特色ある教育プログラムで注目を集める学校を紹介するこの企画。今回は愛知県名古屋市の私立中高一貫校「名古屋国際中学校・高等学校」を紹介します。
同校は国際バカロレア認定校として、愛知県で唯一中高一貫の国際バカロレア教育を推進しています(※)。また2022年には文部科学省による「ワールド・ワイド・ラーニング(WWL)コンソーシアム構築支援事業」に採択されるなど、先進的なグローバル教育を受けられる環境があります。
※英語でディプロマ・プログラムを提供する一条校において、ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)は愛知県初の認定。
今回は、入試広報部長である内藤先生に、名古屋国際中学校・高等学校の教育方針や特徴的な教育プログラムの魅力についてお話を伺いました。
この記事の目次
名古屋国際中学校・高等学校の教育方針は「グローバルリーダーを育む」
まずは名古屋国際中学校・高等学校の建学の精神と教育方針を教えてください。
本校の建学の精神は、創立者である栗本祐一先生が提唱した「フロンティア・スピリット(開拓者精神)」です。この建学の精神のもと、現代社会に必要とされるグローバルリーダー「世界と日本の未来を担う国際人」を育むことを教育方針として掲げています。
「国際人」というのは、海外も含めたあらゆるフィールドにおいて自分の意思を持ちながら人と協働し、何かを成し遂げられる人材を意味します。名古屋国際中学校・高等学校の6年間を通じてそういう人材の素地を育んでいければと思っています。
国際バカロレアだけでなく、全クラスでグローバル人材を育成
「世界と日本の未来を担う国際人」を育んでいく上で、名古屋国際中学校・高等学校の6年間で実施している教育プログラムの特徴は何ですか?
本校の大きな特徴に、国際バカロレアの認定校として中学校から国際バカロレア教育を推進していることがあります。中学校の「インターナショナルクラス」では国際バカロレアのミドルイヤーズプログラム(MYP)を履修し、高校に上がった後は「普通科 国際バカロレアクラス」のディプロマ・プログラム(DP)で海外のレベルの高い大学への進学に向けて学習できる環境が整っています。
ここでポイントとなるのが、中学校のインターナショナルクラスの生徒がそのまま高校の国際バカロレアクラスに進学するわけではないということです。中学校にある「一般クラス」「インターナショナルクラス」のすべてから希望者を集った上で内部選抜試験を行い、それをパスした生徒が高校の国際バカロレアクラスに進学しています。つまり、入学に際して英語力を求めない一般クラスの生徒も、国際バカロレアに進学するチャンスがあるということです。
高校で普通科 国際バカロレアクラスに進学しない生徒は、普通科中高一貫クラスを選択することになります。本校は文部科学省のワールド・ワイド・ラーニング(WWL)コンソーシアム構築支援事業に採択されており、中高一貫クラスではWWLのグローバル人材育成のリーディングプロジェクトを経験することができます。国際バカロレアに限らず、どのクラスを選択したとしても“国際人”として成長していくための学びを得られるのは、他にない本校ならではの魅力なのではないでしょうか。
名古屋国際中学校・高等学校の“国際人”を育む教育プログラム
ここからは、名古屋国際中学校・高等学校の特色ある教育プログラムの具体的な内容に迫っていきます。
インターナショナルクラスだけでなく、一般クラスでも英語学習を重視
▲吹き抜け空間のアトリウム。昼休みにはステージでランチタイムコンサートが開かれることも。
中学校の「インターナショナルクラス」「一般クラス」それぞれでどのような教育プログラムを実施されているのか教えていただけますでしょうか。
インターナショナルクラスは帰国生や外国籍の生徒、小学校のインターナショナルスクール出身者など英語力上位層を対象としたクラスです。英語の授業は中学校1年生では週6時間、中学校2、3年生では週7時間で、すべて洋書教材で実施しています。
英語以外の教科でも、理科、音楽、道徳、総合的な学習の時間は英語での授業を行っています。インターナショナルクラスではネイティブインストラクターが主担任を務めるため、ホームルームの時間も英語を使用しており、日常的に英語を使用する環境があります。
一般クラスでは入学段階での英語力は問いませんが、一般的な公立校よりも英語学習に重点を置いているのが特徴です。英語の授業時間はインターナショナルクラスと同様で、日本語教員とネイティブインストラクターが5割ずつ授業を行っています。
授業時間以外でも、日本人教員とネイティブインストラクターが共同で学級を運営しているため、ホームルームが英語で運営されることもあるなど、普段から英語に触れる機会が多くなっています。
インターナショナルクラスでは日本語を使った授業も行われているのでしょうか。
はい。中学校のインターナショナルクラスの生徒は高校で普通科 国際バカロレアクラスに進学する場合が多く、バカロレアでは海外大学の入学資格と日本の普通科の高校卒業資格をダブルで取得するディプロマ・プログラムを実施しています。
日本の高校卒業のためには当然日本語力も求められてくるため、その前段階である中学校のミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)でも日本語力を身につけられるよう、英語だけでなく必ず日本語での授業も実施しています。
一流企業やスタートアップとの連携でグローバル人材を育む「WWL事業」
中高一貫クラスで推進されているWWL事業について、取り組みの一例を教えてください。
印象的な2つの取り組みをご紹介します。
1つは企業協働学習の一環で、シャープ株式会社様と連携して行った取り組みです。「5年後のシャープが作るべき製品・サービスを創造しよう」というテーマ設定のもと、シャープの事業内容を学ぶことから始め、SDGsの観点を踏まえた5年後の社会予測を行った上で生徒自身で企画書を作成していきました。授業のプレゼンテーションを経て選ばれた企画を、実際に企画開発を行っている部署に対してプレゼンし、講評もいただきました。
もう1つが名古屋市中区のスタートアップ企業・Olive株式会社様と連携して行った取り組みです。Olive様の持つ「人の感情をセンサーで読み取る」技術を活かし、教室にカメラを設置して授業中の生徒の集中とリラックス状態の可視化を行う全4回の実証実験を行いました。生徒にとっては、先端技術に触れつつ、その開発に携わる技術者の話も聞ける良い機会になったのではないかと思います。
名古屋国際中学校・高等学校のWWL事業での学びの意義は、どういったところにあると思われますか?
やはりスタートアップ企業等と連携することで、学校内だけでは得られない学びを深められる点が大きいのではないでしょうか。
例えばシャープ様との「5年後のシャープが作るべき製品・サービスを創造しよう」という取り組みでは、生徒から高齢化を見越した補聴器を提案するアイディアが生まれました。それを実際に企業側にプレゼンしたところ、アイディアや社会的意義の面ではある程度評価いただいた一方で、収益面やマーケティングでの課題に対してフィードバックをいただきました。つまりこの商品を誰にどのように売り、その結果企業にどのような利益があるのか、ということですね。
そういった部分はなかなか高校生の段階では気づけないことですし、学校の教員が教えられる分野でもありません。企業としての視点で、アイディアだけでなく実現可能性のところまで踏み込んだ指摘をいただいたことは、学校の外だからこそ得られるとても貴重な学びとなりました。
WWLの学びを経験した生徒さんに感じる変化などはありますか?
高校生のときにそういった探究学習を経験することは、進路選択に影響してくると思います。例えば今のシャープ様の例ですと、ビジネスやマーケティングに興味が出てくるなど、今まで自身が思い描いていた進路とはまた別の選択肢が出てきているんです。
そういう意味で、生徒の将来に向けてポジティブな影響を与えていると思います。
大学の学びを先取りできる「高大一貫クラス」
その他にも、名古屋国際中学校・高等学校の教育プログラムで特徴的なものがあれば教えていただるでしょうか。
国際バカロレアと普通科の他に「高大一貫クラス」の選択肢があるのも本校の特徴です。こちらは高校3年進級時に選択できるクラスで、系列大学である名古屋商科大学への進学希望者を対象としています。
このクラスのユニークな取り組みは、「1日大学生」というものです。週に1日名古屋商科大学の学生として過ごし、大学の授業に出席することで単位を得ることができるという取り組みで、そこで得た単位は大学進学後にも適用されるんですよ。
高大一貫クラスでは、普段の授業でもSDGsの探究や大学での学修に必要な基礎知識などを学んでいます。大学入試のための勉強ではなく、大学で学ぶ勉強を先取りできる点が高大一貫クラスの魅力です。
海外研修は最大2回!学びたい内容にあわせて生徒が国を選択できる
国際人の育成では海外研修も不可欠かと思いますが、詳細を教えていただけるでしょうか。
名古屋国際中学校・高等学校では“国際人”を育成するという教育方針のもと、「国際理解研修」という名の海外研修を積極的に行っています。
6年間で最大2回の国際理解研修を経験できるチャンスがあり、1回目は中学3年生全員を対象としたロンドンでの研修、2回目は高校2年生を対象とした選択希望制の海外研修です。何か所かある候補から行きたい国を選択できます。2024年度は、オーストラリア、カンボジア・ベトナム、シンガポール・マレーシア、韓国の4つのコースを展開予定です。
行き先によって経験できる内容がかなり異なるのも特徴で、生徒たちは自分の希望にあった国を選択します。
例えばカンボジア・ベトナムの場合は、WWLと連動した社会課題のフィールドワークを行っており、そのテーマ設定も生徒たち自身で行いました。実際にカンボジアでは遺跡の修復をしたり、ベトナムではベトナム戦争に関連した平和学習をしたりと、海外旅行をするだけでは得られない多様な学びが得られたと思います。
名古屋国際中学校・高等学校で送るスクールライフ
▲名古屋国際中学校・高等学校の卒業式で、みんなで制帽を投げる瞬間
名古屋国際中学校・高等学校にはどのような生徒が多いでしょうか。
名古屋国際中学校・高等学校は中学1年生から高校3年生まで合わせて700名程度と比較的コンパクトな規模感の学校ではあるのですが、その中の約2割は帰国生や外国籍の生徒です。
中学校から一般クラスとインターナショナルクラスに分かれてはいますが、日常生活や行事、部活など交流できる機会も多くあるので、身近にいる英語が堪能な生徒から刺激を受けながら自身の英語力を高めていける環境があります。
単に多国籍の生徒がいるだけでなく、日本とは異なるカルチャーや価値観を持つ生徒も多くいます。10代という柔軟性のある年代で、多様性を肌で感じながら視野を広げられる環境があるのは名古屋国際中学校・高等学校だからこその魅力だと思います。
実際に生徒を見ていても、文化的背景や価値観といった枠を超えて、人と人との付き合いをしているなと感じますね。
▲系列大学の留学生と一緒に行うスポーツイベントの様子
名古屋国際中学校・高等学校の、中高一貫校だからこその特徴などもあれば教えてください。
高校入試がないということもあり、のびのびと自分のペースで自分のやりたいことに挑戦をしている生徒が多いと感じます。
部活動も活発で、高校生が中学生に指導を行っている姿をよく見かけます。部活動だけでなく休み時間でも、学年に関係なく仲良く喋っている光景は珍しくないですね。それは中高一貫校だからということもありますが、海外カルチャーに立脚したフランクな関係性がある本校だからこその特徴ともいえると思います。
生徒にも教員にも、海外のカルチャーを持つ人が多い名古屋国際中学校・高等学校ならではの雰囲気ですね。
本日はたくさんのお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
名古屋国際中学校・高等学校の生徒からの口コミ
ここでは、名古屋国際中学校・高等学校の卒業生、在校生からの口コミをいくつかご紹介します。
企業との連携など、学校外での実践的な学びを得る機会が多い。
インターナショナルクラスやWWLなど、他にはない名古屋国際中学校・高等学校だからこそできる経験に魅力を感じる声が多く聞かれました。ネイティブ教員や帰国生が多いからこそ、語学力だけでなく多様性のあるカルチャ―に触れられる機会が多いことも名古屋国際中学校・高等学校ならではの特徴としてあがっています。
名古屋国際中学校・高等学校の進学実績
名古屋国際中学校・高等学校では海外大学進学実績が多く、特に2023年度にはその傾向が顕著に表れています。2023年・2024年の過去2年間の卒業生の中から、THE世界大学ランキングトップ200位以内の海外大学に21名の合格者を出しています。
国内でも、地元の名門である名古屋大学や、国内最難関校の東京大学を始め北海道大学、筑波⼤学、私立の名門慶應義塾大学、早稲田大学、上智大学、東京理科大学への合格者も輩出しています。
■近年の進学実績(名古屋国際中学校・高等学校の公式サイトより)
https://www.nihs.ed.jp/media-download/2161/
名古屋国際中学校・高等学校の基本情報
お問い合わせ | https://www.nihs.ed.jp/contact.html |
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住所 | 愛知県名古屋市昭和区広路本町1-16 |
電話番号 | 052-853-5151(高等学校)/052-858-2200(中学校) |
公式URL | https://www.nihs.ed.jp/ |
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