大妻中学高等学校の校門

模擬国連でお弁当づくりも。大妻中学高等学校のユニークなグローバル教育とは|中高一貫校

ぽてんをご覧の皆様に、注目の学校をご紹介する本企画。今回は、東京都千代田区にある私立の中高一貫女子校「大妻中学高等学校」をご紹介します。

100年超の歴史を持つ同校は、「恥を知れ」という校訓のもと、自立心と自律性を養い、社会に貢献できる人材になるための教育に取り組んでいます。その目標の下、グローバル教育や探究学習に力を入れており、生徒一人ひとりが自分の興味関心に応じて成長できる機会を提供しています。

主な教育の特色としては、中学1年生で展開されている「グローバルスタディーズ」や、全学年で取り組む模擬国連プログラムなど、独自のグローバル教育カリキュラムがあります。また、高校では外部講師を招いての探究学習も行われ、社会課題に取り組む機会も豊富です。

今回は、大妻中学高等学校の教育理念やカリキュラムの特徴について、入試広報部長の長谷先生にお話をうかがいました。

自らを戒める校訓の下、人格と知性を磨く大妻中学高等学校の教育理念

大妻中学高等学校の体育祭でパフォーマンスをする応援団

▲体育祭でエネルギッシュにパフォーマンスする応援団

編集部

最初に、大妻中学高等学校の沿革について教えてください。

長谷先生

本校の創立は1908年で、大妻コタカが東京都千代田区に開いた裁縫・手芸の私塾が源流となっています。その後、1947年に大妻中学校が、1948年に大妻高等学校が設立され、現在に至ります。

運営母体である「学校法人大妻学院」は、創立から110年を超え、4つの中高に加えて大妻女子大学・短大・大学院を擁する女子のための総合教育機関となりました。

編集部

教育理念や校訓についておうかがいできますでしょうか。

長谷先生

大妻コタカは常々、自分を律する心の大切さを説いていました。それを表しているのが校訓「恥を知れ」です。これは他人に言うことではなく、自分に対する戒めの言葉です。自分の今の行動はこれで大丈夫かどうか、自分を律したり、自問自答したりするよう求めるものです。

その根本にあるのは、相手に対する尊敬の心、思いやりの心、自分が受けている恩恵に感謝する心であり、さらに自問自答することで「もっと自分は挑戦できるのではないか」というチャレンジ精神にもつながります。入学早々は、自問自答する意味に気付かなくても、成長するにつれ、多くの生徒がその大切さを理解するようになります。

この「恥を知れ」は、制服につける校章バッジの裏側に刻まれています。誰にも見えない言葉ですが、校章をつけている自分自身の方には常に向いているわけです。ふとした時に、生徒はそのことを思い出し、校訓について少し考える機会になればと考えています。

英語を「学ぶ」のではなく「使う」大妻中学高等学校のグローバル教育

ここからは大妻中学高等学校が注力している、英語と総合的な学習の時間を組み合わせた「グローバルスタディーズ」など、実践的なグローバル教育についてうかがいました。

英語での思考力とコミュニケーション力を養う「グローバルスタディーズ」

編集部

大妻中学高等学校では、グローバル人材の育成に力を入れているそうですね。その特徴について教えてください。

長谷先生

本校では、グローバル社会を生きるための思考力と、コミュニケーション能力の習得を目指し、中学1年生からグローバル教育を始めています。

特徴的なのが、英語と「総合的な学習の時間」を組み合わせた授業「グローバルスタディーズ」を設けていることです。これは、週1時間の授業で、英語を学ぶのではなく、英語を使って何かに取り組むということに重点を置く内容となっています。

編集部

グローバルスタディーズでの取り組みを具体的に紹介いただけますか。

長谷先生

中学1年生の1学期、最初のグローバルスタディーズで行われるのがトランプを使ったゲームです。各グループにトランプと簡単なルールが配られ、ゲームを開始します。勝った人はそのグループを抜け、隣のグループに移ってまたゲームに参加するという繰り返しとなります。

ここで特徴的なのは、グループごとにほんの少しだけゲームのルールが異なっていることです。グループごとに違う環境があり、生徒はそのルールに順応していく、それを繰り返すのです。

ゲームの真意は、グローバルで活動する感覚を生徒に感じ取ってもらうことにあります。食事や睡眠など、どの国でも生活はほとんど同じですが、やはり少しルールや慣習が違ってきます。つまり、このゲームと似た構造になっているわけです。

少しの違いに順応するのか、あとから来た人に合わせるのか、合わせたくないときはどうしたらいいのか。グローバルで生きていくなかでは様々な差異を感じる局面が出てきますが、そんななかで対応することの大切さを学んでいきます。

模擬国連に参加。各国の大使になりきって考える「SDGs弁当」とは

大妻中学高等学校が実施する模擬国連の風景

▲白熱する模擬国連の開催風景

編集部

国際感覚を理解するような取り組みがさらに発展すると、どのような学びの機会があるのでしょうか。

長谷先生

グローバルスタディーズの集大成が、中学1年生の3学期に行う模擬国連です。模擬国連とは、学生が各国の大使になりきり、実際の国連の会議と同じようにする活動です。

ここでは「SDGs弁当を作る」という議題が与えられます。これは世界中の皆が幸せに食べられる弁当を考案するというもので、生徒たちは各国の国益を守りながら、議論し、交渉していきます。

編集部

すごく面白いプログラムですね!生徒の皆さんはどんなお弁当を考案するのでしょうか。

長谷先生

生徒たちは各国の大使となって、その国の立場に立って考えます。

例えば、サウジアラビアの大使であれば、水をあまり使わずに作れる野菜を使ったお弁当を提案します。食糧が少ない国の大使の役になる子もおり、単に理想的なお弁当を作るのではなく、その国の現状や将来の展望まで調べて考え、最終的にはすべて英語でスピーチします。世界的な視野で物事を考える力を身につける機会になっていますね。

中3から高1になると、模擬国連にさらに本格的に参加します。首都圏の各校から500人ほどの生徒が集まる大規模なもので、中には英語でスピーチや決議案作成を行う上級者向けの議場もあります。2023年はそれぞれの国の立場での防災対策を考える「国連防災世界会議」を実施したのですが、内閣府やJICAの方も視察されていました。この活動は「中高生が社会を変える取り組み」として高い評価を受け、国連機関のホームページでも取り上げられました。

編集部

中学1年生から模擬国連に参加することで、生徒たちはどんな学びを得るのでしょうか。

長谷先生

ただ英語を習得するのではなく、何らかの目的を達成するために英語を使うことを知ります。そして、ある国の立場に立って議論しますので、その国の現状や課題、世界におけるその国の立場などについて理解し、物事をグローバルで考える力が身に付きます。

イングリッシュキャンプなど、英語力・国際力を養う様々な取り組みがある

編集部

その他に、英語力を養うための実践的な取り組みがあればご紹介ください。

長谷先生

1つは、オンライン英会話です。授業内で年間7回、家庭での時間を合わせると最大20回くらいまで、フィリピンの先生と英語で話す機会を設けています。

このほか、学校に外部のネイティブスピーカーの講師をお招きし、英語漬けの3日間を過ごす「イングリッシュキャンプ」も中学1年生を対象に行っています。互いに自己紹介をしたり、インタビューしたりと、生きた英語に触れる機会となっており、毎年非常に有意義なものになっています。

高校生になると希望制で、英国、もしくはオーストラリアへの2週間の海外研修があります。さらに3人ほどの優秀な生徒に対しては、英国で10日間、ケンブリッジ大学やユニバーシティ・ロンドン・カレッジといった世界トップレベルの大学で最先端の講義を聞き、社会課題を討議する「UCL-Japan Youth Challenge」というプログラムもあります。

このプログラムには日本・イギリスから生徒が参加していて、狭き門ではあるのですが、生徒は大変な刺激を受けて帰ってきますね。

システム・デザイン・データの3つの思考法を鍛える探究学習

大妻中学高等学校の生徒が校外で発表する様子

▲リクルートが主催するアントレプレナーシップ・プログラム「高校生Ring2023」でプレゼンする生徒たち

編集部

大妻中学高等学校では探究学習にも力を入れていると伺いました。どのような特徴がありますか?

長谷先生

本校の探究学習は思考力を鍛えることに重点を置いています。

特に高1と高2で行う探究の授業では、物事の全体像をシステムとしてとらえ解決策を考える「システム思考」や、消費者の視点で課題を探し解決策を探る「デザイン思考」、データを分析して科学的に考える「データ思考」といった様々な思考法を身につけることを目的としています。そういった知識については、大学やビジネススクールの先生を招いて講義してもらうこともあります。

具体的な授業の進め方としては、まず中学では論文の書き方や討論の方法を学びます。そして、高1では先ほどの3つの思考に沿って自ら社会課題を見つけ出し、その解決策を考え、発表します。しっかり思考するという習慣を身につけることで、どんなテーマが来ても対応できるようにすることを目標にしています。

編集部

先生が印象に残っている発表はありますか。

長谷先生

高校1年生の「デザイン思考」をテーマにした際の発表が印象に残っています。このテーマでは生徒がグループを組んでビジネスプランを発表したのですが、あるグループは駅構内での外国人旅行者の方々の困りごとに着目しました。

例えば東京駅などの大きな駅で、同じフロアの移動ならともかく、階をまたぐと途端に位置がわからなくなってしまうという経験は誰しもあると思うのですが、生徒たちもそれを経験したそうです。それを基に、さらに行き方が不案内な外国人旅行者だとより困るのではないかと考えたのですね。

そこで、平面の移動に強いGPSだけではなく、別の測定通信機器(ビーコン)も組み合わせることで、立体的に位置情報がわかるアプリを提案しました。身近なところで問題点をとらえ、解決方法としてある程度現実的な提案をしている点に感心したのを覚えています。

また、学年は異なりますが高校2年生では「女子中高生の摂食障害を引き起こす原因と対策」について発表した生徒がいました。母校の先生に協力を頼みアンケートを行うなどしてしっかりと研究をしていました。この生徒は、課題研究を発表する場である「高校生国際シンポジウム全国大会」で2023年、優秀賞に輝きました。

ほかには「なぜ美術館には日本画よりも西洋画の方が圧倒的に多いのか」という素朴な疑問から原因を考察した生徒もいました。

編集部

身近な疑問や社会課題に関する意識から出発しているのだと思いますが、どんなモチベーションがあるのでしょうか?

長谷先生

単純に生徒が興味を持つテーマなので意欲があるほか、同級生と研究成果を共有することで、互いに刺激し合える環境ができていることも大きいです。この経験は大学や社会に出てからも必ず役立つと確信しています。

なお、高校2年生の場合、最終的には6,000字から8,000字の論文にまとめるため、夏休みを利用して本格的に取り組む生徒も多いです。調べれば調べるほど新たな疑問が生まれ、それをさらに調べていくという探究のサイクルを自然とできるようになっていますね。

大妻中学高等学校からのメッセージ

大妻中学高等学校入試広報部長の長谷先生

▲取材にご対応いただいた長谷先生

編集部

最後に、大妻中学高等学校に関心をもった読者の方にメッセージをお願いします。

長谷先生

本校は1学年で1クラス40人が7クラスある、比較的規模が大きい学校ですが、人数が多いことで、必ず自分と気の合う仲間が見つかるというメリットや、多様な個性を受け入れやすい雰囲気もあります。

先ほどお話ししたグローバル教育や探究学習が、多様性を尊重する姿勢を育てるのに大きな役割を果たしていますし、帰国生徒との交流も日常的にあります。それゆえ、寛容な心が育ち、のびのびと勉強にスポーツに、好きなことに励める環境であると自負しています。

一方で、校訓である「恥を知れ」が求めるように、自立心と自律性を育む目標のもと、生徒を「言われなくてもやれる人」「言われたことに対して適切に反論できる人」に育つ土壌も十分にあると考えています。興味を持った方は、ぜひ校内見学や行事・説明会などにお越しいただければと思います。

編集部

本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

大妻中学高等学校の進学実績

大妻中学校の校門

近年、大妻女子大に進学する生徒は少なく、難関の国公立大学、私立大学に数多くの合格者を輩出しています。

2023年度の進学実績では、国公立大学では東北大学(1人)、一橋大学(3人)、東京医科歯科大学(2人)、東京工業大学、東京外国語大学(各1人)となったほか、私立大学では、早稲田大学(37人)、慶應義塾大学(27人)、上智大学(48人)など高い実績を挙げました。また海外の大学の進学実績も目立ちます。

■大妻中学高等学校の進学実績(公式サイト)
https://www.otsuma.ed.jp/career/record

大妻中学高等学校の卒業生・保護者・在校生の口コミ

ここでは大妻中学高等学校の卒業生、保護者、在校生から寄せられた口コミを、一部抜粋して紹介します。

(卒業生)
探究学習で自分で課題を見つけ、解決策を考える経験は大学でとても役立っています。グループワークの経験も多かったので、大学でのディスカッションにもスムーズに参加できています。

(保護者)
娘が自主的に勉強するようになりました。探究学習を通じて、自分で考え、行動する力が身についたようです。また、多様な友人と交流する中で、コミュニケーション能力も向上したと感じます。

(保護者)
帰国生徒との交流や海外研修のおかげで、娘の視野が広がりました。英語力も向上し、将来は海外大学への進学も視野に入れています。

(在校生)
グローバルスタディーズの授業が面白いです。英語を使って実際の世界問題について考えるので、単なる語学学習を超えた学びができています。模擬国連では他国の立場に立って考える力が身につきました。

(在校生)
大規模校ならではの多様な選択肢があり、自分に合った活動を見つけられました。先生方も一人ひとりの個性を尊重してくれるので、のびのびと学校生活を送れています。

寄せられた口コミでは、先生方と生徒との距離が近く、先生が何事にも親身に指導する姿勢を評価する声や、生徒一人ひとりの個性を認めてくれる雰囲気を支持する感想も見られました。

大規模校ゆえのおおらかさがある一方、生徒一人ひとりを意識したきめ細かい指導がある点に関心が寄せられているようです。

大妻中学高等学校へのお問い合わせ

 

運営 学校法人大妻学院
住所 東京都千代田区三番町12番地
電話番号 03-5275-6002 (入試関係)
問い合わせ先 https://www.otsuma.ed.jp/
contact
公式ページ https://www.otsuma.ed.jp/

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