ぽてん読者のみなさんに、今注目の学校を紹介するこの企画。今回は千葉県柏市にある共学の私立中高一貫校である麗澤中学・高等学校をご紹介します。
麗澤中学・高等学校が最も大切にしていることは、感謝の心・思いやりの心・自立の心という“心の力”を磨くことです。6年間の道徳教育を通して、周囲の人に感謝できる人・社会や他者に貢献できる人を育てます。
その理念を体現していると言える同校の「SDGs研究会」の社会貢献活動は、国内外で大きな注目を集め、評価されています。
また、グローバル教育に力を入れているのも同校の特徴です。授業内外でのグローバル教員とのコミュニケーションの機会をふんだんに設けることで、実践的な英語力を身につけていきます。
今回は、教頭の古川先生、教諭でSDGs研究会顧問の瀧村先生、英語科主任でグローバル推進プロジェクトチームリーダーの林先生のお三方に、同校の教育理念や特徴的な学びについてお話を聞かせていただきました。
▲インタビューに答えてくださった古川先生(左)、瀧村先生(真ん中)、林先生(右)
この記事の目次
麗澤中学・高等学校の教育理念:"心の力"を持つグローバル人材の育成
まずは、麗澤中学・高等学校の教育理念について教えてください。
本校は、昭和10年に法学博士である廣池千九郎が道徳科学専攻塾を開塾したことから始まります。創立者は、「この世の中で一番大切なのは道徳。感謝の心・思いやりの心・自立の心という“心の力”を養ってほしい」という想いを持って学校を設立しました。
創立後、時代によってさまざまなことが変わってきていますが、このような心の力を育みたいという想いは、ずっと変わらずに本校の理念として存在しています。
御校のホームページを拝見したのですが、教育理念として掲げられている「知恩・感恩・報恩」という言葉がとても印象的でした。ここにはどのような意味が込められているのでしょうか?
今は便利な時代になって、機械の力でさまざまなところに行き着くことができるようになりましたが、それも先人の力や伝統などがあるからですよね。
「自分が豊かな生活を送ることができるのは、親をはじめとする周囲の人・先人・自然のおかげだ」という恩を知り、恩を感じ、そして最後は恩に報いて、後に続くものを育て、社会に貢献して欲しいというのが、私たちの願いです。
指先一つでいろいろ調べることができる時代ですが、このような大切なことは、体験して感じて知ってほしいと思いますね。
▲戦後の再スタート時につけられた校名の“麗澤”は、中国古典『易経』の言葉。「二つの並んでいる沢が枯れそうになったときも、お互いに潤し合って切磋琢磨して成長していく」という意味が込められている。
『心のカレンダー』を活用した日々の道徳教育の実践
今お話しいただいたような“心の力”を育てるために実施している、麗澤中学・高等学校ならではの取り組みがあれば教えてください。
毎日の取り組みとしては、朝のショートホームルームの時間に『心のカレンダー』を読むということを行っています。
『心のカレンダー』には、創立者による100以上もの格言の中から、生徒が親しみやすいものを31日分選抜したものが掲載されています。中学生の皆さんには、毎日そのカレンダーを読みながら、自分の生活の中であった出来事から感じたことを1分間スピーチで共有してもらっています。高校生は、格言を一つ選んで道徳の授業で体験発表をしています。
生徒のうちは自分の中で消化しきれていない部分もあるかとは思いますが、感謝の心、思いやりの心の大切さを感じながら学校生活を送ってくれているのではないかと感じていますし、社会に出てからさらに学びを深めてくれる機会が増えるのではないかと思っています。
卒業後、母校支援のために「職業別講演会」に来てくれるような方がとても多いんです。このような卒業生を見ていると、教育理念がしっかりと息づいているなと感じますね。
生徒主導で世界に挑戦するSDGs研究会の画期的な取り組み
▲SDGs研究会「EARTH」の皆さん。総勢70名の中学生・高校生がSDGs達成のための社会貢献の活動を行っている。
麗澤中学・高等学校が目指す「社会貢献できる人材の育成」というところに通じるかもしれませんが、御校のSDGs研究会は、メディアでも取り上げられるなど注目を集めていますよね。具体的な活動内容や活動を始めたきっかけなどを教えていただけますか?
SDGs研究会は本校の部活の一つで、“EARTH”というチーム名で、レモネードスタンドやフェアトレード商品の販売を通じたSDGsへの貢献活動を行っています。
英語の教科書に載っていた“Alex's Lemonade”という話(※)に感銘を受けた当時中学3年生の女子生徒が、自分の学校でもやってみたいと声をあげたことをきっかけにこの取り組みがスタートしました。
(※)小児がんと闘う少女アレックスが、自分でレモネードを販売して同じ病気に苦しむ子どものために寄付したという実話
実際に活動をはじめてみるとある程度うまくいったのですが、当然のことながら寄付できる額は売り上げから原価を差し引いた金額になります。これは世の中では常識であり、仕方のないことなのですが、その生徒は「100円いただいたのであれば100円が丸ごと寄付されないのはおかしい」と再び声をあげたんです。
そこで、次はフェアトレード(※)で取引した東ティモール産のコーヒー豆でドリップしたコーヒーの販売を始めました。その収益をレモネードの原価費用に充てることで、レモネードスタンド活動での募金額を全額寄付できると考えたんです。
(※)途上国にある生産者と公正な取引をすることによって、途上国の人々の生活を助けるしくみ
▲元バリスタの瀧村先生の教えにより、フェアトレードで仕入れたコーヒー豆を使ってハンドドリップで一杯ずつ丁寧に抽出し、提供している。
その後、フェアトレードの紅茶やチョコレートを使った新しい商品の開発をするなど、新しい企画を次々と立ち上げ、年間で100万円ほどのお金が動かせるようになりました。
SDGs研究会は部活動なので、本来ならば学校から部費の支給が受けられるのですが、それを一切受けずに必要な費用をこれらの販売利益でまかない、レモネードスタンド活動で集まった募金額の全額寄付を実現しているんですよ。
素晴らしいですね。レモネードスタンドによる寄付活動を行うだけでなく、その募金額を全額寄付できるようなビジネスモデルを自分たちで構築したわけですね。かなり本格的ですが、このモデルも生徒が自分で考えて作ったのでしょうか。
はい。コーヒー販売をはじめたとき、その利益も寄付に回すということも考えられたのですが、「自分たちの一連の活動を自分たちの収益だけで循環を回せるようになることこそが持続可能な活動につながるのではないか」という意見があり、このようなモデルが確立しました。
SDGs研究会:生徒の自主性を重視した社会貢献活動の実践
SDGs研究会では、現在何名くらいの生徒さんが活動されているのでしょうか。
中高生が一緒に活動をしていて、現時点(2024年6月)で部員は70名です。
多くの部員がいますが、それぞれのメンバーに何か役割があるのでしょうか?
SDGs研究会では、先ほど紹介したレモネードスタンドやフェアトレードの商品販売のほかにも、海岸清掃企画やボランティアサイト運営企画など、生徒ひとり一人がやってみたいと思った企画を立てて、年間のプロジェクトとして進めています。
現在全部で10個近くの企画があるのですが、それぞれの企画にリーダー、副リーダー、経理部員、システム開発部員、所属メンバーがいて、それぞれが役割を果たしながら活動しています。
毎年決められたことに取り組んでいるわけではなく、新しいことにも挑戦しているんですね。会社のようなしっかりとした組織の体制にも驚きました。
私たちは、この部活を「生徒一人ひとりのやってみたいを叶える場所」と定義をして活動をしています。社会のために何かしたいという共通の想いのもと、それぞれが主体性を持ってやりたいことにチャレンジしているんですよ。それぞれが違う課題に取り組んでいても、SDGsという世界共通の眼鏡をかけることで、みんなが同じ方向を向いて一丸となって取り組むことができると感じています。
組織の運営にあたってはもちろん私たち教員もしっかりとサポートはしますが、教員が何かを決めるのではなく、生徒たち自身に考えてもらっています。例えばシステム開発部員は、「活動を今よりも便利にする」というスローガンを掲げて、組織の体制を考えたり効率的に情報を管理する仕組みを構築したりする役割を担っているんですよ。
SDGs研究会:企業連携によるSDGs活動が進路選択へも影響
SDGs研究会が実施しているその他の活動を教えていただきたいです。
最近は、企業と連携した取り組みも行っています。例えば、大手セレクトショップと一緒に、廃棄されるジーンズからアップサイクル(※)のデニムエプロンを作成し、そのエプロンを着用して合同のワークショップを開催した事例があります。
(※)本来捨てられるはずの製品に付加価値をつけて新たな製品に生まれ変わらせること
その他にも、さまざまな企業と連携させていただいています。グローバルな視点を持ちながらもまずは身近な問題から取り組もうということで、“ローカル”にこだわって地元である柏市の百貨店や商業施設との連携を増やしているんですよ。
素晴らしいですね。実社会にも触れて多くの学びが得られているのではないかと思いますが、SDGs研究会の活動は生徒の進路選択にも影響を与えているのでしょうか?
SDGs研究会での活動は大学の総合型選抜入試の機会などでも活きてきますし、活動を通して視野が広がり、進路を選択するきっかけができたという生徒もいますよ。
最初にSDGs研究会を立ち上げた女子生徒は、もともと医療系の仕事に興味があったのですが、その意志を貫いて国立の医学部に進学を果たしました。自分の想い描いた道に向かって進むというロールモデルがあるということは、後輩たちにもとてもいい影響を与えているのではないかと感じています。
また、自分たちの活動がメディアで取り上げられたり、賞を受賞したり、世界的にも注目されたりなど社会的に評価されることで、生徒たちに自信が生まれ、将来の可能性が広がっているのではないかと思っています。
全員参加のイギリス研修も。“実践力”にこだわった英語教育
麗澤中学・高等学校では、グローバル教育にも力を入れていると伺っています。カリキュラムの特徴や身につく力について教えていただけますか?
コミュニケーションツールとして英語を使いこなせるようになるよう、“実践”にこだわって英語教育を行っています。
具体的には、中学1年生のときから、週に6コマある英語の授業のうち2コマはグローバル教員と呼ばれるネイティブスピーカーの専任教員によって行われます。
グローバル教員は、ただ生徒が発音に触れるためにいるわけではありません。日本人の教員が授業で教えたことをグローバル教員の授業で実践するということを目的としていて、日本人の教員とグローバル教員がしっかりと連携して授業のプランニングや学びの効果検証も一緒に行っているんですよ。
そして、中学3年生はイギリスに行って11日間のホームステイを体験します。ここを一つの大きな目標として、中学生たちは頑張っています。
もちろん高校に進学後もグローバル教員による授業は継続して行われますし、コースによっては週に11コマ英語の授業があるなど、重点的に英語を学ぶことも可能です。
▲中学3年次には全生徒がイギリスで11日間のホームステイを体験
御校のホームページで拝見したのですが、英語力検定GTEC(※)を全生徒が受験した結果、中3の生徒の平均スコアが全国の高2と同等のレベルだったそうですね。
(※)実践的な「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を測る英語の検定
実際にかなり実践力がついていると言えそうですが、林先生が日々生徒の様子を見ている中で、高い英語力を実感できるような事例はありますか?
グローバル教員は、朝のショートホームルームや掃除の時間などにも参加するのですが、授業外の場でも自然に話している様子を見ると、実践的な英語力が身についているというのを感じます。「今日はアメリカの創立記念日なんだよ」といったグローバル教員の雑談に対しても、自然と質問するような姿が見られます。
授業外でも交流をする場が当たり前にあると、海外の方と積極的にコミュニケーションを取るという姿勢も身につきそうですね。
おっしゃるとおり、英語の技能だけでなく、コミュニケーションを取る姿勢もしっかりと身につけて欲しいと思っていますので、さまざまな国のグローバル教員に話しかけ、その国に関することを聞いたり学んだりする機会をとても大事にしています。
現在、6名のグローバル教員がいて(2024年6月時点)、その出身国はアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアとさまざまです。過去にはフィリピン、ニュージーランド、ジャマイカの先生もいましたよ。
生徒の皆さんが英語に興味を持ってくれるように、先生方から何か働きかけを行っているのでしょうか?
やはり、使う目的があって初めて興味を持って学ぶものです。ほかの教科の先生もこのことを意識してくれていて、ホームルームにグローバル教員が来る日に一緒に質問したり、グローバル教員に話しかけることを促したりしてくれています。
実際に英語に興味を持ってくれている生徒は多くて、私は生徒と一緒に「ホスピタリTeeプロジェクト」という観光ボランティア活動なんかもやっています。
浅草に行って海外からの観光客におすすめのお店を紹介したり写真を撮ってあげたりするのですが、それがきっかけで大学で観光を学びたいと言っている生徒もいるなど、英語がきっかけに世界が広がっていく様子も見られますよ。
▲“I CAN HELP!”などと書かれたTシャツを着て観光客をサポートする「ホスピタリTeeプロジェクト」
言語技術授業との連携により、英語の表現力を育成
ほかにも、英語教育の特色があれば教えてください。
欧米では幼いころからパラグラフの作り方を学び、論理的に語ったり、書いたりする力を身につけていきますが、日本ではそれを苦手とする子ども達が多いのが現状です。そこで本校では、「言語技術」という独自のカリキュラムを用意してこうした力を磨いていきます。
「言語技術」の授業は日本語で行う授業ですが、この授業を通じて身につけるパラグラフ作成の基礎は英語にも共通するものなので、「言語技術」で学んだことを英語の授業で活かせるように、連携をとって学習を進めています。
また、アメリカの言語技術の先生をお招きして授業をしてもらうような機会も設けていますよ。
麗澤中学・高等学校の校風:思いやりの心を持つ生徒たち
学校の雰囲気についても教えてください。麗澤中学・高等学校にはどのような生徒が多いのでしょうか?
本校には、とても優しい生徒が多いです。人を思いやる気持ちや自分を大事にする気持ちがしっかりと育まれていると感じます。
私はグローバル教育を担当していますが、これからグローバル社会を生きるという観点からも、これはとても大切なことだと考えています。優しさや思いやりの心は世界共通のものですし、自分とは違う文化や価値観を受け入れる力はとても大切ですからね。
麗澤中学・高等学校からのメッセージ
最後に、麗澤中学・高等学校に興味を持たれた方に向けてメッセージをお願いします。
めまぐるしく変わる社会の中で、技術は日々進化していて、5年先もどういう時代になるか明確にはわかりません。そのような環境下だからこそ、他者との信頼関係を大切にし、人間らしい生活を築き、社会に貢献していって欲しいと思います。
もちろん、進学を見据えて学力や技能という部分にも力を入れていきます。しかし、創立者の理念でもある感謝の心・思いやりの心・自立の心を大切にし、社会に貢献できる生徒を育てていきたいと考えておりますので、ぜひ一度キャンパスにお越しいただき、本校の雰囲気を少しでも体感していただけたら嬉しいです。
ありがとうございます。インタビューを通じて、感謝の心・思いやりの心・自立の心を大切にするという御校の姿勢がとてもよく理解できました。
本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
国公立大学から難関私立大学まで:麗澤中学・高等学校の進学実績
麗澤中学・高等学校では、ほとんどの生徒が4年制の大学に進学しています。
2024年度の合格実績を見ると、京都大学、大阪大学、九州大学、東京外国語大学、お茶の水女子大学、筑波大学、千葉大学などの難関大学を含む国公立大学に、44名(現役生38名)が合格しています。
また、難関私立大学の合格者も毎年安定的に輩出しています。2024年度は、早稲田大学22名、慶應義塾大学3名、上智大学5名、東京理科大学28名という実績を残しています。
高い英語力を活かし、英検を活用した大学受験に挑戦するような生徒も増えているそうです。
■麗澤中学・高等学校の進路情報はこちら(学校公式サイト)
https://www.hs.reitaku.jp/course/
麗澤中学・高等学校の卒業生・保護者口コミ
▲キャンパスの中央に広がる芝生広場。東京ドーム9つ分の広大な敷地と緑豊かな環境も、麗澤中学・高等学校の魅力
ここでは、麗澤中学・高等学校の卒業生や保護者の口コミをご紹介します。
歴史や道徳を重んじていて、勉強以外の大切なことを教えてくれる。(保護者)
緑に囲まれていて美しい学校。教室から木々が見えたり鳥のさえずりが聞こえたりする。(保護者)
緑が多くて落ち着いた環境の中で、“心の力”が育つという口コミが複数見られました。先生が熱心に向き合ってくれるという口コミも多かったです。
麗澤中学・高等学校へのお問い合わせ
名称 | 学校法人廣池学園 麗澤中学・高等学校 |
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