独自性あるカリキュラムで注目を集める学校を特集するこの企画。今回は東京都多摩市にある私立の中高一貫女子校「大妻多摩中学・高等学校」を紹介します。
学校法人大妻学院の運営する大妻多摩中学・高等学校は、自然豊かな環境に広々としたキャンパスを構える完全中高一貫校です。科学教育プログラム(Science)、国際教育プログラム(Global)、教養教育プログラム(Liberal Arts)の頭文字を取った「Tsumatama SGL」と呼ばれる独自性ある教育を展開しています。
特に国際教育においては中学2年生全員を対象とした海外でのフィールドワークや、高校1・2年生の希望者対象に実施されるターム留学制度など、海外体験を活かした学びを展開しているのが特徴です。
今回は同校の教育理念やグローバル教育、理数教育の特徴について、入試広報部部長で英語科の田辺先生、国際教育部部長で英語科の天田先生、進路指導部部長で数学科の大竹先生にお話を伺いました。
この記事の目次
大妻多摩中学・高等学校の3つの柱「自立自存」「寛容と共生」「地球感覚」
▲インタビューにご対応いただいた田辺先生
最初に、御校の掲げる教育理念を教えてください。
大妻多摩中学・高等学校では「予測困難な未来社会の中で活躍・貢献する女性の育成」を教育目標とし、その実現に向けて「自立自存」「寛容と共生」「地球感覚」の3つの柱を教育理念に掲げています。
「自立自存」が意味するのは、主体的に行動して未来を切り拓くということです。「寛容と共生」は、自分とは異なる他者をありのまま受け入れ、お互いを尊重しながら共生するということです。そして「地球感覚」は、グローバル化が進む世界での出来事を「自分ごと」として感じていくということです。
グローバル化が進む社会の中で、自分と異なる価値観を持つ他者を認めて共存し、世界の出来事に敏感に反応し、自分の力を活かして今後の社会に貢献できる人を育むというのが本校の教育理念の意図です。
教育理念のもと、生徒主催の学校説明会など生徒主体の取り組みが多数生まれる
今ご説明いただいた教育理念が、御校の生徒さんの行動などに表れていると感じる瞬間はありますか?
学校側が協力を呼び掛けたことに対して、手を挙げて参加してくれる生徒が多いと感じます。また文化祭の際に高校生がボランティアで学校案内をしているなど、他者のために行動する姿勢が自然と根付いていると感じる瞬間は多いですね。
それをよく表しているのが、2023年度に初めて実施した生徒主催の学校説明会です。企画から運営まですべてを生徒のみで行い、教員は当日トラブル対応のために数人程度待機するのみでしたが、教員側が何もすることがないくらいとても良くやってくれました。学校の良いところだけではなく問題点、それに対する解決策を生徒目線で説明しており、我々も聞いていて感心しました。
実際に学校説明会にお越しいただいた受験生の保護者の方からも、大変好評をいただきました。本校での生徒の成長をリアルに感じ取っていただける機会になったのではないかと思います。また説明を行う生徒の保護者の方もお越しいただき、お子様の晴れ姿を見守っていたのも印象的です。
豊かな自然の中で過ごす、女子校ならではののびのびとしたスクールライフ
御校には全体的に、そういった積極的な生徒さんが多いのですか?
大人しい子から元気な子までさまざまですが、全体的にのびのびと元気に過ごしている生徒が多いです。本校は豊かな自然の中にあり、さらにキャンパス全体が木で囲まれています。ある種外界から隔離された別世界のような空間の中、女子生徒だけで学校生活を過ごせるということで、ありのままの自分をさらけ出せるのではないかと思っています。
そういう豊かな自然環境に惹かれて本校を選ぶ生徒も多いからか、純粋な生徒が多いとも感じます。とても素直で授業を聞く姿勢も真面目で、こちらも常に誠実に生徒に接していかないといけないな、と襟を正しています。
中学校の全員が海外経験をする国際教育プログラム
▲国際教育部部長で英語科の天田先生
御校の”Tsumatama SGL”の中でも特徴的な国際教育プログラムについて伺います。まずは中学校での主な取り組みを教えてください。
中学1年生の10月に、英語だけを使って過ごす3日間の「グローバル・インタラクション・チャレンジ」という取り組みを実施しています。クラス関係なく編成した5、6人のグループに対して海外から日本の大学に通う留学生が1名ずつ付き、3日間英語漬けでコミュニケーションを取るという取り組みです。最終日の3日目に生徒が自分の特技を英語でスピーチするのがゴールで、そこには保護者の方もお招きし、お子様の姿を見ていただいています。
この3日間で英語で話す楽しさを知った上で、中学2年生の夏に全員でオーストラリアへの4泊6日の修学旅行を行います。この修学旅行は「グローバル・キャリア・フィールドワーク」という名称で、新型コロナウィルスの影響で延期になっておりましたが、2023年度に初めて実施できたプログラムです。単なる海外旅行ではなく、オーストラリア現地で働く日本人の方にインタビューをするというキャリア教育を含めたフィールドワークになっているのが特徴です。
中学3年生ではオーストラリアで得た学びや気づきについて調べ学習を行います。高校1年生から探究学習が始まるため、中学3年生の調べ学習はその前段階という位置づけになっています。
中学3年間の国際教育プログラムは、生徒さんの成長にとってどのような効果があると思われますか?
英語漬けの3日間を過ごしたり海外でのフィールドワークをしたりというのは、もちろん中学生にとって大変なこともあるはずです。しかしそういう経験をするからこそ主体性やチャレンジ精神が生まれ、田辺が話したような生徒による主体的な活動につながっているのだと思います。
また、海外経験による視野の広がりも重要なポイントです。例えば日本とオーストラリアでは働き方にも大きな違いがあり、比較的長時間労働の傾向がある日本と比べてオーストラリアでは、自分の時間、家族との時間を大切し、仕事に対する考え方が日本とは異なります。現地でそれらに触れ、世界の多様性を学ぶきっかけにもなっています。
またオーストラリアに行くまでは言葉が通じるか不安を感じる生徒もいるのですが、実際に現地では英語が完璧じゃなくても積極的に話している人が多いですね。そういう姿を目の当たりにして「英語が完璧でなくても海外で働くことができる」という気づきを得て、働く場所を海外に広げることを検討する生徒も出てきています。
高校では「ターム留学」で、さらに国際感覚を磨く
高校での国際教育プログラムの取り組みについても教えていただけますか?
高校の国際教育プログラムで特徴的なのが、3ヶ月を海外で過ごす「ターム留学制度」です。高校1、2年生を対象に50人の枠があり、世界6カ国、3つのエリアにある複数の提携校から留学先を選択できます。ターム留学に魅力を感じて本校に入学する生徒もいるほど人気の制度です。
ターム留学を経験して帰国した生徒さんは、やはり大きく成長しているご様子が見受けられますか?
そうですね。語学力という点もそうですが、本校のターム留学では現地での探究活動も行っているため、その報告書を見ても現地での経験が活きていると感じます。例えばニュージーランドに留学した生徒は「環境問題」をテーマに現地でのインタビューや統計データを交えて成果発表をしており、読んでいても興味深いなと感心しました。
一方で、3か月の海外生活の中で楽しいことばかりではなく、辛いことを経験したという話も生徒から時々聞きます。お客様として手厚く扱ってくれる学校ばかりではないので、厳しさを感じる生徒もいます。しかし大変な経験をすることこそがターム留学の醍醐味だと思っているため、辛い経験をしたという生徒には「貴重な経験ができたんだよ」と伝えています。生徒も「これを乗り越えたから、これからは何でも乗り越えられる気がする」と、その経験をこれからの糧にしていこうと前向きな姿勢が見られます。
中高6年間の経験が、海外大学への進学など多様な選択肢につながる
御校での6年間の国際教育プログラムは、生徒の皆さんの進路選択にも影響を与えているのでしょうか。
文系生徒のみならず、理系志望の生徒も多くターム留学を利用しています。昨年度は30名中、約半数が理系の生徒でした。海外で学ぶことで、国内のみならず、海外大学も含め、様々な選択肢から進路選択していきます。
2023年度の卒業生からは2人、海外大学に進学しました。またニュージーランドにターム留学に行ってマオリ文化に興味を持ったことから、その研究ができる大学を志望したという生徒もいます。難関大学だったのですが見事合格し、希望するゼミに入って勉強をしているそうです。
海外大学への進学に限らず、さまざまな形で学びが広がっているんですね。
ターム留学での経験や現地での探究活動は大学入学後、更にその先の人生でも活かせるものです。本校での経験を、将来望む道に進む上で大いに活用してもらえたらと思います。
今後オーストラリアの修学旅行を継続的に実施することで、海外に目を向ける生徒がもっと増えてくると考えています。その際、海外も含めた希望の進路実現をサポートできるよう、学校としてもさまざまな制度を整えていけたらと思っています。
楽しく学び、理科・数学への好きを生む科学教育プログラム
▲進路指導部部長で数学科の大竹先生
続いて御校の科学教育プログラムについて伺います。理科や数学が好きな生徒を増やすための取り組みを実施されているとのことですが、具体的な内容を教えていただけますか?
科学教育プログラムにおいてまず大切にしているのが、楽しみながら学ぶ環境を提供することです。その点で、本校の豊かな自然や充実した設備は大きなメリットとなっています。野生の動植物が学校の周りに多くあり、実験室でも多くの生き物を飼育しています。また理科の実験室は全部で5つあり、さらに実験用具もすべての実験室で1人1つ利用可能です。
“本物”の教材に触れながら一人ひとり主体的に実験に参加できるのは、本校ならではの強みでしょう。
実験では例えばどのような内容を行うのですか?
中学1年生は学校の周りにある草花を取ってきて顕微鏡で観察するところから始めます。中学3年生では牛の目玉を解剖、高校2年生ではラットを解剖と、段々とレベルアップしています。本物の生き物を使用するので躊躇してしまいそうなものですが、本校では女子校ということもあってか皆ニコニコしながらやっています(笑)。
身近なものと理科を結び付けるというテーマでの実験もしており、例えば化学反応の例としてカルメ焼きをつくるなど“美味しい”実験もしています。これも生徒には好評ですね。
なるほど。数学では楽しく学ぶためにどのような取り組みを行っていますか?
中学校の数学では基礎を身につけるために問題集を用いた学びにも力を入れていますが、一方でそればかりにならないように心掛けています。例えば「数学マラソン」という、廊下に置いた課題を毎日解いてその成果を競い合う取り組みをしたり、「作問グランプリ」という生徒が数学の問題をつくる課題を出したりと、楽しくて数学を身近に感じられるような仕組みを取り入れています。
中学3年生では「数学探究」という、本校オリジナル教材を使った授業を行っています。PCR検査やバーコードなど、身近なところに数学がどのように活かされているのかを学ぶもので、楽しみにしてくれている生徒が多い授業です。生徒が目の色を変えて楽しめるよう、授業内容にさまざまな工夫を凝らしています。
理数系の楽しさを実感し、多くの生徒が理系コースを選択!
女子校の場合、一般的に理数系を選択する生徒は少ないイメージがありますが、科学教育プログラムによって理数系を選択するようになった生徒さんなどもいるのでしょうか。
確かに元々数学を得意とする生徒はあまり多くはないのですが、授業で楽しさを発見して理数系を選択したという生徒の話を聞くこともあります。教員冥利に尽きるなと思う瞬間ですね。
本校では高校2年生から文系・理系のコースに分かれるのですが、全体の3割から4割は理系を選択しているため、女子校の中では比較的多いのではないでしょうか。
2023年度はこれまでにない傾向が出ており、何と理系選択の生徒が5割を超えたんです。医療系の大学への合格者が30人を超えるなど、進路にもこれまでにない変化が出ています。2023年度は異例かもしれませんが、理系への興味を持つ生徒は徐々に増加しているのではないかと思います。
大妻多摩中学・高等学校からのメッセージ
最後に、大妻多摩中学・高等学校に興味を持ったお子様や保護者の方にメッセージをお願いします。
本校のスローガンは「わたしの力を、未来のために」です。生徒一人一人が少しでも今後の社会に役立つ力を身に付ける、という意味でこの言葉を使用しています。
自分の力を活かして自分が住んでいる世界に役立ちたい、「世界のために貢献できる人を育てたい」という本校の思いに共感いただける方は、まずは足を運んで、豊かな自然や広いキャンパスなど、本校がどのような学校かを実際にご覧頂きたいです。周囲に何でもあるような環境ではありませんが、このキャンパスの中で学ぶ楽しさを見つけ、勉強を好きになってもらえるようさまざまな工夫をしています。
本校で自分のやりたいことを見つけ、その夢を実現するために6年間頑張りたいと思う方は、ぜひ本校にお越し下さい。
田辺先生、天田先生、大竹先生、本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!
大妻多摩中学・高等学校の進学実績
大妻多摩中学・高等学校の過去3年間の進学実績をみると、例年約9割の生徒が四年制大学に進学しています。国公立大学では東京大学をはじめ北海道大学や東北大学、大阪大学といった旧帝大への合格者も輩出しています。そしてその多くは理系の学部に進学しています。
1994年に中学が設立されて以降、理系を選択する生徒が毎年35%以上おり、30年近く前からリケジョを多く輩出する理系に強い学校ですが、昨年はついに理系選択が50%を超えました。中でも医療系を選択する生徒が多く、その結果北里大学への進学者が最も多くなりました。
理系に強い理由として、理系選択をする生徒の中に英語を得意とする生徒が多いという特徴が挙げられます。4技能を伸ばすための英語学習を中学1年生から行っているため、英語に親しみを感じる生徒が多く、理系選択者でも英語が得意、さらに理系選択者だから英語が得意という傾向が見られます。
その特徴を更に伸ばすために、2020年に英語に特化したクラスである「国際進学クラス」を新設しました。英語が得意イコール国際系・外国語学部系に進学ということではなく、英語が得意だから理系も選択する、若しくは英語が得意だから理系を選択する、という人材の育成を目指しています。今後はさらにグローバルな活躍を見越した進路選択が増していくことが見込まれています。
■大妻多摩中学・高等学校の進学実績(公式サイト)
https://www.otsuma-tama.ed.jp/guidance/univ-pass/
大妻多摩中学・高等学校の生徒・保護者からの口コミ
ここでは、生徒や保護者の方から大妻多摩中学・高等学校に寄せられた口コミを一部抜粋して紹介します。
多摩市という環境や女子校ならではののびのびとした雰囲気を評価する声が、生徒からも保護者の方からも多く聞かれました。学習面では授業が面白い、進路指導が手厚いという点が高評価のようです。
大妻多摩中学・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人大妻学院 |
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住所 | 東京都多摩市唐木田2-7-1 |
電話番号 | 042-372-9113 |
問い合わせ先 | https://www.otsuma-tama.ed.jp/contact/ |
公式ページ | https://www.otsuma-tama.ed.jp/ |
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