主体性に裏打ちされた‟真の知性”が育つ「小林聖心女子学院」|小中高一貫校

ぽてん読者の皆さまに今注目の学校を紹介するこの企画。今回は兵庫県宝塚市にある小中高一貫女子校の小林(おばやし)聖心女子学院にインタビューを行いました。

小林聖心女子学院は、1923年に創立されたキリスト教カトリックの教えを伝える名門女子校です。「本当の礼拝の精神に生きる人に育っていくよう教育すること」という建学の精神のもと、自分のためではなく他者のために尽くす心を育む教育を行っています。

また、同校では偏差値やテストの成績によって生徒を評価することを主軸に置いていません。こうしたのびのびと学べる環境は、国公立を含む難関大への合格者を輩出するなど、生徒たちの可能性を伸ばしているのです。

今回は、主に中学校・高等学校の教育理念や特色ある教育プログラム、校風や部活動について、中高主幹の熱田貢一先生にお話しいただきました。

小林聖心女子学院の「人に尽くす人」を育成する建学の精神

小林聖心女子学院の中高主幹の熱田貢一先生

▲インタビューに答えてくださった小林聖心女子学院の中高主幹の熱田貢一先生

編集部

まず、小林聖心女子学院の建学の精神について教えてください。

熱田先生

本校の建学の精神の一節に、「子どもたちが、本当の礼拝の精神に生きる人に育っていくよう教育すること」というものがあります。この「礼拝の精神」を生徒たちに伝えるとき、「骨惜しみなく働く」「人に尽くす」という表現を使うことが多いです。

編集部

どのようなシーンで生徒の皆さんに伝えていますか?

朝礼や終礼に行う「お祈り」が、最もこの精神を育てている時間だと感じています。自分のためではなく、他者のために行うのが「お祈り」です。目の前にいる人はもちろん、見えないところにいる人々を想像しながら行動することが、自然と身についているのではないでしょうか。

小林聖心女子学院の校舎内に飾られている聖母マリアの絵「感ずべき御母」

編集部

お祈りとは、具体的にどのようなことをしていますか?

熱田先生

毎回、「主の祈り」や「マリア様の祈り」などの伝統的なお祈りを必ず唱えます。ただ、これらのお祈りの前に、社会問題や時事問題について生徒がその時々に合った祈りのことばを加えています

スマホなども上手に活用しているとは思いますが、生徒たちが話す内容が、社会情勢や時事情報をしっかり調べていないとわからないようなことばかりで、いつも感心しています。

そして毎朝の朝礼の時間に、キャンパス内の聖堂にある鐘が15回鳴ります。鐘は放送とよく間違われるのですが、毎朝、係の高校生が必ず鳴らしているものです。そしてこの15回の鐘が鳴り響くあいだ、小学校1年生から高校3年生のすべての児童・生徒たちは沈黙の時間を作ります。

こうして毎朝必ず、鐘の音色と共に心に静けさを迎え入れ、他者を思う時間を持つことを、本校の生徒たちは日課にしています。

恵まれない環境にいる人に心を寄せ、博愛の精神を身につけていく

小林聖心女子学院の生徒が笑顔で会話しているようす

編集部

先ほど、お祈りの中に社会についての話題を入れるとおっしゃっていましたが、具体的にどのような内容ですか?

熱田先生

そのときによってさまざまですね。たとえば、「激しい紛争が続く国では、教育が受けられない子どもたちがいる一方、自分たちは恵まれた環境で過ごせていることに感謝をしよう」「能登半島地震で被災された人々に祈りを捧げよう」などが、最近耳にしたテーマです。

一貫しているのは、生徒たちは常に見えないところにいる苦しみと共にある人々に心を寄せているということです。

小林聖心女子学院の聖堂内に掛けられたイエス・キリストの十字架

編集部

小林聖心女子学院では、他者を思いやる行為が日常になるのですね。毎朝のお祈り以外で、生徒の皆さんが考えを深める機会はありますか?

熱田先生

毎週金曜日に行う宗教朝礼では、教員が順番に独自の話をしています。

先生方がそれぞれ実際に経験したことを基に話すので、宗教以外の内容に聞こえる時もありますが、どの先生のお話も、心が温まったり、感謝の気持ちが沸き起こったりと、自分やまわりの人たちに対する優しい気持ちになる内容ばかりです。結果として、宗教の教えにも繋がっていると思います。

小林聖心女子学院で過ごす中で、利他の精神や博愛の精神が芽生えていくのは、お祈りの意味や重要性に生徒たち自ら気づいていくからなのかもしれません。

小林聖心女子学院ならではの”12年一貫教育”の特長

小林聖心女子学院の授業風景

小林聖心女子学院は、小学1年生から高校3年生の12年を4年ごとの3つのステージ(StageⅠ・StageⅡ・StageⅢ)に分け、それぞれのステージに沿って「12年一貫教育」のカリキュラムを構成しています。

初めのStageⅠ(小学1~4年生)は、学習と生活の基礎を徹底するほか、楽しい学校生活や感謝の心を育みます。StageⅡ(小学5~中学2年生)は、主体的に学ぶ姿勢と、周囲との関わりの中で自己の役割を探求します。そしてStageⅢ(中学3~高校3年生)では、将来に繋がる学力と、愛に根差した生き方そのものへと発展させていきます。

それらのステージの中から、特に英語教育と異学年の関わりについて、お話を伺いました。

英語学習の根底にある”対話”

授業を受ける小林聖心女子学院の生徒たち

編集部

小林聖心女子学院では、英語教育にも力を入れていると伺いました。

熱田先生

そうなんです。英語の授業は、20人弱の少人数制クラスを取り入れています。さらに中高合わせると5人のネイティブの先生がオーラルの授業を担当しているので、英語を学ぶのに充実した環境が整っています。

また本校は元々、海外から100名以上のシスターが来られて始まった学校ということもあり、当時から英語での会話が必ず求められる環境だったんです。つまり創立当初は、大学受験に向けた英語学習ではなく、シスターと話すこと、シスターの話を聞くことに重きが置かれていたんですね。

こうした本校の成り立ちは、現在の英語教育にも繋がりがあるように感じます。実際に見ていても、ネイティブの先生と難なくコミュニケーションが取れる生徒も多いんですよ。

小林聖心女子学院の学習センターの洋書や英語の資料

▲学習センター(中学・高校の図書館)には約12万冊の蔵書があり、洋書や英語の資料も多く揃っている

編集部

英語授業には、どのような特徴がありますか?

熱田先生

例えば、StageⅠでは、綴りと発音の規則性を学ぶ「フォニックス学習」を朝の15分間を使って取り入れています。また、StageⅡの小学5年生から英文法の学習が始まり、丁寧に英語の基礎力をつけていきます。そしてStageⅢでは、ディベートやディスカッション、プレゼンテーションなどを取り入れて、多彩な表現力を磨いていきます。

■小林聖心女子学院の英語学習に関するより詳しい紹介はこちら
https://www.oby-sacred-heart.ed.jp/eigo/

心を育み他者とのつながりを深める宗教の授業

編集部

宗教の授業についても教えてください。

熱田先生

宗教の授業は、どの学年も週に1回の頻度で行います。シスターや宗教科の先生が授業を担当しますが、高校3年生だけは、校長自ら授業を受け持つのが本校の習わしです。

聖書を使った基礎的な授業を行いますが、宗教に馴染みのなかった生徒も在籍していることをふまえ、授業の構築の仕方を工夫しています。例えば、StageⅠでは、祈ることそのものに親しみやすさを感じてもらえる授業を作ることを心がけているんです。

同学年への愛着と他学年への気遣いの両軸が育つ

小林聖心女子学院の通学路

▲最寄り駅からの通学路は緑であふれている。学年問わず、笑顔で話しながら元気に下校していた

編集部

「12年一貫教育」だと、生徒同士や先生との関係性も、深くなっていくのでしょうね。

熱田先生

そう思います。生徒同士は当然ながら、また本校は教員の異動があまりないので、自然と学校全体がつながりを深めていきます。学校全体に、仲睦まじい雰囲気があると感じていますね。

また、学年が変わって担任がそのまま持ち上がることが少ないので、ほとんどの場合、様々な教員と親交を深めることができます。卒業後も、いろんな先生に会いに来るOGも多いんですよ。

編集部

生徒たちがのびのびと過ごしている様子が伝わってきます。行事などにも小林聖心女子学院の校風が表れていますか?

熱田先生

例えば、体育祭は3つのステージごとに開催するのですが、それぞれのステージの特色がよく出ていますね。StageⅢの体育祭は、教員たちが見守っていれば生徒たちだけですべて運営できるほどです。

StageⅡの場合は、できるだけ生徒たちが主体的に準備を進められるように、教員たちも気を配っています。それでも、StageⅡの最小学年は小学校5年生ですから、うまくいかないことも実際あるんですよね。そんなときは、高校生の生徒たちが手伝ってくれることもあります。

編集部

行事を通して上級生や下級生とも交流があるのですね。

熱田先生

はい。生徒向けに募集している「校内ボランティア」も、交流の機会になりますね。StageⅠの運動会や受験生向けの行事のボランティアを募集したときにも、かなりの数の生徒から申し込みがありましたね。自分の時間を人のために使うことに喜びを感じる生徒が多く、教育理念で掲げていることがきちんと身についていると感心しています。

また、自然豊かなキャンパスでは、小中高の12学年が共に学校生活を送っています。このような環境だからこそ、上級生が下級生を気にかけ、面倒をみてあげる光景も多く見られるんですよ。

怪我をした下級生を上級生が職員室まで連れてきてくれたり、登下校する中の車内で上級生が下級生を見守るなど、生徒たちが手を取り合い、成長し合う姿を見ることのできる特別な環境です。

主体性に裏打ちされた‟真の知性”が育む「小林聖心女子学院」の校風

小林聖心女子学院の聖堂

編集部

小林聖心女子学院らしい校風としては、どのようなものが挙げられますか?

熱田先生

本校は、偏差値やテストの点数の順位だけで生徒を評価していません。よくある進学校らしい雰囲気とはちょっと違うかもしれませんね。

生徒たちもプレッシャーを感じにくい環境だからか、一定数いる中学入試で入学する生徒も含め、のびのびと過ごしている印象です。

授業を受ける小林聖心女子学院の生徒たち

編集部

とはいえ、成績表で現状を確認する必要はあるかと思うのですが、どのような仕組みになっているのでしょうか?

熱田先生

成績表自体は発行しますが、明確な順位や成績分布図は公表されません。教科ごとに自分の学年全体におけるレベルがわかる程度ですね。また、クラス分けも成績によるコース制を導入するようなことはなく、「あやめ」「ばら」「ゆり」と名付けた3クラスで編成しています。

生徒たちの中には、国公立大学や医学部などに進学する生徒もいますが、そういう子ほど謙虚なんですよ。自分の賢さを見せつけたりせず、むしろ隠すくらいの奥ゆかしさがあります。

学習レベルで評価をしないというのは本校の方針ですが、同じように生徒たち同士も、成績の評価にとらわれない関係性を築いているようです。

転入生や中学からの入学生も溶け込める環境がある

にっこり笑う小林聖心女子学院の2人の生徒

編集部

中学校では、小学校からそのまま在籍する生徒と、そこから入学する生徒の両方がいると思いますが、クラスの雰囲気はどうですか?

熱田先生

中学入試で入ってくる生徒や保護者の皆さんは、やはりクラスに馴染めるかということを一番気にされています。

そこで去年から、新学期になるべく早くクラスに馴染めるよう、5月中旬に合宿を導入しました。「ネスタリゾート神戸」というテーマパークで、アトラクションを楽しみながら、待ち時間におしゃべりをしたりすることで、生徒同士が打ち解けるきっかけを作っています。

また、小学校からの生徒たちも、数が偏らないように3クラスに分けています。知り合い同士で固まらず、新しい友達をつくるチャンスは多いと思いますね。

編集部

生徒たちが仲良くなれる工夫をされているのですね。

熱田先生

そうですね。あとは、本校では新小学4年生・新小学5年生対象の転入生の枠を10人ずつ設けています。なので、小学校から在籍している生徒の中にも、転入してきた生徒が含まれているんです。

そういう子たちは「自分が受け入れてもらったから、新しい子が来たら今度は自分が受け入れてあげよう」という意識が出来上がっているようです。むしろ新しく入学してくる生徒たちのことを、とても楽しみにしています。

小林聖心女子学院で「豊かな人間性」を育んでほしい

小林聖心女子学院の中高主幹の熱田貢一先生

編集部

最後に、小林聖心女子学院に興味を持った読者の方にメッセージをお願いします。

熱田先生

本校の生徒は、在学中だけでなく社会に出てから評価されることがすごく多いんです。周囲をよく見て発言・行動をしたり、来客時にきちんとした対応ができたりと、いろんなシーンでの振る舞いについて好意的な声をいただいていますし、卒業生に憧れて「子どもを入学させたい」とおっしゃっていただけることもあります。

先生方との距離感やお友達との付き合い方、纏う空気など、決して偏差値では計れない部分を育むことができるのが、本校の一番の文化のように思います。

成績に関係なく、生徒みんながこのような人間性を育んでいける環境が整っていますので、本校の理念や校風に共感される方は、いつでもお問い合わせください。

また、ここまで触れていなかったクラブ活動についてお話しすると、本校には高校生の近畿大会にも出場している「なぎなたクラブ」や、アルファベットを装飾した手書き文字であるカリグラフィーが学べる「花文字クラブ」など、個性豊かなクラブが揃っています。

中高合同のオーケストラクラブでは、初心者でも先輩やコーチから指導を受けながら挑戦することができます。いろんなクラブが揃っているので、入学のきっかけにもしていただけるかと思います。

編集部

本日は熱田先生にお話を伺って、生徒の皆さんにとって小林聖心女子学院が他者への思いやりを育める場所であることや、カリキュラムごとの特徴的な授業など、奥深い取り組みをたくさん知ることができました。ありがとうございました!

小林聖心女子学院 高等学校・中学校の進学実績

小林聖心女子学院の聖堂

2024年度の小林聖心女子学院の大学合格実績を見ると、卒業生92名のうち東京大学・京都大学を含めた国公立大学の合格者が15名いるほか、同志社大学・立命館大学・早稲田大学・慶應義塾大学・上智大学など、難関私立大学への合格者も毎年のように数多く輩出しています。

同校は生徒数が特別に多いわけではなく、また成績の向上にだけフォーカスしてカリキュラムを組んでいるような進学校でもありません。その中で安定した進学実績を残しているのは、大きな特徴といえるでしょう。

背景にあるのが、「生き方」「キャリア」「進級・進学」の3つの柱に基づいた、12年間一貫の進路指導です。例えば、9年生(中学3年生)では、自分らしさや自分の特技を見つける「個性発見テスト」を、10・11年生(高校1・2年生)では、進路の方向性や学びたい学問分野を明確にするためのサポートを行い、段階的に自分の将来像をイメージしやすくなるような工夫を取り入れています。

■近年の大学合格実績(小林聖心女子学院公式サイト)
https://www.oby-sacred-heart.ed.jp/shinro/

小林聖心女子学院 高等学校・中学校の卒業生・保護者・在校生の口コミ

小林聖心女子学院のグラウンド

ここでは小林聖心女子学院 高等学校・中学校に寄せられた生徒や保護者からの口コミをいくつかご紹介します。

中学校から入学しました。入学当初からたくさんのクラスメイトが話しかけてくれたので、不安なく学校生活を始めることができました。よい交友関係が築ける学校だと思います。(卒業生)

娘が通っていました。学校は豊かな自然の中にあるので、心身共に穏やかに、伸びやかに過ごすことができていました。(保護者)

卒業後の進路として、東京の聖心女子大学への進学が可能であったり、その他の大学への推薦枠も豊富であったりと、進路の選択肢が充実しています。(卒業生)

図書館であるソフィーセンター・学習センターには合計16万冊の蔵書があり、学ぶのに最適な環境でした。(卒業生)

小林聖心女子学院のパンフレット

小林聖心女子学院 高等学校・中学校へのお問い合わせ

運営 小林聖心女子学院 高等学校・中学校
住所 兵庫県宝塚市塔の町3-113
電話番号 0797-71-7321
問い合わせ先 https://www.oby-sacred-heart.ed.jp/contact/
公式ページ https://www.oby-sacred-heart.ed.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください