ぽてん読者のみなさんに、今注目の学校を紹介するこの企画。今回は香川県高松市にある共学の私立中高一貫校「大手前高松中学・高等学校」をご紹介します。
香川県有数の進学校として知られ、難関大学への合格者を多数輩出する同校では、これからの新しい時代に合わせてチャレンジングな取り組みが実施されています。デジタルネイディブのZ世代・SNSネイティブのα世代を潰さない、個性を伸ばすためのユニークな教育プログラムが、同校の進学実績にも影響しているようです。
今回は広報部長で学園連携推進室長の合田先生と、六年一貫コース主任・戦略企画室主任の邑地先生に建学の精神やユニークなカリキュラムについて詳しくお話を伺いました。
この記事の目次
Z世代・α世代に対応「大手前高松中学・高等学校」の新しい教育
まずは大手前高松中学・高等学校の建学の精神について教えてください。
建学の精神は、「品位ある人格の陶冶と、力の教育とを伝統とし、知性情操の両全を目指し、公共の福祉に貢献できる、指導的社会人を育成せんとする」です。開校以来、一貫して次世代のリーダーを育てることを目標としておりますが、次世代のリーダー像は時代とともに変化するものなので、本校もそれに合わせ、教育方法や教育プログラムを変えています。
本校は、Z世代やα世代対応の学校だと思います。今年(2024年度)の中学1年生以降がα世代に該当するらしいのですが、SNSネイティブで、みんなの前で色々なことができる、表現力の高い生徒が多いです。本校は新しい時代に対応した教育を実施している学校ですので、生徒たちのそうした個性を伸ばせる学校だと思います。
▲自分たちの世代の価値観を受け入れてくれるから、生徒たちも素直に育つ。
チャレンジングな姿勢と自由な発想を背中で見せる。県下初、全校私服登校を実験中
時代に合わせて、新たに取り組まれていることがあれば教えてください。
最近打ち出したコンセプトは「新しい”答え”を創り出す場所」です。技術革新や社会構造の変化によって、今まで正解だったことが不正解になり、また反対に不正解だったことが正解になる。そういうことが起こり得る中で、「どんどん新しいことをやっていこう」「失敗してもいいから、まずは挑戦してみてから修正を加えていこう」というコンセプトのもとで、色々と新しい企画を検討しているところです。
一つ例をあげていただくとすると、どのような企画が出てきているのでしょうか。
全校私服登校を計画しています。香川県内では私服登校をしている学校がないので、まずは本校から始めてみようとしているところです。
これまでの全員同じ制服を着ているという状況は、従来の日本型組織の中で「全員一律で画一的な人材教育を施される会社員」を育てるという意味では、正解だったと思いますが、今後は、起業家や個性を発揮できる人材が求められていく時代になっていきます。そのような人材が求められている今、生徒たちが個性を発揮できるためには自由な発想が必要ですよね。そこでまずは服装から自由にしてみようという考えに至りました。
2023年にトライアルで実施してみたところ、違和感なく、生徒からも好評でした。また、長期欠席の生徒がトライアルの日には登校してきたんです。理由を聞くと、これまでは制服を着るときに憂鬱になってしまっていたけれど、私服ではそうならなかったそうなんです。まだ実験段階ではありますが、そうした隠れたメリットもあるので、高校も含めて全校私服登校に取り組む予定です。
教育現場の“ガチャ失敗”を防ぐ。年5回のクラス替えで学年全体が仲良くなる
大手前高松中学・高等学校で他に新しい考えが体現されたような取り組みはありますか。
中学1年生は年5回、クラス替えをしています。皆さん驚かれますが、人間関係の固定化を避けたいのと、「担任の先生ガチャ」「クラスメイトガチャ」を防ぐ目的があります。クラス替えを行うタイミングで色々な人とコミュニケーションを取る方法を教えていくと、2年生になったときには誰と一緒でもうまくやっていけるようになります。
また、クラス替えを頻繁に行うと、クラス単位ではなく学年全体で頑張っていこうという空気も生まれます。ですから、大手前高松中学・高等学校では、休み時間に自分の教室にいる生徒は少なくて、学年全員で外で遊んだり廊下で話し込んだりしています。本校ならではの取り組みですが、生徒たちからは好評です。
御校では、クラス内の仲の良い友達だけと一緒に行動するということが少ないのですね。
また、担任教員も固定されないという意味では同じです。1年生の間は3〜4人の教員がローテーションを組んで、毎日違う先生が来る形にしています。
圧倒的表現力が身につく、大手前高松中学・高等学校の教育
大手前高松中学・高等学校では表現力を身につけるための取り組みをしていると伺いました。詳しく教えてください。
本校では、これからの時代には“圧倒的な表現力”が必要になると考えています。その圧倒的表現力を身につけるために、実施していることの一つが、プレゼン力を身につけるための授業です。
本校はプレゼンの機会を多く取るため、定期考査を廃止し、代わりにプレゼンの発表と5教科の実力テストで評価しています。プレゼン発表は年5回ありますので、場数を踏むことでプレゼン力も次第に洗練されていきます。
これは、次世代のリーダーにはプレゼンテーション能力が不可欠との考えと、自分で道を切り開くためにプレゼン能力を活用してほしいとの思いからです。例えば、服装の規定に不満があるなら、誰かが変えてくれるのを待つのではなく、プレゼンで改善案を提案し、周囲を説得してほしいと思っています。
表現技法に関する授業も行なっていると伺いました。こちらはどのような授業なのでしょうか。
表現技法の授業は、中学1年生がプレゼン、中学2年生が演劇で、中学3年生がパフォーマンスについて学びます。中学1年生のプレゼンの授業では、外部の方を招いてパワーポイントやグラフィックソフトの使い方や発声練習など、プレゼンの基礎を習得します。
中学2年生の演劇の授業は、演劇部の顧問の先生に担当してもらい、中学3年生のパフォーマンスの授業は僕が担当しています。パフォーマンスは何をしてもいいのですが、漫才やコントなどにチャレンジする生徒が多く、結構面白い内容も多いです。
卒業式後に保護者の前で披露するネタは、プレゼンで鍛えた度胸と表現力の賜物
▲パフォーマンスの授業でお笑いのネタを披露する生徒たち。表現力だけでなく度胸も身に付く。
先生方から見て、生徒の皆さんに表現力がついてきたと実感するのはどんな時でしょうか?
これまでオープンスクールでは私が保護者に向けてプレゼンをしていたのですが、生徒から「オープンスクールでのプレゼンにチャレンジしたい」という声が複数あり、現在は生徒たちに任せています。学校の魅力を伝えるために、何を伝えたらいいか自分たちで考えて、保護者へのプレゼンをしています。パワーポイントやグラフィックソフトを使ったり、動画にしたり色々と工夫していますね。
また、中学過程修了式の後には、表現技法の集大成として発表会を開催しています。卒業証書をもらった後で、参観する親の前で発表するのですが、何を発表するのかというと、お笑いのネタです(笑)。「受験より緊張するんじゃないか」なんてよく言っているのですが、他の選択肢もあるのに全員がお笑いを選択して、ネタを披露していましたね。
持続可能性を重視!ビジネス視点を取り入れた探究学習
次に、総合的な学習・総合的な探究の時間について、大手前高松中学・高等学校ではどのような取り組みをしているのでしょうか。
中学1年生が地域理解、中学2年生が国際理解、中学3年生がソーシャルビジネスについて学んでいます。中学3年生のソーシャルビジネスは、地域の課題を自ら設定して、それを解決するようなビジネスの枠組みを作ろうという内容で、合田先生が担当されています。
合田先生が担当されているソーシャルビジネスについて、どのようなことを行なっているのか教えてください。
課題解決型の学習では、無償ボランティアや海のゴミを自分たちで拾うなど、持続可能性のないものが提案されがちです。本校の探究学習の目標はビジネスの視点を取り入れて、社会に持続的なインパクトをもたらす可能性を見つけ出すことです。
これまでに生徒の皆さんからの提案で面白いものがあったら教えてください。
例えば、ある生徒は「蛍光ペンがかすれてしまうのをどうにかしたい」という課題から始まり、インクが補充できるような仕組みの蛍光ペンを開発できないかリサーチし、コンテストでプレゼンしました。この提案は株式会社エナジードさんが開催しているプレゼンコンテスト「ENAGEED SUMMIT」で全国優勝し、現在はコクヨ株式会社さんと商品化に向けて実証実験をしているところです。
他には、「教材が重いから、机の上に教科書やノートのデータを表示できる超小型プロジェクターを開発したい」というプレゼンをした生徒もいました。あとはヘルメットをかぶると髪型が崩れるのを改善する提案もありましたね。
大手前高松中学・高等学校からのメッセージ
▲広報部長で学園連携推進室長の合田先生(左)と六年一貫コース長で戦略企画室長の邑地先生
最後に、大手前高松中学・高等学校からぽてん読者の皆様にメッセージをお願いいたします。
本校のオープンスクールは生徒が実施するとお話しましたが、実は事前打ち合わせなしで開催しています。これは、ありのままの生徒や教員を見て合うかどうかを判断していただきたいためです。自分に合っていると思えればぜひ受験なさってください。
また、本校では生徒の手本となるように、教員が積極的にチャレンジしているという点にも注目していただければと思います。
合田先生は四国の探究学習を牽引してる人材で、教育ICTツールである「ロイロノート・スクール」の活用イベントに登壇したり、香川県内の若者と地域や企業をつなぐ探究学習プログラム「プロジェクトToBe」の開発に携わるなど活躍しています。
僕は2023年、生徒とM-1グランプリに出て、ナイスアマチュア賞を受賞しました。教員兼アマチュア芸人兼YouTuberとして活動していますが、生徒たちがたくさんアドバイスをくれます。
このように、本校には生徒と一緒にチャレンジしている教員がたくさんいます。それも本校の資産のひとつかなと思います。
▲邑地先生と生徒がコンビを組む「二者面談」。日本一の若手漫才師を決めるM-1グランプリにも出場した
先生方が挑戦しているから、生徒もそれを見て自然と挑戦していく。それが御校の魅力なんですね。
本校を一言で表現すると、「自分の選んだ道を正解にするためのスキルとマインドセットを身につけていける学校」だと思います。自分が選んだことを正解にしていくために必要なスキルは、学力や表現力、提案力、そしてマインドセットですよね。そうしたことを身につけられるし、発揮できる機会のある学校だということをお伝えしたいと思います。
大手前高松中学・高等学校では、学力はもちろん、表現力や提案力といった多面的なスキルを身につける機会を作ることで、生徒の将来の選択肢を広げる基盤を提供しているのですね。本日はありがとうございました。
邑地先生と生徒がコンビを組む「二者面談」のYouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCNDRp7XC4pM1yGRvW8Klc8Q
大手前高松高等学校の進学実績
大手前高松中学・高等学校は中高一貫校のため、大手前高松中学校を卒業後、そのまま全員が大手前高松高等学校へ進学します。大手前高松高等学校では、ここ10年ほどで進学実績が伸びてきており、難関大学に多くの生徒が合格しています。
2024年度は国公立大学に114名合格、そのうち、約30名が総合型選抜、学校推薦型選抜での合格です。総合型選抜、学校推薦型選抜ではプレゼンテーション能力や論理的な思考などが求められますから、日頃のプレゼンテーションの機会の多さによる表現力が発揮された結果と考えられます。
大手前高松中学・高等学校の卒業生・保護者の口コミ
大手前高松中学・高等学校の卒業生と保護者の声から、いくつか抜粋しました。
大手前高松中学・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人 倉田学園 |
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住所 | 香川県高松市室新町1166番地 |
電話番号 | 087-867-5970 |
問い合わせ先 | https://www.otemae.net/contact/ |
公式ページ | https://www.otemae.net/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください