この記事では、特色ある教育に取り組む“注目の学校”として、兵庫県西宮市にある私立の中高一貫女子校「武庫川女子大学附属中学校・高等学校」をご紹介します。
広大なキャンパスに保育園、幼稚園、大学、大学院を擁する武庫川学院が運営する同校は、例年約8割の生徒が内部進学し、「文武両道でゆとりあるスクールライフを送れる!」と評判を呼んでいます。
教育面では、2024年度から新設された2コースにおいて、個性豊かな探究活動を通じて“未来を切り拓いていく力”を育成。また、アメリカやオーストラリア、フィンランドなどへの海外研修や交換留学を活発に実施するなど、グローバル教育に力を入れていることも大きな特徴です。
今回、ぽてんでは入学対策部の部長・網本先生にインタビュー取材を行い、同校の教育方針や学習カリキュラム、校風などを詳しく教えていただきました!
この記事の目次
『自ら考え、動く女性の育成』を目指す武庫川女子大学附属中学校・高等学校
▲インタビューに応じてくださった入学対策部部長の網本先生
まず、武庫川女子大学附属中学校・高等学校の教育理念について教えてください。
本校では『「高い知性」「善美な情操」「高雅な徳性」を兼ね備えた有為な女性の育成』といった立学の精神をベースに、『自ら考え、動く女性の育成』を人材育成方針として掲げています。
それを具体化したものが、「MUKOGAWA COMPASS(武庫川コンパス)」です。これは答えのない時代において社会に貢献していくための8つの資質・能力をピックアップしたもので、「多様化・複雑化する社会を理解する力」「“生きること”につながる専門性」などの項目に分けています。
この方針をベースとした教育プログラムは、武庫川女子大学への進学後も引き継がれるため、6年間で終わらない一貫した教育を提供しています。
さらに、大学卒業後も就職や転職、資格取得のサポートを行い、一生を自分らしく生きる力、本校の表現で言うと「一生を描ききる女性力」を育てていきたいという考えから、リカレント教育(※)の拠点として2022年3月に武庫川女子大学西宮北口キャンパスを開設いたしました。
(※)学校教育から離れて就職した後も、必要に応じてその都度学び直すこと
中高および大学を含めた10年間だけでなく、大学卒業後もつかず離れず寄り添って、生徒の一生を支える存在でありたいと願っています。
武庫川女子大学附属中学校・高等学校なら勉強もクラブ活動も両立できる!
武庫川女子大学附属中学校・高等学校は、文武両道の実現を重視しているそうですね。
はい。たとえば学習面では、先取り教育は実施していません。クラブの引退も一般的な時期より遅く、特に文化部の一部は高3の3学期まで活動している状況です。
本校は、基本的に武庫川女子大学への進学を目指して入学する生徒がほとんどです。そのため、受験にとらわれないカリキュラム編成や教育活動によって密度の高い中学・高校生活を送っていただけることが、大学の付属校ならではの魅力であると考えています。
▲クラブは18の体育部・22の文化部と豊富。アナウンサーを数多く輩出している放送部は有名で、甲子園閉会式の司会も担当した
実際に、クラブ活動に所属している生徒さんが多いのでしょうか。
中1では、約7割がクラブに所属しています。クラブの種類が多く、週に5~6日練習する部もあれば週1日のみというところもあり、多彩な選択肢から自分のライフスタイルに応じたクラブを選択できます。
柔道や水泳など大学の施設を利用して練習を行うクラブもあり、大学生と交流したり、教えてもらったりする機会も多くあります。
特に、充実した環境については生徒からもすごく好評ですね。学校から車で10分くらいのところに大学施設の「武庫川学院総合スタジアム」があるほか、武道場もあります。
なかには、クラブに所属せずに習い事を極めている生徒もいますよ。武庫川女子大学が主催する講座を受講してバイオリンや声楽などを習ったり、近くにある「ひょうご西宮アイスアリーナ」でスピードスケートやアイスホッケーに励んだりする生徒もいるなど、各自が思い思いに学生生活を楽しんでいる印象です。
武庫川女子大学附属中学校・高等学校の特色ある探究活動
ここからは、武庫川女子大学附属中学校・高等学校における学習カリキュラムの特徴に注目していきましょう。
同校では、2024年度に制度をリニューアル。中学・高校ともに地域の社会貢献活動などに携わる「SOAR(ソアー)探究コース」と、科学技術への知見や国際感覚を強化する「SOARグローバルサイエンスコース」を新たに設け、将来につながるキャリア教育を展開しています。
その中でも、体験型の多彩な学びを提供している「探究活動」に焦点を当ててお話を伺いました。
科学技術に関連する探究を行うコースなど、2種類から選択可能
武庫川女子大学附属中学校・高等学校の教育カリキュラムでは、探究活動に力を入れていらっしゃるそうですね。
そうです。そもそも、新しい2つのコース「SOAR探究コース」「SOARグローバルサイエンスコース」は、探究分野の違いで区別しているのです。
「SOAR探究コース」は、確かな学力の基盤作りに励みながら、地元での社会貢献活動などを通して探究的な学びを得られるコースです。一方、「SOARグローバルサイエンスコース」は科学技術に関する専門的な探究を行うほか、英語力や国際感覚の向上も図れるコースとなっています。
なお、“SOAR”とは“舞い上がる”といった意味を持つ英語で、武庫川女子大学独自の未来教育プログラムです。中高大で密接に繋がりながら教育活動を展開していきたい想いから、この名前をコース名に入れました。
両コースとも文系と理系に分かれるように見えますが、どのような違いがあるのでしょうか?
将来的に必要となるスキルや能力を取りこぼしなく身につけるために、「文系」「理系」の枠にとらわれないカリキュラムで授業を提供し、その分、探究活動のほうで専門的な分野を究めるようにしたいと考えています。
たとえば一般的な理系クラスでは美術の授業に時間を割けないことが多いのですが、特に建築系の仕事ではデッサンのスキルが必要だと聞きました。そのため、設計士など建築系の仕事に就きたい生徒はデッサンの授業を受けられるなど、どちらのコースにおいても自分に必要な授業を選択式で取り入れられるようにしています。
SOAR探究コース:「鳴尾いちご」の栽培や校外研修の企画探究など
▲中学2年次の「SOAR探究コース」では、かつて地元の特産品だった「鳴尾いちご」の復活を目指す
まずSOAR探究コースですが、中学では具体的にどのような探究活動を実施されていますか?
中1では鳴尾地区・甲子園地区の郷土史を学んだり、『海の健康調査』と題してビーチクリーン作戦を行ったりして、地元に貢献できる自分を見つけることを目標とした活動をおこなっています。
また、中2ではかつて地元の特産品だった「鳴尾いちご」の復活を目指し、武庫川女子大学教育学部の協力を得ながら苗を栽培して「どうすれば大きな実がなるのか」「株を増やすためには何をすればいいのか」を探究する活動を実施しています。
そして中3では平和学習をテーマに長崎について探究するなど、学年が上がるごとに少しずつ範囲や規模を広げながら探究的学びを深めていきます。生徒たちはその都度グループ内で意見交換しながら活動を進めていくため、協調性も自然に養われていますよ。
高校での活動内容もご紹介ください。
高校に上がると、1年次には『校外研修の企画探究』を行います。JTBの方から行程を組む際に何を意識するかなどを教わりながら、約半年間かけてグループ内で行き先や行程、費用などを決めていきます。そしてグループごとにプレゼンテーションを行い、最も優れていた案を高2の春の遠足で実践します。
高2・高3では武庫川女子大学経営学部・教育学部の先生と学生に指導いただき、各生徒が自分の興味関心に合ったテーマを選んでそれぞれの探究を進めていきます。
たとえば経営学部との連携においてはローソンと一緒に商品開発を行ったり、他の業者のSDGs関連の取り組みについて学んだりしています。また、教育学部の連携においては小学校で教育実習を行う、附属幼稚園や保育園にご協力いただきながらおもちゃを作るなど、大学との協働で学んでいきます。
そうして2年間かけて自分なりの探究活動に取り組み、途中の中間発表会を経て、高3で最終的なプレゼンテーションを行うという流れですね。
SOARグローバルサイエンスコース:武庫川女子大学アメリカ分校での短期留学など
続いて、SOARグローバルサイエンスコースでの探究活動についても、ご説明いただけますか?
