特色ある教育プログラムで次代を担う人材を育成する学校を特集するこの企画。今回は長野県長野市の日本大学付属校「長野日本大学中学校・高等学校」を紹介します。
長野日本大学中学校・高等学校は1959年に開校した私立中高一貫共学校です。現役進学率90%超と長野県で屈指の進学実績を誇り、付属校である日本大学以外の国公立を含む他大学への進学も多くなっています。
日本大学とのつながりを活かしたキャリア教育など特色ある探究型学習を展開しており、特に近年では国際バカロレアの探究プログラムが推進されているのも特徴です。また文武両道の機運の中、各クラブで活発な活動が行われています。
今回は同校校長の添谷先生に、長野日本大学中学校・高等学校の教育理念やそれに基づく探究型の教育プログラムの特徴、精力的な活動を行う部活動の魅力についてお話を伺いました。
この記事の目次
「ミライチェンジリーダー」を育む長野日本大学中学校・高等学校の教育理念
▲インタビューにご対応いただいた校長の添谷先生
まずは長野日本大学中学校・高等学校の教育理念についてお聞かせください。
本校では建学の精神として「思いやりの心を持った人を育む」「主体的ならびに自律的な態度を育成する」「他者との協働による社会貢献を支援する」「生涯学習者を育てる」の4つを掲げています。それらを集約した言葉として打ち出しているのが「ミライチェンジリーダー」というスローガンです。
「チェンジリーダー」は経営学者のドラッガーが提唱した言葉で、変化をチャンスととらえる人のことを指します。未来に向けて変化を楽しみながら新しいことにチャレンジし世の中を良くしていく、そんな「ミライチェンジリーダー」を育成していくことが本校の目標です。
国際バカロレアの“探究型”の学びを中学・高校の全校で展開
そういった教育理念を象徴するような教育活動があれば教えていただけますか?
社会のために率先して行動する「ミライチェンジリーダー」の育成に向け、本校では生徒が主体的に学びを深める探究型の学びに重点を置いています。2022年度には中学校に「探究創造コース」、高校に「探求創造学科」という探究学習に特化した新たな学科、コースを新設しました。
近年では国際バカロレア・キャリア関連プログラム(IBCP)の候補校として、国際バカロレアの世界水準の教育プログラムに基づく探究型の学びにシフトしています。IB専門のコースを設けているIB推進校も多い中、本校では中学校・高校の全校でIBの教育プログラムを展開しているのが特徴です。
受験勉強のための勉強ではなく、グローバルな課題解決に向けて学びを深める本校の探究プログラムは、建学の精神の1つ「生涯学習者を育てる」を体現するものです。本校のIB教育プログラムを通じ、「生涯学習者」としてのマインドと、国内外で活躍できる力をしっかりと育んでいきたいと思っています。
ビジネスマナーと主体性が身に付く、企業とコラボした探究活動「世界部」
長野日本大学中学校・高等学校の探究活動の一環で実施している「世界部」とはどのような取り組みなのでしょうか?
「世界部」は、リンゴや唐辛子などの特産品をはじめとする長野県の魅力を世界に発信することを目的に発足された、生徒主体で探究を行う部活動です。長野日本大学学園は小学校も擁しているため、世界部には小学4年生から高校3年生までの生徒が参加しています。
世界部の活動は長野県内の企業様と協力して商品企画を行い、それを海外で販売することをゴールとしています。実際に長野市の七味唐辛子メーカー『八幡屋礒五郎』とコラボしたオリジナル商品が生まれるなど、活動が形になりつつあります。
実際に企業と一緒に商品開発をすることで、生徒さんにどのような学びが生まれているのでしょうか。
企業様と仕事をする上でのビジネスマナーなど、学校の授業では教えないような能力を身につけられるのはこの「世界部」だからこそ得られる学びといえるでしょう。メールのやり取りや敬語の使い方など、社会に出たときに必須となるスキルを早い段階で学ぶ機会になっています。
また世界部の活動を通じて、商品を開発するための調査や分析、コンセプトワークなどマーケティングの力も徐々に身についてきています。世界部の活動ではアウトプットの機会も多く設けているため、自分の言葉で伝えるプレゼンテーション能力も向上していると感じます。
何より生徒主体で物事を考える動きが出てきているのが大きな変化です。自分たちで興味を持ったものを深掘りして調べ、結論を導いていくという探究活動に必要な力を、この世界部の活動で実践的に身につけられていると実感しています。
生徒たちの主体的な学びを引き出す上で、学校として工夫していることはありますか?
生徒たちが自分で興味・関心を持ち行動するまで「待つ」姿勢を大切にすることです。教員は生徒たちにいろいろと教えてしまいがちですが、生徒たちが主体的に動くのをしっかりと待つよう心掛けています。「待つ」ことの重要性を企業の方にも共有しているため、たとえ遠回りに思えても生徒主体で考えてもらう過程を企業の方にも見守っていただいています。
進路を考えるきっかけに。日本大学や地元企業から学ぶ「キャリア探究プロジェクト」
▲キャリア探究プロジェクトの様子(スクロールで写真がご覧いただけます→)
他にも、御校の探究活動で特徴的な取り組みがあれば教えてください。
本校では日本大学付属のメリットを活かし、日本大学の各学部から最先端の研究を行う教授をお招きして授業をしていただく「キャリア探究プロジェクト」を実施しています。日本大学だけでなく他大学や専門学校にも広げ、医療や福祉、さらには理美容などさまざまな分野の学びについて説明いただくことで、生徒が自身の進路や職業を考えるきっかけとしています。
近年では大学だけでなく地元の企業様もお招きしています。例えば先日は長野市の建設会社「株式会社守谷商会」の皆さまをお招きし、建設現場のお仕事についてお話いただきました。土木関係の仕事は一般的に肉体労働で大変な作業だというイメージがありますが、最近ではドローンを使用した遠隔操作もできるようになっています。そんな土木とデジタルが融合した最先端の取り組み事例を教えていただきました。地元で知られる身近な企業からお話いただくことで、生徒たちにとっても自身のキャリアをよりリアルに考えるきっかけになったのではないかと思います。
キャリア探究プロジェクトは年間どのくらい実施されているのですか?
学校行事などがある時期を除いてほぼ毎週実施しているため、中学校・高校合わせて年間数十回は実施していると思います。1つの分野の学びを深めていくというよりは、幅広い分野に触れることで視野を広げてもらえたらと思っています。
キャリア教育では御校の生徒さんが企業を訪問するような機会もあるのでしょうか。
高校1年生を対象とした企業インターンシップを行っており、そこでは地元の企業様の社員寮に1週間住み込んで一緒に働くという体験ができます。
高校1年生でインターンシップを経験できるのはかなり貴重ですよね。
そうですね。一般的には大学生でインターンシップを経験することが多いと思いますが、本校ではもっと早い段階で経験をすることが生徒のキャリア選択において重要な意味を持ってくると思っています。高校に入ったばかりの1年次に実際に企業で働くことで、より自身のキャリアを深く考えるきっかけにしてほしいということで地元企業様にご協力いただいています。
クラブ加入率約8割!文武両道で人間性を磨く
続いて部活動についても伺います。御校は部活動にもかなり力を入れていらっしゃるとのことですが、その背景にはどのような思いがあるのでしょうか。
長野日本大学中学校・高等学校では「学力の向上はまず人づくりから。クラブ活動の向上は人間教育にあり」という考えのもと「文武両道」を掲げています。クラブ加入率は約80%と非常に高く、コースに関わらず多くの生徒が勉強と部活動を頑張って両立させています。
クラブ加入率が高い秘訣は何だと思われますか?
「勉強も部活動も頑張るからこそ人間性が磨かれ、結果的に学力向上にもつながっていく」という本校の考えが、全校的に浸透しているからこそだと思います。文武両道の学校だと知った上で入学する生徒が多いため、教員側から特別な働きかけをすることなく生徒たちが自主的に部活動に所属しています。
また本校は全国大会を目指して精力的に活動するクラブも多い一方で、週1回程度の活動の“ゆるい部活動”を奨励しているのも特徴です。強化部と“ゆる部活”のメリハリがはっきりしており、全国を目指して頑張りたい生徒以外も居心地良く部活動をできる環境があることが、全体的な加入率の高さにつながっているのかもしれません。
“ゆる部活”にはどのようなものがありますか?
例えば私が顧問をしている「レオクラブ」というボランティア活動を行うクラブは週1回の活動を基本としていますが、参加を強制しているわけではありません。生徒が自分で参加したいボランティア活動を選べるため、その点も居心地の良さにつながっていると思います。先ほどお話した世界部の活動とレオクラブを兼部している生徒もいますよ。そういう柔軟性があることも部活動を続けやすい秘訣だと思います。
中高合同の練習で、モチベーションやレベルアップにつなげる
御校の部活動はそういった自由度もある一方で、輝かしい実績を残しているクラブが多いのも特徴的ですよね。どういったところに強さの秘訣があると思われますか?
本校のクラブは中学生・高校生合同で実施するものが多くなっています。多年代が一緒に練習するからこそ、全体的なレベルが底上げされているのではないでしょうか。
例えば吹奏楽の場合、高校生のコンクールに中学生が参加することも可能なんです。実際2023年には長野県吹奏楽コンクールの高校生部門に、中学生と高校生が合同で参加しました。そこで見事第2位となり、東海大会への出場権を獲得したんです。中学生にとってよりレベルの高い練習環境があることで、上達につながっているといえるでしょう。
運動部でも中学生と高校生が合同で練習するクラブが多くなっています。特にサッカー部は男女あわせて高校は100人以上、中学校は30人程度と大所帯のクラブなのですが、中高が同じグラウンドで練習をしています。中学生にとっては違うカテゴリーの人と同じ環境で練習できるため、自分のアスリートとしての将来像を間近で見ながら練習できるのはモチベーションや競技力の向上にもつながってくると思います。
長野日本大学中学校・高等学校からのメッセージ
最後に長野日本大学中学校・高等学校での学校生活に興味を持った読者の方に向けて、添谷先生からメッセージをお願いします。
長野日本大学中学校・高等学校は日本大学の付属校として内部推薦で進学する生徒も多いことから、全体的に穏やかな雰囲気の中で勉強や部活動などやりたいことを突き詰められる環境があります。年齢に関係なく笑顔での挨拶やコミュニケーションを大切にしている本校の校風も穏やかな空気感をつくり出しています。本校ならのびのびと勉強と部活動の“文武両道”を実現していただけると思います。
今後は国際バカロレアの教育プログラムにシフトし、より探究的な学びを深められる機会を提供していきます。ぜひご期待いただき、一緒に本校で学んでいただけると嬉しいです。
添谷先生、本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!
長野日本大学中学校・高等学校の進学実績
長野日本大学中学校・高等学校の2023年度の進学実績を見ると、現役進学率が90.8%、現役合格率が97.3%と、長野県内でトップクラスの進学実績を誇っています。
同校では中学校・高校ともに1年次から習熟度別のコースで授業を実施し、一人ひとりの希望に応じた進路実現をサポートしています。その結果、毎年約6割が日本大学以外の大学に進学しているのも特徴です。2023年度には東北大学の医学部医学科、東京外国語大学といった国公立の難関校への合格者を輩出しています。私立では東京理科大学をはじめ、明治大学や立教大学などの難関校の合格者が生まれています。
■長野日本大学中学校・高等学校の進学実績
https://www.nagano-nichidai.ed.jp/achievement/
長野日本大学中学校・高等学校の生徒・保護者の声
▲60周年記念事業の一環でリニューアルされた図書館
ここでは、長野日本大学中学校・高等学校の公式サイトに掲載されている生徒の声を一部抜粋して紹介します。
部活動や学習指導体制をはじめ、60周年記念事業でリニューアルされた校舎や、県内初のジェンダーレス制服に魅力を感じるという声も聞かれました。保護者からは時代に合わせて校則が緩和されている点も評価されています。
またここには掲載していませんが、習熟度に合わせたきめ細かな指導体制がある点や、国際バカロレアのプログラムに魅力を感じるという口コミもありました。
■長野日本大学中学校・高等学校公式サイト
https://www.nagano-nichidai.ed.jp/web-tour/
長野日本大学中学校・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人長野日本大学学園 |
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住所 | 長野県長野市東和田253番地 |
電話番号 | 026-243-1079 |
公式ページ | https://www.nagano-nichidai.ed.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください