この記事では、中学受験に興味があるお子さん・保護者に向け、大阪府豊中市にある私立「履正社中学校・高等学校」の教育活動を紹介します。
学校法人「履正社」が運営する同校は、100年以上の歴史を持つ中高一貫校です。硬式野球部の甲子園での活躍が注目されますが、学習面にも力を入れています。2024年度には「学術基盤センター」という校内組織を新設し、履正社高校卒業時に、米国の高校卒業証書も授与される「U.S.Dual Diploma Program」などの海外大学進学プログラムや言語技術教育など、より質の高いカリキュラムがスタートしています。
今回は、学術基盤センター・センター長の松本先生にインタビュー取材し、同校の教育理念やカリキュラムの内容、クラブ活動などについて詳しく伺いました。
この記事の目次
履正社中学校・高等学校のモットーは「しっかり、まっすぐ」
最初に、履正社中学校・高等学校の教育理念をお聞かせください。
運営元の学校法人「履正社」は、「履正不畏(りせいふい)」「勤労愛好(きんろうあいこう)(※1)」「報本反始(ほうほんはんし)(※2)」の3つを建学の精神に掲げています。履正不畏とは「正しいと思うことを、畏れずに堂々と実践すること」を意味しており、本校では時代の変化を捉え、社会に貢献できる人材の育成を目指しているところです。
(※1)より良い未来にしていくため、勉学を楽しみ、物事に一生懸命取り組むこと
(※2)縁ある人たちのおかげで今の自分があると自覚し、恩に報いようとすること
生徒たちには「しっかり、まっすぐ」の言葉に置き換えて、「当たり前のことを当たり前にする」という履正不畏の精神を伝えています。例えば本校では中学・高校の校長をはじめ、教員が正門に立ち、生徒たちの登校を迎えるんです。その際には、「おはようございます」と大きな声であいさつをすることはもちろん、ネクタイが曲がっていないかなどの身だしなみに関しても丁寧に指導します。
細かいことかもしれませんが、あいさつや身だしなみは社会人にとっても大切な要素です。当たり前のことをしっかり、まっすぐに続けていくことが「教育の本道」だと考えています。
日本から世界へ!履正社の次世代を見据えたカリキュラム
▲「総合的な探究の時間」の研究発表である「RISEIカップ」では、高校生が企業と連携した企画制作に挑戦した
2022年に創立100周年を迎えた履正社中学校・高等学校は、「学びを楽しむ生徒の育成」を目指し新たなスタートを切っています。
2024年4月には、校内の新組織として「学術基盤センター」が設置されました。ここからは、新設された学術基盤センターの役割や、同センターを中心にしたカリキュラムについて詳しく教えていただきます。
質の高い学びをサポートする「学術基盤センター」
新設された学術基盤センターは、どのような組織なのでしょうか?
簡単に言うと、これまで先生方が担ってきた専門外の分野をサポートする組織です。同センターでは、従来の教務組織とは別に「多言語多文化教育部」「図書館情報教育部」「言語技術教育部」「探究教育部」を置き、それぞれの分野を専門的に研究しつつ、互いを関連させて教育効果を最大化します。
本校では、教育は「生きる力を身につけさせること」だと捉えています。そのため、学びの手段は時代に合わせて変化させていく必要があると考えます。だからといって、英語教育や情報教育、探究学習といった時代に合わせた学びを追加すると、どうしても教員がカバーできる範囲を越えてしまうんですよね。
すると、専門外の勉強に時間をとられるあまりに専門性を十分に発揮できなくなり、最終的には生徒たちに皺寄せがいきます。そのため本校では、学術基盤センターで時代を見据えた学びを提供し、先生たちには専門性を活かした面白い授業に注力してもらっているところです。
デュアルディプロマプログラム(DDP)・全米18大学への入学が保証される
ここからは、学術基盤センターが展開するカリキュラムについてお聞かせください。履正社中学校・高等学校はグローバル教育に力を入れているそうですが、新しくスタートしたプログラムはありますか?
2024年度から、アメリカの名門進学校と提携した「デュアルディプロマプログラム(DDP)」を導入しています。DDPを修了した生徒は履正社高校卒業時に、本校卒業証書に加えて、米国の卒業証書を取得することが可能です。
DDPに参加するためには英検2級を取得する必要があるので、関心の高い生徒たちは英語の授業にも必死に取り組むようになります。ただ「英検2級を取りましょう」と言われるよりも、「DDPに参加する」との目標があると意欲も変わってくるんです。
「やらされる」のと「自分から取り組む」のでは、充実感も違うでしょうね。DDP以外、海外大学への進学サポートなどは受けられるのでしょうか?
もちろんです。現時点ではマレーシアやオーストラリアの大学と連携し、指定校推薦枠をいただいています。具体的には、全米18大学への入学が可能です。指定校推薦枠を利用するためには、何らかの基準がありますよね。まだ始まったばかりですが、海外の大学への進学を希望する生徒たちが「それなら、もっと勉強を頑張りたい!」と思えるような仕掛けを増やしていく予定です。
校内を舞台にした「国際交流」で、異文化に触れる
「多言語多文化教育部」では、国際交流もサポートされているそうですね。国際交流をする上で、大切にしていることを教えていただけますか?
履正社中学校・高等学校の校内に海外の方々をお迎えし、交流する点を大切にしています。「世界」と聞くと、こちらから海外に出向く形での交流をイメージしがちですが、日本も世界の一部ですよね。どこか遠くではなく、「学校にいながら世界を実感できる環境づくり」ができることを目指しています。
現在は円安で、日本の経済は良い状況とはいえませんが、逆に海外の方々にとっては来日しやすいタイミングです。このチャンスを活かし、2024年度にはインドやインドネシアの高校生、2025年にはニュージーランドの高校生をお迎えし、交流の時間を持つことが決定しているんですよ。
まずは本校で外国の方々と同じ時間を過ごし、相手の言語・文化などに興味を持ってもらいたいと思っています。人間同士の交流を深め、逆に相手の国へ足を運んでみるような循環を作っていきたいと考えています。
放課後の「専攻ゼミ」も好評!資料活用・説明スキルを育み、探究の土台を築く
「図書館情報」では、どのような内容を指導してもらえるのでしょうか?
図書館情報はタブレットなどの活用スキルはもちろん、資料の探し方や、文献の引用ルールなどもきちんと指導します。資料を活用する際のルールは、大学で論文を書く際に必須の知識です。
私は大学でも教えているのですが、他の先生方からも「大学入学前に、引用のルールについて指導してほしい」との声を聞きました。文献の内容をコピー&ペーストでそのまま載せるのは著作権に触れる可能性があるので、内容を変えない、引用元を記載するなどの決まりが定められています。履正社の生徒たちは、高校を卒業するまでに、それらのルールを含めた資料活用能力を身につけられます。
文献の引用ルールを教えてもらえると、社会人になってからも苦労せずに済みそうですね。「言語技術」は、どのような内容なのでしょうか?
言語技術は本校独自の取り組みで、中学・高校共通で、物事を分析し、自分の考えを組み立てて言葉でわかりやすく説明し、記述する力を鍛えます。情報を分解して、分かりやすく説明する力は論文にも関係してきますし、社会人になってからも活かせる能力です。
もちろん、プレゼンにも挑戦します。「プレゼン」と聞くと英語を想像されるかもしれませんが、本校ではあえて日本語でのプレゼンを重視しています。生徒たちにとっては、日本語が母国語ですよね。日本語での説明に不安があるのに、英語でプレゼンをするのは難しいでしょう。まずは日本語を正しく理解し、次のステップとして英語にも挑戦していってほしいと思います。
資料活用やプレゼンのスキルは、探究活動にも活かせますね。
その通りです。基礎的なスキルを身につけることが、自分で課題を見出したり、改善策を提案したりする探究活動につながっていきます。
また、本校が放課後に開催している「専攻ゼミ」では、先生たちの高い専門性に触れられます。専攻ゼミは生徒の興味・関心に沿って、自由に選択できるのが特徴です。
専攻ゼミでは、先生たちがご自身の専門性を最大限に発揮できるため、生徒たちは普段の授業とは違った内容を学べます。例えば、ある社会科の先生は、大学時代に専攻していた西洋史にスポットを当ててゼミを開講していらっしゃいます。
専門性が高い分、その分野が好きな生徒たちが集まるので、学びも深まっていくんですね。先生と生徒の両方が好きな分野をとことん学べるのは、履正社の特徴だと思います。
野球部は甲子園での優勝経験あり!履正社は部活動・行事も充実
▲野球部やサッカー部、陸上競技部、バレーボール部など全国レベルの強豪クラブが揃う
履正社高等学校の野球部は、高校野球でも高い成績を残されていますね。
2019年の全国高校野球選手権大会(第101回)で、初優勝を果たしました。2023年の第103回大会では3回戦で敗退しましたが、2024年も高校野球出場を目指して練習に励んでいます。
野球部は週に6日練習していますが、いわゆる遠方から寮に集めて特訓するスタイルではありません。全員が自宅から通っていて、「文武両道」を実践しているのが特徴です。「甲子園で優勝した」と聞くと、野球だけしているイメージを持たれるかもしれませんが、本校の野球部員たちは勉強にも熱心に取り組んでいます。
御校が大切にされている「しっかり、まっすぐ」の精神が、生徒さんたちに伝わっていますね。野球部以外の部活も、いくつか紹介していただけますか?
週に6日の活動期間を設けた「強化クラブ(高校)」には野球部のほか、女子野球部やサッカー部、テニス部、剣道部、吹奏楽部などの9部が該当します。それ以外の部活動は、週に3日の活動が基本(コースによって異なる)です。
高校の体育系クラブだとバレーボール部やバスケットボール部、バドミントン部、チアリーディング部が、文化系ではコーラス部や将棋部、クイズ部、マンガ部などもあります。中学校の文化系クラブはさらに個性的で、理科部や読書部、鉄道研究部、カルタ部、社会部などもそろっています。
また、最近のトピックとしては、2025年4月に強化クラブとしてラグビー部の活動がスタートすることも挙げられます。先ほどお話しした国際交流や言語技術教育を重視する本校の方針と、ラグビーの競技性がマッチしており、今後の活動が楽しみです。
年間を通して多くの行事を開催。地域住民も参加できる天体観測も実施!
▲夏季合宿でのカヌー体験
履正社中学校・高等学校では、楽しい行事がたくさん開催されているそうですね。生徒さんから人気のある行事を紹介していただけますか?
生徒たちからは、校外学習や、文化祭、ニュースポーツ大会などが人気です。中学部が中心となり10月に開催される「STAR WATCHING」は、地域の小学生や保護者の方々も参加できる人気の恒例イベントです。
本校のグラウンドに20台ほどの天体望遠鏡を設置し、順番に月面のクレーターや土星のリングなどの天体を観測していただきます。このイベントに参加したことがきっかけで天体に興味を持ち、入学後に理科部へ入部した生徒もいるようです。
▲校内行事の数々。上部2点は天体観測会「STAR WATCHING」のようすで、400人ほどの参加者が集まったそう
履正社中学校・高等学校からのメッセージ
履正社中学校・高等学校に興味があるお子さん・保護者へ向けて、メッセージをお願いします。
お子さんにとって「何が本道」かが分からない保護者の方もいることでしょう。本校は「しっかり、まっすぐ」をモットーに、100年以上、生徒たちの成長に寄り添ってきました。
新設した学術基盤センターも加わり、次の100年に通用する教育を続けていきます。志望校選びに迷っている方はぜひ、本校を候補に加えていただけると幸いです。教職員一同、お子さまのご入学を心よりお待ちしています。
100年以上の伝統を尊重しつつ、常にカリキュラムを改善されている御校なら、国際社会で求められる力を身につけられることでしょう。
本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
履正社中学校・高等学校の進学実績
履正社高等学校の卒業生は、国公立大学や、私立大学への進学を選択するケースが主流です。2023年度には、大阪大学・神戸大学など、全国でも上位に入る国立大学へも合格者を輩出しました。
私立大学だと、関西エリアで難関とされる関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学に、合計で170人以上が合格しています。現役での進学率が高く、2023年度は95%以上の生徒さんがストレートで志望大学に入学したそうです。
豊富な進学実績からも、大学入試に対応したカリキュラムと、生徒さんたちの学習意欲の高さがうかがえます。
履正社中学校・高等学校の保護者からの口コミ
最後に、履正社中学校・高等学校の保護者から寄せられた口コミを紹介します。
口コミからも、充実した学習サポートと、情熱を持って生徒たちに関わる先生たちの姿がうかがえます。そのほか、無料で受講できる「専攻ゼミ」にも高い評価が集まっていました。
履正社中学校・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人「履正社」 |
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住所 | 大阪府豊中市長興寺南4丁目3-19 |
電話番号 | 06-6864-0456 |
公式サイト | https://riseisha.ed.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください