ぽてん読者の皆さまに、今注目の学校を紹介するこの企画。今回紹介するのは岡山県岡山市の私立中学校「岡山理科大学附属中学校」(男女共学校)です。
学校法人加計学園が運営する岡山理科大学附属中学校では、2019年度の制度改革により新たに「SRクラス」が設置されました。それまでの中高一貫コースなどが「SRクラス」に一本化され、岡山理科大学附属高等学校への進学保障や岡山理科大学への進学優遇といったメリットはそのままに、その他の自由な進路選択をサポートする体制が整備されているのが特徴です。
今回は同校副校長の船津大祐先生に、同校の教育理念や「SRクラス」の特徴、そして同一敷地内にある岡山理科大学との連携を活かした理数教育の魅力についてお話を伺いました。
この記事の目次
生徒一人ひとりの道を探して支援する。岡山理科大学附属中学校の教育理念
▲今回お話を伺った副校長の船津先生
はじめに、御校の建学の精神を教えてください。
本校を運営する学校法人加計学園は1961年、創設者である加計勉が戦後間もない広島の惨状を目の当たりにし、日本の復興には若者の育成が急務であると感じたことから設立されました。
そのような思いを受け、「ひとりひとりの若人が持つ能力を最大限に引き出し技術者として社会人として社会に貢献できる人材を養成する」という建学の精神を加計学園では掲げています。
その中でも、岡山理科大学附属中学校の教育で大切にしているのはどういった部分になりますか?
本校では、この建学の精神の中の「ひとりひとりの」という部分を最も大切にしています。教育というのは対集団に対して行うのではなく、対個人に対して行うべきであり、生徒の数だけそれぞれの教育がある、というのが本校の考えです。
画一的な教育を行うだけでは、ごく一部の生徒の能力しか引き出すことはできません。生徒一人ひとりが進むべき道を一緒に探し出し、生徒の能力を最大限引き出すこと。それが本校の教育理念です。
2019年度に「SRクラス」新設。3つのルートを生徒自身で選ぶ
岡山理科大学附属中学校の教育理念は、実際の教育活動にどのように反映されているのでしょうか。
岡山理科大学附属中学校では2019年度に制度改革を行い、新たに「SRクラス」を設けました。「SR」というのは「スペシャルルート」のことで、まさに先ほどお話ししたように生徒一人ひとりの目指す道をサポートするという本校の理念を体現したクラスとなっています。
具体的にご説明すると、生徒は全員この「SRクラス」に所属し、その中で「3年間教育ルート」「6年間教育ルート」「10年間教育ルート」という大きな3つのスペシャルルートに分かれることになります。
10年間教育ルートは岡山理科大学への進学を想定したルート、6年間教育ルートは岡山理科大学附属高等学校への内部進学を経て別の大学を目指すルート、そして3年間教育ルートは附属高校への進学を保証しつつ、別の県立高校への進学を目指すルートとなります。
ルートごとにクラスを分けるのではなく、SRクラスの中に3つのルートの生徒さんが混在されているということでしょうか?
はい。このSRクラスの特徴が、生徒の希望に応じていつでもルート変更が可能なことなんです。そのためできるだけいろいろな価値観に触れ、自分の選ぶルートをじっくりと考えてもらえるよう、あえて混在クラスとしています。実際に既にルートを決めていた生徒が、他のルートを考えているクラスメイトの話を聞いて改めてよく考え、ルートを変えるということはよくあります。
私たちは大人になってからも日々選択しながら生きています。生徒たちにも良く言うのですが、人生はカードゲームと同じで手札、つまり選択肢があればあるほどいいんです。そしてそれぞれの選択肢のメリット・デメリットをよく知ることも大切です。
さまざまな選択肢の中から自分にとってのメリット・デメリットを見極め、本当に自分に合った選択をするという経験は、大人になっても必ず活きてくるものだと考えています。
オープンスクールは学校行事!生徒自身で赴く場合も「公欠」に
生徒さんが進路選択をする上で多くの選択肢を持てるように、学校として実施されていることは他にありますか?
学校行事としてさまざまな高校のオープンスクールに行っているのが特徴です。岡山市のトップ校といわれる岡山朝日高等学校や倉敷市のトップ校といわれる倉敷青陵高等学校をはじめ、さまざまな公立高校のオープンスクールに行っています。
もちろんその学校に興味がないという生徒もいますが、それでも行くこと自体に意味があるのだと思っています。実際に行ってみて「思ったより良い雰囲気だな」と思うかもしれません。「やっぱり違った」と思ったとしても、その確信が得られたこと自体がプラスですよね。だからこそ志望しているかどうかに関わらず「とにかく皆で見に行ってみよう」という体験を大切にしています。
また多くの学校では生徒が高校のオープンスクールに行く場合欠席扱いになりますが、本校では学校行事として行くため当然欠席にはならない点もポイントです。本校で行けなかった学校に行きたいと生徒が希望した場合も公欠扱いとしています。
高校のオープンスクールを公欠扱いとするのは珍しいですね!
自分が気になっている学校を見に行くというのは、自分の人生の次の一歩を考える大切な行事ですよね。それなのにそれで欠席扱いになるのはおかしいのではないか、というのが本校の考えです。自分の人生の重大な岐路において選択肢を豊富に持てるよう、気になった学校は気兼ねなくどんどん見に行って選べる選択肢を増やしてほしいと考えています。
実際に生徒さんの進路選択にも影響していますか?
生徒たちからは「今までは高校の偏差値しか見ていなかったけれど、実際に学校に行くことで自分がやりたいことが実現できる環境なのかどうかが良く分かった」とよく言ってもらえます。満足のいく進路選択をする上で、このオープンスクールが重要な役割を果たしているといえるのではないでしょうか。
高校入試をする生徒に刺激を受け、全体のレベルがアップ
高校入試がある生徒とない生徒が同じクラスにいることを気にされる保護者の方も多いかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
確かにそれを心配されることはあります。ただし本校では特待生及び特別進学クラスの選出のため、附属高校に内部進学する生徒も中学3年生の卒業時に全員岡山県の県立高校に準拠したテストを受けてもらっているんです。合否を決める入試とは目的の違いはありますが、3年間教育ルートと同じ学力レベルを到達目標に置いているため、クラス内で齟齬が出ることなく同じ目標に向かって頑張ることができています。
通常の中高一貫校の場合、全員高校入試がないのが当たり前のためどうしても中だるみが発生しやすく、高校入試を経て入学してきた生徒に後れを取ってしまうというケースもあります。その点本校ではクラスの約半数が受験勉強をしているという環境の中で、高校受験をしない生徒も刺激を受けて全体的な勉強意欲や学力レベルが高まっているなと感じます。
入学後の頑張りがポイントになる「入学後ポイント特待生」制度
その他にも、岡山理科大学附属中学校の特徴的なカリキュラムや教育制度があれば教えてください。
先ほど高校入学前のテストで特待生を選出するというお話をしましたが、入学時の成績で決まる特待生に加えて本校では「入学後ポイント特待生」という制度を設けています。特待生にはS・A・Bのランクがあり、S特待生の場合は授業料や諸経費が全額免除になります。
「入学後ポイント特待生」は入学後に行う模擬試験や各種検定の成績に応じてポイント加算され、一定のポイント以上で特待生に選出されるという制度です。学業成績だけでなく、部活動やボランティア活動等での成績も加算されるという点も特徴です。
この制度があることで、試験や検定など生徒にとって“やらされている感”のある活動に前向きに取り組むきっかけ、また新たな挑戦に踏み出すきっかけとなっています。今では「あと何ポイントあれば特待生になれるから、この検定の何級を狙って、ボランティア活動にも行こう」と自発的に行動する生徒も少なくありません。
「ポイントを集めるゲーム感覚で、楽しみながらいろいろなことにチャレンジしていこう」という、私たちならではのユニークな取り組みだといえるのではないでしょうか。
S・A・Bのランクはそれぞれ人数が決まっているのですか?
本校では人と比べて成績をつける相対評価ではなく絶対評価を大切にしているため、特待生制度についても人数制限を設けず一定の基準値を超えれば全員その枠に入れています。そのため現在1学年で特待生に該当する生徒は40%以上いますし、S特待生も約15%いるという状況になっています。
自分が努力して結果を出したからこそベネフィットを受けられるという経験を、生徒に身をもって体験してもらえたらと思っています。
岡山理科大学とのつながりを活用した毎週の「理科実験」
御校は岡山理科大学の附属校ということで、附属校のつながりを活かした理数教育としてはどのようなものがありますか?
まず岡山理科大学附属中学校の特徴として、理科の授業とは別に「理科実験」の時間を設けていることがあります。その分、他校様に比べてかなり多い回数の実験を行っています。さらにその実験に、岡山理科大学の教授とゼミの学生さんが入ってくれるのが特徴です。
理科の実験では実験を行うテーブルに最低1人のゼミ生がついてくれています。通常、理科の実験というのは1人の教員が複数の実験テーブルに一律で指示を出すものですが、ゼミ生が入りきめ細かくサポートしてくれることは安全管理の面でも有効です。さらに教授とゼミ生がそれぞれの実験テーブルを見ながら専門的な見地から議題を提供してくれるため、生徒が議論をより深めることも可能となっています。
実は大学のゼミ生の方にも、本校の実験に参加することで単位がもらえるというメリットがあるんです。双方にメリットがあることで、お互いが本気で取り組める環境をつくり出しているのもポイントです。
理科の実験は化学、生物、物理など幅広い科目で実施されているのでしょうか。
理科全般でさまざまな実験を行っています。例えば半田山の中にある本校の立地を活かして、岡山理科大学の教授から「半田山の自然・昆虫」についての講義を受けた後で半田山で実際に昆虫採集をする機会もあります。その経験を生かして、本校の高校生が新種の雌雄同体雄を発見して新聞記事になったこともあるんですよ。
自然豊かな立地にあり、さらに同敷地内に岡山理科大学があるからこそ連携してさまざまな取り組みを行えるんですね。こういった大学と連携した理数教育は生徒さんにはどのような影響を与えていますか?
具体的な成果でいうと、本校の生徒はさまざまな理科系のコンクールに応募しており、非常に多くの賞を受賞しています。それは岡山理科大学の専門的な手厚いサポートのもとで普段から「仮説を立てて検証し、わかりやすくまとめる」という一連の流れをたくさん経験しているからこその成果といえるでしょう。
しっかりと基礎を固められていることが、生徒たちの応用的な研究の成果を支えているのだと考えています。
▲PC教室。1人1台の端末が利用でき、ICT環境も充実している
岡山理科大学附属中学校からのメッセージ
▲バレーボール部の部活動風景。生徒は勉強やクラブ活動、行事などに取り組み、自分らしく成長している
最後に、岡山理科大学附属中学校での学校生活に興味を持った読者の方に向けてメッセージをお願いします。
本校では周りに流されることなく「自分の道」を選択しながら歩いていける人材を育成しています。たくさんの選択肢を持ち、その中からできるだけ後悔のないルートを選ぶ、本校の教育を通じてそんな力を身につけてほしいと思っています。
それはお子様の「自立」に不可欠な力です。多様な価値観に触れて選択肢を増やし、自分の考えでそこから選択する。お子様にそんな自立の力を身につけてほしいと思われるご家庭には、ぜひ本校を選んでいただけると嬉しいです。
船津先生、本日はお忙しい中貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!
岡山理科大学附属中学校の進学実績
岡山理科大学附属中学校の外部受験の合格実績をみると、岡山朝日高等学校、岡山城東高等学校、岡山操山高等学校、岡山芳泉高等学校、倉敷青陵高等学校といった難関公立高校への合格者を輩出しています。
また、附属校である岡山理科大学附属高等学校の卒業後の進路をみると、京都大学や岡山大学をはじめとする難関国公立大学への進学実績がみられます。
■岡山理科大学附属高等学校の進学実績(公式サイト)
https://okayama.ridaifu.net/way/
岡山理科大学附属中学校の生徒・保護者の口コミ
▲文化祭などの行事に燃える、大学構内のコンビニで放課後の軽食を買うなど、生徒の笑顔があちこちで見られる
ここでは、岡山理科大学附属中学校に寄せられた口コミを一部抜粋して紹介します。
インタビュー内容にあった通り、生徒一人ひとりの進むべき道をしっかりとサポートする体制があることが口コミからも分かりました。保護者からは自由でのびのびとした雰囲気の中で子どもが楽しそうに通っていることを評価する声が多く聞かれました。
またここには記載していませんが、いじめや嫌がらせに対する徹底した指導体制がある点に魅力を感じる声も挙がっていました。
岡山理科大学附属中学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人加計学園 |
---|---|
住所 | 岡山県岡山市北区理大町1番1号 |
電話番号 | 070ー8300ー6170(入試係:イベント・出願関連専用) |
公式ページ | https://www.richuhp.info/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください