっていただいたり、保護者さんチームを作ったりしています。
鹿児島三育小学校からのメッセージ
▲左から、河合校長、河合美穂先生、山崎先生
最後にぽてん読者にメッセージをお願いします。
鹿児島三育小学校のような少人数の学校は、児童たちにとって、とても幸せな場所だと思います。一人ひとりが主体的で自分の居場所を感じ、また大切にされていると感じることができます。大規模な学校と比較すると設備は整っていないかもしれませんが、こうした少人数の学校こそが子供にとって必要な場所だと考えています。
現在、私は5・6年生の担任をしていますが、児童たちには卒業後も「神に仕え、人に奉仕する」という考えを大切にしてほしいと思っています。最終学年の児童に対しては特にその思いが強く、自分中心ではなく、他人のために何かをすることが互いの幸せにつながると考えています。
小学校時代は「愛されること」と「人の愛し方を学ぶこと」が非常に大切です。人生が一本の木なら、小学校はその根っこであり、人生の軸となる愛を学ぶ時期です。私たちの学校では、児童たちと一緒に人の愛し方を学んでいきたいと考えています。
本日はありがとうございました!
鹿児島三育小学校の進学実績
鹿児島三育小学校の継続教育機関として、全寮制の三育中学校が全国に3校あり、鹿児島三育小学校の卒業生の約3割は、三育中学校に進学しています。生徒たちは寮生活を通じて、自主自立の精神と高い協調性を養っています。
また、広島県に広島三育学院高等学校があり、卒業生の多くは国内の大学に進学しているほか、アメリカをはじめとする英語圏を中心に、全世界に広がる100以上の系列大学へ留学する道も開かれています。
鹿児島三育小学校の主な中学校合格実績としては、鹿児島大学教育学部附属中学校、鹿児島玉龍中学校、ラ・サール中学校、鹿児島修学館中学校などが挙げられます。
■進学先一覧(鹿児島三育小学校公式サイト)
https://www.saniku-kago.com/course/
鹿児島三育小学校の卒業生・保護者の口コミ
ここからは、鹿児島三育小学校の卒業生・保護者の口コミを紹介します。
これらの口コミから、友人と互いを支え合う密な人間関係が築ける環境ということがわかります。
鹿児島三育小学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人三育学院 |
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住所 | 鹿児島県鹿児島市平之町14-21 |
電話番号 | 099-223-8319 |
問い合わせ先 | https://www.saniku-kago.com/contact/ |
公式ページ | https://www.saniku-kago.com/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください