独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、東京都杉並区にある共学校「日本大学第二中学校・高等学校」を紹介します。
同校は、1926年に創立、2026年には100周年を迎える伝統校です。開校以来の校訓を基に、さまざまな資質・能力の育成を目指し、中でも「自己肯定力」に注力した教育活動を実践しています。
今回は、そんな日本大学第二中学校・高等学校の教育理念や特徴的な取り組みについて、日本大学第二高等学校で校長を務める中島先生にお話を伺いました。
この記事の目次
日本大学第二中学校・高等学校が育てたい15の資質・能力
▲高校3年生にとって最後の学校行事となる体育大会での「二高音頭」
最初に御校の教育理念や教育目標についてお聞かせください。
1926年に創立し、2026年に100周年を迎える本校は、開校以来の理念として「信頼敬愛」「自主協同」「熱誠努力」の3つを校訓に掲げてきました。そして、さらに5つの教育目標を定めています。
■日本大学第二中学校・高等学校の教育目標
- 心身を練磨し、能力と個性を十分に伸長する。
- 相互の信頼と敬愛を深め、進んで世人を愛する。
- 自主性を高め、かつ互いに協力する精神を養う。
- 自己の使命を自覚し、熱心誠実に努力する。
- 規律と責任を重んじ、勤労をたっとぶ習慣を養う。
また、この5つの教育目標だけでは現代に見合ったアカデミックポリシーを見える化できていないと考え、本校に入学すればどんな能力が育つのかということで、新たに「育てたい15の資質・能力」を定めました。
具体的には、自己肯定力、感性、課題発見力、傾聴力、共感性、計画力、分析的思考力、主体性、創造力、総合的思考力、協働性、規律性、表現力、公共性、回復力の15の資質・能力です。この中でも、注力しているのは自己肯定力です。
少子化が加速し、諸外国の方たちと協働的に仕事をしたり、向き合ったりしなければならない時代がすでに到来しています。そうした中で、ある調査機関が日本・アメリカ・中国・韓国の4カ国で自己肯定力に関するアンケートを行ったところ、日本の青少年が、もっとも自己肯定力が低いとの結果が出ています。
本校では、校訓三則と5つの教育目標をもとに、生徒の自己肯定力を高め、進学、あるいは社会に羽ばたかせたいという願いをもって日々教育活動に励んでいます。
日本大学第二中学校・高等学校の多彩な国際理解教育プログラム
▲アメリカの姉妹校での語学研修プログラム
自己肯定力を育むことを見据えた日本大学第二中学校・高等学校のカリキュラムの中でも、特にグローバル教育についてお聞かせください。
本校では、国際理解を深めるためにさまざまな活動や行事を展開しています。まず、基幹となっているのは、アメリカ・オレゴン州のポートランドにある姉妹校2校での語学研修プログラムとホームステイです。
この姉妹校とは30年以上にわたり交流を続けており、語学研修プログラムは、2024年で37回目を迎えます。毎年春休みに実施しており、期間は約2週間、中学3年生から高校2年生までの希望者が参加します。今年2024年は24名が参加しました。
▲アメリカの姉妹校での語学研修プログラム
もう1つは、オーストラリアでの短期留学です。留学先はブリスベン、シドニーのどちらかで、これも中学3年生から高校2年生までが対象で、2025年の夏休みから実施予定です。
アメリカのポートランドとは時差が16時間あり、オンラインで繋がるのが難しいのですが、オーストラリアなら時差が少なく、1、2時間です。加えてオーストラリアは日本語が第2外国語として採用されている学校が多い親日国家です。そこでオーストラリアに着眼し、これも2週間ほどの短期プログラムを予定しているところです。
また、福島に英語や英国文化を体験できるブリティッシュヒルズというビレッジがあります。ここで4泊5日の英国文化体験・語学研修プログラムを予定しており、2024年の夏休みは40人ほどがエントリーしています。これは中学1年生から参加できます。
さらに、東京グローバルゲートウェイという体験型英語学習施設での日帰りプログラムも年2回あります。これも中学1年生から参加できます。
今は円安で海外研修の費用も上がっています。アメリカの語学研修は2週間で約70万円、オーストラリアで約50万円、ブリティッシュヒルズは10万円以下、日帰りは1~2万円など、費用のバリエーションも考慮し、いろいろな選択肢を用意しているということです。
実は、つい先日まで10日間ほどアメリカから6人の留学生が来ていました。アメリカの研修に行った生徒を中心にホームステイ先として募り、留学生とともに生活して学校でも学ぶというもので、いわゆる交換留学も実施しています。
技能検定受験やネイティブ・日本人教師のペア授業で英語力もアップ
▲中学校の英語の授業の様子
そのほかに、英語教育について取り組まれていることはありますか?
本校では英語検定は中1から高2まで全員受験を義務づけています。また、ベネッセコーポレーションが実施している英語4技能検定「GTEC」も中3から高3まで全員が受験します。海外経験と資格の両面から国際理解の促進に努めています。
英検やGTECの受験のために学校で行っている対策等はありますか?
対策講座・補習講座を行っています。英検に対する取り組みは今、盛り上がっていますね。全員が受験するのは1月なのですが、春先に受験希望者を募ると30~40%の生徒が受験しています。
▲Surfaceを活用した中学校の英語の授業
御校には「英語活用」という授業がありますが、これはどういったものでしょうか?
これは中学校の英語カリキュラムの1つで、通常1クラス40名で、A~Fまで6クラスあります。その1つのクラスを2つに割って20名ずつになります。そこにネイティブスピーカーの外国人講師と日本人講師がペアで、少人数講座を行う英語の授業です。スピーキングもライティングもあり、リスニングも自然と身につく実践力重視の授業となっています。
英語の授業で学んだことを活用し、発揮する機会ということですね。
そうです。中学生の英語活用は、偏差値を上げるための学習というよりは、グローバル時代の基礎を培う意味があります。また、外国人に慣れる機会です。もちろん、高校でもネイティブ講師とコミュニケーションをとる授業はあります。
体育大会のフィナーレを飾る伝統の「二高音頭」が大きな思い出に
▲高校3年生全員が浴衣で踊る、体育大会のフィナーレを飾る「二高音頭」
日本大学第二中学校・高等学校には、特徴的な行事はあるでしょうか?
本校では毎年6月に体育大会を開催していますが、このフィナーレを飾るプログラムで3年生全員が浴衣姿で踊る「二高音頭」はぜひお話ししたいですね。これは、昭和34年の秋から行っている本校の伝統行事で、中高6年間、あるいは高校3年間の総決算として、30分くらい踊ります。
体育大会そのものも、たいへん盛り上がります。保護者や卒業生、地域の人も本校の体育大会を非常に楽しみにしてくれています。保護者、一般の人を含めると、2,000〜3,000人が来て応援してくれます。そうした大勢の人に見守られて、自分の晴れ姿を見せるわけです。
踊っている3年生、それを見る在校生、保護者、一般の方の一体感もすごいですし、伝統を引き継ぐことの意義も大きい、学校全体が一つになる瞬間だと思います。
やはり感性は、自分だけでは培えないものです。人に見られたり、人と協働的に作業したり、体育大会を運営したり、クラス優勝を目指して団結したり、そうしたことから培われていくものだと思っています。
生徒からは、どのような感想がありますか?
まず、1〜2年生がすごく感動しています。自分が3年生になったら、こんなふうに踊って卒業するんだと感じるわけです。3年生にとってはこれが最後の学校行事で、体育大会が終わると受験に向けての日々が始まります。そのため万感の思いで踊り切って、中には感慨深さのあまり涙を流している生徒もいます。
病院見学や講演会など、専門家と接することで大きな刺激を受ける
▲医療コースの病院見学
行事以外の取り組みとしては、どのようなものがありますか?
体育大会のように一致団結して取り組むことも大事ですが、生徒の学習という意味ではやはり授業が重要です。感性を磨くためには、いろいろな刺激を与えたいので、コースごとに大学の先生に来ていただくこともあります。
本校は文系理系の括りではなく「人文社会」「理工」「医療」の3コース制なので、例えば医療コースなら病院に連れて行って現場を見せます。それも感性を磨く要因になっていると思います。
病院見学を経験した生徒は、どんな感想を持つのでしょうか?
まず病院側が歓待してくれる、親切に対応してくれることへの感謝です。そして、やはり現場で働いている姿を見て、講義してもらうと、現場の苦労や課題、最新の医療の知識を知ることができるので、とても心に響くようです。
心に響くと進路目標も明確になります。医療の受験は昔も今も難関なので、それに挑む覚悟ができるわけです。また、医学部・看護・歯学・薬学の予備校の先生を呼んで、講演会を開いてもらうこともあります。
理工コースについてはいかがでしょうか?
理工コースは、2023年に早稲田大学のゲーム開発者の先生を呼んで最新の講演をしていただきました。日大二高中のゲーム好きが集まって、その先生は質問攻めにあって、たいへん盛り上がりました。どのコースに関しても、いろんな機会で大学の先生をお呼びして、生徒に刺激を与えております。
日本大学第二中学校・高等学校からのメッセージ
▲取材に対応いただいた日本大学第二高等学校長の中島先生
最後に、日本大学第二中学校・高等学校に興味をもったお子さまや保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
これからはますます将来の予測が困難となる時代ですし、医学の進歩で寿命も長くなっていますよね。そうすると大学がゴールではないし、社会に出てからも、絶えず学び直しをする必要があります。自ら学び、問いを見つけ、それを解決していかなければいけない時代なんです。
そこで最も大切なのは、9教科まんべんなく、しっかりと基礎学力をつけておくことです。教科学習の全般に力を入れ、広く教養を高めておく必要があるのです。だからこそ、本校では中学1年生から高校1年生までの4年間は、9教科すべてをまんべんなく学ぶカリキュラムとなっています。
また、本校の校風に関してお伝えしたいのは、非常におおらかで明るいということです。内側からだけでなく、外部の皆さんからもよく言われます。そして、生徒一人ひとりにいろいろな活躍の場を用意していて、部活動を見ても43のクラブが活動しています。静かに過ごしたい人も、活発に運動したい人も、それぞれが自分の居場所を見つけることができるはずです。
自分の居場所を見つけ、ぜひ本校で15の資質・能力を一緒に伸ばしていきませんか?もし本校に興味をもっていただけたのであれば、ぜひ一度足を運び、学校の雰囲気を感じてみてください。
本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
日本大学第二中学校・高等学校の進路実績
日本大学第二中学校・高等学校では、高校2年進級時に「人文社会」「理工」「医療」の3コースに分かれ、それぞれの進路目標に向けて学習します。
内部推薦制度を利用して日本大学へ進学する生徒は約30%、難関私大や有名私大の指定校・公募推薦を利用して進学する生徒は約40%、残りの約30%が国公立大学やその他の私立大学を目指して一般入試を受験します。
2023年度の合格実績としては、東京大学含む国公立大学には8名が合格、日本大学は129名が推薦合格、383名が総合選抜等で合格しています。難関私大は、早稲田大学17名、上智大学7名、東京理科大学22名が合格しています。GMARCHは127名が合格しています。
■進学実績(日本大学第二中学校・高等学校公式サイト)
https://www.nichidai2.ac.jp/education/higher_edu_result/
日本大学第二中学校・高等学校の卒業生・保護者の口コミ
ここからは、日本大学第二中学校・高等学校の口コミを紹介します。実際に通学していた卒業生や保護者の声をまとめました。
■卒業生の声は学校公式サイトから引用しています。
https://www.nichidai2.ac.jp/entrance/message/
日本大学第二中学校・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 日本大学第二中学校・高等学校 |
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住所 | 東京都杉並区天沼1-45-33 |
電話番号 | 03-3391-0223 |
公式サイト | https://www.nichidai2.ac.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください