生徒の学ぶ意欲を引き出す「流通経済大学付属柏中学校・高等学校」の型にはまらない教育|中高一貫校

独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、千葉県柏市にある中高一貫の私立共学校「流通経済大学付属柏中学校・高等学校」を紹介します。

生徒の学ぶ意欲を引き出す取り組みに注力している同校では、体験を重んじる教育を行なっています。生徒が学ぶ必要性を感じられるようなアプローチが特徴で、大学と連携したプロジェクトも豊富です。

今回は、そんな同校の取り組みについて、中学教務部長の兼先生と入試広報部長の横田先生にお話を伺いました。

未来を切り開く力を育む、流通経済大学付属柏中学校・高等学校

編集部

最初に、流通経済大学付属柏中学校・高等学校の教育理念についてお聞かせください。

横田先生

本校は、未来を力強く切り拓く力を持った生徒を育成しようということで、2023年4月に開校しました。今年で2年目のまだ新しい学校です。中学校での学びを高校で開花させることを目標に、将来を見据えた新たな教育「未来創造教育」を教育理念としています。

本校の教育の3本柱として、実用的な英語力を磨き語学で広がる世界を知る「グローバルコミュニケーション教育」、探究する楽しさと創り出す喜びを知る「ICT共創教育」、人との絆や誠実さ、勇気の大切さを知る「流経リーダーシップ教育」を掲げ、教育活動を行っています。

こうした教育理念と目標のもと、本校では特に、生徒にさまざまな体験の機会を与える教育実践に力を入れております。

パソコンを使う流通経済大学付属柏中学校の生徒

体験を重視する「流通経済大学付属柏中学校・高等学校」の教育プログラム

編集部

体験の機会を大切にされているということで、具体的にはどのような取り組みをしているのでしょうか?

横田先生

本校は、学校の教育や行事など、いたるところで「体験」を取り入れることをコンセプトにしています。流通経済大学との強いつながりを活かした中大連携の教育プログラム、各界の著名人を招く「本物に触れようプロジェクト」など、さまざまな連携プログラムや体験活動を実施しています。

例えば、中学1年では、学期ごとに大きく3つの体験をします。

1学期には流通経済大学の先生とゼミ生を招き、ゲームを通じて協調性や協働性、仲間を思いやる心を学ぶ体験型のオリエンテーション研修を実施します。2学期には、日本科学未来館とスモールワールズ東京への校外学習、3学期には、浅草を訪れ、留学生に英語でコミュニケーションをとりながら観光案内を行う活動をします。

流通経済大学付属柏中学校のオリエンテーション研修

▲流経大のゼミによるオリエンテーション研修。竹筒を半分にしたものにビー玉を入れ、落とさないよう協力して運ぶ

スモールワールズ東京でパンフレット用の写真を撮影する流通経済大学付属柏中学校の生徒たち、校外学習でパンフレットを作成する生徒たち、SDGs啓発ポスターSDGs啓発ポスター

▲校外学習でスモールワールズ東京へ行き、ジオラマを撮影してSDGs啓発ポスターを作成

NHK交響楽団からの学びも。将来設計のヒントになる「本物に触れるプロジェクト」

編集部

著名人を招いての講演会を開催するなどの「本物に触れるプロジェクト」にはどんな狙いがあるのでしょうか?

兼先生

世の中のいろいろなキャリアを持つ人の話を聞くことで、生徒たちの将来設計のヒントになることが狙いです。

私もそうですが「勉強しなさい」と言われると勉強が嫌になるものです。勉強を強いるのではなくて、「なぜ勉強しなければいけないのか」に気づいてもらいたいという想いがあります。勉強は、決して大学進学が目的ではなく、自分のやりたいことを実現させるために必要だと知り、実現するための手段として勉強に向き合ってほしいんです。

編集部

これまでにはどのような「本物」にお会いしたのですか?

兼先生

2023年はNHK交響楽団に来ていただき、音楽の「田園」をテーマに音楽を表現しました。また、流通経済大学の教授による講演では、障害者スポーツも体験しました。

本校は世界で活躍されている方とのネットワークが強いので、キックボクシングや総合格闘技の那須川天心選手や元サッカー日本代表の中村俊輔選手、フランスのラグビーのワールドカップに向けて日本代表選手に選ばれているワーナー選手など、さまざまな分野で活躍されている方を招き、夢や目標についての講演を実施しています。

流通経済大学付属柏中学校の本物に触れようプロジェクト

▲本物に触れようプロジェクトではプロから直接指導を受ける。NHK交響楽団に来ていただき、一緒に演奏する体験もした(左)

中学1年で留学生相手に英語で浅草を紹介。英語を学ぶ意欲をかき立てる

流通経済大学付属柏中学校の校外学習で浅草を訪れ留学生と記念撮影をする生徒たち

編集部

浅草で実施する英語で観光案内をするプログラムについて教えてください。

横田先生

日本の大学に通う留学生に協力してもらうプログラムで、こちらも「英語を学ぶ必要性」を感じてもらうために実施しています。また、本校では中学3年生でシンガポール・マレーシア研修に行くので、それまでに語学力を伸ばす必要があり、このプログラムはその準備でもあります。

中学1年生の3学期という、まだ英会話力がそれほど身についていない段階ではありますが、“伝わらないもどかしさ”を知ることで、英語学習へのモチベーションにつながっています。

自分の英語が伝わらずもどかしい思いをした生徒が多いですが、楽しい経験にはなったようです。生徒たちの感想としては「もっと英語の勉強をがんばりたい」や「英語の必要性、重要性に気づいた」という声が多く、プログラムの目的をしっかり達成できていると思います。

編集部

生徒の皆さんは、浅草での校外学習に向けて何か準備をするのでしょうか?

兼先生

留学生に日本の文化を伝えるために、主に日本の建物と西洋の建物の違いを勉強して、文化の違いや日本の歴史も学びました。また、自分たちの英会話力だけでは足りないだろうということで、英語でパンフレットを作り、それを留学生に提示しながら浅草を紹介できるようにしました。

準備には時間も労力もかかりましたが、その分、大きな達成感があったと思います。

流通経済大学付属柏中学校の校外学習で留学生と話をする生徒たち

▲準備したパンフレットを手に浅草を紹介。中1の段階で「英語を話せるようになりたい!」と思わせてくれる価値あるプログラム。

生徒の“理解しやすさ”を重視。体験をベースに教科横断で学ぶ学習スタイル

流通経済大学付属柏中学校の理科の授業で実験をする生徒たち

編集部

流通経済大学付属柏中学校・高等学校は理数教育について特徴的な取り組みがあれば教えてください。

兼先生

中学1年の理科の授業では、通常のように生物、物理、化学、地学をバランスよく学ぶのではなく、まず生物に集中して学習します。生物を通して目に見える現象を学び、その後に地学を学びます。これによって、2年生以降で扱う物理や化学のような目に見えない現象に備えます。

また本校は、教科横断型で一つの取り組みからさまざまな教科をまたいだ学びを得られるようにしています。

編集部

教科横断型というと、例えばどのような取り組みがありますか?

兼先生

例えば、中学1年の理科の授業では、1人1羽、鶏の脳の解剖を行い、驚きと学びを通じて生物への興味を引き出します。その後、この経験を元に総合学習として脳死問題や臓器移植の話題を取り上げ、日本人の宗教観や再生医療など幅広いテーマに関連づけます。こうして、理科の学びを他の教科とも関連させながら、総合的な理解を深めます。

また、理科と家庭科、理科と美術、理科と社会科をコラボさせることもあります。例えば理科の授業で、生物学の一環として単子葉類と双子葉類を学ぶ際、双子葉類の植物である藍を育てているのですが、この藍を使って家庭科の先生とコラボし、たたき染めの技法を教えています。美術との連携では、浅草に行って日本の伝統的な色について学び、実際に藍や茜で染め物を行います。

編集部

理科と社会科のコラボだとどのような学習になるのでしょうか?

横田先生

理科の授業で実際に蚕を飼い、生徒たちに繭玉を作る様子を見せます。これをきっかけに、社会科と連携して富岡製糸工場の話など、絹糸生産の歴史や繊維産業についても学びます。このように、異なる教科が連携するクロスカリキュラムを通じて、幅広い学びを提供しています。

流通経済大学付属柏中学校のクロスカリキュラムで作った藍染を持つ生徒たち、クロスカリキュラムで蚕を使用する生徒たち、クロスカリキュラムで藍染をする生徒たち

▲理科と社会、理科と家庭科のクロスカリキュラム。教科横断によってより理解が深まる

あえて馴染みのないテーマに挑戦。SDGsをテーマした探究学習

タブレットを活用して資料を作成する流通経済大学付属柏中学校の生徒たち

編集部

流通経済大学付属柏中学校の総合学習についても教えてください。

兼先生

中学1年では、「知る」をコンセプトにしてSDGsをテーマに探究します。

17のテーマのうち、環境問題などは小学校で取り組んでいるケースが多く生徒にとって馴染みあるものなので、まったく知識のないテーマを選ぶように指導します。例えば日本のエネルギー問題や男性の育休問題などです。生徒にとって馴染みのないテーマについて考えさせることで、気づきを得られるようにしています。

調べたことはパワーポイントでまとめてクラス内で発表するのですが、学会のような流れにしていて、質疑応答を受けて答え、より内容を精査する訓練もしています。

流通経済大学付属柏中学校の生徒が総合学習の授業で作ったSDGs新聞

▲ICTをフル活用して発表用の資料を作成。ITスキルも磨かれていく

日本再生医療学会のコンテストに参加。自分のアイディアを伝える難しさも経験

編集部

他にも流通経済大学付属柏中学校・高等学校ならではの取り組みがあれば教えてください。

兼先生

私が日本再生医療学会の学会員なので、それを活かして学会の「治験アイディアコンテスト」に応募しています。新潟で開催された第23回の日本再生医療学会では見事審査を通り、何人かの生徒が学会に参加しました。

編集部

どんな内容が通ったのでしょうか?

兼先生

免疫不全症候群や膠原病に関心のある女子生徒が、再生医療のアプローチを使って膠原病を治す方法について提案しました。彼女のアイディアは、細胞そのものを治すのではなく、受容体を再生するような遺伝子を開発するというものでした。

このアイディアをよりわかりやすく伝えるために、寸劇を取り入れました。結果として中高生のセッションで銅賞を受賞することができました。この活動は、総合学習の一環として、生徒たちに研究やアイディアの伝え方を学ばせる良い機会となりました。

編集部

学会に参加した生徒の皆さんの成長はいかがですか?

兼先生

学会に参加した生徒は来年も挑戦したいと言っています。今度は口腔学会から、コンテスト参加のオファーがあり、現在4つのテーマで応募しているとことです。通れば、東京大学の口腔学会で発表することになります。(取材は2024年5月17日)

本校は大学の先生とのつながりもあるので、専門の先生に話を聞きに行くことができ、中大連携を活かすことができます。

流通経済大学付属柏中学校・高等学校からのメッセージ

流通経済大学付属柏中学校の数学授業で紙飛行機を飛ばす生徒たち

▲数学の授業で紙飛行機を飛ばす生徒たち

編集部

最後に、流通経済大学付属柏中学校・高等学校に興味をもったお子さんや保護者の方にメッセージをお願いします。

横田先生

本校は開校2年目で建物自体も新しいですし、最新の設備を完備しています。特に本校のシンボルとなる図書・メディアに関しては蔵書5万冊以上を誇ります。非常に充実した設備・環境の中で落ち着いて、仲間とともに学習することができます。

高校から入学してくる生徒がいますが、中学から進学した生徒に関しては、高校からの入学生と同じクラスになることなく、まったく別の中高一貫プログラムになっております。引き続き、高校においても、中学同様の体験的な学びを継続していく予定です。

高校では、今、社会に求められている思考力・判断力・表現力を養いながら、大学入試にも柔軟に対応できる力を身につけるために、段階的に高度なカリキュラムにしていきます。まだ大学実績はでておりませんが、さまざまな体験を通して、本校の学力レベルを上げていきたいと考えております。

もし本校に興味をもっていただけたのであれば、ぜひ一度足を運び、学校の雰囲気を感じてみてください。学校説明会等もしております。お気軽に来校していただき、実際の施設や生徒の様子、どんなことを学んでいるのか、いろいろ作品展示もしていますので、本校のことを知っていただくことができるかと思います。ぜひよろしくお願いします。

編集部

本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

流通経済大学付属柏中学校・高等学校へのお問い合わせ

運営 学校法人日通学園 流通経済大学付属柏中学校・高等学校
住所 千葉県柏市十余二1-20
電話番号 04-7133-5766(中学) 04-7131-5611(高校) 
公式ページ https://www.ryukei.ed.jp/index.html

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