この記事では、特色ある教育に取り組む注目の学校として、大阪府にある共学の私立小学校「追手門学院小学校」をご紹介します。
1888年に創設され、西日本最古の私立小学校でもある同校は、これからの時代に世界で活躍できるリーダーの育成を掲げ、挑戦力・探究力・表現力を伸ばす教育に力を入れています。
2020年には「世界・グローバル・宇宙・人間」をキーワードとする「国際教育センター」を立ち上げ、日本を知るプロジェクトやシリコンバレーを訪れるプロジェクトなどを通じて真のグローバル人材の育成を推進しています。
今回は、同校のグローバル教育や、体験を重視する教育について、校長の井上恵二先生に詳しくお話を伺いました。
この記事の目次
挑戦力・探究力・表現力を伸ばしリーダーを育成する追手門学院小学校
まず、追手門学院小学校の教育理念をお聞かせください。
本校は「社会有為の人材の育成」を教育理念とし、今の時代を生きる子どもたちを社会の役に立つリーダーへと育てることを目指しています。
そのためには、挑戦力・探究力・表現力をしっかりと育みたいと考えています。「挑戦力」は、先が見えない時代でも臆病になりすぎずに一歩踏み込んでいける人、「探究力」は何事にも粘り強く向き合って真理を見つけ出すことのできる人に必要な力です。さらに、挑戦力と探究力で得た学びを、周りにしっかりと伝えるためには「表現力」も欠かせません。
この3つの力があってこそ、グローバルリーダーとして活躍する「社会有為の人材」になれるのだと考えています。
教育目標には、敬愛・剛毅・上智を掲げていらっしゃいますね。
児童には、高い学力・強い体・粘り強い心・親切という言葉に置き換えて伝えているのですが、特に敬愛の心を育てることが人間を育てるうえで最も大事なことだと考えて指導しています。
例えば、礼儀礼節のしつけ教育として、登校時は校門で立ち止まって礼をし、下校時も校門で振り返って礼をします。校舎や先生や職員、すべてに対して「ありがとう」や「よろしくお願いします」という思いを伝えるためで、これは1888年の開学時から受け継がれてきた本校の精神です。
▲礼儀礼節を重んじる追手門学院小学校。児童は毎日すみずみまで丁寧に掃除する。
「国際教育センター」の創設も。追手門学院小学校のグローバル教育とは
追手門学院小学校では明治の開学時からグローバルに活躍できる人材の育成を掲げ、当時からネイティブ教員による英語の授業を導入するなど、一貫して国際教育に力を入れてきました。
1971年からは国際交流がスタート。当時は訪れるにはパスポートが必要だった沖縄県への訪問から始まり、ハワイやオーストラリア、韓国、台湾などの学校との交流へと活動が広がっていきました。
そして2020年、これからのグローバル社会で活躍する真のグローバル人材を育てるための環境作りを強化するため、「国際教育センター」を立ち上げました。
ここからは、国際教育センターなどの同校の国際教育の取り組みについて詳しく伺います。
日本の良さや世界の最先端に触れる「国際教育センター」のプロジェクト
2020年に立ち上げた「国際教育センター」の目的について教えてください。
国際教育センターでは、子どもたちが20年後、30年後に真のグローバルリーダーになれるよう、「世界・グローバル・宇宙・人間」という4つのキーワードのもと教育を行っています。
「世界」は、日本との比較を通じて世界の歴史や文化を知ることで、「グローバル」は、ものごとを地球規模の観点から見て考えることです。
そして、子どもたちが大人になった頃にはロケットに乗って人間が宇宙空間を移動するような時代が到来するかもしれません。「宇宙」というキーワードには、そんな世界でフロントランナーとして活躍するために宇宙で行われていることに目を向け、宇宙に夢を描ける人になってほしいという思いが込められています。
また、どんなに技術が発展しても人との関係や心の繋がりは失われることはありません。「人間」には、優れた人柄を大切にしてほしいという思いが込められています。
4つのキーワードのもと、どのような活動を行っているのでしょうか?
まず、4年生から6年生の希望者を対象にした「NIPPON再発見プロジェクト」があります。グローバル人材として活躍するためには、まずは日本のことをしっかり知っておかなければなりません。そこで、能楽の文化を学んだり、里山に行き田作りを見たり食文化に触れたりと、日本の古き良きものも学ぶような体験をしています。
▲NIPPON再発見プロジェクトのようす
また、「宇宙未来プロジェクト」として、JAXAの筑波宇宙センターや、東京の国立科学博物館や日本未来科学館などを訪問し、宇宙や世界の最先端に触れています。
2024年には新たに「サン(SUN)プロジェクト」が始まりました。「SUN」は、IT企業が集まるアメリカのシリコンバレー、国連(United Nations)、NASAのそれぞれの頭文字を合わせたもので、人類の最先端が生まれるさまざまな場所に子どもたちを連れていきたいと考えています。
2024年の夏は12名がシリコンバレーのGoogleやAppleの本社などを見学し、スタンフォード大学が世界中の小中高校生を集めて行うプログラミングのキャンプにも参加する予定です。
海外姉妹校と活発に交流し、日常的に国際感覚を養う
50年以上前から行っているという国際交流についても、ご紹介いただけますか?
希望する児童は長期休みを利用してハワイやオーストラリアに行き、ホームステイしながら姉妹校で授業を受けたり、伝統文化に触れたりすることができます。
また、オンラインの国際交流にも力を入れており、1年生から6年生まで合わせて年間40回以上開催しています。オンラインで何度も交流しているうちに、自分たちの学級と仲の良い学級が海外の姉妹校に出来上がります。
姉妹校の生徒が実際に本校を訪れることもあり、子どもたちは画面越しに話していた友達が実際に目の前にいることにとても興奮していますよ。
常にグローバルな刺激を受けることができる環境があるのですね。
その通りです。交流の様子を収めた映像は校舎の入り口のモニターで流しており、みんなが見られるようにしています。それを見て「次は私も行きたい!」と言い出す子もいて、好奇心の刺激になっていると感じます。
体験的な学習を重視。追手門学院小学校の「感性を磨く教育」
追手門学院小学校では感性や心を磨く教育も大切にされていると伺いました。
私たちは、感性は体験的な学習を通じて磨かれると考えています。もちろん、基礎学習もしっかり行いながら、体験を通じて自己肯定感や自己有用感といった将来役に立つ感性を伸ばしたいと考えています。
体験学習としては、どのようなものがありますか?
例えば臨海学舎では、ただ海の楽しさや怖さを知るだけでなく、時間によって海岸の様子が変わることに気づいたり、塩水に入ると体が浮くことに驚いたりしてもらうような体験を意識しています。
ほかにも、林間学舎などでは薪に火をつけて焚き火したり、飯ごう炊さんに挑戦したりします。今はあらゆるものが電化されており、炎を知らない子もいるので、これも貴重な体験だと思います。
▲炎を目の前にする子どもたち
▲林間学舎では、田植えの体験も。
体験学習は、子どもさんにどのような影響を与えているとお感じですか?
文化祭では2年生と4年生と5年生が劇発表を行うのですが、何百人という観客を前に自分のセリフを言うという経験は、特に児童の自信につながるものになっているようです。
劇の経験をきっかけに国語の時間にハキハキと教科書を読めるようになったり、恥ずかしがり屋の子が先生と積極的にお話できるようになったりと、それぞれが大きく成長しています。
▲文化祭での劇発表は、子どもたちの自信につながっている。
追手門学院小学校はICTの活用やIT教育にも積極的
国際教育センターのプロジェクトでシリコンバレーのIT企業を訪れるというお話がありました。追手門学院小学校が取り入れるICTやIT教育についても、ご紹介いただけますか?
プログラミングに関しては、教科の中にプログラミングの学びを取り入れるようにしています。例えば、理科の授業では信号機を作って電流のしくみを知ったり、体育では刺激を受けると光るボールを作って遊び方を考えたりしています。
また、ICT活用教育や英語教育に特化して設計された校舎「メディアラボ」があり、デスクトップ型パコソン40台を備えたPC教室や、個人のタブレットで作成したデータなどを投影できる200インチを越える大型スクリーンを備えた「フューチャーラボ」などが入っています。
▲巨大スクリーンを備えるフューチャーラボ。
普段の授業で、ICTをどのように活用していますか?
1人1台パソコンを使っており、「ロイロノート」や「スカイメニュー」といった授業支援システムを活用しながら、日常的に調べものをしたりパワーポイントで発表資料を作成したりしています。
総合の授業では「世界を知ろう」というテーマで英語ネイティブの先生が教えることがあるのですが、その際は例えばアメリカのニューヨークについてインターネットで調べて、画像を用いた資料を作り、英語でプレゼンを行っています。
追手門学院小学校からのメッセージ
▲今回、ぽてんのインタビューにお応えいただいた井上恵二校長。
学校や児童の皆さんの雰囲気をどのようにお感じですか?
本校は礼儀礼節を第一義としており、子どもが礼をしている様子を収めた写真を見かける方も多いので、児童が堅苦しくて窮屈な環境で過ごしているというイメージをお持ちの方もいます。しかし、本校の子どもたちはとても活発で伸び伸びと学校生活を送っています。
年に1回、一般の方を招いた公開授業を行っていますが、参加いただいた方は子どもが活発な様子にとても驚き、「学校のイメージが変わった」とおっしゃいます。
もちろん、礼儀礼節は大切にしているので、大きな声で挨拶できる子ばかりです。卒業生が中学に進学して、職員室に入るときにいつも通り元気よく「失礼します」と言ったら、先生に感心されて褒められたという話をよく聞きます。
最後に、記事をご覧の子どもさんや保護者の方にメッセージをお願いします。
理念や建学の精神に基づいた特色ある教育ができることが、私学の良さだと考えています。
本校では本日お伝えしたような社会有為の人材、グローバル人材を育てる教育をしていますので、共感いただいた方には追手門ファミリーとなって私たちの教育を親子で楽しんでいただきたいと思います。
本日は、ありがとうございました!
追手門学院小学校の進路指導
追手門学院小学校では中学進学に対応するために、5年生、6年生の国語、算数、社会、理科では教科担任制を採用しています。
また、中学進学を最終目標とせずその先の人生まで考えることができるように、さまざまな分野で活躍する人による講演などを聞く機会を設け、憧れの先輩像や職業、憧れの人生をイメージしながらキャリアデザインできる環境を作っています。
追手門学院小学校の近年の進学実績(公式サイト)
https://www.otemon-e.ed.jp/common/pdf/shingakusaki.pdf
追手門学院小学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人追手門学院 |
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住所 | 大阪府大阪市中央区大手町1-3-20 |
電話番号 | 06-6942-2231 |
公式ページ | https://www.otemon-e.ed.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください