ぽてん読者の皆さまに注目の学校を紹介するこの企画。今回は長崎市にある中高一貫教育を行なう私立の男子校「長崎南山(ながさきなんざん)中学校・高等学校」をご紹介します。
同校は、カトリック宣教修道会「神言修道会」によって設立され、高い人格と強い責任感、広い教養を兼ね備えた人材の育成を目指しています。また、奉仕活動により地域社会に貢献するとともに、異文化交流を通じて真の国際人を育んでいます。
今回は、教頭の中島先生、国際部部長の田中先生、演劇部顧問の毎熊先生に、2020年度に設置したグローバルコースをはじめとしたグローバル教育や、豊かな人間性を育む部活動について詳しくお話を伺いました。
この記事の目次
長崎南山中学校・高等学校の教育目標は「人間の尊厳のために」
初めに、長崎南山中学校・高等学校の教育目標について伺えますでしょうか。
長崎南山中学校・高等学校の教育目標は「人間の尊厳のために」です。旧約聖書に収録されている創世記が説く「人間は神の似姿として創造された唯一無二のかけがえのないすばらしい存在である」という教えを土台にしています。
本校の校長はカトリックの神父で、「あなたはあなただから素晴らしい」という表現をよく使います。これは、頭がいいとか運動ができるといった理由ではなく、誰とも比較されないかけがえのない存在であることが人間の尊厳だと示しています。
そして、この教育目標に基づいて、「高い人格」「広い教養」「強い責任感」という3つの校訓を定め、他者への思いやりがあり、向学心に燃え、自分の義務と責任を果たせる人間を育成しています。
長崎南山中学校・高等学校が力を入れるグローバル教育
▲国際交流の様子
次に、長崎南山中学校・高等学校のグローバル教育のプログラムについて教えてください。
本校では、一人ひとりの生徒に多様な可能性を見せてあげたいというところから、グローバル教育に力を入れています。高校でのグローバルコースの設置、長期留学のサポート、海外の高校との国際交流の3つのプログラムがあります。
グローバルコースについては2020年度から始まって、現在は3期生まで卒業している状況です。このコースではグローバルマインドセットの育成を重視しています。グローバルマインドセットとは、世界で活躍するための考え方であり、例えば挑戦する力や多様性を受け入れる姿勢のことです。
グローバルコースの生徒たちはグローバルマインドセットを持って成長し、海外留学や早稲田大学、ICUなどの難関大学に進学するなど、自分のやりたいことを見つけています。これがグローバルコースの強みと言えます。
▲英語の授業風景
グローバルマインドセットの育成に役立っているのが、週に1時間実施しているグローバルコンピテンスプログラムです。ネイティブの教員による英語で行う授業で、毎回テーマを設定した上で、異文化理解や多様性の重要性などを学びます。元は企業が開発したプログラムでしたが、現在は本校独自の内容に組み替えて実践しています。
例えば、高校2年生の1学期の授業では服装などの「目に見える文化」とマナーなどの「目に見えない文化」が存在することを学んだうえで、生徒一人ひとりが「日本の目に見えない文化」についてのプレゼンテーションを行いました。
また、グローバルコースの探究学習では、高校1年生のときに起業家を招いて講演会を開催しています。講演後の質疑応答の時間を多くとっており、生徒たちは「起業するとき、周りの反対をどう跳ね返したか」など、さまざまな質問をぶつけています。
講演会で生徒たちはどんな学びを得るのでしょうか。
自分と関わる人を救いたいという気持ちで起業した方や、途上国支援をされている方が講師なので、他者を思いやる姿勢を学んだり、「自分も英語を使ってそうした仕事をしたい」と考える生徒が多いです。自ら行動する重要性に気づく生徒もおり、実際に途上国支援に行ったグローバルコース出身の先輩と話す機会を設けたりもしています。
また、デザイン思考もプログラムに取り入れています。デザイン思考の良い点は、ユーザー視点で考えることにより、他者への思いやりが育める点です。単に自分の興味だけでなく、他者が何を考え、どこで困っているかを理解することができます。また、チームで活動することでチームビルディングも学べます。
▲グローバルコースの探究学習で開催される講演会
価値観の大きな変化が得られる長期留学
▲国際部部長の田中先生
長期留学についてはいかがでしょうか。
長期留学についてはグローバルコースに限らず、どのコースからも参加できるようにしています。多くの学校と異なる点は、高校を3年で卒業できるパターンと、留学して4年で卒業するパターンの2パターンを用意して生徒たちが選べるところです。
この制度は5年続いており、これまで多くの生徒がカナダ、オーストラリア、アメリカ、ブラジル、イタリア、フランスなどに留学しています。毎年4月に開催する長期留学の説明会には約100名が参加しており、多数の生徒が留学に興味を持っています。
生徒の多くは英語力を伸ばしたいという理由で留学しますが、実際に留学を終えると、英語力の向上以上に価値観の変化が一番大きいと感じています。
例えば、ある生徒は留学前に「将来は飛行機に携わりたい」と話していましたが、留学先で貧困を目の当たりにし、貧困に対する支援活動に興味を持つようになりました。現在、その生徒はオーストラリアの大学に進学しています。
他の生徒も留学先で時に孤独を感じながら自己を見つめ直し、自立心を身につけています。帰国後、彼らの経験はクラス全体にポジティブな影響を与えており、教員としても非常に嬉しく思っています。
韓国やオーストラリアの高校と定期的に国際交流
▲ときには日本の武道や伝統文化を通して交流することも
海外の高校との国際交流について教えてください。
韓国の姉妹校やオーストラリアの高校と定期的に交流を行っています。毎年一回訪問と受け入れをしており、互いが訪問した際には各家庭へのホームステイを行っています。
生徒たちの交流の様子はいかがですか。
最初は壁があるように感じますが、交流を通じて英語を使う機会が増え、その結果、交流後には再び交流したいという気持ちが生まれることが多いです。積極性も増し、グループ活動で意見を述べる力が育っていると感じています。英語についてもペーパーテストでは測れないスピーキングやプレゼンテーションの能力が向上していると思います。
豊かな人間性を育む長崎南山中学校・高等学校の部活動
▲演劇部の舞台
次に長崎南山中学校・高等学校の部活動についてお話をお聞かせください。毎熊先生は高等学校の演劇部の顧問ということですね。
はい。私が赴任したときには演劇部はなかったのですが、以前勤めていた学校で演劇部の顧問をしていたこともあり、新しく作ることにしました。演劇を通して、南山の歴史などを生徒にもっと深く知ってほしいという思いからです。
南山高校の大きな特色の一つが、神父の養成学校であるという点です。そのため、中学校から神父を目指して勉強している生徒もいます。小さい頃からそういう使命を持っている生徒もいるということを、私が台本を書いて演劇にしています。
現在の部員は高校1年生が5人、2年生が1人、3年生が3人です(2024年6月時点)。男子校なので、上演する台本が限られる部分はありますが、その中で最善を尽くしています。
演じるということは「他者を知る」ことが重要です。自分が演じる人物の歴史、背景、時代背景や考え方を学ぶ必要があります。そうした学びを通じて人間的にも豊かになるし、大きく成長できると思います。
▲演劇部顧問の毎熊先生と部員たち
部員の皆さんの様子はいかがですか。
普段は部員たちが自主的に活動しているので、毎日見ているわけではありませんが、とても楽しそうにしています。それから、皆しっかり自分の意見を言えるようになっていきますね。演劇を続けているうちに自己主張が上手にできるようになっていきます。あとは、相手の考え方や立場をよく理解して、認め合い、協調性を養って行動できるようになるところにも成長を感じます。
部内には厳しい上下関係はなく、フラットになんでも話し合える雰囲気があります。先輩は経験を積んでいますので、後輩に良いアドバイスをしていますし、上演前など緊張する場面では、上級生の存在が非常に頼りになります。上級生の「大丈夫だよ」という言葉が下級生にとって大きな安心感を与えているようです。
演劇部の上演を観た生徒の反応はいかがでしょうか。
楽しそうだという印象は持っていると思います。本校には選択授業があり、その中に演劇講座もあります。今年は18名の生徒が参加し、楽しみながら台本を読み、演技し、自己主張をし合い、皆で大笑いしながら作品を作っています。
コロナ禍では高校演劇を含むイベントがすべて中止され、演劇は不要不急と見なされました。しかし、演劇は人生を豊かにするものであり、不要不急のものこそが豊かな人生に必要です。演劇を通じて彼らが楽しい人生を送ってくれることを願っています。役者になる生徒はほとんどいませんが、何らかの形で演劇を楽しんでもらいたいと思っています。
▲選択授業の演劇選択講座
体育祭などのイベントが盛り上がる長崎南山中学校・高等学校
▲体育祭は毎年非常に盛り上がる
体育祭などの行事での生徒の雰囲気について教えてください。
本校は男子校なので、盛り上がる時は非常に盛り上がります。普段の学習面では落ち着いているので、メリハリがありますね。また、生徒たちは自主的に行動し、校外イベントなどで運営が困っている時にも自然に手助けします。
生徒会も非常に活発です。文化祭や体育祭を中心に活動し、日常生活の改善に取り組んだり、世界的に有名なアーティストを招いたコンサートを企画したりしています。今後もこうしたリーダーシップを発揮できる生徒を伸ばしていきたいと考えています。
長崎南山中学校・高等学校からのメッセージ
▲いろいろな活動を通して、長崎南山の生徒たちは自身の可能性を広げている
最後にぽてん読者にメッセージをお願いします。
グローバルな視点から見ると、生徒一人ひとりには自分の可能性を狭めずに挑戦してほしいと思っています。長崎南山中学校に入学した時には自分に自信を持てない生徒も多くいます。しかし、努力と考え方次第で大きく成長できる可能性があるので、生徒たちには自分の可能性を諦めずに頑張ってほしいです。また、高校生にも、自分の可能性を狭めずにさまざまなことに挑戦してほしいと思っています。
本校は、令和6年度の「DXハイスクール(※)」の指定校に認定されました。その取り組みの一環として「長崎南山グローバルITラボ」という探究的な学びの拠点を創り、探究活動や大学・専門家とのオンラインでの連携など新しい学習の機会を設けていきます。
(※)デジタルや理数分野の取り組みを推進し、ICTを活用した学びの拠点となる高校
また、長崎南山高等学校には男女共学の通信制コースもあります。ご興味のある方は公式サイトからご確認いただければ幸いです。
本日はありがとうございました!
■ICT教育について(長崎南山中学校・高等学校公式サイト)
https://www.n-nanzan.ed.jp/pages/279/
■通信制のご案内(長崎南山中学校・高等学校公式サイト)
https://www.n-nanzan.ed.jp/pages/263/
また、最後に校長である西経一先生のメッセージが届いているので紹介いたします。
※公式サイトでも、同内容のメッセージが紹介されています。
https://www.n-nanzan.ed.jp/pages/79/
長崎南山中学校・高等学校の進学実績
2023年度の長崎南山中学校・高等学校の進学実績を見ると、長崎大学医学部をはじめ、九州大学、千葉大学などの国公立大学や、早慶上理(※)などの難関大学に合格しています。
(※)私立難関大学の総称で早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学、東京理科大学のこと
生徒の個性や長所を伸ばし、生徒自身が納得できる進路指導を受けられる体制が確立していることが結果につながったものと考えられます。
■進路実績(長崎南山中学校・高等学校公式サイト)
https://www.n-nanzan.ed.jp/pages/153/
長崎南山中学校・高等学校の卒業生・保護者の口コミ
ここからは、長崎南山中学校・高等学校の卒業生・保護者の口コミを紹介します。
これらの口コミから、生徒の希望と適正・能力に応じたクラス編成と、手厚い進路指導が期待できる環境ということがわかります。
■卒業生の声は公式サイトから引用しています。
https://www.n-nanzan.ed.jp/pages/29/
長崎南山中学校・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人長崎南山学園 |
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住所 | 長崎県長崎市上野町25-1 |
電話番号 | 095-844-1572 |
問い合わせ先 | https://www.n-nanzan.ed.jp/pages/5/ |
公式ページ | https://www.n-nanzan.ed.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください