自学自習や身体表現に専念も。「樟蔭中学校・高等学校」の生徒の個性を尊重する制度とは|中高一貫校

ぽてんをご覧の皆様に、注目の学校を紹介する本企画。今回は大阪府東大阪市にある私立の女子中高一貫校「樟蔭中学校・高等学校」をご紹介します。

同校は1917年創立以来、女性が素晴らしい能力や特性を伸ばし、活躍できることを第一の目標に掲げてきました。近年では国公立大学をはじめとした難関大学を目指すコースや、ダンスや伝統芸能など表現活動に取り組む生徒の豊かな感性を育む「身体表現コース」などを設けています。

また、教室で授業を受けるのが難しい生徒に対し、個別学習を提供して進路実現を目指す「キャリアサポート制度」を創設するなど、生徒に寄り添ったきめ細かい教育、支援体制にも力を入れています。

今回は樟蔭中学校・高等学校の教育理念や感性を磨く教育などの特色について、入試部長の三品先生にお話をうかがいました。

「知・情・意」を掲げる樟蔭中学校・高等学校の建学の精神

樟蔭中学校・高等学校のシンボルである記念館

▲樟蔭中学校・高等学校のシンボルである記念館。同校は品格を重んじる教育を続けている。

編集部

最初に、樟蔭中学校・高等学校の沿革についてお聞かせいただけますでしょうか?

三品先生

まず「樟蔭」の由来ですが、「樟」は楠木正成夫人である「お久の方」、「蔭」は「あやかる」を指します。つまり「楠木正成夫人のいつまでも残る遺徳にあやかる」という意味が込められています。楠木正成は本校がある大阪ゆかりの武将であり、その賢夫人であるお久の方を偲んだことが校名の由来です。

本校は1917年の創立で、樟蔭高等女学校としてスタートしました。大正初期であるこの頃の女子教育は、大正デモクラシーの進展もあって、高等女学校への進学率が急速に高まり、大変、入学が難しい状態でした。特に大阪では女子のための中・高等教育機関が少なく、実業家の森平蔵は内容の充実した質の高い教育を提供しようと考えました。その女子教育への姿勢は、今でも変わっていませんね。

編集部

女子教育を進めるうえで、どのような建学の精神が設けられたのでしょうか。

三品先生

「高い知性と豊かな情操を内包し、自ら意思を持って行動できる自立した女性の育成」を建学の精神に掲げています。この建学の精神に付随するのが「知・情・意」という言葉で、学校案内やポスターなど、本学では様々な場で使っています。「知」は高い知性、「情」は豊かな情操、「意」は強い意志を表しています。「知・情・意」に合わせて、生徒自身が習得を目指すべき力や精神も設定しています。「知」は考える力、「情」は感動する心、そして「意」は行動する意志、も表しています。

豊かな内面を育む。生徒の努力をたたえる小さな表彰状「プライドカード」とは

樟蔭中学校・高等学校の生徒たち

▲自分を大切にし、他人の違いを認め、思いやりの心を持てる「Little Lady」の育成に取り組んでいる。

編集部

普段、教育を進めるにあたって、先生方の間でどのような方針を立てられていますか。

三品先生

本校の指導方針として、「しっかりとした生活習慣と、基礎学力を身につける」というものがあります。その先に目指すのは、自分を大切にし、他人の違いを認め、思いやりの心を持てる「Little Lady」の育成です。

そのために「基本的生活習慣を身につけること」や「ルールを守ること」、「マナーを身につけること」を大切にし、社会に出ても困らないよう豊かな内面を育みます。本校は100年以上の歴史がありますが、品格を大切にするという方針は、ずっと変わりません。

編集部

具体的には、どのようにして「Little lady」を育てていくのでしょうか。

三品先生

例えば、あいさつや礼儀作法などを身につける本校の教員や外部講師による講演会を行ったり、中学校では日々の出来事や学習計画を毎日記入する生活学習ノートを活用するなど、生徒に「Little lady」としての意識づけをします。

その一方で、生徒一人ひとりの努力をたたえる取り組みも行います。それが小さな表彰状である「プライドカード」で、2013年度から生徒の自宅に送付しています。

表彰理由となる一つひとつは「漢字テストで毎回満点」「挨拶の号令が上手」「体育委員としてクラスへの貢献」など大々的に表彰されるようなことではありません。でも、一つひとつが生徒の頑張りであり、ちゃんと教師が見て、褒めたたえることで、自己肯定感や頑張れる姿勢を生徒に持ってもらえればと考えています。

プライドカードは、当時の校長であった楠野先生の発案で、10年間で生徒に贈られたカードは3,000通を超えました。

生徒に寄り添い、支える、樟蔭中学校・高等学校のキャリアサポート制度とは

樟蔭中学校・高等学校の生徒たち

編集部

感性、心を磨く教育の一環として、珍しい取り組みであるキャリアサポート(CS)制度について、ご説明をいただけますでしょうか。

三品先生

CS制度は、一定の学力や学習意欲があるにも関わらず、集団での授業の受講が苦手な生徒を支援するための仕組みです。10年以上前から本校で取り組んでいるものです。

具体的には、生徒は各コース・クラスに在籍しながら、独自の担当教員を配置したCSの教室で日々の学習を行います。自学自習を基本に、生徒は各教科から与えられた課題をこなします。

その課題を提出して認められれば、授業で出ていない分を埋め合わせられるという仕組みで、大阪府教育庁私学課との協議のもとで実施しています。課題を提出することで、授業に出られない分を補うことができますので、9割ぐらいの生徒は進級・進学を実現しています。

また、卒業生を見ると9割が進学しており、うち8割以上が大学へ進学しました。本校には大阪樟蔭女子大学が併設されており、生徒にとって幅広い選択肢が用意されていることも大きいと思います。中高合わせて、60~70人程度がこの制度を利用しています。

編集部

CSルームについて、どのような体制で臨んでいるのでしょうか。

三品先生

CSルームの生徒に関わる担任は3人おり、特に出欠管理、メンタルサポートについてきめ細かく対応しています。また、スクールカウンセラーやチューターもおり、生徒の相談に乗っています。

編集部

生徒や保護者の方から、CSルームに関してどんな声が寄せられていますか。

三品先生

生徒の声としては、「CSルームには同じような境遇の生徒がいるので安心でき、自分らしくいられた」、「在籍クラスの授業と変わらない内容を自分のペースで取り組むことができた」、「少しずつ変わっていく自分を感じ、高校2年生から在籍クラスに戻ることができた」など肯定的にとらえてもらっています。

特に保護者の方にはすごく評価をいただいていると思います。本来であれば、登校が難しかった生徒が、樟蔭に来て、生き生きとしているという評価はよく頂戴しますし、実際、15%ほどの生徒は、徐々に友達と会話ができるようになり、通常のクラスに戻ることができました。

もちろん、生徒自身の体調によるところも大きいですので、CSルームから、通常のクラスに行ったものの、再びCSルームに戻る生徒もいます。そうした状況でも、生徒一人ひとりに柔軟に対応できるよう、教員間でも意識づけを行っています。

ダンスや演技の表現力を高める「身体表現コース」などの多彩なコース

樟蔭中学校・高等学校の身体表現コースの様子

▲樟蔭中学校・高等学校では、ダンスや演技などを学ぶ全国でも珍しい身体表現コースを設けている。

編集部

高い知性と豊かな情操を育むために、中高では様々なコースがありますが、それぞれの特色をご紹介くださいますでしょうか。

三品先生

本校では、6年間の中高一貫教育のメリットを最大限生かすうえで、生徒それぞれに合ったコースを設けています。

「国際文理コース」は、国公立大学・難関私立大学などの大学入試に対応できる学力の向上を目指すものです。夏休みや放課後での講座も充実しており、自己を律する精神力や他者への感謝・思いやる心なども育みます。「総合進学コース」は、基礎学力を定着させるとともに、積極的なクラブ活動や行事参加など情操教育面にも力を注ぎます。「身体表現コース」では勉強と表現活動の両立で豊かな感性と人間性を養います。

編集部

なかでも全国的にみてユニークといえる「身体表現コース」はどのような特徴があるのでしょうか。

三品先生

表現活動に資する取り組みが非常に多いことが特色です。まず、挙げられるのはクラブ活動に集中できる環境です。身体表現コースでは、勉強とクラブ活動やレッスンの両立をモットーに掲げています。それゆえ、放課後は部活動やレッスンに集中できるよう、授業におけるボリュームを厚くし、理解が進みやすい学習プログラムを構成して、進学実績にもつなげています。

また、ダンスや演技などの表現力を高めるために、プロの講師の講義を受けたり、中学校では、表現力や学習効果の向上が期待できる速読を行ったりする総合的な学習「PPレッスン」を週4時間設けています。

表現力に結びつくよう、東京限定公演のミュージカルの観劇や、テーマパークの舞台見学などを行う中学2年生の合宿を毎年実施しているほか、コースで学んだことの集大成ともいえる、本格的な演技・演奏の芸術発表会も中高で毎年開いています。この発表会は身体表現コースが樟蔭に誕生すると同時に始まったもので、毎回満員になるほどです。

高校受験を経て身体表現コースに入ることもできますが、伸びしろがある中高一貫の6年間で身体表現に取り組みたいと考える生徒が多いようです。

樟蔭中学校・高等学校のダンス部とバトントワリング部

▲実績を残しているダンス部とバトントワリング部

編集部

身体表現コースでは、どんな成果が出ていますか。

三品先生

本コースでは、ダンス、バトントワリング、ポンポンチア部、新体操の4つのクラブを強化クラブとして位置付けています。高校ダンス部は2023年度、DANCE CLUB CHAMPIONSHIP(全国高等学校ダンス部選手権)で初優勝しました。また、ポンポンチアとバトントワリングも全国大会で数多くの優勝を果たしています。

これらの部活には、身体表現コースの生徒が多く参加しています。進学においても、2023年度は身体表現コースから筑波大学などの国公立大学に合格したり、多くの指定校推薦につながったりするケースも出てきており、生徒の高い意欲が様々な結果につながっていると考えています。

国際社会で活躍できる人材を育成。樟蔭中学校・高等学校のグローバル教育

樟蔭中学校・高等学校で実践している語学授業の様子

▲樟蔭中学校・高等学校では、ネイティブスピーカーの教員による英語学習に注力している

編集部

グローバル教育について、注力されている点などについてお聞かせください。

三品先生

本校では、グローバル社会に対応できる女子の育成を念頭に置き、英語教育を中心に力を入れています。具体的には、ネイティブスピーカーの教員によるオールイングリッシュの英語講座のほか、英検対策講座、オンラインによる海外姉妹校・提携校との交流、ニュージーランド、台湾、韓国研修など、それぞれの学びに応じて参加できる活動を豊富に設けています。

編集部

海外研修について詳細内容を教えてください。

三品先生

まず、ある程度の英語力がある希望者を対象に、ニュージーランドに約3か月留学するプログラムを設けています。行き先は、St Mary's collegeという伝統ある女子高で、この学校やホームステイ先で英語漬けの日々を送り、実践的な英語を身につけて行きます。

このほか、中学3年の国際文理コースの生徒を対象にイギリスへの短期研修を行っているほか、台湾の曙光女子高級中学とそれぞれ学校交流を含む交流旅行を実施しています。

編集部

海外研修を経て、生徒にはどんな変化がみられるでしょうか。

三品先生

生きた英語に触れ続けるなかで、英語に対する興味が日本にいたころよりもずっと高まり、語学学習により積極的になる生徒はよく見られます。また、他国で人々に接し、習慣や文化に触れたということで、外国への関心が高まり、歴史などに関心を持つ生徒も増えている印象です。

編集部

普段の授業など国内では、どのような取り組みをしていますか。

三品先生

多岐にわたります。まずは、ネイティブスピーカーの教員による授業です。専属の教師がおり、週2時間、ICTツールを活用しながら楽しく学び、自然と英語が身につくように工夫しています。

ネイティブの教員と日常的に接している生徒が、臆することなく外国人の方と話している姿を見ますと、すごく成長していると感慨深いです。さらに、ネイティブの教員が常駐する「SILC(樟蔭国際学習センター)」と「i-Lounge」を設け、本場の英会話を気軽に楽しめる場にしています。

編集部

英検対策も充実しているそうですね。

三品先生

はい、準1級まで対応している英検対策など、1対1でのスピーキングレッスンやライティングの添削など学習サポートが充実しています。放課後には英検講座を行っており、4級~準1級を対象としています。

近年では、準1級に合格した高校の生徒や、中学生の段階で2級を取った生徒もいます。校内での英検熱は非常に高まり、一人ひとりの力が非常に向上していっていると感じています。

樟蔭中学校・高等学校からのメッセージ

樟蔭中学校・高等学校の三品先生

▲インタビューに応じてくださった、樟蔭中学校・高等学校の三品先生

編集部

では最後に、樟蔭中学校・高等学校に関心を持たれた読者の皆様へメッセージをお願いします。

三品先生

107年の歴史がある本校ですが、伝統と品格を守りつつ、生徒たちは勉強に集中し、そして全国大会にも出場する部活動があるというように、文武両道で活躍しています。また、先ほどご紹介したCS制度のように、生徒一人ひとりを大切にした教育を実践している学校です。

このサイトをご覧になり、少しでも本校を知っていただき、ぜひ本校を志望していただければ大変ありがたいです。

編集部

本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

樟蔭中学校・高等学校の進学実績

樟蔭中学校・高等学校の生徒たち

樟蔭中学校・高等学校では2023年、広島大学医学部、お茶の水女子大学、筑波大学に各1名が合格しました。過去5年間でも大阪大学や神戸大学などの難関大学を含め、国公立大学での合格実績を毎年、積み上げています。

私立大学でも2023年、早稲田大学(1名)のほか、関西大学(10名)、立命館大学(5名)、関西学院大学(2名)など難関大学で多くの生徒が合格を勝ち取っています。また、系列の大阪樟蔭女子大学へは59人が進学しました。

■樟蔭中学校・高等学校の進学実績(公式サイト)

https://www.osaka-shoin.ac.jp/hs/about/results/

樟蔭中学校・高等学校の卒業生・保護者の口コミ

ここからは、樟蔭中学校・高等学校の卒業生、保護者の声を一部抜粋して紹介します。

(保護者)交通、制服、環境、先生たちの信頼度、総合で高い評価。我が子を入学させてよかったと思っている。

(保護者)創立100年以上の伝統ある学校で、女子校ならではの教育をされていると思う。 クラブ活動も充実している。

(卒業生)熱のこもった先生が多く、わからない所を質問したら答えてくれたり、補習などを積極的に開いてくれたりと、勉強がしたい人にはオススメ。また、ダンス部やバトン部など全国大会によく出るクラブもある。

長い歴史がある女子校ということもあり、校風や品格などを支持する声が目立ちました。またダンス部をはじめとした全国規模で活躍する部活動を称えるものや、交通の便のよさ、制服の優れたデザインを挙げる声も見受けられました。

樟蔭中学校・高等学校へのお問い合わせ

運営 学校法人樟蔭学園
住所 大阪府東大阪市菱屋西4-2-26
電話番号 06-6723-8185
問い合わせ先 https://www.osaka-shoin.ac.jp/jhs/contact/(中学校)
https://www.osaka-shoin.ac.jp/hs/contact/(高等学校)
公式ページ https://www.osaka-shoin.ac.jp/jhs(中学校)
https://www.osaka-shoin.ac.jp/hs/(高等学校)

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