SOARグローバルサイエンスコースでは、大学の研究施設などで校外研修を実施し、専門的なサイエンス学習に取り組む点が特徴です。
そして、中3の夏休みに2週間ほど、コースの生徒全員が武庫川女子大学アメリカ分校での短期留学を経験します。滞在中は現地の先生による授業を受けながら、語学力と異文化理解力の向上を目指します。
高校に上がるとどのような活動を行うのでしょうか?
高校からは国際的課題に取り組む「グローバル探究」、または理系分野の高度な研究を行う「課題探究」のどちらかを選択します。そして高校2・3年の2年間かけて自身が決めたテーマに沿った研究を進め、中間発表会や集大成となるプレゼンテーションへと挑みます。
武庫川女子大学附属中学校・高等学校が力を入れるグローバル教育
御校では、全生徒が対象の海外研修や交換留学プログラムにも力を入れているそうですね。
はい。本校では、グローバル社会を生き抜くためには国による文化や宗教の違いについて五感を使って学ぶことが大切であると考えており、希望者を対象に中2・中3ではタイ・アメリカへ、高1〜高3ではオーストラリア・北欧方面へそれぞれの研修を隔年で実施しています。隔年で行き先を変えているため、希望すれば中学・高校それぞれ2か国での研修を楽しむことが可能です。多人数制で、毎年多くの参加があります。
▲タイでの海外研修では、参加生徒とゾウが記念撮影する一幕も
また、本校はアメリカ・オーストラリア・ニュージーランド・アイルランド・フィンランド・タイの6か国7校と協定を結んでおり、短期の交換留学や研修団受け入れも行っています。交換留学は、お互いに希望する生徒の家庭がホストファミリーとなって滞在をサポートするシステムで、こちらは少人数制です。
海外研修は多くの参加があるとのことですが、現地では具体的にどのようなことを行うのでしょうか?
たとえば2025年度の高1・高2の希望者は、世界幸福度ランキングの上位を占める北欧諸国を訪問し、ウェルビーイング(※)な好循環型社会の在り方を学びます。デンマークやスウェーデンでは対話を通して自分を知り、知の欲求を満たすことを重視する教育機関であるフォルケホイスコーレで学び、フィンランドでは職業教育学校も訪問し、人生100年時代と言われる現代を生き抜くために、生涯学び続けることの大切さを知る研修を行う予定です。
(※)ウェルビーイング:誰もが個として尊重され、自分らしく生きられる社会
具体的な点を挙げると、街のいたるところがバリアフリー仕様に整備されていたり、学校では生徒がバランスボールに座りながら授業を受けていたりとさまざまな発見があると思います。きっと「社会の在り方」についてじっくりと考える大きなきっかけになると思いますよ。
また、参加した生徒の多くが「使える英語」の必要性を感じ、帰国後はより一層英語学習に励んでいます。
武庫川女子大学附属中学校・高等学校のスクールライフ
続いては、武庫川女子大学附属中学校・高等学校における生徒の雰囲気や授業の様子についてお話を伺いました。
生徒同士や先生との距離が近く、明るく楽しい雰囲気
武庫川女子大学附属中学校・高等学校の生徒さんの雰囲気を教えてください。
非常に明るくて、積極的に発言する子が多いですね。女子校生ならではかもしれませんが、男の子の目を気にしながらということなく、自分の言いたいことをしっかりと伝える生徒が多いです。
生徒同士や先生と生徒の関係性はいかがでしょうか?
生徒同士はとても仲が良く、アットホームな校風です。全く性格が異なる子たちも、お互いに価値観を突き合わせて個性や考え方を認め合い、中高6年間だけでなく一生付き合える関係性を築いているように感じます。卒業後はもちろん、子どもができてから家族ぐるみで付き合っているケースもたくさんあるようです。
また、生徒たちは先生に気軽に話しかけてくれて、授業中も活発な雰囲気です。対生徒・対教員のどちらにおいてもコミュニケーションを上手にとり、「その日を楽しく、仲良く過ごそう」と考える生徒が多いのではないかと感じています。
▲ランチタイムは大賑わいの食堂。学院マスコットの名前がついた「ラビーランチ」など、人気メニューが揃う
授業が活発とのことで、行事においても積極的に取り組む生徒さんが多そうですね。
そうですね。たとえば体育祭準備などの場面では、力仕事を必要とするときに積極的に手伝ってくれます。ちょっとしたことでも率先して手を挙げ、主体的に取り組む生徒が多いです。
それは、決して特定の場面だけではないです。体育大会では運動系の子が輝き、文化祭ではものづくりが好きな生徒が活躍し、合唱コンクールでは音楽が得意な生徒が前に出てくるなど、シーンによって異なる生徒にスポットライトが当たっています。
それが一人ひとりの大きな自信になり、将来的にはマネジメントスキルの向上にもつながっていると思うんです。社会に出たら、性別・年齢を問わずいろいろな人と関わって動かなければならないわけですから、そのための能力が自然と養われているのだと思います。
実際にOGの話を聞いても、「中高の経験が役立って、大学のバイト先でリーダーとして活躍できている」「就職後、店長としてひとつのお店を任されている」という子も多いようで、学校側としてもとても誇らしく感じています。
武庫川女子大学附属中学校・高等学校からのメッセージ
最後に、御校に興味をお持ちの方へメッセージをお願いします。
本校における一番の魅力は、武庫川女子大学の付属校であることから基本的には受験勉強に左右されず、勉強とクラブ活動を両立させながら充実した中高6年間を過ごせることです。クラブ活動では上級生から刺激を受けて多様な学びや気づきを得られるほか、習い事を極めたり、海外研修に参加したりと、自身のやりたいことをとことん追求できます。
また、武庫川女子大学には実績のある学部が多数あるので、興味・関心に合った進路を選択しやすいことも魅力のひとつです。特に女子大学で初めての建築学部からは一級建築士も毎年誕生していますし、看護学部や食物栄養科学部、薬学部は国家試験の合格率も高いです。
実際に、就職率や資格取得率が高い武庫川女子大学への進学ルートが確立されていることから、本校への進学を希望するご家庭もたくさんみられますよ。
大学進学を視野に入れて学校を探している方や、文武両道の充実した学校生活を期待している方は、ぜひ本校をご検討ください。
ありがとうございました!
武庫川女子大学附属中学校・高等学校の進学実績
▲校内図書室には6万冊以上の蔵書があるほか、大学の図書館も利用可能。多彩な本に触れられる
武庫川女子大学附属中学校・高等学校の進学実績に注目すると、2022年度卒業生のうち約8割が内部推薦制度によって武庫川女子大学・同短期大学部へ進学しています。学部は文学部や建築学部、薬学部など多岐にわたり、なかでも例年看護学部が人気です。
なお、各学部の定員に応じた推薦枠が設けられているため、難易度は学部の定員によって異なります。また、他の進学先としては、大阪大学や名古屋工業大学、兵庫県立大学といった四年制大学のほか、短期大学や専門学校へ進学する生徒も一定数みられます。
公式:武庫川女子大学附属中学校・高等学校「大学進学・実績・就職について」
武庫川女子大学附属中学校・高等学校の在校生・卒業生の声
▲授業中は活気がある一方で、授業前の読書の時間はとても静か
武庫川女子大学附属中学校・高等学校の在校生・卒業生の多くが、同校のアットホームでのびのびとした校風や工夫を凝らした教育カリキュラムなどを高く評価しています。また、武庫川女子大学の付属校であり、受験にとらわれずに幅広い学びを得られる環境や、文武両道が叶いやすい点にも満足している声がたくさん挙がっていました。
▲正面玄関に飾られている書道部の作品。迫力ある筆の運びに、生徒の皆さんのエネルギーを感じた
武庫川女子大学附属中学校・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 武庫川女子大学附属中学校・高等学校 |
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